なぜ日本人は投資が苦手なのか

公開日2022/12/27
更新日2024/02/08

投資

FGHでは2023年から、CPM理論という世界標準の不動産投資理論をベースにした不動産投資に失敗しないためのセミナーを始めることになりました。
 
セミナーのコンテンツを作成するにあたっては、さまざまな統計資料を参照しなくてはならないのですが、読めば読むほど各国と比べて投資に対してうしろ向きな日本人の姿が浮かび上がってくるのが残念でなりませんでした。
 
どうしてこれほど投資に消極的なんだろうと思い、珍しくネットで検索なぞしてはみたものの、これぞという定説はなく、統計的な裏づけのない心情的な理由づけばかりが目立ちましたが、それでもわりあい説得力のある仮説が3つばかりあったのでご紹介しておきたいと思います。

なぜ日本人は投資が苦手なのか

仮説1 米国と比較して投資環境が整備されていなかったから、というもので、米国の金融資産統計をみると、退職口座という日本でいえばiDeCoに相当するような資産残高がかなりの割合を占めているので、なるほどと思わせるものでした。
 
とはいえ、日本にも401(K)という制度は20年以上前からあったので、環境の未整備というよりは宣伝不足の側面のほうが強いような気もします。
 
仮説2 これも米国との比較ですが、株式の取引単位がかたや1株からであるのに対し、我が国では100株からだとするもので、たしかにこれは間違いのないところでしょう。
 
株式投資にはうといので、業界の議論の趨勢がどうなっているのかは知りませんが、時代の潮流から推測するなら、DXの進展によっていずれは小口化が推進されるといいなと思います。
 
IPOといえば株券を担当する印刷会社を選定しなくてはならなかった時代からすると隔世の感がありますね。
 
仮説3 戦争に負けて貧乏になって投資すべきお金がなくなったからというものでした。
 
お金がなくなったからというよりは、戦時国債という形でお国に投資していたものが、戦後のハイパーインフレで紙屑同然になったことで、投資アレルギーを植えつけたのかもしれません。
 

筆者の考察

これらの仮説はいずれも面白く、ためになるものでしたが、個人的には心情的な理由づけを深掘りしたほうが納得感がありそうだったので、ためしに2つほど作ってみた仮説を披露しておきたいと思います。

 
一つは、日本人は戦闘についてのDNAが希薄なので、金融の戦闘たる投資には不向きなのではないかという仮説です。
 
縄文弥生はいざ知らず、武士という戦闘の専門集団ができあがって以降は、国内での戦闘は武士どうしがやるもので、一般庶民は敵が攻めてきたらどこかに隠れていて髙見の見物をきめこんで、いくさが終わったら戻ってきて勝ったほうの大将の領民になったものです。
 
大陸のように領主領民が一団となって食うか食われるかの戦いをするという経験が決定的に不足しているので、1000年このかた、我が国の庶民は平和ボケしているといっても過言ではありません。
 
だからこそ、タマゴを買って配当がもらえるみたいなインチキ投資にコロリとだまされてしまうのではないでしょうか。
 
もう一つは、その武士にしたところで、戦争のない泰平の世の中で平和ボケが進行しているのに、維新後の明治近代の教育制度は失業した武士による武士のためのものだったからというものです。
 
江戸時代の武士階級は、現代の目からみるなら、ただの世襲の年金生活者にすぎませんが、建て前としては戦闘員なので、現世に未練を残すであろう蓄財などはもってのほかの行為でした。
 
士族の商売という言葉があるくらいお金に無知な階級が、優秀な官僚を育てるための東京開成学校(今の東京大学)や全国に派遣する教師を養成する東京師範学校(今の筑波大学)の学生のほとんどを占めていれば、国民がお金に無知になるのは当たりまえです。
 
事実、東京大学に経済学部が設置されたのは明治も30年になってからでした。
 
この価値観にそった国家運営をしていって、敗戦までがここから50年、敗戦後の急激な経済成長は武力によらない経済面での戦争だったことを考えるなら、文明開化の価値観がようやく終わりを告げたのは経済で世界を制覇したと思い込んだバブルの絶頂期で、いまからわずか30年前のことにすぎません。
 
文明の伝統とはここまで強固なものなのです。
 
バブルの崩壊と敗戦処理、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍と、我が国では呆然自失とするできごとには事欠きませんが、ウィズコロナが唱え始められた今年から高等学校で金融教育が始まったというのは、ようやく新しい時代が始まる象徴のように思えます。
 
本篇セミナーでは時間の都合もあり、ここまで詳しくお話ししている余裕はないのですが、このような小ネタをはさみつつ、不動産投資というものを詳説していきますので、お時間のあるときにぜひご参加いただければと思います。
 
最新のセミナー情報について詳しく知りたい方はぜひお問い合わせください。

このコラムを書いている人

中村 彰男

中村 彰男

1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、37年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー

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