危険?!中古物件で始める不動産投資の利益とは

公開日2019/10/11
更新日2022/12/20

近年、中高年層を中心に、不動産投資への関心が高まっています。
 
公的年金の受給開始年齢の引き上げや、年金受給額の減少など、老後への不安を感じる人が世の中に増えていることが、主な理由だと考えられています。
 
この不安は的外れなものではなく、実際に、2019年に金融庁の金融審議会が発表した
高齢社会における資産形成・管理
(引用元:https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)の中でも、
老後30年間を夫婦で生活するために、約2000万円の貯金の取り崩しが必要と発表され話題となりました。
 
もはや、年金のみで老後生活を行うことができない時代となってしまったのです。
 
また、ここ25年ほどの間、日本が低金利時代を迎えていることも不動産投資に注目が集まる大きな理由の1つです。
 
今の低金利では、バブル時代のように銀行に預けておくだけで資産を増やすことはできません。
 
適切な投資を行い、自分で将来への備えを準備する必要があります。
 
不動産投資は、将来への投資として有力な選択肢です。
 
投資先や依頼する不動産業者を吟味することで、安定した収入を手にすることが可能で、いわゆる私設年金の役割を担うことができます。
 
また、不動産であれば、年金と異なり相続することもできるため無駄になりません。
 
自分だけでなく、家族も含めた将来への投資と言えるでしょう。
 
不動産投資の対象物件は、新築か中古か、一戸建てかマンションか、ワンルームか一棟全てか、といったように様々な種類が存在します。
 
このページでは、そのなかでも中古物件に絞って、特有のメリットとデメリットについて具体的にご紹介します。
不動産登記権利情報、不動産売買契約書

中古物件特有のメリット

物件購入価格が安い

中古物件で投資を始める場合、何よりも物件価格が安いことがメリットです。
 
環境や売主の事情によって売値は大きく異なりますが、新築物件を購入するより格段に安く購入できることも多々あります。
 
投資金額が安価であれば、当然ローンの利息も安価になります。
 
利息が高額だと、上手く賃貸収入を得ている場合であっても、精神的な負担となりがちです。安価な利息は精神的なゆとりに繋がります。
 
また、不動産投資において、物件の購入価格を抑えることはリスクを抑えることに繋がるため、とても重要です。
 
購入価格が高い物件ほど、一般的に投資額の回収までに時間がかかってしまいます。
 
基本的に物件の価値は時間と共に下がり続けますので、投資額の回収に時間をかければかけるほどリスクを抱えることになります。
 
期間が延びれば、不慮の事態によって物件の修繕が必要となる可能性も高まります。
 
早期に回収するに越したことはありません。
 
あまり投資の経験がない人ほど、初期投資の高額な新築物件よりも安価な中古物件から不動産投資を始める方が安心です。
 

利回りが良い

新築物件と比べて、中古物件の場合は利回りが良いケースが多いです。
 
利回りとは、投資額(物件購入額)に対して、どれだけの利息(家賃収入)が得られるかを表す指標です。
 
利回りが良いほど、素早く投資額を回収することができます。
 
どの程度の利回りが期待できるのかは物件ごとに大きく異なりますが、新築であれば3%から5%、中古であれば10%近い利回りのものもあるというのが通例です。
 
安定して10%の利回りを期待できる投資は、不動産以外の分野に目を向けてもなかなかありません。
 
利回りを調べるうえで意識しなければならないのが、表面利回りと実質利回りの違いについてです。
 
単に利回りというと、一般的に表面利回りを指します。
 
表面利回りは、単純に家賃収入を物件購入額で割ったものです。
 
例えば、月々の家賃が10万円で、物件購入額が2000万円の物件を購入した時、10(万円)×12(ヶ月)÷2000(万円)=0.06(%)となり、6%の利回りが期待できる物件となります。
 
