東京オリンピックが終わって、不動産の市場は?
今からちょうど4年前、「誤解だらけの2020年オリンピック問題」と題して、不動産相場について盛んに喧伝されていた、オリンピックを境に暴落するという論調にかみついたレポートを発表したことがあります。
要約してしまうと、このコラムで繰り返し述べていることと同じになってしまうので、部分的に抜粋して再録してみます。
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2020年の東京オリンピックを境に日本の不動産市場は暴落するのではないか、といった記事を眼にすることが、最近めっきり多くなりました。
そのような記事が出回ること自体が、すでに不動産市況の過熱感を象徴しているわけですが、共通して言えることは、さしたる根拠もなく不安感をあおっている内容ばかりだということです。
いわく、「オリンピックまでは不動産価格は上昇を続ける」だの、「不動産市場はバブルに突入しており、そのバブルはオリンピック前後で弾ける」だの、一見もっともらしい体裁は整えてはいるものの、じっくり読み込んでみれば、実に薄弱な根拠でしかものを言っていないことに気づくでしょう。
(中略)
ここから分かることは、不動産価格の決定要因は、つまるところ金融政策と人口動態の関数にすぎないということです。
これまでみてきたように、不動産の価格は、オリンピックまでは、とか、オリンピックを境に、などといった分かりやすい基準で決まるものではありません。
いわんや、「2020年までは上昇すると噂されている」、だの、「大筋の見立てではオリンピック前後にプチバブルが弾ける」、だののような、何の根拠も示さない論述に至っては、あまりにも不勉強にすぎますし、いたずらに投資家心理を混乱させているだけのように見えます。
(後略)
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いかがですか。
東京オリンピックは終わりましたが、わずかながらでも、不動産市場が暴落する気配があるでしょうか。
当時の暴落論者に聞いてみたくてならないのですが、今のところ、不動産相場の過熱感はとどまるところを知らない、といった状況が継続しているのは、みなさんもご存知のとおりです。
しつこく繰り返しますが、不動産価格の決定要因は、金融政策と人口動態の関数です。
同じ主張を繰り返す者の当然の成り行きとして、2ヶ月前のコラムでは、中長期的な相場下落のトリガーになりうるFRBの金融引き締め宣言に敏感に反応せざるをえなかったわけですが、今週の某ビジネス誌で、米国の量的緩和の縮小と利上げを、不動産ブームに冷や水を浴びせる最大の要因と分析している記事がようやく現われ、きっと口まねする輩が出てくるでしょうが、きっかけは何であれ、まっとうな論理が浸透していけばいいなと思います。
ただ、上述のオリンピックレポートでは、ものの見事に外した予想があったことも白状しておかなければフェアではありませんね。
レポートの結びでは、当時第1期の任期中だった黒田日銀総裁が任期満了で退任するに伴って異次元緩和は終わりをつげ、金融引き締め局面に転ずるであろうから、不動産相場の反落が始まるはず、としていたのですが、驚くなかれ、異例の再任で居座るとはさすがに見通せませんでした。
一応根拠はあって、戦後に60代で日銀総裁に就任して再任された前例はないことと、70歳を超えての就任は、ノーパンしゃぶしゃぶ事件などの日銀・大蔵省不祥事件のあおりで当時の総裁のクビが飛び、日銀を早期リタイアして財界の重鎮となっていた第28代速水元総裁の緊急登板以外にないこと、がそれだったのですが、さすが異次元緩和の雄だけのことはあり、異次元人事まで実現なさるとは恐れ入ります。
とはいえ、よく考えてみれば、黒田総裁は、財務省では主流ではない税務畑出身で、いったん延期されて、再任の1年半後に控えていた消費税増税という主税局の悲願を見届ける必要があったことに気づくべきでした。
継続されている大規模緩和と税収の関係について話したいこともあるのですが、紙幅の関係もありますので、またの機会にゆずらせていただくことにします。
このコラムを書いている人
中村 彰男
1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、37年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー