J-REITと海外REITの違いって?メリット・デメリットをご紹介
【目次】
日本REITと海外REIT
REIT(=上場不動産投資信託)と呼ばれる金融商品があります。
手軽に不動産に投資できる方法の一つとして知られていますが、実はJ-REITと呼ばれる日本のREITと海外REITに大きく分けられることをご存知ですか?
しかし、J-REITと海外のREITの違いは、あまり詳しく知られていません。
もちろん、REIT=上場している投資信託という認識は、日本でも海外でも同じです。
しかし、それぞれに特徴があり、J-REIT・海外REITそれぞれにメリット・デメリットがあります。
今回はそうした国内REITと海外REITの違いなどについて深掘りしてみましょう。
J-REITと海外REITの範囲の違い
そもそも、J-REITと海外REITは何が違うのか?という話ですが、基本的に日本国内で運用されるREITのことをJapan-REITと呼びます。
これを略してJ-REITと表記するだけで、その他は海外REITと総称するので、海外REITの中には実にさまざまな地域のREITが含まれるのです。
海外REITは、地域だけで分けても「米国REIT」「欧州REIT」「アジアREIT」などに分かれます。
そして、アジアREITの中にも香港REITやシンガポールREITなどが存在し、規模としてもっとも大きいのは米国REITです。
つまり、一口にREITと言っても、まずは「日本国内で運用されているのか」「そうでないものか」が投資の分かれ目。
さらにREITは、その投資対象となる不動産の種類や資産運用会社、そのスポンサーによって細分化されます。
J-REITのメリット
日本国内で運用されるJ-REITですが、特に日本の個人投資家にはメリットがあります。
日本から投資をする場合には利点も多いので、総合的に判断して投資するかどうか検討したいところです。
証券会社の取り扱いが多い
まず、J-REITはREITを取り扱う日本の証券会社であれば、基本的にどこでも購入できます。
現在J-REITは64本ほどありますが、ネット証券などで手軽に注文できるのが大きな魅力。ネット証券経由であれば、スマホ1台で売買できます。
そして、REITは上場しているので、リアルタイムで取引が可能です。
日々基準価額が変動していますが、自分のタイミングで投資タイミングを選ぶことができます。
常時取引が行われているため、手間もかからず換金性も高い点は大きなメリットと呼べるでしょう。
少ない資金でできる&分散投資が手軽
J-REITは、少ない資金で始められる不動産投資です。
従来の不動産投資は、どうしても多額の資金が必要でしたが、REITならば数十万円の金額で購入できる上に、不動産の分散投資も可能です。
J-REITには、ホテル系や物流施設系、オフィス系や賃貸住宅系など、多様な物件を扱うREITがあります。
それゆえ、複数のJ-REITを保有するだけで、不動産の分散投資ができると言っても過言ではありません。
J-REITの中にはこれらの複合型REITもあるので、手軽な分散投資先としても魅力的です。
市場の歴史は浅いが上場廃止は少ない
実は、J-REITは2001年にサービスが開始になった市場の歴史からいくと、まだ新興市場です。
20年ほど市場が運営されていますが、不動産のプロが運用をしているということもあり、透明性の高い取引が行われています。
REITには上場廃止リスクがつきまといますが、実はJ-REITの中で上場廃止となったのは、今のところプロスペクト・リート投資法人の1件のみです。
これまでリーマンショックをはじめ、東日本大震災や今回のコロナショックなどの経済危機がありましたが、J-REITの多くは不動産価値を高めるなどの対処をして、安定的な運用を実現してきました。
上場廃止リスクが少ないという点では、初心者でも始めやすい投資先といえます。
情報収集がしやすい
J-REITの良さといえば、なんといっても情報収集のしやすさです。
いざとなればREITが投資している投資物件を見に行くことも可能な上に、日本人として土地勘や景況感を肌で感じることができるので、売買の判断材料が豊富で取引しやすいのがメリットです。
また、近年は資産運用会社によるセミナーなどもあり、具体的に分かりやすい資料でJ-REITの内容や収益構造などを解説してくれています。
