売主だけが知っている!物件事情のヒアリングポイント
【目次】
不動産投資をする前に知っておきたい物件事情について
物件調査のなかで重要な項目のひとつである、「売主へのヒアリング」。
物件の評価の決め手は、売主しか知らない情報に隠されている場合があるので、売主と協力しあいながら調査を進めることが大切です。
しかし、「具体的にどのような点を売主に質問すればいいかわからない」「売主が自分にとって不利な事項を口にしてくれない」と悩んでいる投資者は多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、売主だけが知っている物件事情のヒアリングポイントや、売主の心を開かせて物件評価を公正に見定める方法について、ご紹介します。
不動産現地調査で売主へのヒアリングが重要な理由
では、そもそもどうして不動産現地調査で売主へのヒアリングが重要なのでしょうか?
この章では、代表的な理由を2つご紹介します。
理由①:物件に瑕疵がないか確認するため
1つ目の理由は「物件に瑕疵がないかを事前に確認するため」です。
不動産を売却する際には、不動産の売主に瑕疵担保責任が生じます。
そのため、購入者が不安に思うことや、不快に思うような物件の瑕疵についてその理由を隠したまま売却すると、売主の責任問題となって慰謝料の支払いや契約解除に発展する可能性があります。
瑕疵担保責任とは、不動産の売買契約をする場合に、購入した時点では明らかになっていなかった欠陥があった場合、売主が買主に対して負う契約解除や賠償などの責任のこと。
したがって、売主に対してヒアリングをおこない、「物件本体がもっている性能が発揮できないような欠陥はないか」「必ず告知しなければならない売却理由がないか」の確認をする必要があるのです。
理由②:本当に物件の売主であるか確認するため
2つ目の理由は「本当に物件の売主か本人確認をするため」です。
ヒアリングは、原則として自宅に訪問しておこないますが、その際に現在の居住場所と登記事項証明書に記載された住所・氏名が一致しているかの本人確認をします。
住所や氏名が異なる場合には、その理由を確認し、住所の変更登記がまだされていない可能性はないかをチェックします。
住民票には前住所が記載されているので、前住所が登記上の住所であれば、所有権移転登記においても住民票の添付をもって、住所変更登記とすることも可能です。
しかし、住民票の移動履歴で登記上の住所が確認できない場合は、戸籍附票を取得して確認しなければなりません。
そのほか、売主が制限行為能力者でないことの確認もする必要があります。
制限行為能力者とは「未成年者」「成年被後見人」「被保佐人」「被補助人」です。
「未成年者」とは満20歳に達しない人のこと(令和2年時点)。
「成年被後見人」とは精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く状態にある人。
「被保佐人」とは精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分である人。
そして「被補助人」とは精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分である人を指します。
ちなみにここでいう「事理を弁識する能力」とは、物事の実態や考えられる結果について理解でき、自分の意思を表現できる能力のことです。
未成年者に関しては、本人確認書類の生年月日で確認できますが、そのほかの制限行為能力者については、法務局から「登記されていないことの証明書」を交付してもらいます。
その際の交付申請は本人または配偶者、もしくは4親等内の親族かこれらの人から委任された代理人に限定されます。
理由③:後々のトラブルを回避するため
3つ目の理由は「物件の購入後や貸し出し後のトラブルのリスクを回避するため」です。
売主にとってみれば、「売却で不利になるようなことは言いたくないし、買主には伝えないで欲しい」という要望は多いもの。
