アパート経営の収入収支の内訳

公開日2019/11/12
更新日2022/12/05

アパート経営の収入

アパート経営を現在行っているときは、別のアパートの家主の収入は気掛かりになるでしょう。
 
投資家によってアパート経営のローンの金額も違うので、実際にどの程度の収入があるかはわかりません。
 
ここでは、アパート経営の収入についてご紹介します。

アパート経営の統計からみる収入

アパート経営で収入がどの程度あるかは、残念ですが、正確にははっきりしません。
 
しかし、毎年不動産所得を国税庁が公表しているので、このデータから推定することができます。
 
不動産所得というのは、アパート経営などを個人が行ったときに獲得できる所得です。
 
日本国内の平均の不動産所得額は、平成28年の国税庁が公表した申告所得税標本調査結果によれば、512万円になっています。
 
この平均の不動産所得額の中には、アパート経営だけでなく、オフィスビルやワンルームマンションなどの経営も含まれています。
 
アパート経営は、最も不動産所得の一般的なパターンであるため、平均の不動産所得の金額がアパート経営の所得からそれほど離れていないと推定することができます。
 
日本全国で不動産所得を獲得している人は約110万人で、所得ごとの内訳は次のようになっています。
 
・100万円以下が7.8%
・100万円超200万円以下が20.3%
・200万円超300万円以下が16.9%
・300万円超500万円以下が23.1%
・500万円超1,000万円以下が21.3%
・1,000万円超2,000万円以下が7.9%
・2,000万円超5,000万円以下が2.3%
・5,000万円超が0.3%

 
不動産所得を獲得している人は、300万円超500万円以下と500万円超1,000万円以下の割合が多く、アパート経営の家主はこの辺りに集まっていると考えられます。

所得と収入は同じではない

アパート経営においては、所得と収入は同じではありません。
 
ここでは、アパート経営の収入を把握するために、不動産所得と税金についてご紹介します。
 

不動産所得

不動産所得は、そのまま収入になるということではありません。
 
サラリーマンの給与所得はそのまま収入になりますが、不動産所得は必要経費を賃料収入から差し引きしたものになります。
 
不動産所得は、トータルの収入額から必要な経費を差し引きしたものです。
 
トータルの収入額というのは、賃料収入のことです。
 
必要な経費というのは、次のようなものになります。
 

  • 「租税公課」は固定資産税、不動産取得税、償却資産税、印紙税、登録免許税、事業税など
  • 「損害保険料」はアパートにかかる地震保険、火災保険など
  • 「修繕費」はアパートや設備の修理費、入居している人が入れ替えときに必要なメンテナンス費
  • 「委託管理費」は不動産管理会社に払う費用
  • 「手数料」は不動産業者に払う仲介手数料
  • 「宣伝広告費」は募集するときの広告費など
  • 「家賃・地代」はアパート経営が借家、借地のときの賃料
  • 「水道光熱費」は共用部分にかかる水道光熱費
  • 「通信費」はアパート経営かかる電話代・郵便代など
  • 「消耗品費」は文房具代など
  • 「減価償却費」はアパートや設備などの減価償却分
  • 「ローン利子」はアパートなどの賃貸部分を買ったときのローンの利息額など
  • 「ローン保証料」は保証機関や保証会社を使ったときの保証料
  • 「青色事業専従者給与」は生計を青色申告者と一緒にする扶養親族を除いた人の給与など
  • 「賃金・給料」は社員の給料・ボーナス・退職金など
  • 「解体費」は建て替えするときの取り壊し費用
  • 「立ち退き料」は建て替えるときの立ち退き料

 
不動産所得を獲得すれば、住民税と所得税の税金がかかります。
 
税金の税率については、別の所得の給与所得などとトータルした上で決定されます。
 
そのため、どの程度税金がかかるかは、別の所得とトータルしないとわかりません。
 
所得税の税率は、累進課税制度という大きな所得になるほど高くなるものを使っています。
 
累進課税制度の所得税の税率は、次のようになっています。
 
課税される所得額が195万円以下のときは税率が5%、控除額が0円
課税される所得額が195万円超330万円以下のときは税率が10%、控除額が97,500円
課税される所得額330万円超695万円以下のときは税率が20%、控除額が427,500円
課税される所得額695万円超900万円以下のときは税率が23%、控除額が636,000円
課税される所得額900万円超1,800万円以下のときは税率が33%、控除額が1,536,000円
課税される所得額1,800万円超4,000万円以下のときは税率が40%、控除額が2,796,000円
課税される所得額4,000万円超のときは税率が45%、控除額が4,796,000円
 
