サブリース契約は更新拒絶できる?正当事由や判例、解約方法を徹底解説
【目次】

サブリース契約においては、通常の賃貸借契約と同様に借地借家法が適用されるため、契約期間満了時に更新拒絶するには正当事由が求められます。
貸主側が解約や更新拒絶を検討する際には、法律上のポイントや判例、契約書上の条項の確認が欠かせません。
本記事では、サブリース契約にまつわる基本的な枠組みから、実際に更新拒絶を行う際の具体的手順、そして正当事由が認められない場合の対処策や解約後の運用方法まで、包括的に解説します。
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サブリース契約のオーナー側からの更新拒絶が難しい理由
なぜサブリース契約の更新拒絶には厳しい要件が課されるのか、その背景を詳しく説明します。
一般の賃貸借契約と同様、サブリース契約でも更新拒絶には法的な根拠が極めて重要となります。
サブリース契約の場合、サブリース会社が借主としての立場を有しているため、法律による保護対象となるのが大きな要因です。
貸主が一方的に契約終了を望んでも、正当事由がなければサブリース会社を退去させることは困難になりがちです。
正当事由が必要とされる背景
サブリース契約であっても、借地借家法上の賃貸借契約の一種である以上、更新拒絶には正当事由が求められます。
サブリース契約の場合、サブリース会社自体は転貸を前提としたビジネスモデルを行っていることが多いため、貸主の都合による解約は借主であるサブリース会社の経営にも大きな影響を与えます。
日本の借地借家法は、賃貸借契約における借主保護を前提としています。
貸主が一方的に解除できると、サブリース契約にも適用される借地借家法の保護対象である「借主の経済的安定」を害することになるため、法律で守られているのです。
正当事由には、建物の老朽化や取り壊しなど、貸主が物件を実質的に必要としている事情が含まれます。ただし、これらの事情も裁判所が認めるかどうかで結論が変わるため、事前の根拠づくりが非常に重要です。
サブリースにおける2025年問題とは?
都心部のワンルームマンションや一棟アパートでは2015年頃からサブリース契約が急増し、2025年頃には大量の契約更新タイミングが集中すると言われています。これがいわゆる“2025年問題”です。
サブリース会社にとっても、当初の賃料保証設定が経済情勢や不動産市況の影響を受けて収益を圧迫するケースが増えているのが実情です。賃貸需要の減退や空室率の増加によって、サブリース会社が貸主に対し賃料減額を請求するリスクが顕在化しつつあります。
こうした状況下では、貸主がサブリース契約の更新拒絶を検討するケースも増えますが、借地借家法や裁判例に照らして、正当事由の有無が判断の要になります。
賃料減額の話し合いと同時に、今後の運用方針を見直す動きが広がることで、契約更新をめぐってさらに交渉が複雑化する可能性がある点は意識しておく必要があります。
何が「2025年問題」たらしめているか
2015年(改正は2016年1月施行)に相続税の基礎控除が大幅に引き下げられ、相続税対策のため賃貸不動産が注目されました。
これにより、不動産業者・投資家向けに「サブリース付き賃貸運用」の販売が急増しました。
2015年頃に契約された物件は、2025年ごろに築10年という節目を迎えるケースが多く、この節目で条件の見直しを求められる可能性が高い、という見方があります。
サブリース会社にとっても、当初の賃料保証設定が経済情勢や不動産市況の影響を受けて収益を圧迫するケースが増えているのが実情です。賃貸需要の減退や空室率の増加によって、サブリース会社が貸主に対し賃料減額を請求するリスクが顕在化しつつあります。
都市部の家賃平均値は上がっていても市場の二極化が進んでいる
2023〜2025年現在の賃貸市場は都市部を中心に家賃が上昇傾向にあり、 「サブリース業者はむしろ好調なのでは?」という見方も一理あります。確かに、東京・大阪・名古屋などの都心部では賃料上昇傾向があります。
しかし、サブリース契約の多くは2015年前後に郊外・地方で量産された物件群です。
これらは築10年前後・駅距離がある・供給過多なエリアに集中しているため、必ずしも家賃上昇の波に乗れているとは限りません。
結果として、契約見直し・減額要請・契約解除の動きが進む可能性が高まります。
サブリース物件の増加を招いた社会背景を図解
サブリースが普及した背景には、不動産投資熱の上昇と共に生み出された不動産会社の販売スキームにあります。
サブリース物件は出口の賃料が見えにくいため空室リスクを把握しづらい構造になっています。
さらに、レントロール上は販売会社が設定したサブリース賃料となるため相場以上の物件価格・賃料で販売されてしまうということがまかり通ってしまうのです。
つまり、本当のリスクを投資家に伝えることなく不動産業者が儲かる仕組みが構築されているのです。
