空き家の補助金を利用した不動産投資のメリット・デメリット
【目次】
空き家補助金を利用した不動産投資
日本では、右肩上がりで空き家が増え続けています。
2018年時点で空き家の比率は13%を超えており、この深刻な空き家問題を解決しようと、国や自治体は空き家を有効活用してくれる人に対して積極的に補助金を出すようになりました。
今回は、この”空き家補助金”をうまく利用する方法とメリット・デメリット、空き家を活用した不動産投資の始め方について解説していきます。
増え続ける日本の空き家
住む人がいなくなってから数か月、または数年以上経過している物件のことを「空き家」と呼びます。
空き家が増えている理由は、更地にしてしまうと固定資産税の減税措置がなくなるためです。
更地にした土地を所有する場合固定資産税が6倍ほど高くなるので、売れるかどうかわからない更地にしておくよりも、固定資産税の減税を狙った方が良いと考える人が多いのでしょう。
実際に、大手シンクタンク野村総合研究所のレポート「2019年度版 2030年の住宅市場と課題」内にて、2018年度の空き家数は846万戸、空き家率は13.6%であることが判明しました。
また、2033年度には空き家率が17.9%に増加する可能性があると言われており、今後も空き家は増加していく可能性が高いといえるでしょう。
空き家は地域の景観を損なったり、治安が悪化したりと自治体にとってデメリットが大きく、地域が衰退する原因にもなりかねません。
そのため、空き家を解体したり、リフォームして賃貸に出したり、購入したりする人に対して補助金を出し、空き家問題を解決させようという動きがあるのです。
補助金の種類
空き家の増加傾向を受け、政府は2015年に空き家等対策の推進に関する特別措置法を施行しました。
これは通称「空き家法」と呼ばれており、問題がある空き家に対して、所有者に管理や指導を促すことが認められている法律です。
空き家法が施行されたことにより、各自治体は積極的に空き家に関する対策を行えるようになりました。
支給される代表的な補助金は、大きく分けて下記の3つに分類されます。
除去
改修
取得
解体除去の補助金
”空き家を完全に解体除去”して更地にすることで、補助金が交付されます。
空き家解体助成金
老朽危険家屋解体撤去補助金
都市景観形成地域老朽空き家解体費支援事業
建て替え建設費補助金
これらは、いずれも空き家の解体に関わる費用を一部助成する補助金で、解体費用の2割〜5割程度が助成されるケースがほとんどです。
ただし、どんな物件でも補助金が出るわけではなく、自治体によって異なる”補助金の要件”を満たしている必要があります。
多くの自治体では、昭和56年以前に建築された木造であることや地域内の物件であることを要件としている場合が多いです。
空き家解体除去の補助金を活用しようと考えている方は、購入しようとしている空き家が要件に当てはまっているかを必ず確認しましょう。
解体に関する補助制度を設けている自治体の一例を挙げてみます。
墨田区(除却費用補助 上限200万円)
https://www.city.sumida.lg.jp/anzen_anshin/kurasinoanzen_ansin/akiya-taisaku/roukyuukaokuzyokyaku.html
改修の補助金
空き家リフォーム補助金
空き家利活用改修補助事業
空き家活用モデル事業
空き家活用促進事業補助金
上記の4つのように、”空き家の改修や活用”に対して交付される補助金もあります。
補助金の要件は、空き家をリノベーションやリフォームをした後に賃貸物件として貸し出すことを挙げている自治体が多いので、不動産投資家が最も使いやすい補助金ともいえるでしょう。
一般的に、建物を除去するよりも地域活性化につながりやすいことから、改修の補助金は補助率が高い傾向にあります。
自治体によっても異なりますが、改修費用の約3割〜6割程度の補助が一般的で、中には100%を補助する自治体も。
一例を挙げてみます。
文京区(改修費用補助 上限200万円)
https://www.city.bunkyo.lg.jp/bosai/machizukuri/akiyataisaku/akiyarikatuyou.html
世田谷区(改修費用補助 上限300万円)
https://www.setagayatm.or.jp/trust/support/akiya/model.html
改修に関する助成金を設けている自治体は多いですが、自治体によって様々な要件があります。
例えば、東京都などで実施されている空き家活用モデル事業では、バリアフリーや子育て世代に配慮した住宅づくりをしなければ補助金はもらえません。
また、長崎県五島市で実施されている空き家活用促進事業補助金では、新婚世帯やU・Iターン者に対して賃貸する予定、賃貸した日から1年を経過していない場合でなければ、補助金はもらえません。
空き家を改修して補助金を受けたいのであれば、必ずしも思い通りのリフォームやリノベーションが出来るわけではないということを理解しましょう。
取得の補助金
空き家取得補助金
空き家取得支援補助金
空き家活用定住促進事業補助金
これらは、”数カ月以上空き家になっている物件の購入費用”に対する補助金です。
補助金によっては空き家の購入費用のみならず、リフォーム費用、引っ越し費用も補助してくれるケースも存在します。
しかし、補助金の金額や範囲が充実している代わりに、空き家取得の補助金は”地域への定住”を要件としている自治体が多いので、売却や賃貸を目的としている不動産投資では利用できないことも。
不動産投資目的で補助金を利用する場合は、”空き家改修の補助金”が最も利用しやすいといえるでしょう。
空き家の不動産投資にはメリットとデメリットが存在する
空き家を利用した不動産投資には、メリットとデメリットが存在します。
購入する前に必ず確認しておきましょう。
空き家不動産投資のメリット
メリットその1 物件が安く購入できる
空き家の売主は、不動産投資家や不動産会社ではない一般人が多いため、相場よりも安い価格で売却価格を設定していたり、価格交渉が成立しやすかったりと、物件を安く購入しやすい環境にあります。
