「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」施行後の現状は?
賃貸住宅管理業者の法令順守の現状について
令和3年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行され、2年が経過しました。
令和5年1月・2月の2か月の間に全国の地方整備局が97社を対象に立ち入り検査をおこない、
法令順守の現状を調査しました。その結果と今後の注意点、そしてオーナー様目線で注意すべき点を
解説していきます。
半数以上の管理会社で是正がおこなわれた
先述の通り、全国で97社の立ち入り検査がおこなわれましたが、何かしらの是正指導が入った管理会社は59社にのぼりました。実に60%の会社が該当したことになります。
では、どのような内容について是正勧告がおこなわれたか件数が多い順に見てみましょう。
第一位
管理受託契約締結時の書面交付義務違反(第14条関係) 28件
⇒これは契約書の法定記載事項の記載不備などが当てはまります。
第二位
書類の備え置き及び閲覧義務違反(第32条) 18件
⇒業務状況調書未作成、業務状況調書を電子のみ(書面化できない状態)で保存など。
第三位
管理受託契約重要事項説明義務違反(第13条関係) 17件
⇒これは重要事項説明書の法定記載事項の記載不備などが当てはまります。
このほかにも「従業者証明書の携帯義務違反」や「帳簿備え付け義務違反」が続いていました。
意外にも、基本的な内容や一番初めに気をつけるべきであろう内容が上位にあがりました。
第一位と第三位は業務上の流れとしてセットで考えやすいので、法定記載事項の不備内容も重複しているケースが多いのではないでしょうか。
また第二位の業務状況調書は「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」を土台に新たに制度化された「賃貸住宅管理業者登録制度」、それ以前に存在した任意登録制度時代に設定されていた業務状況等報告書のような提出義務はなく、備え置きに留まるのでむしろ実務では手間が減ったといえる内容です。
決算期末期3か月以内という猶予もあるので、改善しやすいのではないでしょうか。
オーナーが気を付けるべき内容
前項目の第一位と第三位はオーナー様にとっても身近で重要な内容だと思われます。
はじめて収益不動産を所有したオーナー様にとって、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」はあまり馴染みのない内容かもしれません。
一気に学ぼうとするのは難しいため、まずは国土交通省が公開している重要事項説明書と管理受託契約書、特定賃貸借契約書の標準的な雛形を確認し、どのような内容が書かれているのか予習しておくことをおすすめします。
賃貸住宅管理業が成熟した産業になるよう、みなさんで協力していきましょう。
このコラムを書いている人
相馬將志
千葉県出身 お風呂での鼻歌がいつの間にか熱唱にギアチェンします。 保有資格:宅地建物取引士/管理業務主任者/賃貸不動産経営管理士/マンション管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/簿記2級
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