3年前の予言的中、やっぱり固定資産税は最大のリスクだった!?
私は、2015年から昨年まで、足かけ6年にわたり、当社が開催している「売却運用セミナー」の講師を務めていました。
ざっくりしたテイストをお伝えすると、不動産投資は投資の中では優れた投資であり、面白いものですが、投資である以上、リスクと無縁ではありえません、リスクはリスクとして正しく認識したうえで、リスクへの対策さえしていれば、安全な投資なのです、という内容になっていました。
不動産投資におけるリスクは、以下の4つが挙げられます。
①空室リスク
②家賃の下落リスク
③物件価格の下落リスク
④修繕積立金の序章リスク
これらを「四大リスク」と称して、人口動態と物件供給の統計をもとに家賃の下落リスクを重点的に解説していたものです。
そんなある日、もしかしたら最大のリスクは固定資産税の上昇かも、と思わせられる出来事に遭遇しました。
今から3年前、宅地建物取引士資格の更新講習のときのことです。
まる1日缶詰めになって、睡魔と闘いながら、さまざまな法令知識のアップデートをするわけですが、税法の科目のところでは睡魔はどこへやら、目が覚めたどころか、目の玉が飛び出したついでにウロコまで落ちるくらいの内容でした。
実は自分でも前々から不思議に思っていて、セミナーでもたびたび触れてはいたのですが、固定資産税の評価額は3年に一度評価替えがあり、税額の変動はその年だけ起こるはずです。
しかし、区分のワンルームだと、それとは気づかずに400円や600円ずつ、ほぼ例外なく値上がりしています。
セミナーの場では、税務当局は取れるものならどこからでも取ろうとしますし、不動産には足がありませんから、その気になれば取りやすいですよね、という話をしていたわけです。
ところが、これは長期的に定められた増税計画の一端だったとは、この講習で話を聞くまでまったく知らなかったのです。
しかも、増税計画の始動は、今を遡ること四半世紀以上前の1994年からはじまっており、当時、実勢価格の20%から40%程度だった固定資産税額を、公示地価の70%まで引き上げることが決定されていたのだそうです。
あんまりな増税じゃありませんか。
もともとの固定資産税はかなり安かったので、公示地価の70%にまで引き上げるためには、3年に1度の評価替えだけでは足りません。
毎年微妙に上げていく必要があって、この措置は負担調整という美名でごまかしているようです。
「これは危ない」と思った私は、直ちに下図のような図を作成し、実勢価格、公示地価、路線価、固定資産税評価額の4つの価格と大増税計画を分析しました。
200㎡以下の小規模住宅用地の課税軽減特例は特例なのだから、行政の都合でいつ勝手に変えられるか分かったものではない、と警鐘を鳴らすことにしたのです。
あれから3年、不動産に関する税金については、節税に一棟マンションの購入を活用するという相続の王道が、国税庁の財産評価基本通達に基づいて否認され、裁判で争ったあげく、最高裁で税務当局が勝訴するという大ニュースがあったくらいで、固定資産税についてはさしたる改正の気配すらなく、安心していた矢先、とんでもないものを目にしてしまったのです。
個人情報保護のためにお見せできないのが無念でしかたないのですが、墨田区内のとあるマンションの敷地における、令和2年度と令和3年度との固定資産関係証明書を見比べてみました。
その結果、令和3年度の評価替えで、それまで6900万円だった土地の価格が、なんと8000万円にまで引き上げられていたのです。
たしかに、固定資産税の評価額の決定は、不服があったら申し出てくれていいですよ、という制度ではありますが、それにしてもこれはあんまりじゃありませんか。
しかも、区分ワンルームのオーナーが、わざわざ不服申し立てをするとは思えません。
こんなことが平然とまかり通るなら、3年前の「もしかしたら固定資産税は最大のリスクかも」という予言が、ものの見事に的中したといって差し支えないと、胸を張って申し上げたいと思います。
納税者から積極的に不服申し立てをしないかぎり、税務当局の意向で課税するための価格をいかようにも決められるなんて、おそろしい制度だと思いませんか?
このコラムを書いている人
中村 彰男
1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、37年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー
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