賃貸管理業務の具体的な仕事内容とは?

公開日2019/05/10
更新日2022/12/03

賃貸管理業務の具体的な仕事内容について見ていきましょう。
 
まず賃貸管理の仕事内容は大きく分けて、ソフト面とハード面の管理の2種類があります。
 
ソフト面の管理とは入居者の管理や計画をたてることです。
 
管理会社ではそれをプロパティマネジメント業務(PM業務)とも呼びます。
 
ハード面の管理とは建物管理のことで、ビルメンテナンス業務、ビルマネジメント業務、BM(ビルマネジメント・ビルメンテナンス)業務とも言われます。
 
ではソフト面、ハード面ともに具体的にどのような仕事があるのかみていきましょう。

ソフト面の管理とは

ソフト面の管理とは建物メンテナンス以外の賃貸経営に関する業務を広く指します。
 
管理会社ではソフト面の管理のことを、プロパティマネジメント(Property Management=PM)と呼んでおり、PM業務では不動産のオーナーに変わり専門スタッフであるプロパティマネ-ジャーが、収益不動産の資産価値向上を目指し、サービスの提供を行います。簡単にいうと経営の代行です。
 
またアセットマネジメント(Asset Management=AM)は、投資用資産のポートフォリオ全体を運営管理することで、PMは個別不動産の物理的な運営管理です。
 
