税金の過納は単なるヒューマンエラーなのか

公開日2021/04/30
更新日2023/02/07

前回、前々回と、立て続けに税務当局の思惑について注意喚起を行なってきましたが、いささか腹の立つことがあったので、今回はコロナからいったん離れて、税金がらみのお話をさせてもらいます。
 
私の実家はアパート経営をしているので、確定申告をする必要があり、提出する前に念のため確認するのが私の役目になっているのですが、前年と比べて大した変動があったわけでもないのに、今年の税額が明らかに多すぎる。
 
よくよく調べてみると、年金から差し引かれるべき控除額を、なぜか年金所得額として申告しようとしていたことが分かったのはいいものの、今年の確定申告の手引きが、ぱっと見ただけでは計算間違いしそうな表記に変わっていて、これは確信犯なのではないか、と疑い始めたら、腹立ちが止まらなくなりました。
 
世間知らずの婆さんをだまして、税金をむしり取ろうとする術策にしか見えなかったからです。
 
この計算間違いで税金をむしり取られそうな対象はごくごく限定的であり、一家の大黒柱に先立たれ、少額の年金しか受給はしていないが、確定申告をする必要のある人に限られます。

毎年のように改訂される確定申告手引書

ご存知のとおり、ただ年金を受給しているだけなら、確定申告の必要はありません。
 
不動産収入などの副収入がある場合に、その必要が生ずるわけで、確定申告でもしようとするほどの人間なら、お金には困っていないのだろうから、間違って納めてくれれば拾い物、みたいな感覚なのではないかと疑いたくなるくらい、今年版の申告手引書は分かりづらい改訂がされているのです。参考までにご覧ください。

 

■令和元年の手引書

 

■令和二年の手引書

 

ダイナミックな改訂です。
 
毎年のように改訂される手引書を見て愕然としたのはこれが初めてではなく、今を遡ること17年前、控除額で50万円、税額にして5万円の高齢者控除が、忽然と消滅したことがありました。
 
同年の税制改正では、定率減税という納税者への恩恵分ばかりがクローズアップされていたので、団塊の世代が一気に高齢者の仲間入りをするのに先駆けて、さらっと先手を打ってくる税務官僚の賢さに感心した記憶が強烈に残っています。
 
そんな前史があるので、今回も、税制の大幅改定に乗じて、汚い手を打ってくるなぁ、と思った次第です。

税金還付の時効は5年

さらに頭にきているのは、仮に過納したとしても、5年経過すると時効が成立しちゃって、還付してはもらえない、というリアルな体験を、つい最近味わったからです。
 
私は、今の会社に入る前の1年弱、介護離職をしており、前職を辞めた年の住民税が未納になっていました。
 
大して働いていなかった年なので、どうせ大した額でもあるまいし、と、しばらくほったらかしていたら、だんだん請求内容が過激になってきたので、世田谷区役所に赴いたところ、50万円弱の未納税額を提示され、そんな額になるわけないだろう、とさんざん抗ったものの押し切られ、泣く泣く分割で完納したのが1年半前のこと。
 
ところが、これが請求ミスだと今年になってから判明したのです。
 
コロナの巣ごもりで書棚の片づけをしていたら、該当年の課税通知書が出てきて、なんと、給与所得とまったく同額の不動産所得が印字されているではありませんか。
 
不動産所得については、赤字申告の経験こそあれ、百万超えの黒字にした覚えなどありませんし、給与所得と同額なぞという偶然が起きるはずもないのですから、誰がどう見ても、これはヒューマンエラー以外のなにものでもないでしょう。
 
さすがに、意図的に間違えてみた、とまでは疑いたくないですが、可能性はゼロではありませんよね。
 
勇んで役所に駆けつけ、事の次第を説明したわけですが、恐れ入るかと思いきや、頑なにミスだとは認めようとしないばかりか、前述したように、仮にミスが立証できたとしても、時効になっているので、還付はできないと居直られてしまったので、どこかの週刊誌にでもネタを売ってやろうかと思っているところなのです。
 
以上、お上はすべて正しい、と思っていると、とんでもない目にあうというお話でした。

このコラムを書いている人

中村 彰男

中村 彰男

1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、37年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー

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