その他、住民税の税率は10%で一律になります。
 
例えば、不動産所得がアパート経営によって400万円あったとしましょう。
 
500万円の給与所得のときは、900万円にトータルの所得がなるので、23%の所得税の税率になります。
 
一方、600万円の給与所得のときは、1,000万円にトータルの所得がなるので、33%の所得税の税率になります。
 
不動産所得が同じでも、所得税の税率は別の所得額によって違ってくることを把握しておきましょう。

キャッシュフローと収入の関係

キャッシュフローが、最終的なアパート経営における収入になります。
 
ここでは、キャッシュフローと収入の関係についてご紹介します。
 

キャッシュフロー

アパート経営においては、キャッシュフローが最終的にどの程度になるかが大切です。
 
キャッシュフローというのは、財布の中に最後に残るお金です。
 
キャッシュフローは、不動産所得から税金と減価償却費、借入金の元本の返済額を差し引きしたものです。
 

減価償却費

減価償却費は、不動産所得を算出するために必要なものです。
 
減価償却費とは、会計上の費用としてアパートを取得した原価をそれぞれの会計期間に規則的、計画的に配分するものです。
 
費用ということでも、毎年お金が実際に支出されるということではありません。
 
減価償却費は、アパート経営の投資額を一気に初めの年度に会計上の費用にしないで、法定耐用年数といわれる期間中、少しずつ配分したものになります。
 
アパートの構造によって、法定耐用年数は決まります。
 
法定耐用年数は、木造のアパートであれば22年になります。
 
例えば、4,400万円のアパートの建築費のときは、アパートの取得費が22年間かけて配分されるので、減価償却費として約200万円が毎年計上されます。
 
この200万円は、財布の中に残っているお金で実際には出ていかないものです。
 
例えば、キャッシュフローを600万円の不動産所得、258万円の税金、200万円の減価償却費のようなケースについてご紹介します。
 
残っているお金としては、税金を不動産所得から差し引きしたものであると考えたいところですが、不動産所得の減価償却費は、お金として実際に出ていったものではないので、残ったお金を計算するときは足し戻すことが必要です。
 