貸主は空室リスクを回避するためにサブリース契約を選択し、不動産会社は儲かるスキームに乗せる。その結果多くの物件がサブリース化していったのです。
これに伴い、同じ時期に大量の契約が締結され、契約更新のタイミングが重なる構図が生まれました。
更新拒絶を検討する際の具体的手順
サブリース契約の更新を拒否する場合に必要な手続きや実務的なポイントを整理します。
サブリース更新拒絶を考え始めたら、まずは契約書を再確認し、自分の主張が借地借家法および契約条項に照らして問題ないかを検討することが大切です。
更新拒絶が認められるための要件を満たすかどうかを法律専門家と相談した上で、どのような準備を進めるかを計画立てするとスムーズです。
サブリース会社への相談と解約通知書の送付
更新拒絶の手続きは、まずサブリース会社との協議から始まります。
契約書に定められた期日までに解約を希望する旨を通知することが一般的ですが、口頭だけではなく必ず書面でも残すことが肝要です。
書面で通知することで、解約の意思を明確に示し、後々の証拠にもなります。
解約通知書の内容としては、契約解除の時期や理由、手続きに従い必要な準備を記載するのが望ましいです。特に正当事由に関する根拠をまとめておくと、相手方に自分の立場を理解してもらううえで有効です。
通知書を送付した後は、サブリース会社との協議が始まります。解約時の違約金や原状回復義務の範囲など、具体的な項目について協議し、合意に達すればスムーズに解約まで運ぶ可能性があります。逆に折り合いがつかない場合には、法的手段を検討する段階に進むことになるでしょう。
違約金や損害賠償リスクへの備え
サブリース契約の更新拒絶や途中解約を行う場合、違約金や損害賠償を請求されるリスクは無視できません。契約書に明記されている違約金の金額や算定方法を事前に確認し、十分な資金の準備をしておくことが重要です。
賃貸市場の変動やサブリース会社側の損失度合いなどによって、違約金や損害賠償額の交渉が行われるケースもあります。
とりわけ、契約期間中の解約であればサブリース会社の損害が大きくなりやすいため、請求額も高額になる可能性があります。
一方で、オーナー様が正当な理由をもって契約終了を求める場合には、違約金や損害賠償が発生しない、あるいは大幅に減額される場合もあります。
弁護士など専門家のアドバイスを得ながら、事前に最大限リスクを把握することがトラブル回避に役立ちます。
正当事由が認められない場合の対処策
正当事由がないと認められた場合にオーナー様が取れる代替策や、紛争解決の流れを把握します。
サブリース契約の更新拒絶を試みても、必ずしも正当事由が認められるわけではありません。
特に、貸主側の都合だけで契約を打ち切ろうとすると、サブリース会社からの反発が強く、正当事由がないことを主張される可能性が高まります。
そのような場合に備えて、事前に代替策を検討しておくことが求められます。
当事者間の話し合いで解決が困難な場合は、公的な紛争解決の仕組みや法律専門家の力を活用する選択肢があります。
交渉が長期化すると物件の収益やオーナー様のリスク管理にも悪影響が及ぶ可能性があるため、スピーディに解決手段を模索することが大切です。
また、正当事由が認められないと判断された場合でも、サブリース会社との継続条件を再交渉することで、賃料や契約内容の一部変更に合意できる可能性があります。
即時の解約が難しい場合でも、お互いが納得できる落とし所を見つけることは十分に考えられる対処法の一つです。
サブリース解約後の管理方法と運用ポイント
うまくサブリース会社と合意形成ができて解約に至った場合、物件をどのように管理・運用していくか、経営面での注意点を解説します。
サブリース契約が終了した後は、貸主が直接入居者とやりとりする自主管理をするケースや、新たに管理会社へ委託するケースが考えられます。
いずれにせよ、サブリース会社が関与しなくなる分、オーナー様自身の運営負担が増える点を認識しておく必要があります。
特に、入居者募集や賃料管理、建物のメンテナンスなどをオーナー様が直接手掛ける場合、必要経費や人的リソースを確保できるかを事前に検討する必要があります。
管理を全面的に切り替えるときには、業務フローの整理や管理体制の見直しも併せて行うとスムーズです。
管理委託や直接賃貸への切り替え方法
サブリース契約が終了したあとの管理形態としては、オーナー様が直接全ての業務を行う方法、もしくは管理会社へ一括委託する方法が代表的といえます。
直接賃貸を選ぶと管理コストを抑えられますが、賃貸管理の知識やノウハウが不可欠です。
管理会社へ委託する場合は、管理手数料という固定費が発生する代わりに、入居者募集やクレーム対応、退去精算などの煩雑な業務を代行してもらえます。
結果として、オーナー様は本業に注力できるメリットがあるため、費用対効果を踏まえた判断が重要です。
