サブリースの真相に迫るメリット&デメリットまとめ

公開日2020/05/11
更新日2023/02/06

サブリースとは?

不動産投資家や大家であれば、一度は利用すべきかどうか検討させられるのが「サブリースシステム」です。
 
近年、サブリース契約を巡るトラブルが増え、NHKのクローズアップ現代でサブリースの問題点を取り上げられたことから、サブリース=悪というイメージが世間に浸透してしまいました。
 
しかし、決してサブリース=悪という訳ではありません。上手くサブリースシステムを利用することで、経営を安定させている大家も多数存在するのが事実です。
 
そこで今回は、「サブリースとはどのようなシステムなのか」「サブリースのメリット・デメリット」「最終的にサブリースは使うべきなのか」まで深掘りして解説していきます。

サブリースの基本システム

サブリースとは、賃貸経営方法の一つです。
 
大家が不動産管理会社とサブリース契約を結ぶと、不動産管理会社は大家の所有する賃貸物件を一括で借り上げ、入居者に転貸します。
 
通常入居者は大家から部屋を借りますが、サブリース契約では大家の部屋を管理会社が借り、それを更に入居者に貸す、いわゆる「又貸し」になるのです。
 
一見、めんどくさそうに見えるサブリースが支持されている理由は、大家・管理会社ともにメリットが大きいからです。
 
ちなみに、入居者には基本的に大きなメリットもなければ、デメリットもありません。

サブリースによる管理会社のメリット

それではまず先に、管理会社のメリットをご紹介します。
 
管理会社はサブリース契約を結ぶと大家に代わり、賃貸管理業務を行います。
 
入居者を見つけて入居の契約を結び、毎月賃料を徴収する業務を行う代わりに、管理会社は家賃の中から10〜20%をサブリースフィーとして徴収することができるのです。
 
清掃や入居者募集といった単なる物件の管理(不動産経営代行)のみの場合、管理手数料はどんなに高くても家賃の5%が限界。
 
このことを踏まえると、サブリース契約がいかに多くの収益となるかがよく分かるでしょう。
 
管理会社は空室を無くし、家賃を入居者からきっちり徴収すれば、その努力が収入に直結します。
 
つまりサブリースは不動産経営代行と違い、業務に対するインセンティブが発生するのです。

サブリースによる大家のメリット

次に、大家がサブリースを利用する際に得られるメリットについてご紹介します。
 

安定した収益を得られる

サブリース契約では不動産管理会社が長期間に渡って一括して部屋を借り上げ、賃料を支払ってくれます。
 
空室の有無に関わらず、不動産会社が全室借りてくれるので、大家は毎月安定した収入を得ることができます。
 
具体的に説明すると、10部屋のアパートを所有するオーナーがいて、そのうち3室が空室だったとします。
 
この場合、大家の収入は稼働している7室分のみです。
 
しかし、サブリース契約では不動産管理会社が10室借り上げるので、大家からすると10室中10室が借りられている状態。
 
管理会社は借りた10室中3室が空室であっても、借りている以上大家に10室分の賃料を支払わなくてはいけません。
 
そのため管理会社は大家に代わり必死に入居者募集を行い、満室経営を目指すのです。
 
大家からすると努力しなくてもある意味常に満室状態であることが、サブリースを利用する上で一番のメリットであると言えるでしょう。
 
しかもサブリースは、10〜30年という長期間利用可能です。
 

