数字に強ければマンション投資には成功する(はず)

公開日2021/12/24
更新日2023/02/07

書類

前回のコラム内で、“数学で落ちこぼれたわりにはなぜか数字に強いといわれてきた”と自分の過去を振り返ったあと、「そもそも数字に強いってどういうことなのだろう?」と考え込んでしまい、止まらなくなりました。
 
あまりにも気になったので、検索エンジンに「数字に強い」と打ち込んでみると、概論的な内容は2ページ半くらいまでで、それ以降は数字に強くなるためのノウハウ指南が続くばかり。
 
逆に「数字に弱い」で検索すると、概論はほぼ半ページ、残り半ページは数字に弱い人の主観的記事で、2ページ以降はまたもノウハウ指南が続いていました。
 
このバランスの悪さは、両者を同一の能力の強さ弱さとして、客観的に記述しているものが極端に少ないことを意味するのでしょう。
 
“数字に対する強さ弱さ”という背反概念で語れるのであれば、強さ弱さが力の表現である以上、「数字力」という言葉が存在するのでは?と思った私は、「数字力」というキーワードで検索してみることにしました。
 
しかし、検索結果はコンサルティングファーム発信の記事が2つヒットするのみで、ざっと目を通した限り、学問的知見を背景にしたものではないようです。
 
ネットが頼りにならないとなれば、あとは書物と口コミに頼るしかありません。
 
まずは書店に赴き、およそ半日かけて、ビジネススキル、自己啓発、リーダーシップ、マネジメントの各コーナーや、お手軽ノウハウ系新書コーナー、はては自然科学領域に至るまで、くまなく見て回りましたが、傾向として、計算力に関する分野と、ビジネスシーンにおける効用との2つに大きく分けられることが判明した以外にさしたる収穫は得られませんでした。
 
“数字に強い”とは、日常的に使っている用語なのにもかかわらず、おおむね主観による評価にすぎないことが分かりますね。
 
どうせ主観でしか語れないスキルなのであれば、赤の他人が書いているネットの記事よりは、ビジネスシーンの最先端で活躍する身近な方の主観を知りたいと思い、この1ヶ月あまり、会う人すべてに「数字に強いってどういうイメージ?」と同じ質問を投げかけました。
 
ここからは、いただいた回答をもとに「数字に強い」という言葉の意味を分析してみたいと思います。

数字に強いという「能力」

まず結論から申し上げますが、「数字に強い」とは、将来に向かって利益を生み出すことができる能力の総称だということです。
 
単純な計算力、数字と文字の互換力、データの抽出力、要約力、分析力など、細かく言えばキリがないですが、いくら個別のスキルにたけていようと、利益を生み出すシーンで活用されない限りは、数字に強いという評価には繋がらないのではないでしょうか。
 
この“利益を生み出すシーン”とはビジネスに限った話ではなく、個人の生活ならば家計管理があり、ライフプランニングがあり、そして投資があるわけですね。
 
数字に強いことが、将来に向かって利益を生み出せる能力の別名であるならば、マンション投資にも活かせる能力だと言えるでしょう。
 
もうすべて手放してしまいましたが、マンション投資を18年間運用して、計算上は1500万弱のキャッシュを残すことができた私の事例は、その仮説を証明するものです。
 
とはいえ、これはあくまで計算上の話です。
 
実際は儲けたお金があらかたどこかへ消えてしまっているので、お金を生み出すということと、お金を残すというのはどうやらまったく違う能力なのかもしれません。
 
数字に強いからといって、必ずしもお金持ちになれるというわけではなさそうです。

最後に

自分を例にとって、なぜか数字に強いといわれてきた理由を推測してみたいと思います。
 
数字に強いといわれてきた最大の理由は、好奇心と想像力、もっと極端に表現すると、他人に興味を持つ程度が並外れて高いことではないかという結論に至りました。
 
さきほど述べた、数字と文字の互換性ではありませんが、私は、数字を単なる数字としてみてこなかったことに気づいたのです。
 
たとえば、私はひとつの売上をさまざまな商材単価の集積として見ています。
 
その後、売上を商材に分解し、各商材をどのような人がどのような動機でどのようなサイクルでお求めになるかを、ほとんどオートマチックにシミュレートしているため、その時点で、勝手に未来の予測までできてしまうことになります。
 
そして、費用に対しても同じスタンスで向き合い、さまざまな支出の総合体として捉えているので、“誰が何をどのくらい消費するか”を詳細にシミュレートしながら数字をみたり作ったりします。
 
これらは、他人に興味がない人にはできない芸当であり、おそらく私はこの部分が並外れて突出しているがために、数字に強いという評価に繋がっているのかもしれません。
 
お察しのとおり、ミクロからマクロに至るというこの手法は、経営規模のさして大きくない中小企業では通用しますが、取り扱う数字がケタ外れに大きい大企業でも活用できるとは胸を張って言えないため、一般論として申し上げるのは差し控えておきたいと思います。
 
ただし、上記で説明したような数字との向き合い方は、個人レベルで投資のできるマンション経営に役に立つと自負しています。
 
マンション経営に挑戦したいと思っている方は、まずは数字だけを追い求めるのではなく、他人に興味を持つところからスタートしてみてはいかがでしょう。

このコラムを書いている人

中村 彰男

中村 彰男

1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、37年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー

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