一方で、実質利回りは表面的にはわかりにくい、物件を管理するうえで必要な諸費用を考慮します。
 
物件を管理するためには、管理費、修繕費、不動産業者への手数料など、様々な諸経費が必要です。
 
例えば、上記の6%の利回りが期待できる物件の諸経費が月々4万円必要となるなら、(10(万円)×12(ヶ月)-4(万円)×12(ヶ月))÷2000(万円)=0.036(%)となり、実質的には3.6%の利回りが期待できる物件となり、6%に比べると大幅に低くなります。
 
特に中古物件では、物件によって必要な諸経費が大きく異なります。
 
表面利回りのみを見てお得な物件だと考えるのではなく、実質利回りにも目を向けて物件を探しましょう。
 

選択できる物件数が多い

中古物件は、新築物件と比べて選べる物件の数が非常に多く、たくさんの選択肢が存在します。
 
例えば、どこか希望の駅から徒歩5分の物件を購入したい、と考えた場合、中古物件であれば見つかりやすいですが、新築物件となるとなかなかそうはいきません。
 
希望の物件を購入できるまでにかなりの時間が必要となり、それまでの間は投資を行えず、投資機会を逃してしまう、という形とならないよう注意する必要があります。
 
もしも、あらかじめ投資したい物件の方向性が具体的に定まっているのであれば、中古物件から探す方が満足できる可能性は高いです。
 
立地、周辺の住環境、間取りや日当たり、壁の材質や防音性能など、細部まで条件にこだわって、理想の物件を探し出すことができます。
 
新築物件ですと、選択肢が少なく、提示された物件の中で良いものを選ぶという形になりがちです。
 
これまで自分が住宅に住んできた経験などを活かして、こういう物件が借りられやすい、と判断する自信がある人には特におすすめです。
 

資産価値の下落が少ない

不動産は、台風や地震のような大規模災害以外にも、紫外線や潮風に代表される日常的な環境によって劣化します。
 
何かプレミアが付くなどの例外を除けば、基本的に物件の価値は購入した時から常に下がり続けることになります。
 
特に顕著なのが新築物件で、築10年程度が経過すると、資産価値は新築時のおよそ半分程度まで下落すると言われています。
 
資産価値の減少は様々な要因に影響されるため、一概にこうであるとは言えませんが、築15年から20年程度までは大きく減少しつづけ、その後安定することが多いです。
 
つまり、築20年程度の物件を中古で購入すると、年数経過による資産価値の減少を最低限しか受けずに済む可能性があります。
 
そうすると、上手くすれば物件を手放す時に、購入時とさほど離れない価格で売却することができます。
 
購入すればほぼ確実に資産価値が下落していく新築物件と比べて、非常にお得です。
 
購入額と売却額の間にそれほど差がないのであれば、諸費用を除いた物件収入がそのまま利益となります。
 
自分の所有している物件の資産価値が減少すると、どうしても精神的な負担になりますので、初心者が心に余裕を持つ意味でもおすすめです。
 

減価償却費をある程度恣意的に変更できるため、節税効果がある

不動産投資では、物件収入を得ることも当然大事ですが、節税対策を行えることも重大なメリットの1つだと意識しておく必要があります。
 
しっかりと節税対策を行えば、単純な家賃収入がそれほど得られていないケースでも、大きな経済的利益を生み出すことができます。
 
不動産による節税対策で意識するべきなのが、減価償却費です。
 
減価償却とは、不動産などの時間と共に価値が減少する物は、その物を使用可能な年数(耐用年数)にあわせて費用を計上しましょうとする考え方です。
 
例えば、耐用年数が25年間の商品を購入した場合、その費用は初年度だけでなく25年間に分けて費用計上可能です。
 
減価償却費は費用、すなわち会計上の赤字として計算されますので、節税対策に大きな影響を与えます。
 
ここで重要なのが、減価償却費は、時間と共に劣化するものにしか適応されない点です。
 
