不動産投資の初期費用は?コストを抑える方法も解説

公開日2022/12/02
更新日2024/09/10

不動産投資
不動産投資をスタートする際、初期費用を貯めることが最初のハードルになるでしょう。
 
実際に、不動産投資の初期費用は、別の投資商品に比較して高く、スタートする際に数十万円~数百万円以上が必要なケースもあります。ですが、それ以上に安定した利益を獲得できるのが不動産投資のメリットです。
 
誰もが「少しでも初期費用を安くして、早く不動産投資をスタートしたい」と思っているはず。
 
本記事では、不動産投資をするうえで知っておきたい初期費用について解説していきます。

不動産投資の初期費用の目安は?

悩むスーツの男性
不動産投資をするうえで、まず考えなければいけないのが「頭金」と「初期費用」がどれだけかかるかということ。
 
頭金というのは、不動産価格の一部として充当されるもので、不動産価格から頭金を差し引いた金額がローンを利用する金額となります。
 
一方、初期費用というのは、物件を購入する際に必要な税金や手続きにかかる経費のことです。
 
投資用不動産を購入する際にかかる初期費用の目安は、「物件の購入価格の6~8%」です。
 
たとえば、物件の購入価格が2,000万円の場合、初期費用の目安は120万円~160万円程度になります。一般的に、不動産投資に要する初期費用の内訳は以下のとおりです。
 

不動産仲介手数料

不動産仲介手数料は、仲介取引で不動産を買ったときに不動産業者に支払う手数料のこと。
 
以下のように、不動産の購入価格によって仲介手数料の上限が変わってきます。
 

購入価格(税抜) 仲介手数料の上限
200万円以下 購入価格の5%
200万円超400万円以下 購入価格の4% + 2万円
400万円超 購入価格の3% + 6万円

 
たとえば、購入した不動産の価格が1,000万円の場合、仲介手数料は以下のように算出します。
 
1,000万円 × 3% + 6万円 = 36万円(税込 39万6,000円)
 
購入した不動産の価格が400万円の場合は、以下のようになります。
 
400万円 × 4% + 6万円 = 22万円(税込 24万2,000円)
 

不動産投資ローン事務手数料

不動産投資ローン事務手数料は、ローンを使って投資用不動産を購入する際に金融機関に支払う事務手数料のことです。
 
多くの金融機関では、ローン事務手数料を「融資額の1~3%程度」に設定しています。
 

不動産投資ローン保証料

不動産投資ローン保証料とは、ローンの保証会社に支払う保証料のことです。
 
金融機関から融資を受けて不動産を購入する場合、別途、ローン保証会社と契約を結ぶのが一般的であり、その際はローン保証会社に保証料を支払うことになります。
 
ローン保証料は、債務者の信用や返済期間などによって異なりますが、契約時に一括で支払う場合は「融資額の2%程度」で、金利に上乗せして支払う場合は「年0.2%~0.3%程度」が相場です。
 
ローン保証料を金利に上乗せして支払う場合、支払いが分散されるので初期費用を抑えることはできますが、トータルの支払総額は多くなります。
 
契約時に一括で支払ったほうがトータルの支払総額は抑えられます。
 

火災保険料・地震保険料

不動産投資で融資を受ける場合、火災保険への加入が必須条件になります。
 
火災保険料は、火災保険に加入する際に必要になる保険料のこと。
 
損害保険料率算出機構が算出する火災保険参考純率をベースに、建物の構造や面積などを加味して算定されるため、保険会社によって大きな差はありません。
 
目安としては、ワンルームマンションであれば、10年の契約期間で「1~2万円程度」です。
 
ただし、木造の物件は鉄筋コンクリート造(RC造)の物件に比べ3倍程度、火災保険料が高くなります。
 
なお、ローンを利用せずに不動産を購入する場合は、火災保険の加入が義務づけられているわけではありません。
 
ですが、入居者による失火などで火災が起きないとは言い切れません。
 
現金一括で不動産を購入する場合も、万が一火災が発生したときに補償を受けるため、火災保険に加入しておくのが賢明です。
 
また、火災保険に加入していないと地震保険に加入することができません。
 
地震大国と言われる日本で不動産投資をするなら地震保険にも加入すべきであり、そのためにも火災保険への加入は必須になります。
 

印紙代

印紙税は、一定金額以上の領収書や契約書など、国が定める課税文書について課せられる税金です。
 
不動産投資においては、物件購入時の「売買契約書」や融資を受ける際の「金銭消費貸借契約書」が印紙税の対象となります。
 
印紙税は、収入印紙を購入して契約書に貼ることで納税します。
 
契約書に貼るべき収入印紙の金額は以下のとおり、契約書記載の金額によって変わってきます。
 

契約書の記載金額 売買契約書に貼るべき収入印紙の金額 金銭消費貸借契約書に貼るべき収入印紙の金額
100万円~500万円 500円 1000円
500万円~1,000万円 5,000円 1万円
1,000万円~5,000万円 1万円 2万円
5,000万円~1億円 3万円 6万円
1億円~5億円 6万円 10万円