契約当事者になる必要がない

サブリースの場合、大家が契約するのはあくまで管理会社で、入居者と直接契約を結んでいるわけではありません。
 
入居者の中には、一部トラブルの原因となりそうな人もいます。
 
入居時にある程度入居審査を行いふるいにかけますが、入居者の人となりまでは分かりません。
 
逆にそこまで調べていたら、入居してくれる人もいなくなってしまうでしょう。
 
そんな”モンスター入居者”は何度もクレームを入れたり、退去時の敷金精算で交渉してきたり、周囲の住民に迷惑をかけるなど、とても厄介な存在。
 
こうしたモンスター入居者と契約当事者になってしまえば、大家が直接揉め事に巻き込まれてしまう可能性が高くなります。
 
しかし、サブリースであれば日々の管理は管理会社に任せられるので、クレーム処理や諸々の対応も管理会社が行ってくれます。
 
契約書に大家の氏名・住所が載ることで、モンスター入居者から嫌がらせを受けるなど、トラブルに巻き込まれる可能性も0ではありません。
 
その点サブリース契約を結んでおけば、管理会社が間に立って対応してくれるので、大家は安心して家を貸し出すことができます。

サブリース売却

サブリースの落とし穴

サブリース契約は大家にとって多くのメリットがありますが、意外な「落とし穴」も存在します。
 
管理会社と契約を結ぶ前に、しっかりと契約内容を確認することが大切です。
 

賃料の変更を求められ、管理会社とトラブルに発展する

トラブルに発展しやすいのは、サブリース賃料の見直し時。
 
サブリース契約では、定期的に賃料の見直しを求められます。
 
たとえば、毎月1部屋10万円で管理会社に貸す契約をしていたのに、翌年には8万円で貸して欲しい…なんて交渉が入る可能性も0ではありません。
 
家賃の見直しは、契約書に記載された時期に見直されるものですが、「家賃相場が下落しているため」「入居状況が悪化したため」など、さまざまな理由で減額を求められることも。
 
記憶に新しいレオパレス21の集団訴訟問題では、サブリース契約について「当初10年間家賃を不変とする」と契約書に記載されていたにも関わらず、実際には10年未満で減額されるケースが頻発したことが問題となりました。
 
管理会社にとっては一括で全室借りてしまっているので、1部屋でも部屋を埋めたい一心です。
 
そのため家賃を下げ、入居者が入りやすくして欲しいという気持ちがあります。
 
一方で大家は、1部屋1万円でも値下げすれば、トータルで数十万円以上の売り上げ減少となってしまうので、何としてでも賃料を維持したいと考えます。
 
このように、サブリース契約時の賃料見直しはトラブルに発展しやすいので、契約書に細かく見直し方法などについて記載する必要があります。
 

サブリース契約期間中に解約される

15年間一部屋5万円で、30室借り上げる”契約を結んでいたのにも関わらず、7年後に管理会社から大家に解約の申し入れがあったというケースもあります。
 
大家からすると無理な要求に思えますが、契約書に規定さえあれば、サブリースを結んだ管理会社から解約を申し込むことが可能なのです。
 
特に多いのがサブリース賃料の値下げ交渉が決裂してしまい、サブリース契約自体が解消されてしまうパターン。
 
過去に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズは、30年間賃料を保証するサブリース契約を約800棟・1万室を展開していました。
 