資産運用会社は決算報告書を提出する義務があるので、定期的に内容をチェックすることができますし、動画配信での説明会も積極的に行われているので、個人投資家として得られる情報が多いのも大きな利点といえます。
J-REITのデメリット
日本人だからこそ、日本語の資料にも明るく情報収集もしやすいJ-REIT。
しかし、もちろんデメリットもいくつか存在します。
利回りが必ずしも高いわけではない
全体的に高利回りが人気のJ-REITですが、年利はおよそ4%と、必ずしも海外REITより高いとは言えません。
また、最近は投資信託を筆頭に、100円から購入できる金融商品も充実しています。
REITは自分で現物の不動産を運営・管理する手間がかかりませんが、その分資産管理をしてくれるアセットマネジメント会社や物件管理をしてくれるプロパティーマネジメント会社に手数料を支払う必要があります。
それゆえ、利回りよりも利益率が低くなるので、必ずしも高いリターンを期待できる保証はありません。
日本の不動産リスクがつきまとう
J-REITは、基本的に日本の不動産を保有することになるので、日本特有の災害リスクを考慮する必要があります。
山火事や地震など、他の国では起きにくい不動産リスクと向き合わなければなりません。
日本人投資家として、情報は得やすいものの、地震リスクは他の地域に比べると高いといえるでしょう。
経済情勢の影響を受けやすい
不動産価格は、どうしても経済情勢の影響を受けやすいもの。
物流施設系のREITなどは不況に強いと言われることはありますが、コロナ禍のような事態に見舞われると、どうしても下落基調になります。
個人の投資家ではどうしようもない事態で、収益性が悪化する可能性も0ではありません。
海外REITのメリット
海外の不動産に手軽に投資できる
海外REITのメリットは、なんといっても海外の不動産に手軽に投資できることです。
特に、海外の不動産に投資するとなると、物件の選定から各国の法規制の確認などをしなければいけません。
もし現物不動産投資であれば、現地に赴いて物件のメンテナンスなどをしなければならないなど、多大な労力がかかることになります。
こうした手間を一切引き受けなくて済むのが、海外REITのメリットです。
最近は投資信託の一部に組み入れられているので、100円〜手軽に投資できるものも増えてきました。
日本以外の地域へ分散投資できる
J-REITは基本的に日本国内の物件を扱うため、規模や収益性が限定されてしまいます。
しかし、海外REITでは、日本以外の土地にある物件に投資できるので国際分散が可能となるのが大きな魅力です。
また、通常J-REITで扱うホテルやオフィス、商業施設などの大型物件以外にも、さまざまな土地を投資対象としているのが大きな魅力です。
例えば、森林REITやデータセンター・セルタワーなど、日本では投資できない投資物件に投資できます。
データーセンターとは、2012年以降から登場してきたREITの1つで、ネットワークサーバーなどの設備に特化した建築物のこと。
大容量のデータや機密情報を保有することになるので、トレンドの投資先として注目を集めています。
そして、セルタワーとは、無線電波塔のこと。
セルタワーを保有・管理して複数のテナントに貸し出すことによって賃料を得るREITとなるため、今後の需要が見込める投資先となっています。
また、日本では0.9%の市場規模しかないヘルスケア施設の割合が、9.2%と高いのが特徴です。
ヘルスケア施設には、シニア住宅や医療用ビル、高度看護施設などが含まれます。
これらは施設賃貸借契約なので、長期で安定的な収益が期待できます。
今後、保険料などの変動はありますが、誰もが高齢となり、ヘルスケア施設の利用が増加することが見込まれていて、長期投資家から注目を集めているのだそう。
それゆえ海外REITを保有することで、投資物件の分散投資も可能となります。
特に日本よりも投資環境が整っている米国では、200以上のREITが取り扱われています。
米国以外は、市場規模として日本ほど大きい地域はありませんが、イギリスが60本程度と日本と同程度、オーストラリアで50本近く、フランスで30本前後。
複数あるREITの中から、投資先を選定することができます。
高い利回りを見込める