そのため、財布に残っているお金としては、不動産所得から税金を差し引きしたものに減価償却費をプラスしたものになります。
 
具体的には、600万円の不動産所得から258万円の税金を差し引きしたものに200万円の減価償却費をプラスした542万円になります。
 

借入金

借入金の返済する元金に関しては、不動産所得を算出するための必要な経費ではありません。
 
必要な経費としては、ローンの利息がありますが、これは基本的に利息の部分のみであり、返済する元本の部分は関係ありません。
 
収入としては借りたお金は対象になりません。
 
借りたお金がもし収入になると、お金を借りれば利益が大きくなって税金が莫大にかかるようになります。
 
しかし、お金を借りたときはこのように税金が莫大にかかることはありません。
 
これと同じように、費用としては返したお金は対象になりません。
 
費用にもしなると、儲けが小さくなって、節税できるようになります。
 
借りたときに税金がかからなかったため、返したときに税金が節約できないということになります。
 
そのため、借入金の返済する元本の金額は、不動産所得が小さくなるという必要な経費にはなりません。
 
しかし、借入金の返済する元本の金額は、減価償却費とは違って、実際に財布から出ていくお金です。
 
例えば、先にご紹介した条件にプラスして、借入金の元本の年間の返済額が300万円のときのキャッシュフローについてご紹介します。
 
不動産所得は600万円、税金は258万円、減価償却費は200万円、借入金の元本の返済額は300万円とします。
 
キャッシュフローは、実際に出ていく借入金の元本の返済額は差し引きする必要があります。
 
つまり、キャッシュフローは、不動産所得から税金と借入金の元本の返済額を差し引きして減価償却費をプラスします。
 
具体的なキャッシュフローは、600万円から258万円と300万円を差し引きして200万円をプラスした242万円になります。
 
アパートの家主の収入としては、最終的にこのようなキャッシュフローが残ります。
 
キャッシュフローは、借入金が多いと少なくなり、借入金が少ないと多くなります。
 
このように、借入金の金額によってもアパートの家主の収入は違うことを把握しておきましょう。

アパート経営の収入を多くするポイント

アパート経営のときは、いかに収入を多くするか、また、いかに支出を少なくするかがポイントになります。
 
では、アパート経営はどのような収入と支出があるのでしょうか?
 
ここでは、アパート経営の収入と支出についてご紹介します。
 

アパート経営の収入

アパート経営の代表的な収入としては、入居している人から獲得できる家賃、つまり賃料収入があります。
 
家賃は、アパートがある場所によって大きく変わります。
 
家賃の設定額は、築年数が同じアパートでも地方と都心部では変わるため注意しましょう。
 
また、家賃は滞納している人や空室からは獲得できないため、アパートの稼働率をいかにアップするかが大切です。
 
これ以外の収入としては、共益費や駐車場代、入居するときや更新するときに獲得できる一時金としての権利金・礼金・更新料などがあります。
 
このような一般的な収入以外にも、付加価値をアパートにプラスして収入を多くしている家主もいるようです。
 
例えば、自動販売機を駐車場の中に設置したり、屋根に太陽光発電を取り付けたり、ペットの猫などが飼えるようにしたりするなどがあります。
 
このような差別化は、別の物件と激しい競争があるエリアでは入居する人を確保する対策にもなります。
 

アパート経営の支出

アパート経営では、アパートを買うときに、登録免許税や不動産取得税などのいろいろな税金、保険料、不動産業者に支払う仲介手数料など、いろいろな支出があります。
 
さらに、維持する経費としては、不動産管理会社に支払う管理費、部屋の中の修繕費、入退去するときの原状回復費用などがあります。
 
しかも、ある程度のアパートの築年数になれば、外壁塗装費や防水工事費などもかかります。

アパート経営の年収を多くするポイント

高い稼働率を継続的に保っていくことが、アパート経営の年収を多くする最も大きなポイントです。
 
いかに魅力があるアパートを買っても、入居する人がいないと全く礼金も家賃も更新料も獲得できません。
 
そのため、空室にならないように長期間入居してくれる人を多くすることが必要です。
 

安定したアパート経営を目指す

アパート経営は、初めの1棟の経営を安定させることが大切です。
 
確かに持っているアパートが多くなると収入はその分多くなりますが、アパート経営は入居している人の事情によって入退去があるため、年間を通じて稼働率をアップさせることが必要です。
 
エリアによっても違いますが、年間通じて90%以下の稼働率のときは、新しいアパートを買うよりも、現在のアパートの稼働率をアップさせることに集中する方がいいでしょう。
 
特に、入居している人からのクレームなどに対しては、迅速に夜間でも昼間でも応対してくれる不動産管理会社を選択して、入居している人の満足度をアップして続けて使ってくれるように努力する必要があります。
 

持っているアパートの棟数を多くする

持っているアパートと規模が同じアパートを買い足すことができると、単純に考えても倍の収入になります。
 
しかし、収入が多くなるとともにリスクも多くなることに注意する必要があります。
 
アパート経営で想定されるリスクはいろいろありますが、空室リスクは特にアパートが多くなるにつれて増えるため、全体のアパートの稼働率を判断した上で検討を慎重に行う必要があります。
 

アパート経営の経費を見直す

また、アパート経営の経費で低減できるものがないか見直すことも大切です。
 
例えば、管理会社によって支払う管理料は違いますが、相場は月額家賃の3%〜5%です。
 
いいサービスを安い管理料で提供してくれるような不動産管理会社を探すと、費用低減ができて大きく年収もアップします。

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このコラムを書いている人

マンション経営ラボ 編集者

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