連帯保証人と保証人の違い

公開日2023/02/21
更新日2023/01/26

契約書にサインをする人の手元
今回は連帯保証人からの相談事例をもとに、賃貸の連帯保証人についてお話してみたいと思います。
 
まず、連帯保証人が背負う義務について簡単におさらいしましょう。
 
連帯保証人は、賃借人(債務者)が家賃などを支払えなくなった時に、代わりに返済する義務を負います。
 
代わりに返済するという点では保証人も同じではあるのですが、実際は大きく違います。
 
保証人の場合は、賃借人に対して請求・催告しても履行がされない(支払わない)時に支払い義務が発生します。
 
保証人はオーナー(債権者)に対して、先ず賃借人(債務者)に支払わせるように促すことができるので、状況によっては支払いを拒むことができるわけです。
 
続いて連帯保証人の場合ですが、連帯保証人は賃借人(債務者)と同じ責任が課せられているため、拒否権がありません。
 
仮に賃借人に請求をする前、または同時だったとしてもオーナー(債権者)は連帯保証人に請求することができます。
 
連帯保証人は“返済を拒むことはできない”という点から、保証人よりも重い責任を負っていることになります。
 
では、賃借人が家賃を支払わず、連帯保証人が返済し続けることが日常化していた場合に、連帯保証人は賃借人の代わりに賃貸借契約を解約することはできるのでしょうか。

連帯保証人の解除権の有無

                           
以前に連帯保証人のお母さまから、こんなお電話をいただきました。
 
「息子が家賃を支払わないので、毎月わたしが立替えています。これ以上の負担は厳しいので、賃貸借契約を解約できないでしょうか?」と。
 
この場合の関係性としては、賃貸借契約の賃借人は子(息子)であり、連帯保証人の代わりに保証会社に加入していました。
 
しかし、賃借人単体ではご年齢と収入面で保証会社の承認が難しく、親(母)が保証委託契約(保証会社との契約)の連帯保証人になることを条件に契約が締結されていた状況です。
 
結論としては、連帯保証人には債務の支払い義務を賃借人(債務者)と連帯して負うだけで、賃貸借契約の当事者(賃貸・賃借人)ではないため、解除権はなく連帯保証人から賃貸借契約を解約することはできません。

連帯保証人に解除権を付与する条文が明記されていたら?

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事前に、賃貸人・賃借人・連帯保証人の三者間で、賃借人が賃料を滞納した場合に賃貸借契約の解除権を連帯保証人に付与する契約を締結していたとしても、連帯保証人による賃貸借契約の解除権が消費者契約法10条に違反する可能性があります。
 
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
 
つまり賃借人が家賃を支払っていなくても、賃借人の同意を得ずに連帯保証人が解約を行った場合には、賃借人の利益(賃借権)を一方的に害しているという解釈がされる可能性もあるのです。
 
平成25年10月17日の大阪高裁の判決では、
 
「賃借人が行方不明等の理由により家賃等を滞納した場合に、家賃保証会社に対して契約解除権、明渡しの代理権及び残置動産の処分権を付与することについては無効とし、家賃保証会社以外の通常、賃借人との間で一定の信頼関係があると考えられる個人の連帯保証人に対して、上記権限を付与したものであって、その目的は、個人の連帯保証人の賃料支払債務が過大になるのを防止するためであり、当該条項を賃借人が明確に認識した上で契約を締結したものであれば、当該条項が信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであるということはできず、消費者契約法10条に該当するものとは解されない。」
 
という判決例があります。(※1)
 
※1 弁護士法人飛翔法律事務所「保証人による賃貸借契約の解除について」より引用

保証人による賃貸借契約の解除について


 
しかし以下のように一定の条件を満たした場合には、連帯保証人からの解約が認められることもあるようです。
 
①賃借人が行方不明等の理由により家賃等を滞納している。
連絡が取れていたり居住していたりといった場合、解約は認められない。
 
②賃借人との間で一定の信頼関係があると考えられる個人の連帯保証人である。
基本的には三親等以内の親族。
 
③連帯保証人の賃料支払債務が過大になるのを防止する必要があると認められる場合。
連帯保証人の経済状況による。

まとめ

                       
今回のように、親子間であれば親が連帯保証人になることは珍しいことではありません。
 
ただ自分の子だから大丈夫と安易に考えずに、連帯保証人になる前にしっかりと責任についてお話されることが大事ですね。
 
ちなみに、その後お母さまがどうなったかというと、弊社で何度も物件を訪問し賃借人の息子さまに会い、賃貸借契約は本人から解約通知書を受理し、債務は息子さま本人が分割払いでお支払いしていくことで事なきを得えました。
 
アーバンフォースでは、賃貸物件をご所有のオーナー様のご相談だけでなく、賃借人様のご相談にも応じ健全な賃貸運営をサポートしています。
 
賃貸管理のことでお悩み事があれば、お気軽にご相談ください。

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このコラムを書いている人

徳永 裕幸

徳永 裕幸

1982年 神奈川県出身 2014年アーバンフォース入社 保有資格:宅地建物取引士/不動産賃貸経営管理士/管理業務主任者

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