海外REITは、株式のリターンよりも比較的高いリターンが見込めると言われています。
REITはその商品の特性上、収益の90%以上を投資家に還元する必要があり、これは万国共通のシステムです。
その上、日本では安定した収益を生み出す賃貸業などが主流ですが、海外のREITにはそうした法規制がかかっていないので、J-REIT以上に高利回りの商品が存在することも。
ただし、イールドカーブ(投資利回り-借入金の金利)を計算すると、J-REITの方が利回りが良いケースもありえます。
時期などによってイールドカーブの数値は異なりますが、借入金を利用してREITに投資をする場合は注意が必要です。
海外REITのデメリット
海外特有のリスクを負うことになる
海外REITの最大のデメリットと言えば、やはり日本の物件とは異なるリスクがあることでしょう。
海外の情報を得るのは簡単ではありませんし、値動きの面でもどういった要因で株価が変動するかを正確にとらえることは難しいです。
もちろん、為替リスクにもさらされるので、たとえ収益を得られたとしても得られる利益が他の投資に劣ることは少なくありません。
為替の変動を受けるために、トータルでリターンが出たとしても、手元に残るのはマイナスといったことも起こりえます。
また、自然災害リスクとしても、日本にはない災害に見舞われることがあります。
米国などは地域によりますが、ハリケーンなどの被害が報告されており、”海外=自然災害リスクは0”ではありません。
手数料などがJ-REITよりも高いことが多い
高利回りが人気の海外REITですが、REIT自体にさまざまな手数料がかかるため、収益性の面で本当にリターンが得られるかどうかはしっかりと確認する必要があります。
売買手数料の他、解約時に支払う信託財産留保額があります。
特に気を付けたいのがREITを保有する期間中にかかる信託報酬。
いわゆる管理手数料と呼ばれるもので、年率で算出されます。
ランニングコストとして、海外REITは0.5%以上かかるものが多いので、入金額がある程度ないとかなり収益性が低くなる可能性があります。
J-REITほど手軽に買えない
J―REITが証券会社でREITとしてリアルタイムで購入できるのに対し、海外REITの場合は、直接REIT自体を購入できる機会が少ないです。
日本の証券取引所で取引する場合は、海外REITを組み込んだ投資信託やETFを購入する形になります。
つまり、欲しいREITのために他の金融商品にも投資しなければならない可能性も。
それゆえ、自分の思う通りに投資ができない可能性も出てくるでしょう。
また情報収集の面でも、日本のサイトでは情報に限りがあります。
英語などが堪能でないと現地の正確な情報がわからないため、英語に精通していないとかなりハードルが高いかもしれません。
時間もかかるので、手軽に投資がしたいという人には不向きな金融商品といえます。
コロナ禍などで下落が激しい
そして、海外REITは、他の投資に対して下落率も大きいことが明らかになりました。
コロナ禍の中、3月の1ヶ月間で、米国REITはすべて下落しました。
J-REITも下がりましたが、J-REITの下落よりもその下落率は高く、特にホテル・リゾート系のREITの下落は大きかったです。
REIT市場は、基本的にアメリカやオーストラリアといった広大な土地がある国々でさかんな反面、世界的に大きなイベントの影響も受けやすいといった特徴があります。
J-REITと海外REITの情報まとめ
J-REITも海外REITも、個人投資家ではなかなか手の届かない不動産に投資できるのが大きな魅力です。
日本人投資家にとっては、日本に居住している分J-REITへの投資判断はしやすい利点がありますが、大きなリターンや新しい投資先を物色したい場合は、海外REITを検討するのがおすすめです。
しかしながら、REIT全般に言えることですが、REITには手数料がかかります。
諸経費を含めると株式への投資のリターンの方が上回るといった可能性もあるので、投資には慎重になる必要があります。
このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
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