メリットその2 補助金を受給できる
前章で説明したとおり、空き家対策としてさまざまな補助金が存在します。
一般的な不動産投資の場合、投資用物を購入する際に補助金を受給できるケースはほとんどありません。
ただでさえ安くなりやすい空き家を購入して補助金が受けられれば、資金面で有利になりやすいといえるでしょう。
メリットその3 金融機関で有利な条件で融資を受けられる
通常耐用年数を大幅に経過している物件は資産価値が低いため、融資審査に通過するのは簡単ではありません。
しかし空き家の場合は、さまざまな融資制度が用意されています。
代表的な融資制度は、改修工事などの設備投資資金を特別融資する、日本政策金融公庫の空き家対策融資制度です。
通常よりも金利が安くなりやすい、融資審査に通過しやすいというメリットがあります。
また、北海道銀行では、空き家解体に対する費用を優遇された金利で融資する制度も存在します。
このように、金融機関によっては空き家に対するさまざまな融資制度を設けています。
空き家を活用した不動産投資は、「物件価格」「補助金」「融資」の観点から見て、大きなメリットがあるといえるでしょう。
空き家の不動産投資のデメリット
想定以上に費用がかかるケースが多い
空き家投資には、2つのデメリットがあります。
1つ目のデメリットは、想定以上に費用がかかるケースが多いこと。
空き家はメンテナンスされないで放置されている物件が多いので、リフォーム費用が想定以上にかさんでしまうことも珍しくありません。
購入する前に、どのくらいのリフォーム費用がかかるのか専門家に見積もりを依頼した上で、利益を計算しておくべきでしょう。
入居者がつかない可能性がある
また、入居者がつかない可能性があることが2つ目のデメリットです。
空き家になっている物件は地方の物件が多く、賃貸需要がそこまで多くはありません。
そのため、せっかくリフォームをしたのに入居者が集まらず、空室率に悩まされることも。
空き家を購入する前に、賃貸需要が見込める地域を検証しておくべきでしょう。
空き家で不動産投資を始める方法
空き家で不動産投資を始める際には、下記の手順で進めることをおすすめします。
1. 空き家を見つける
2. 補助金が出るかを確認する
3. 空き家になった原因を確認
4. 希望物件の周辺環境を確認
空き家バンクで空き家を見つける
まずは、購入したい空き家を見つけましょう。方法は、主に2つあります。
1つ目は、空き家バンクから物件を探すこと。
空き家バンクとは、地方自治体が運営する空き家専門のポータルサイトのこと。
ワンルームマンションから一戸建てや一棟物件まで、空き家に特化しているため、検索しやすいのが特徴です。
また、自治体によっては補助金の要件に「空き家バンクに登録された物件であること」という要件がある場合もあります。
空き家バンクは地方自治体が運営しているため、購入希望者が物件所有者と直接やりとりすることになります。
そのため、一般的な投資用物件の購入時に比べて手間がかかったり、トラブルに発展するケースも少なくありません。
空き家バンクで空き家を見つけて購入する際は、不動産投資に関する知識をある程度身につけておきたいものです。
不動産会社から紹介してもらう
不動産会社は、空き家バンクや他のポータルサイトで検索できない物件情報を持っている可能性があります。
「自分で調べたけど欲しい物件がなかった」という方は、地元の不動産会社2~3件程度周り、空き家物件を探していると相談してみるのもオススメです。
補助金が出るかを確認する
投資をしたい地域の自治体で、補助金をだしているかどうか確認しましょう。
様々な補助金を有効活用すれば大幅なコストダウンにつながります。
補助金の有無は各自治体のホームページに掲載されているので、補助金の要件などを確認し、利用できるかどうかを確認しておきましょう。
空き家になった原因を確認
「なぜ空き家になったのか」という原因は、購入前に必ず把握しておきたい情報の1つです。
不動産投資が成功しやすいのは、空き家になった理由が相続のケースです。
亡くなった家族の家を空き家にしたまま放置している場合は、周辺環境に問題はないものの、不動産に関する知識が浅いため、適切な処理ができないというケースがほとんど。
リフォームや入居付け、広告などの対策を練ることで、しっかりと収益物件になる可能性は高いです。
一方で注意したいのは「入居需要がなかった」「廃墟になっており手が付けられなかった」「自殺者が出た」ケースです。
この場合は入居してもらうように対策するのが難しく、リフォームしても費用を回収できないということは少なくありません。
入居率が下がり、資産どころか負債にもなりかねないので、物件を購入する前には空き家になった原因を把握しておきましょう。
空き家の周辺環境を確認
空き家を購入する際には、周辺環境の確認も必要です。
空き家の周辺は過疎地域であったり、人気のなさから治安が悪くなりがち。
周辺環境が悪かった場合、賃貸需要にも悪影響を及ぼします。
同じ区内・市内でも付近の相場より想定外に家賃収入が低くなってしまう、、というリスクも。
「治安は悪くないか」「入居者が見込める環境か」「ライフラインは整理されているか」などという周辺環境を確認しておきましょう。
空き家の補助金と不動産投資に関する知識まとめ
今回は、空き家補助金の概要や空き家を対象とした不動産投資のメリット・デメリットをまとめました。
押さえておきたいポイントは下記の4つです。
空き家を有効活用することで補助金を受給できる
補助金は除去・改修・取得の3種類
安く購入できるが、リフォームに想定以上にお金がかかることも
空き家は空き家バンクか不動産会社で探せる
空き家の不動産投資は、リフォーム費用が高額になってしまうこともありますが、上手くいけば物件を安く購入できる上に、高い利回りになるケースも少なくありません。
自治体の補助金をうまく利用しながら、空き家を活用した資産運用を検討してみてはいかがでしょうか。
このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
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