 
たとえば、不動産の売買金額が5,000万円で、4,000万円のローンを利用する場合、売買契約書には3万円の収入印紙を貼り、金銭消費貸借契約書には2万円の収入印紙を貼る必要があります。
 

登録免許税

登録免許税とは、不動産の登記をする際に課せられる税金のことです。
 
たとえば、Bさんが不動産を購入したら、所有権の名義をBさんに変更する「所有権移転登記」をおこないますが、その際に必要になる登録免許税はBさんが負担する必要があります。
 
また、BさんがC銀行から融資を受けるのであれば、C銀行名義での「抵当権設定登記」をおこないますが、その際に必要になる登録免許税もBさんが負担します。
 
所有権移転登記の登録免許税額は「不動産の固定資産税評価額 × 税率2%」で算出します。
 
たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産であれば、所有権移転登記の登録免許税は以下のように算出します。
 
2,000万円 × 2% = 40万円
 
また、抵当権設定登記の登録免許税額は「融資額 × 税率0.4%」で算出します。
 
たとえば、融資額が1,500万円であれば、抵当権設定登記の登録免許税は以下のように算出します。
 
1,500万円 × 0.4% = 6万円
 

司法書士報酬

司法書士報酬とは、不動産登記手続きを司法書士に依頼する際に支払う報酬のことです。
 
不動産登記手続きは自らおこなうこともできますが、専門知識が必要になるため、司法書士に依頼するのが一般的です。
 
投資用不動産を購入する際は通常、「所有権移転登記」と「抵当権設定登記」が必要になります。
 
この2つの登記手続きを依頼する場合の報酬は司法書士事務所によって異なりますが、「10万~20万円程度」が相場です。
 

不動産取得税

不動産取得税は、不動産を取得したことに対して課せられる税金です。
 
不動産を購入してから半年~1年以内に自治体から納税通知書が届き、それに従って納税します。
 
厳密に言えば、不動産取得税は不動産を購入する際に支払いが必要になるものではないので、初期費用に含める必要はないかもしれません。
 
しかし、不動産購入後、比較的早い段階で必要になる費用なので頭に入れておいたほうがいいでしょう。
 
不動産取得税は「固定資産税評価額 × 税率3%」で算出されます。
 
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の不動産であれば、不動産取得税は以下のように算出します。
 
1,000万円 × 3% = 30万円
 

固定資産税・都市計画税

固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課せられる税金です。
 
不動産取得税のように不動産を取得したときに1回だけ納める税金ではなく、毎年発生する税金になります。
 
その意味で、初期費用というよりランニングコストと言えますが、不動産売買をした年の固定資産税に関しては日割り計算をしたうえで買主が負担する分を売主に支払い、売主が一括して納税をするのが一般的です。
 
そのため、最初の1年の日割り分は初期費用として考えておきましょう。
 
固定資産税は「固定資産税評価額 × 税率1.4%」で算出されます。
 
たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産であれば、固定資産税は以下のように算出します。
 
2,000万円 × 1.4% = 28万円
 
都市計画税とは、都市計画事業・土地区間整理事業に用いることを目的とした税金で、毎年1月1日時点で「市街化区域」に不動産を所有している人に課せられます。
 
固定資産税と同様に毎年発生する税金で、不動産売買をした年に関しては日割り計算をしたうえで買主が負担する分を売主に支払い、売主が一括して納税をするのが一般的です。
 
都市計画税は「固定資産税評価額 × 税率」で算出されますが、税率は自治体によって異なります(上限は0.3%)。
 
たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産で、税率が上限の0.3%であれば、都市計画税は以下のように算出します。
 
