ワンルームマンションマーケットトレンドと今後の見通し
2023年5月8日の新型コロナの5類への移行から1年7ヵ月たちました。
脱都会論が大はやりだった今から4年前、私はこのコラム▶新型コロナと不動産問題の記事がちっとも面白くない理由で東京一極集中への回帰を予言し、5類移行後のトレンドはこれを裏づけるかのように賃料値上げは当たり前という風潮に支配されており、空室になったのを機に以前より強気の賃料設定をしても片っぱしから成約していくのにとどまらず、更新の際には賃料を上げるのがあいさつがわりになっているありさまです。
投資用ワンルームマンションの価格は物件の収益に大きく依存していて、賃料が5,000円上がればエリアによっては200万円くらい高くなったりするので、5類移行後のトレンドは賃料の上昇から価格の上昇へという傾向にあったことは間違いないでしょう。
とはいえ賃料は際限なく上がり続けるというものではなく、5類移行からまる2年を迎える2025年5月には2年に一度の更新が一巡するので賃料上昇から価格の上昇というトレンドはひと息つくかっこうになるのではないでしょうか。
かたや今後の見通しという点で欠かせない要素はドナルド・トランプ氏の大統領再選です。
日本銀行がマーケットをどのように分析しているかが分かる資料に四半期に一度発表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」がありますが、直近の発表はトランプ氏の再選直前の11月1日だったので、トランプ政策については何も触れられていません。
しかしながら対日政策という点においてはトランプ氏は円安ドル高がアメリカの製造業を苦しめていると繰り返し発言しており、アメリカの事情でドルが独歩高になったあおりを食っているのはこちらなのに、円安が悪いのだから金利を上げて日米の金利差を是正せよ言い出す可能性は十分にあるでしょう。
言われる前に先手を打って、間近に迫った金融政策決定会合で日本銀行が利上げに踏み切るのではないかとの観測も根強くささやかれ続けていますね。
投資用の変動型ローンは居住用と違って返済額5年猶予の恩恵はありませんから、金利が0.25%に上がっただけで私の実家のアパートローンの返済は来年1月から1,000円ちょっと上がるそうです。
巷間で憶測されているように2025年中の到達金利が1%ですむならまだ影響は軽微にとどまるでしょうが、分かりやすい構図で自国民をあおるトランプ氏の要求がこれをはるかに上回るレベルで展開されるとすれば、拡大基調を続けてきた我が国の不動産投資マーケットに与える影響は少なからざるものがあるでしょう。
トランプ氏の動静から目が離せない日々が続きそうです。
このコラムを書いている人
中村 彰男
1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、38年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー
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