不動産を購入した場合、物件そのものは減価償却の対象ですが、土地は対象となりません。土地は、時間と共に劣化するものと考えられていないためです。
 
中古物件を購入する場合には、この点を理解しておくことで、上手に節税対策を行うことができます。
 
中古物件を購入するには、売主と交渉する必要があります。
 
この時に、合計の購入額を買えず、土地と物件の比率を物件が多めとして計算してもらうことで、減価償却費をある程度恣意的に高くすることができるのです。
 
よほど極端なことをしない限り、土地と建物の比率は売主との交渉によって自由に定めて問題ありません。
 
何かしらのルール違反ではなく、自然な交渉として考えられています。
 
なお、中古物件の場合、減価償却が終わるまでの年数が早いことは理解しておかなければいけません。
 
減価償却の期間は法律によって定められており、新築物件であれば木造は22年、軽量鉄骨造が27年、重量鉄骨造が34年、鉄筋コンクリート(RC)造が47年となっています。
 
これは、丈夫な材質で作られた物件ほど、長く使用できる(耐用年数が長い)という考え方によるものです。
 
中古物件の場合は少し複雑な計算が必要です。上記の定められた年数を既に過ぎた物件の場合、上記の耐用年数×20%が耐用年数となります。
 
例えば、鉄筋コンクリート造であれば、47(年)×20(%)=9.4(年)、小数点以下は切り捨てで9年となります。
 
一方で、上記の定められた耐用年数を過ぎていない物件の場合には、定められた耐用年数-経過年数+経過年数×20(%)として計算されます。
 
築20年の鉄筋コンクリート造であれば、47(年)-20(年)+20(年)×20(%)=31(年)です。いずれにせよ、新築物件の場合より短い期間で減価償却が終了します。
 
減価償却が終了すると、その年まで計上できていた費用が一挙になくなるため、翌年の税金が高額になる恐れがあります。
 
とはいえ、減価償却が時間と共に終わるというのは自然なことです。
 
あらかじめ、減価償却が終わった後どうするのか、資産運用の計画を立てておけば何も問題はありません。
 

入居者の居る状態で投資を始められることが多い

中古物件の大きなメリットとして、すでに入居者のいる状態で投資を始められることが挙げられます。
 
初めて不動産投資を行うときに、どれだけしっかりと計画を立てていても、本当にうまくいくだろうか、と不安に駆られるのは自然なことです。
 
特に新築物件の場合には、入居者のいない状態から始めることになりますので、本当に入居者が現れるのか、机上の空論ではないのか、と心配になります。
 
中古物件であれば、既に投資が行われている物件を購入することになりますので、入居者が居なかったらどうしよう、と心配する必要はありません。
 
物件を購入して、すぐに家賃収入を得ることができるのは大きなメリットです。
 
投資を行った直後は、少しでも早く実際に収入を得たいという気持ちになります。
 
そのような状況で、最初からある程度の収入が得られれば、落ち着いて投資を続けることが可能です。
 
また、質の良い入居者を引き継ぐことができれば、今後も継続して住み続けてくれると期待できます。
 
計算できる安定した収入を増やすことが、投資成功への第1歩です。
 

これまでの物件状況を確認できる

中古物件であれば、現在の物件状況をデータはもちろん、実際に目で見て確認することが可能です。
 
例えば、今の家賃はいくらで、どれだけの空室があるのか、空室が埋まっていない期間はどのくらいか、建物の修繕状況に不安はないか、といった不動産投資を行ううえで重要なポイントを確認してから投資を行うことができます。
 
家賃がわかれば周辺の物件と比較することもできますし、あわせて空室率を見ることで、周辺の物件と比べて割高なのに住人が多い、あるいは逆に割安なのに住人が少ない(何かしら物件に問題がある可能性がある)といったように、様々な分析を行う助けとなります。
 