2,000万円 × 0.3% = 6万円

不動産投資の初期費用を抑える方法

不動産投資という文字とお金
不動産投資の初期費用を抑える方法としては、一般的に以下の方法が考えられます。
 

司法書士報酬を抑える

司法書士報酬は依頼する司法書士事務所によって異なるため、報酬の安い事務所に依頼できれば初期費用を抑えることができます。
 
通常は、不動産業者が司法書士を紹介してくれますが、もし「高い」と思ったら、自分で見つけた司法書士事務所を使いたい旨、相談してみるといいでしょう。
 
なお、不動産登記手続きは司法書士に依頼することなく自分でおこなうことも可能であり、それができれば司法書士報酬はゼロで済みます。
 
しかしながら、不動産登記手続きをおこなうには専門知識が必要で、素人が自分でおこなうと時間がかかったりミスをしてやり直しになったりと、手間暇がかかります。
 
その意味で、専門家である司法書士に依頼するのが賢明でしょう。
 

火災保険料・地震保険料を分割払いにする

火災保険料や地震保険料は5年~10年分などを一括で支払う方法と、年単位・月単位で分割払いする方法があります。
 
一括払いのほうがトータルでは割安になりますが、不動産投資の初期費用を抑えるには分割払いを選んだほうがいいでしょう。
 

フルローン・オーバーローンを使う

フルローンとは、不動産価格全額の融資を受けること。
 
フルローンを受けることができれば、頭金なしで不動産投資をすることができます。
 
オーバーローンとは、不動産価格に加えて諸費用も含めて融資を受けること。
 
オーバーローンを受けることができれば、初期費用なしで不動産投資をすることができます。
 
ただし、フルローンにしてもオーバーローンにしても融資額が大きくなるため審査が厳しく、物件の担保価値や債務者の信用が高い場合でなければ利用することはできません。
 
また、審査に通っても月々の返済額が増え、金利負担も大きくなります。

仲介手数料が必要な物件と必要でない物件とは?

家を選ぶ女性
不動産投資の初期費用のなかで、仲介手数料はもっとも高額な費用だと言えます。
 
しかし、仲介手数料は、不動産の販売方式によって異なるため、すべての物件において必要というわけではありません。
 

仲介手数料が必要な物件と必要でない物件を見分ける方法

不動産業者は、不動産取引にともなう取引の種類を明示する必要があります。
 
不動産取引の種類としては、以下の3つがあげられます。
 
▼仲介物件
仲介物件は、売主と買主の間に不動産業者が仲介として入るスタイルです。売買契約を結ぶと仲介手数料が必要になります。
 
▼売主物件
売主物件を購入する際は、物件の持ち主と直接取引をおこなうことになり、不動産業者を介さないため、仲介手数料はかかりません。
 
▼販売代理物件
販売代理物件は、販売から契約までを売主と代理契約を結んだ不動産業者がおこないます。
 
基本的に、不動産業者は売主の代理として物件を売ることになるので、仲介手数料は不要です。
 

手元の資金が多くないときにおすすめの物件

一般的に、ローンを使って投資用不動産を購入する際は、手数料を含めた初期費用は自分で準備したうえ、融資分で不動産の購入価格相当額を賄うことになります。
 
売主物件や販売代理物件は仲介手数料を支払う必要がなく、自己資金としては仲介手数料を初期費用から差し引いた分を準備すれば良いので、手元の資金を多く用意できない場合は売主物件や販売代理物件の購入をおすすめします。

投資用不動産の理想的な頭金とは?

不動産投資
投資用不動産の理想的な頭金について解説していきます。
 

もっとも早く資産を多くするためには、いくつかの物件に頭金を分けて投資する

資産を運用する期間が同じでも、頭金を利用する方法によって資産を形成する金額は違ってきます。
 
資産をより多くするためには、頭金を分けていくつかの物件に投資するのがおすすめです。
 
頭金を分けた投資について、具体的なシミュレーションでご紹介します。
 
たとえば、以下の条件で考えてみましょう。
 
・頭金:300万円
・不動産価格:1,000万円
・実質利回り:5%(手取りの年間の賃料収入が60万円)
・ローンの金利:1.5%
・繰り上げ返済額:毎年100万円

 
300万円の頭金、700万円のローンで不動産物件を購入するケースでは、毎年100万円の繰り上げ返済をおこなうと6年間でローンを完済できます。
 
また、300万円の頭金を150万円ずつに分けて、2つの物件を850万円のローンで一緒に購入するケースでは、毎年100万円の繰り上げ返済をおこなうと、先にご紹介したケースと同じように6年間で1戸目のローンを完済できます。
 