切り替えをスムーズに進めるには、サブリース終了後のロードマップを作成し、新しい管理形態を早めに決定しておくと安心です。
また、管理会社を選定する際には複数社に見積もりやサービス内容を照会して比較検討するのが有効な方法です。
空室リスクや賃料下落への対策
サブリース契約を解約し、直接賃貸に切り替えた際には空室リスクと賃料下落リスクに備えておく必要があります。
サブリース中は一定の賃料保証があるためリスクを意識しにくい面もありますが、直接賃貸では空室期間中の収入は得られません。
そこで、物件の魅力向上やターゲット層の再設定、リフォームや設備投資などによるバリューアップが効果を発揮するケースがあります。
入居者ニーズを的確に捉えて、周辺市場との競争力を高めることが空室期間を短縮する近道となるでしょう。
また、市場の変化に合わせて賃料設定を柔軟に見直す姿勢も欠かせません。
過度に高い賃料設定を続けると入居付けに苦労し、逆に相場より大幅に安くすると収益性が損なわれます。
定期的なマーケット調査や専門家への相談を行いつつ、最適な賃料を模索することが安定経営につながります。
契約締結時に押さえておきたい重要ポイント
契約時からリスク回避を進めるために、知っておきたい条項やチェックポイントを解説します。
サブリース契約を結ぶ段階で、将来的な更新拒絶や解約をめぐるトラブルを予防するには、契約書の内容を詳細に吟味することが最も有効です。
特約条項や重要事項を把握していれば、後に「契約書に書かれていなかった」などの主張が通らず、不要な争いを回避できます。
更新時の賃料改定リスクのチェック
サブリース契約では、契約更新時に賃料を改定する条項が盛り込まれていることが多くあります。
これにより、サブリース会社が一方的に賃料を引き下げるリスクが存在します。契約条項を確認し、改定基準や頻度、どのような根拠で賃料が見直されるのかを事前に把握しておくことが重要です。
実際問題として、家賃相場の下落や市況の変動などの要因が重なると、大幅な賃料減額を求められるケースもあるため、貸主としては余裕を持った資金計画が必要となります。耐用年数の長い物件や将来的な修繕費用も踏まえ、賃料改定リスクを織り込んだシミュレーションを行っておくと良いでしょう。
万一、サブリース会社との交渉が難航した場合は、専門家に相談しながら解決策を模索することが有効です。
特に契約書の文面に不備や曖昧な表現がある場合は、交渉を有利に進めるためにもリーガルチェックを行っておくことをおすすめします。
解約に関する条項のチェック
解約のタイミングや解約に伴う費用については、サブリース契約に明確に規定されている場合が多いです。
もし違約金や損害賠償の条項が曖昧であれば、貸主・サブリース会社双方が不利益を被る可能性があります。
契約時に解約条件をしっかり確認し、不明点は必ず質問して明らかにすることが肝心です。
解約に関する条項を十分に理解していなければ、更新拒絶を考える際に余計なトラブルを招きかねません。
更新通知や解約手続きの期日など、具体的なプロセスを把握することで、実務的な混乱を防ぐことができます。
また、解約理由が正当事由に該当するかどうかで、貸主側が支払う費用や負担が大きく変わります。
契約書上に記載された定義と借地借家法上の正当事由が合致するかどうか、専門家とともにチェックしておくと安心です。
サブリース会社選びのポイントと比較検討
サブリース会社を選ぶ際は、賃料保証の金額や契約期間だけに注目するのではなく、経営実態や信頼性を総合的に判断することが大切です。実
績が豊富な会社はリスクマネジメントやトラブル対応にも慣れているため、将来的な更新拒絶や解約をめぐる争いを回避しやすい傾向があります。
複数のサブリース会社から提案を受け、賃料保証率や管理費用、サービス内容などを詳細に比較することで、契約内容の相場観をつかむことができます。
ネット上で得られる情報だけでなく、実際に担当者との面談や問い合わせを通じて具体的な話を聞くのも有益です。
将来的に契約を更新しない選択肢を視野に入れている場合は、解約時の取り決めや違約金の設定、更新時の条件変更なども慎重に確認する必要があります。
最初の契約段階から想定されるリスクを洗い出し、書面やコミュニケーションを通じて不明点を詰めておくことで、後々の紛争を最小限に抑えられます。
サブリース契約のトラブル回避に向けた具体策
サブリース契約でトラブルを未然に防ぐために、具体的にできる対策を紹介します。
サブリース契約における更新拒絶や解約トラブルは、契約当初の段階から対策を講じることが何より重要です。契約書の内容を丁寧にチェックしたり、複数社の提案を比較して十分に検討したりする姿勢が、後々のリスクを下げることにつながります。
また、定期的に市場賃料や周辺の不動産動向をウォッチし、契約期間の中盤からでも必要に応じてサブリース会社に情報を共有することで、両者の意見をすり合わせやすくなります。