また、前のオーナーの物件管理方法を教えてもらえることもあります。
 
現時点で、安定した収入の得られる物件であれば、前のオーナーと同様の物件管理を行うことで継続して利益を出すことが可能です。
 
特に、管理業者については自分で探そうとすると大きな労力がかかります。
 
様々な業者が存在する中から、信頼できる業者を見つけ出すのは困難です。
 
違約金がかかる場合もありますので、気軽に試してみるわけにもいきません。
 
なかには、伝手でなければ案件を受けない業者も存在します。
 
あらかじめ、前オーナーに紹介してもらうに越したことはありません。
 
また、購入予定の物件と、近隣住民の間でトラブルが無いか確認しておく必要があります。
 
騒音問題や異臭問題など、トラブルを抱えている場合、入居者の定着率が悪くなり空室が多くなるリスクがあります。
 
実際に中古物件の現状を確認する時には、どのような物件が借りられやすいのか意識しながらチェックを行うべきです。
 
例えば、単身用のマンションであれば、駅からの近さのような立地的好条件が重視されます。
 
ファミリー用マンションであれば、間取りの良さや、周囲の治安まで含めた住環境の良さが重要視され、単身用と比較して駅からの近さは重視されないことも多いです。
 
どのような層をターゲットとした物件なのか、ターゲットの喜ぶ魅力を備えているか、しっかりと分析しつつ物件を確認しましょう。
 

リノベーションによって資産価値を大きく向上させることができる

中古物件であれば、リノベーションを行うことで資産価値を劇的に向上させることが可能です。
 
リノベーションとは、今ある古い建物に大規模な工事を行うことで、新たな価値を付加し資産価値を向上させる取り組みです。
 
例えば、壁を取り壊して部屋の間取りを変更する、コンクリート壁をむき出しにするなどして室内のデザインを大幅に変更する、水周りの設備を一新する、天井を高くするなどのリノベーションが存在します。
 
一方、よく耳にするリフォームとは元に戻すための工事で、新たな価値を付加することは重要視されていません。
 
経年劣化によって痛んだ壁紙を張り替えるなどの工事を指します。
 
リノベーションは物件の価値が大幅に高まる可能性のある、いわば中古物件の切り札的存在です。
 
一見すると価値がない物件であっても、効果的なリノベーションを行う前提であれば、魅力的な物件となりえます。
 
ただし、むやみにリノベーションを行っても効果は保障されません。
 
床、壁、天井を弄ることで、防音性能が低下するなど不具合が起こる可能性もあります。
 
あくまで、自分がターゲットとする入居者層にとって魅力的かどうかを考えながら、リノベーションを行うことでデメリットはないか専門家に確認しながら検討することが大切です。

中古物件特有のデメリット

中古物件には上記のような特有のメリットがあります。
 
特に、物件価格が安いことや、最初から家賃収入を得られることは大きな特徴です。
 
一方で、デメリットも存在しますので、事前に理解しておくことが重要です。
 

想定外の修繕費用がかかることもある

中古物件の最大のデメリットは、修繕費用が高額となるケースがあることです。
 
新築物件と比較して、中古物件は購入した時に既に設備が劣化している状態で手に入れることになります。
 
しっかりと確認せずに、書類上の利回りだけを見て購入してしまうと、想定外の修繕費用がかかり、結果としてあまり利益を出すことができなくなる恐れがあります。
 
また、マンションを購入する場合には大規模修繕に注意が必要です。
 
大規模修繕とは、十数年に一度行われる、大規模な修繕工事です。
 
日常的に行われる、割れた窓や掲示板などを直すといった小規模な修繕ではなく、外壁を修繕する、ドアをリフォームする、水周りの設備のメンテナンスを行うといった大規模な修繕が行われます。
 
大規模修繕にかかる費用は、不動産の所有者が負担することになります。
 
修繕積立金と呼ばれる積立金をしっかりと居住者から集めている場合には、そちらから賄えることもありますが、マンションの管理組合によってはまるで足らないことも多いです。
 
しっかりした修繕計画が用意されているのか、どれだけの費用を自己負担しなければならないのか、購入前にしっかりと確認しましょう。
 
また、大規模修繕は費用がかかるだけでなく、工事期間が長くなることで居住者から不満が出たり、入居者が集まりにくくなったりするデメリットもあります。
 
そのほか、軽度な修繕であっても、修繕に必要な部品がなかなか見つからないなど、想定外の労力がかかる場合もあります。
 
事前に全ての出費を想定することは困難ですが、次の大規模修繕はいつなのか、組合や今の管理者はしっかりした人なのかなど、チェック可能な部分は充分にリサーチしましょう。
 