そして、ローンをこの6年間に返済することによって、2戸目のローンは約164万円返済が進んでおり約686万円が残ります。
 
このように、頭金を分けていくつかの物件に投資をすることによって、より効率的に資産形成を進めることができます。
 
投資用不動産のローンは入居者からの家賃収入で返済できるので、物件を前もって購入しておくことは将来的な資産形成のサポートにもなると言えるでしょう。
 

頭金を分ける際に気をつけたいリスク

頭金を分けていくつかの物件に投資すれば、資産を効率的に形成することができます。
 
しかし、2戸同時に空室が出た場合、ローンの返済額が2倍になるなど、頭金を一つの物件に投入したときと比較するとリスクも大きくなります。
 
投資用不動産を2戸同時に購入し、資産形成を有利に進めたいのであれば、短期での繰り上げ返済と余裕を持った資金プランによってリスクを減らしていくことが大切です。

不動産投資の初期費用を用意する際はランニングコストも意識する!

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不動産投資にかかるお金は初期費用だけではありません。
 
不動産を購入した後も定期的に様々なランニングコストが発生します。
 
また、空室が出てしまうと家賃収入を獲得できないリスクもあります。
 
初期費用を準備できたとしても、資金に余裕のない状態で不動産投資を始めるのはリスキーです。
 
不動産投資を始める際は、物件購入後の管理費・修繕積立金や税金、さらには空室リスクまで初期費用に含めて考えることが重要です。
 
不動産投資の初期費用を用意する際に意識したい、代表的なランニングコストは以下のとおりです。
 

管理費・修繕積立金

区分マンションに投資する場合は、毎月定額の管理費と修繕積立金を支払う必要があります。
 
管理費とは、廊下の照明代やエレベーターの保守点検費など、マンションの共用部分の維持・管理に必要となる費用のことです。
 
修繕積立金とは、将来必要になる大規模修繕に備えて積み立てる費用のことです。
 
管理費や修繕積立金はマンションの管理規約によって規定されています。
 

管理委託費

管理委託費は、投資用不動産を維持・管理するための業務を管理会社に委託する際にかかる費用のことです。
 
建物の管理業務だけでなく、入居者が退去したときに新たな入居者を募集したり入居者から家賃を回収したりといった入居者管理業務も含まれます。
 

退去時の原状回復費・リフォーム費

投資用不動産から入居者が退去した場合、原状回復のためのハウスクリーニングやリフォームが必要になります。
 
新築物件に投資した場合も、どうしても建物は経年劣化していきます。
 
適切な原状回復・リフォームをしないと、空室が長引いてしまうリスクがあります。
 

給湯器やエアコンなど設備の修繕費

不動産投資においては、エアコンや給湯機の取り換えなどの修繕費も必要になります。
 
住宅設備は大まかな耐用年数・寿命が決まっていますが、入居者の使い方によって左右される部分も大きく、「いつ修繕費が必要になるか?」「いくらくらい修繕費がかかるか?」を予測するのは簡単ではありません。
 
ある年に一気に高額の修繕費が発生するケースも少なくないため、余裕を持って修繕費をプールしておく必要があります。
 

固定資産税・都市計画税

上述のとおり、固定資産税・都市計画税は不動産投資をスタートしたら毎年発生する税金です。
 
購入前に試算して、ランニングコストとして把握しておく必要があります。
 

所得税・住民税

不動産投資で収益が出ているのであれば毎年、確定申告をして、それをもとに所得税や住民税が発生します。
 
当然ですが、収益が大きく経費が少ないほど納税額は多くなります。
 

ローン返済額

空室が発生しなければ家賃収入をローンの返済に充てることができますが、空室が発生すると家賃収入を得られなくなるので、手持ちの資金でローンを返済しなければいけません。
 
一般的に、空室リスクに備えるには「家賃収入の2~3ヶ月分」の手元に残しておくべきだと言われます。

まとめ

電卓で計算する人
本記事では、不動産投資にまつわる初期費用について解説してきました。
 
不動産投資の初期費用としていくらくらい必要になるのか、おおよその目処が立ったのではないでしょうか。
 
とはいえ、投資用貯金の目標額を初期費用の最低限としてしまうと、将来、不測の事態が起きたときに資金繰りが立ち行かなくなってしまうかもしれません。
 
そのため、将来発生しうるリスク・費用をすべて把握したうえで初期費用を考えることが大切です。
 
余裕を持った初期費用を準備して、力強く不動産投資の第一歩を踏み出しましょう。

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