しかし、スルガ銀行からの融資がストップされたため、サブリースの賃料の支払いを停止し破産
 
このように途中で解約や倒産をされてしまえば、大家は経営転換を余儀なくされ、資金計画にも狂いが出てしまいます。
 
管理会社とはある程度のところで折り合いをつけるか、最初の段階で家賃の値下げ幅についての話し合いを持ち、書面化することが大切です。
 

サブリース契約後の出費問題

サブリース契約では管理会社が全ての賃貸管理業務を行うため、大家への負担はほぼありません。
 
しかし、物件の資産価値維持のために、管理会社から設備交換や外壁修理を求められ、その費用を大家が出すように求められることがあります。
 
サブリース契約を結ぶ際には、修繕についての項目も明記されていますが、曖昧・難解な表現で記されていることも多いのが現状。
 
不利益を被ることがないように、内容が難しい場合は専門家に相談するようにしましょう。
 
また、修繕費用に関しては誰が負担するのかよく話し合い、明文化する必要があります。
 
一般的に多いのは、簡易的な修繕は管理会社が行い、経年劣化による修繕は大家が行うという契約です。
 

大家の収益向上を図ることが難しい

サブリース契約を結んでしまうと、安定した収入を期待できる代わりに収益の向上が簡単ではないというデメリットがあります。
 
たとえば、所有する物件の近くに工場ができて賃貸需要が高まり家賃相場が上昇したとしても、管理会社と契約した借り上げ時の家賃を上げることが難しいのです。
 
管理会社が5万円で借り上げた部屋を、8万円で又貸ししたとしても3万円は管理会社の収益になってしまいます。
 
また大家がリフォーム代を節約するために、知り合いの工務店を使いたいと考えていても、サブリース契約時に管理会社指定の業者でのリフォームを取り決めていると、大家が選んだリフォーム会社を使うことはできないケースが多いです。
 
つまりサブリース契約を結ぶ代償として、大家の努力で契約したサブリース賃料以上の収益を上げていくことが難しくなってしまいます。
 

サブリース賃料は、家賃相場より5%程度安く設定される

サブリース賃料は、家賃相場より5%程度安く設定されているケースがほとんどです。
 
管理会社は空室になると困ってしまうので、最初から少し安く賃料を設定し、少しばかり空室が出ても損を見ることがないように対策しています。

サブリースの成功例

サブリース契約の問題点をご紹介してきましたが、サブリース契約で失敗する人もいれば、上手く利用することで成功したという人もいます。
 
千葉県に54室、3L D Kの物件を持つ大家は、空室が34室と増え入居率が62.9%にまで落ち込んだことやローンの借入残債に頭を悩ませ、これ以上の空室による収入ダウンを避けたいと、サブリース契約を結びました。
結果毎月安定した収入を確保でき、キャッシュフローを安定させることができたと言います。
 
このようにサブリースは上手く使うことができれば、満室経営も可能になり、盤石な収入源を確保することができるのです。

結局、サブリースは利用すべきか?

サブリースのメリット・デメリットともに見てきましたが、結局のところサブリースシステムは利用すべきなのでしょうか?
 
結論から言うと、利用すべきかどうかは大家それぞれの事情によるところが大きく、一概に良し悪しを判断することは難しいのです。
 
しかしその上で、どんな人に利用を勧めるのか判断基準を示すと、次のようになります。
 

マンション規模が大きいとサブリースが便利

アパートや小規模のマンションであれば、サブリース契約を結ばなくても、大家の自己管理で運営することが可能です。
 
サブリース契約を結ぶことで、むしろ経営がやりにくくなってしまうケースも多いです。
 
一方で中規模以上のマンションを所有している場合、自主管理が難しく管理は管理会社に依頼するのが一番。
 
マンションの規模が大きくなればなるほど、入居者募集の手間と負担も増えます。
 
専門的なノウハウも必要になってくるので、副業で不動産投資を行っていたり、不動産経営に慣れていない方であれば、サブリースを利用される方が負担を抑えることができるでしょう。
 

信頼できる管理会社を見つける

サブリース契約を結ぼうとしている管理会社が、信頼できるかどうかも大事なポイント。
 
財務面が安定しており、倒産の可能性が低いことや大家の希望を汲み取ってくれる管理会社が見つかれば、サブリース契約を前向きに検討する価値があります。
 
しかし、サブリース会社側の意見を一方的に押し付けてくるような会社や口コミでの評判が悪い会社とは契約は避けましょう。

サブリース契約まとめ

問題も多く取り上げられているサブリース契約ですが、上手く使うと経営を安定させ、不動産投資を成功に導いてくれる契約です。
 
決してサブリースが悪いのではなく、契約時の確認不足や管理会社の破産といった管理会社の責任問題もあります。
 
逆に言えば問題点をクリアにし、対策を講じていけばサブリースで失敗することもありません。
 
納得いくまで管理会社と話し合い、信頼できる会社と契約を結ぶことをオススメします。

サブリース売却

このコラムを書いている人

マンション経営ラボ 編集者

マンション経営ラボ 編集者

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