空室が埋まりにくいことがある

中古物件を購入する場合、物件によっては極端に空室が埋まりにくいことがあるので注意が必要です。
 
空室率が高ければ、当然家賃収入が少なくなり、投資額を回収することが困難になります。
 
また、人が住んでいないと物件は傷みやすくなります。
 
そのため、修繕費用がかさんでしまい、利益は生まないのに費用はかかるといった悪循環となりがちです。
 
なかには、意図的に空室率の高い物件を安く購入して、リノベーションなどを行い多額の利益生む手法もありますが、初心者が最初に不動産投資を行う方法としてはおすすめしません。
 
まずは、安定して家賃収入を得ることのできる物件から投資を始めることをおすすめします。
 

家賃が下がりやすい

中古物件の宿命として、新築物件に比べて家賃が安くなる傾向にあります。
 
物件が経年劣化すれば、家賃を下げなければ入居率を維持することは困難です。
 
新築であれば、そもそも件数が少ないために、多少価格が高くとも多めに見てもらえることも多いですが、中古物件であればシビアに判断されます。
 
とはいえ、人気のある物件であれば、例え中古物件であっても高額な家賃を設定することができます。
 
また、リノベーションによって家賃を引き上げる方法もありますので、一概に、中古物件だと家賃が低いというわけではありません。
 

融資の条件が悪くなりやすい

不動産投資を始める時には、大抵融資を受けて物件を購入することになります。
 
中古物件の場合には、この融資の条件が悪くなる傾向があります。
 
金利が新築物件を購入する時と比較して高くなったり、そもそも融資額が低くなったりすることが一般的です。
 
これは、金融機関が物件の耐用年数を元に資産価値を算出し、融資額を決めているためです。
 
中古物件は耐用年数が新築物件と比べて短いことが多いため、融資条件が悪くなります。
 
また、新築物件の場合にはフルローンを組めることがあります。
 
フルローンとは、頭金無しで商品を購入できるローンのことです。
 
手元に資金がなくても投資を始められるため、人気が高い融資方法ですが、中古物件の場合には利用することは困難です。
 
ある程度の頭金を用意したうえで、投資を開始することになります。
 

建物の崩壊時に賠償責任が存在する

地震や台風などの自然災害によって建物が崩壊したケースでも、物件の所有者に賠償責任が発生することがあります。
 
これは、民法によって根拠が定められています。
 
民法の第717条第1項、土地工作物の責任に関する条文によれば、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」とされています。
 