オーナー様の意向だけでなく、サブリース会社が直面している状況を理解することも、交渉で円滑に合意を形成する秘訣です。
万が一トラブルが顕在化した場合は、早めに専門家への相談を行い、時には調停を利用するなど手段を選択肢に入れておくと解決の糸口が見つかりやすくなります。
現行の契約を見直すきっかけとして捉え、リスクを最小限に抑えながら物件を安定的に運用していくことが大切です。
契約書の確認と弁護士への早期相談
契約書はすべてのトラブルの出発点となり得るため、必ず細部まで目を通して疑問点は明確化しておくべきです。自分では判断がつきにくい条文があれば、早めに弁護士や不動産の専門家に相談することで潜在的なリスクを把握できます。
弁護士に相談するタイミングは、サブリース会社との意見の相違が表面化するまで待たずに、予防策として行うのが理想的です。トラブルが深刻化してからだと、解決までに費用や時間がかかるうえ、感情的対立も強まりがちです。
特に更新拒絶や解約に関する諸条件は法律上も争いになりやすいため、第三者の専門家を交えた上で契約の可否やリスクを検証しておくと、後々スムーズに行動へ移せる可能性が高くなります。
違約金・損害賠償請求の内容を事前に確認する
サブリース契約を途中で解約したり、更新を拒絶する場合に生じる可能性がある違約金や損害賠償の金額や支払い条件は、契約書に記載されています。
実際に請求があったときにどの程度の金額になるのかをイメージしておくことで、急な支出で資金繰りが苦しくなる事態を防げます。
契約書には一見すると難解な文言が並んでいても、実際には支払義務や契約解除権など重要なポイントが隠れています。事前に熟読し、不明瞭な箇所についてはサブリース会社や専門家に確認する習慣を付けることが大事です。
場合によっては、契約書で定められた違約金の額や算定方式が法的に不合理と判断される可能性もゼロではありません。早い段階で弁護士などにチェックを依頼し、必要に応じて契約の修正や交渉を検討するのも良い方法でしょう。
自分だけで悩まず、プロに相談
サブリース契約に関わる問題は、借地借家法や契約法務、不動産の市場動向など多岐にわたります。
オーナー様が一人で全ての要素を把握し、対策を立てるのは容易ではありません。長く安定した経営を実現するには、専門の知識を持つ不動産会社や法律家との連携が欠かせません。
弁護士だけでなく、不動産コンサルタントや税理士など、物件運用に関して総合的な視点を提供してくれる専門家も頼りになります。たとえば税制優遇制度や金融機関との交渉など、法的手段以外にもサポートを得られる可能性があります。
自分で判断ができないまま更新拒絶や解約に踏み切ってしまうと、大きな経済的リスクや時間的損失が発生する恐れがあります。早い段階で相談し、問題が大きくなる前に最善策を模索する姿勢が、サブリース契約をめぐる紛争を回避する最大のポイントとなります。
まとめ
ここまで解説してきた内容を総括し、サブリース契約の更新拒絶に関する重要な留意点をまとめます。
サブリース契約は賃貸管理の手間を軽減し、一定の賃料を貸主に保障するメリットがありますが、借地借家法が適用されるため、更新拒絶や解約のハードルが高い点に注意が必要です。正当事由を示すための根拠や手続きを十分に準備しない限り、オーナー様の意向だけで契約終了に至るのは難しいのが現実です。
また、2025年問題をはじめとする社会背景から、これから多数のサブリース契約が更新時期を迎え、賃料減額交渉や契約条件の見直しが活発化する可能性があります。オーナー様としては、更新拒絶の可否だけでなく、契約継続時のメリット・デメリットも総合的に検討することが大切です。
途中解約や更新拒絶を考える場合は、早期の専門家相談がトラブル回避への第一歩となります。法律の観点、実務的な手順、賃料収益の再シミュレーションなど、あらゆる視点から備えを行い、サブリース契約を円滑かつ安定的に運用できるように留意していきましょう。
\ FGHにおまかせ /

宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士 / 住宅ローンアドバイザー
株式会社FGH 代表取締役社長
株式会社アーバンフォース 代表取締役社長
2007年2月フォースグループ創業以来、投資用不動産仲介の第一線でキャリアを積む。
中古ワンルームマンションはもちろん、不動産全般に関する多岐にわたる経験と知識でお客様からの信頼も厚い。
これまで400名以上のお客様の資産形成のお手伝いをしている。
このコラムを書いている人

Sayuri Takahashi
マーケティング部 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャルプランニング技能士/インテリアコーディネーター
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