しかし、教えるべき情報を伝えないことは、買主を騙していることになりかねません。
買主に伝えるべきリスクを伝えきれていないと、先述したとおり瑕疵担保責任を追及されるかもしれませんし、面倒な心理的負担はできるだけ避けたいのが人の常でしょう。
「このくらいは、まぁいいかな」という曖昧さは、ときに大きな問題へと発展する可能性があります。
日本人の場合はとくに、「人に嫌われたくない」という気持ちが強いため、他者への優しさゆえにハッキリと物事を追及できないこともあるかもしれません。
しかし、そこは心を鬼にして、安全・安心な取引を目指すためにも、あらかじめ物件のリスクや特徴を洗い出すようにしましょう。
売主に確認しておきたい5つのヒアリングポイント
役所や法務局では、物件のすべての情報を知ることできない可能性があります。
このような売主しか知り得ない実情は、売主から直接聞き出すことが必要です。
そこで、この章では「物件調査の際に売主に確認すべきヒアリングポイント」を5つ、ご紹介します。
ヒアリングポイント①:財務状況と今後の計画
1つ目のヒアリング ポイントは、「財務状況と今後の計画」です。
物件をどうして手放すのかという売却理由は、不動産投資において最重要項目です。
とくに、新築物件や築浅物件の売却の場合、物件だけでなく周辺環境におけるなんらかの問題やトラブルに着目しなければなりません。
物件の周辺環境に関する問題は、投資において致命的な損失になる可能性があるため、必ずおさえておきたいポイントです。
また、支払いが終わっていない借金や債権放棄した後に残る、債権などの残債務の財務状況と、今後の計画についてもあわせて、売主と実情のすり合わせをすることが大切です。
ヒアリングポイント②:過去の修繕・改修履歴
2つ目のヒアリング ポイントは「過去の修繕・改修履歴」です。
建物や設備にどのような不具合があったのか、過去の修繕やリフォームの履歴を確認しておきましょう。
過去にどのような修繕や回収があったかがわかると、物件や風土がみえてきます。
たとえば、過去に災害があって屋根の補修をした経歴のある物件だと判明したら、周辺地域の災害リスクや地質について、着眼点をもつことが可能です。
物件や周辺の特性が把握できると、そのリスクに対してどう対応すればよいか、物件を選別しなおすという選択肢も含めて、投資家が検討する機会ができます。
ヒアリングポイント③:境界・越境物に関する取り決めの有無
3つ目のヒアリングポイントは、「境界・越境物に関する取り決めの有無」です。
隣接地との境界が曖昧な場合、どのような取り決めがなされているのかの確認をしておきましょう。
また、越境物に関する取り決めなども、後から生じるかもしれない隣人トラブルを避けるためには必須です。
現状ではとくに問題になっていない状態であっても、別の所有者に代わった途端に、隣地からライフランの撤去を要求されることも起こり得ます。
ヒアリングポイント④:地中埋設物・土壌汚染の有無
4つ目のヒアリングポイントは、「地中埋設物・土壌汚染の有無」です。
過去の建物は何だったのか、建物の基礎や浄化槽などの地中埋設物はどのように処理されたのか、しっかりと確認をしておきましょう。
あわせて、土壌汚染の有無や地盤が軟弱ではないかなどもヒアリングしておくと安心です。
ヒアリングポイント⑤:嫌悪施設や過去の災害・事故の有無
5つ目のヒアリングポイントは、「嫌悪施設や過去の災害・事故の有無」です。
嫌悪施設とは、その施設の存在がらネガティブな印象をもたれたり、嫌われたりする施設を指します。
たとえば、代表的な嫌悪施設として、風俗店・原子力関連施設・公害発生施設などが挙げられます。
嫌悪施設の対象は、主観的な判断や時代性に鑑みて判断されるので、一様ではありません。
また、自殺や殺人事件があったなどの事故の有無も、物件のイメージを損ねる可能性があります。
嫌悪施設や事故に関する事項は、物件の資産価値に大きな影響を与えることなので、十分に注意をして聞き取りを進めるようにしましょう。
売主がなかなか口を割らない場合はどうする?