瑕疵とは、簡単に説明すると落ち度のことです。
 
つまり、災害などに対して所有者が充分な備えをせず、それによって被害者に損害を与えてしまった場合、所有者に賠償責任が発生します。
 
過去には、1995年の阪神・淡路大震災でマンション入居者4人が死亡した事案で、所有者に約1億2900万円の賠償命令が下されました。
 
建物の耐震性能に問題があった(瑕疵があった)ことが根拠となりましたが、このケースで重要なのは、所有者が建てた建物ではないことです。
 
所有者は中古で物件を購入し、賃貸物件として貸し出すことで家賃収入を得ていました。
 
つまり、たとえ所有者が手抜き工事をしたわけではなくても、耐震性能などの物件の安全面について責任を持たなければならないのです。
 
物件の安全性を確認するためにチェックしておきたいのが、新耐震基準を満たしているかどうかです。
 
1981年5月31日までの耐震基準は旧耐震基準、それ以降の耐震基準を新耐震基準と呼ばれ、区別されています。
 
それぞれ、旧耐震基準は震度5強まで、新耐震基準は震度7でも崩壊しないことが基準です。
 
新耐震基準を満たしていない物件だからといって、崩落すれば直ちに責任を問われるわけではありません。
 
当時の建築基準と照らし合わせて問題がなければ、責任は問われないと考えられています。
 
ただし、古い建物の場合、書面上では問題がなくても、実際に問題なく建築されているか確認することは困難です。
 
万が一、手抜き工事が行われていたとすれば、所有者が責任を問われる可能性もあります。
 
不動産投資初心者の間は手を出さないか、信頼できる不動産業者に相談することをおすすめします。
 

再建築不可物件が存在する

中古物件の中には、再建築不可物件というものが存在します。
 
再建築不可物件とは、法律上の理由で、現在の建物を壊した(あるいは壊れた)場合、新たに建築を行うことができない物件です。
 
建築基準法により接道義務が課せられるなどの理由から、このような物件が生まれてしまっています。
 
例えば、建物を建築した時には道路に面していたが、再開発などにより道路に面することができなくなってしまうと、再建築不可物件となってしまいます。
 
再建築不可物件について重要なポイントは、故意ではなく自然災害などで建物が崩壊したケースであっても再建築できない点です。
 
更地になってしまうと、建物がある状態と比べて固定資産税が高額になります。
 
そうすると、ただでさえ手放しにくい土地がさらに売却困難となり、売却できない間、延々と固定資産税を支払うことになってしまいます。
 
利用できない土地の税金のみを払い続けるのは、まさに悪夢です。
 
扱いが難しいために価格が安いものが多く、プロの投資家の中には好んで購入する人もいます。
 
ですが、初心者がいきなり手を出して利益を上げるのは困難です。
 
まずは、通常の中古物件で利益を上げてから、視野を広げていきましょう。
 

反社会的勢力のような、問題のある住人が住んでいる可能性がある

物件購入時から居住者が存在することは、安定した家賃収入の面から大きなメリットですが、一方でトラブルのもとになってしまうこともあります。
 
中古物件の場合、反社会的勢力のような問題のある住人が住み着いてしまっているケースがあります。
 
問題のある住人が住み着いていると、よくないウワサが流れてしまい、物件価値の下落や空室率の増加に繋がります。
 
また、自分自身がトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあり、デメリットは大きいです。
 
物件購入前に充分に調査しておく必要があります。
 

瑕疵担保責任が免責となるケースがある。

中古物件の場合、物件購入時に、前オーナーとの個人間の売買契約となることが多いです。
 
その場合、瑕疵担保責任が免責となる契約条項が含まれていることがあります。
 
瑕疵担保責任とは、購入後に何かしらの不具合が発生した時、売主がその責任を負わなければならないという決まりです。
 
瑕疵担保責任が有効であれば、たとえば、購入後に物件の漏水や傾き、腐食などの不具合が発覚した時に、売主に修繕費用を請求することができます。
 
売買契約時に、瑕疵担保責任の免責に同意していると、物件に不具合が発覚した場合でも、全て自分が費用を負担して修繕を行わなければいけません。
 
もし大規模な欠陥が発覚してしまうと、莫大な修繕費用がかかることになります。
 
瑕疵担保責任が免責になるのかどうか、免責であれば物件費用は値引いてもらえるかどうか、欠陥発覚時の修繕費用を考えても元が取れるかどうか、充分な交渉と考察が必要です。

まとめ

上記のように、中古物件による不動産投資には様々なメリットとデメリットがあります。
 
新築物件による投資と比べて、物件価格が安かったり、初期投資を回収しやすかったりと非常に魅力的です。
 
一方で、良くない物件を購入してしまうと、修繕費用が必要となったり、家賃収入は安定しないのに費用だけを払うこととなったり、最悪の場合、建物の崩落時に億単位の賠償責任が発生してしまうなど、初心者が不用意に手を出すと危険な面も存在します。
 
いきなり個人で不動産投資を始めるのは、現実的ではありません。
 
中古物件のデメリットの大部分は、プロである不動産会社の知識を利用することで防ぐことが可能です。
 
初心者では気づきにくい部分も、過去の事例を元に適切に対処してくれます。
 
まずは、信頼できる不動産業者に相談してみることが、投資の第一歩です。

このコラムを書いている人

マンション経営ラボ 編集者

マンション経営ラボ 編集者

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