AM業務とPM業務では、業務内容が異なります。
 
ソフト面の管理では以下のことを具体的に行います。
 

ー空室が出た際の入居者募集

賃貸経営を行うためには、まず物件に住んでくれる入居者を探す必要があります。
 
当たり前ですが現在住んでいる人が退去したからといって、すぐに次の入居者が現れるわけではありません。
 
空室が出たらすぐに物件の資料を作り、ネットに掲載したり、不動産仲介会社に連絡を取り入居者募集活動を行なってもらう必要があります。
 
希望者からの問い合わせができても、その問い合わせに答え、内見、成約へと結びつけなくてはいけないのです。
 
また部屋を見て気に入ってもらったとしても、入居者が家賃の値引きなどを交渉してくるかもしれません。
 
こうした家賃や条件などの交渉にも答えていく必要があります。
 
成約しても、初期費用の受領から入居時の鍵の引き渡しという雑務が待っています。
 
大手不動産管理会社では、こうした雑務を分け、それぞれの分野の担当者にどんどんと引き継ぐ形で行われていきます。
 
小さな会社であれば、一人の営業マンが部屋の紹介から最後の鍵渡しまで全てを担当します。
 

ー入居者対応

入居者が暮らしていく上で何も問題がなければ一番なのですが、必ずしもそういう訳にはいきません。
 
入居者からクレームが入ってくることもあり、そのクレームには適切な対応が求められます。
 
クレームと言っても隣人間のトラブルから騒音問題、設備の不具合、上層階からの漏水、配管の水漏れ、民泊問題、ゴミの出し方についてまでその内容は多岐に渡ります。
 
非常識な入居者は思ってもみないようなことで、クレームを入れてくることがあります。
 
冷静な入居者であればクレームと言っても話し合いで解決できますが、入居者によっては罵声を浴びせかけてくる人もいます。
 
こうした入居者へプロの視点から問題解決を図ることが求められます。
 
クレーム処理は精神的に落ち込むことも多く、メンタルを強く持つことが大切です。
 
また家賃滞納者への働きかけも入居者対応の大事な仕事です。
 
家賃滞納は単に支払うことを忘れていたという解決が非常に簡単なケースから支払う気がないという解決困難なケースまで様々です。
 
生活に困窮しているわけではなく、支払う余裕はあるのに、悪意を持って滞納する悪質な入居者がいるのも事実です。
 
一方で入居者が精神を病んでしまっていたり、電気・ガス・水道が止められている状態で生活をしていることや、部屋がゴミ屋敷状態になっていることもあります。
 
保証人がいる場合は保証人に連絡を取り、保証人に費用を支払ってもらうこともできます。
 
しかし支払いを拒否する保証人もおり、簡単に問題が解決しないこともあります。
 
こうした入居者や保証人に支払いの催促を行うことは精神的な負担が大きく、こうした現実に精神を病んでしまう営業マンもいます。
 
しかし入居者対応では入居者に関することであれば、どんなことであっても対応をしなくてはいけません。
 

ー退去時の立会い

入居者の退去時の立会いも管理業務の一つです。
 
退去時の部屋の状況に応じて、原状回復費用を賃借人に請求することができるので、貸す前と後で部屋の状態をよく見ておく必要があります。
 
退去費用の請求は賃借人と揉めることも多いので、写真で記録を残すなど適切な対処が求められます。
 

ー賃貸借契約の更新

部屋を借りる際は、2年契約が基本です。
 
そのため2年を過ぎるごとに部屋の契約を更新していく必要があります。
 
その際には賃借人と必要な書類を署名、捺印のためにやり取りしなければいけません。
 

ー管理組合の運営

マンションは一戸建てとは違い、皆で一つの大きな家に住むようなものです。
 
そのため日々の暮らしを円滑にしていく必要があります。
 
そこで生まれたのが管理組合です。この管理組合がうまく働いていないと、様々なトラブルの引き金になります。
 
逆に言えば、管理組合がうまく機能すると、有意義な議案や管理規約改善案が出され、より生活が快適になります。
 
またマンションの適切な管理・修繕も管理組合の議決により実施されます。
 
基本的に管理組合は分譲マンションにあり、賃貸マンションにはありません。
 
しかし賃貸マンションであっても、管理組合を作っていることもあります。
 
また大規模マンションでは、賃貸でマンションを借りている人と分譲で買っている人の両者とも入居しているケースがあります。
 
どちらにせよ入居者の快適な生活をサポートするためにも、管理組合が適切に運営されるよう指導、監督することが大切です。

ハード面の管理

ハード面の管理とは、マンションやオフィスビル、アパートと言った建物とその土地を管理することです。
 
具体的なハード面の管理とは以下の通りです。
 

ー物件の維持管理

建物の維持管理では、管理している物件を定期的に巡回し、建物の価値を維持・管理します。
 
美観を大切にする必要があるので、エントランスなどの共有部分の清掃や敷地内の草むしり、建物や備品に破損がないかのチェック、屋根や外壁の劣化の確認が必要です。
 
こうした業務はビルメンテナンス業務とも呼べれています。
 
建物を正しく管理するには、消防法や建築基準法と言った専門的な法律の知識も必要です。
 
このように賃貸経営を行うには、様々な雑務を日々こなしていく必要があります。
 
不動産管理会社が何をしているのかが分かれば、管理会社の選び方など見方も変わってくるはずです。
 
またハード面の良い影響はソフト面にも良い影響を及ぼし、悪い影響は悪い影響を及ぼすという連鎖があります。
 
例えばリフォームや修繕により、マンションが綺麗になると入居者が増えるという風にハード面でよくなれば、ソフト面も自ずとよくなります。
 
逆にマンションが老朽化し、痛んでくると入居者の入りも悪くなります。
 
家は人が住まなければ痛むのが早くなります。
 
そのため、入居者がいないとハード面でも更にダメになっていくのです。
 
管理業務においては、ソフト面、ハード面両方を高めていくことが何より大切です。
 
賃貸管理業務は、業者に代行を委託することもできますが、大家自ら行うこともできます。
 
マンション1棟を自身で管理することはまず無理ですが、貸戸建てを1つのみ管理する場合や10室以下のアパートの管理であれば、自主管理もさほど難しくはありません。
 
それでも入居者対応という一番頭を悩ませる問題はありますが、10室以下であれば管理に挑戦されるのもありです。
 
ただもう一つ見ていきたいのが、自主管理した場合と管理を委託した時との違いです。
 
管理会社に管理を委託した場合、管理会社は上記の仕事内容の他、オーナーに向けて仕事をする必要ができてきます。
 
管理会社がオーナーにする仕事とはどんな仕事なのでしょうか?

管理会社が賃貸オーナーに向け行う仕事

ーリフォームなどの各種提案

満室経営の実現はオーナーだけではなく、管理会社の希望でもあります。
 
と言うのも、管理会社の手数料は基本的に家賃×●%です。
 
そのため家賃が入らなければ、管理手数料をもらうことができないのです。
 
オーナーにとってもですが、管理会社にとっても空室率を下げ、満室経営に繋げることは至上命題なのです。
 
満室経営にするための手段の一つにリフォームがあります。
 
例えばユニットバスをバス・トイレ別の部屋に変えてしまうこと、砂利の駐車場をコンクリートに代えるなど、物件それぞれの問題点をあぶり出し、どうすればより良くなるのか提案を行います。
 
大家から了承が得られると、専門業者に依頼します。
 
オーナーは専門業者に対し、リフォーム代金を支払う必要がありますが、管理会社に支払う必要はありません。
 
管理会社は紹介料としてリフォーム会社から利益を得ることができるからです。
 
リフォームを行う上では、長期修繕計画を立てることも必要です。
 
長期間に渡って建物の価値を維持していくためには、点検や保守、修繕を行う必要があります。
 
そのため将来的な劣化の具合を見越し、毎月修繕金を積み立てていく必要があります。
 
修繕計画を実行していくことで、長期定期に資産としての価値を維持できます。
 

ーオーナーへアドバイスをおくり、相談役にもなる

入居者から入居の申請書が届いた場合、オーナーに見せて判断を仰ぐ必要があります。
 
サブリースでない限り、管理会社の勝手な判断で入居者を選定することはありません。
 
大抵の場合問題なく、入居は決まりますが、入居希望者の中には入居させても大丈夫なのかという疑問を持つ人がいるのも事実です。
 
そのため客観的事実を踏まえ、オーナーに入居者選定についてのアドバイスを行うことも管理会社の大切なオーナー向け業務です。
 
またオーナーの相談役という仕事もあります。
 
経営に悩んだ際はその悩みを聞き、課題解決に向けた提案やアドバイスを行なっています。
 

ーオーナーへの送金・報告業務

管理会社に管理を依頼すると、オーナーは毎月の家賃振込を確認する以外の仕事はありません。
 
一方で管理会社はオーナーに家賃を送金するという仕事を行う必要があります。
 
管理会社では月初に回収した家賃・礼金・更新料などの収入と、管理手数料、建て替え費用、広告掲載料などの諸経費を引いた額をオーナーに送金します。
 
また送金を行うだけでなく、きちんとした費用の明細、内訳も書類にして送付を行います。
 
こうした送金明細の作成以外にも、建物の状態についてなどのマンスリーレポートを作成し、オーナーに報告します。
 
細かいところでは毎月各契約者の家賃支払い結果を一覧として表にし作成し、その送付も行なっっています。
 
どこまで報告するのかは明確な規定がなく、管理会社それぞれです。
 
しかし報告がマメで、レポートもしっかり作ってくれる管理会社を選ぶのが一番です。
 
このように管理会社では、オーナー向けにも様々な業務を行なっています。
 
紹介した事例はごくわずかで、オーナーの誕生日に贈り物を送る管理会社もあるほどで、どこまで細かくオーナー向けに仕事を行なっているのかは、管理会社によりけりです。

このコラムを書いている人

マンション経営ラボ 編集者

マンション経営ラボ 編集者

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