ここまでは、売主に直接質問すべきヒアリングポイントについて、具体的に紹介してきました。
しかし、売却で不利になるような物件情報を口にしたがらない売主がいるのも事実です。
そこでこの章では、売主が物件の情報を聞き出す際、口を濁した場合の対処方法について解説します。
近隣住民にヒアリングする
売買を予定している近隣住民への聞き込みから、売主が口にしなかった物件や周辺環境に関する情報を得られる場合があります。
また、「そもそも売主には取引に関わる権限があるのか」という本人確認を、この段階で客観的に確証づけることも可能です。
不動産会社に相談する
物件情報は、不動産会社に相談することで得られる場合があります。
とくに地域に根ざした不動産会社の場合は、もともと取り扱う物件数が少なく、売主との古い繋がりがあるケースもあり得るので、仲介してもらうことでスムーズに取引ができるかもしれません。
投資家自身で聞き出しにくい情報や、周辺住民から確証高い情報が得られなかった場合は、不動産会社に直接出向いて相談するのも有益な手段です。
売主へのヒアリングをする際の注意点
この章では、売主のヒアリングをする際の注意点について、みていきます。
注意点①:笑顔で接する
無表情で突然話しかけられても、「この人なんだか怖いな」「愛想が悪くてイヤな感じだな」と、相手からネガティブな印象を抱かれます。
このようなコミュニケーションスタンスだと、不利な情報に口をつぐむ売主の心を開かせることはできません。
心をなかなか開かない人との距離を縮めるには、まずは笑顔で接することが大前提。
ニコッと微笑みかけられると、自分を受け入れてもらえるポジティブな印象になります。
ただし、笑わなきゃと意識しすぎて、作り笑いになるのはNG。
相手にぎこちなさが伝わってしまうと、かえって不信感が生まれるので、自然な笑顔を心がけて、親しみやすい友好的な雰囲気を演出しましょう。
注意点②:相手をコントロールしようとしない
「不利な情報でも売主と話し合える関係性を築くために、人の心を操れるようなコミュニケーションスキルを習得したい」という投資家もいるのではないでしょうか。
しかし、どのような理由であれ、相手を自分の思った通りに動かそうとすることは、相手を自分の思うままにコントロールすることになります。
真摯にコミュニケーションをとりたいのならば、コントロールするという態度をあらためることが大切。
というのも、コントロールしようする人は、実は売主を対等な関係としてみておらず、どこか「買主の方が偉い」「物件を選んでいる」という意識が持っている傾向にあるからです。
誠実さをもって売主から話を聞き出すというのも、なかなか不利な情報を伝えてくれない売主の心を開く方法として挙げられるでしょう。
売主と仲良くなりたいからといって、一方的に投資家の気持ちを押し付けてしまうのは逆効果。
余計に口を閉ざす原因になってしまいかねません。
相手の気持ちを汲み取りながら、どうすれば自分のことを受け入れてくれるのか考えたうえで、対等な関係性を築くための言動をとりましょう。
注意点③:否定的な言葉を使わない
物件になんらかの瑕疵があるのではという疑念や、事前情報がある場合、ついつい物件について否定的な表現をしてしまいがちです。
問題に対して、白黒はっきりさせる姿勢は大切ですが、「この物件には問題がある」「瑕疵を隠している」など、無意識に発してしまいがちな否定的な言葉は、売主にとって心地よいものではありません。
場合によっては、「自分の物件を否定された」とショックを受けてしまったり、「この買主に売りたくない」という気持ちを芽生えさせてしまったりするかもしれません。
売主へのヒアリングの際には、ネガティブな事象に対しても、否定的な言葉を使わないように、表現には十分に配慮しましょう。
不動産投資用物件を購入する際に重要な売主へのヒアリングまとめ
今回は、物件の評価の決め手となる物件情報について、売主にどのようなヒアリングをおこなえばよいかについて解説しました。
要点は次のとおりです。
・売主へのヒアリングには5つのポイントがあり、ポイントを網羅した情報収集が重要
・売主が言いづらい物件情報こそ、耳に入れる価値がある
・聞き手の言動に配慮することは、売主との円滑なコミュニケーションを取るうえでの基盤となる
物件情報の把握は、売主との信頼関係が深まるだけでなく、不動産の今後の未来を提案するうえでも有用です。
売主とのコミュニケーションを深め、お互いに協力しあいながら物件調査を進めていく姿勢が大切になります。
是非本記事を参考にして、売主へのヒアリングを積極的に行ってみてはいかがでしょうか。
このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
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