リロケーションのシステムを徹底解説!途中解約は可能?
リロケーションとは?
転勤や住み替え、実家への帰省などで、急に持ち家に住むことができなくなったという人にオススメしたい「リロケーション」。
リロケーションとは、一時的に住む人がいなくなった持ち家を賃貸物件として貸し出すことで、英語のrelocationに由来しています。
リロケーションは通常の賃貸と違い、居住期間が契約時に決められています。
そのため、何年間も貸し出す必要はなく、家を空ける期間だけ賃貸物件として貸し出すことができます。
かつては一部の大手企業が、転勤で長期間家を空ける社員のために留守宅を借上げ、他の社員に貸し出す「借上社宅制度」を取っていました。
そのため、留守宅が賃貸市場に出ることはほとんどなかったのです。
また一般の賃貸市場に出すと、「転勤から戻った時に家を明け渡してもらえる」という保証がないため、リスクが大きく賃貸に出す人はほぼいませんでした。
2000年以降に増えたリロケーション
そんな中、1992年に借地借家法に、期限付借家権が創設されました。
2000年には定期借家制度が施行され、期限を付けて貸し出すことができるようになったので、貸主側のリスクが減ったのです。
そのため2000年以降、リロケーションを利用する人の数が増えてきました。
現在ではリロケーションを専門に取り扱う会社もあり、市場が拡大しています。
今回は、リロケーション物件のメリット・デメリットを、貸主・買主それぞれの目線でご紹介します。
リロケーション:貸主側のメリット
家賃収入を得ることができる
リロケーションを利用する一番のメリットは、家を貸し出して家賃収入を得られることです。
自宅に住めない期間、空き家にしておけば利益は発生しません。
そればかりか、ガスや水道、電気といったライフラインの契約を止めていなければ、基本料金だけがかかってしまうので、支出しかありません。
しかし、リロケーションを利用し留守中に家を貸し出せば、家賃収入を留守の期間中受け取ることができます。
ローンの返済が残っている場合は、家賃収入をローンの残債に充てることもできるでしょう。
ローン完済済みの場合は、家賃収入が副収入となります。
入居者がライフラインの支払いを行うので、貸主に支出もありません。
家の手入れを代わりに行ってもらえる
家は人が住むことによって、劣化のスピードが緩やかになります。
逆に誰も住まなくなると、急激に劣化します。空き家は空気がこもり、湿気・カビが繁殖しやすくなるからです。
そのため、空き家として放置するよりも人が住んでくれる方が、家が傷みにくいと言われています。
庭付きの家では、入居者が草取りや庭木の手入れを行ってくれるので、雑草や草木が伸びて庭が荒れ果ててしまうのを防げます。
人が住んでいると生活の中で自然と換気もされるので、カビや床の痛みも軽減されるでしょう。
リロケーションを利用すると、自分で家の手入れをしなくても、家の資産価値を維持し続けることができます。
また防犯面からも、空き家よりも人が住んでいる方が安心です。
放火や空き巣を筆頭に、犯罪の温床になってしまう可能性がある空き家は、近隣住民にも不安を与えかねません。
リロケーションを利用して人に住んでもらえば、ご近所さんも安心でしょう。
資産である持ち家を活用できる
「夢のマイホーム」と言われるように、マイホームが賃貸よりも想い入れが強くなるのは当然のこと。
家は資産でもあるので、少しでも長く保持したいという気持ちも強いでしょう。
しかし気持ちとは裏腹に、転勤先から家を管理するためだけに自宅に戻るのは負担が大きいです。
家を所有しておくと毎月のローンの返済にも追われ、各種税金の支払いもあります。
保持したいと思っていても、維持することが難しく、売却という選択肢をとらざるを得ないこともあるでしょう。
しかし、リロケーションを利用すれば家賃収入でローンを返済できる上に、家の手入れも入居者が行ってくれるので、自宅を手放す必要がありません。
つまり資産を活用しながら、維持費も捻出できるのです。
家を資産として持っておけば、将来子供に相続させたり、売却し現金化することもできます。
将来的に自宅に戻ることができる
リロケーションは、決まった期間だけ自宅を貸すシステムなので、転勤や出向期間が終われば、再び自宅に戻ることができます。
通常の賃貸契約では、原則2年ごとに契約の更新があり、契約期間中や契約が更新されてしまうと、自宅に戻ることができません。
しかし、リロケーションであれば、契約の更新がなく定められた期間を満了すれば入居者の退去が義務付けられています。
そのため自宅に戻りたくても、入居者が出て行ってくれないと悩むことがありません。
管理を全て代行できる
最近では、リロケーションを専門に取り扱う管理会社が増え、こうした会社に自宅の管理を委託すれば、入居者からの問い合わせなども代行してもらえます。
設備が故障したり、修繕が必要になった場合、入居者からいつ管理に関する連絡が入ってくるか分かりません。
自身で対応しようにも、転勤先が遠い場合は、現場に駆けつけることが困難です。
入居者からの連絡の中には、水漏れなどの緊急性の高い問い合わせもあります。
そんな時、リロケーション管理会社に管理を依頼しておければ、問い合わせは全て管理会社が処理してくれます。
面倒なクレーム対応や家賃滞納者への家賃の取立ても行ってくれるので、自宅のことや賃貸運営に悩む必要はありません。
リロケーション:貸主側のデメリット
住宅ローン減税が受けられなくなる
住宅ローン減税は住宅ローンを利用し、マイホームを購入する際に利用できる減税措置のこと。正式には住宅借入金等特別控除と言います。
住宅ローン減税(控除)では、該当する物件にローンを組んだ本人、もしくはその家族が住むことが前提になっています。
そのため、賃貸として貸し出す場合は減税対象から除外され、ローンの返済費が上がります。
将来的に家に戻りローンを組んだ本人、もしくは家族が再び住み始めると、住宅ローン減税はその時点から再適用されます。
ただし、住宅ローン控除は、居住開始から10年間のみしか受けることができません。
再び家に戻った際に、10年の期間を過ぎていると再適用の対象にはならないのです。
例えばマイホーム購入から5年後に、5年間の転勤を言い渡され家を空けたとしましょう。
この場合、5年後に戻ってきても、その時点でマイホーム購入から10年経過しているので、減税措置の対象にはなりません。
減税されるのは、実際に住んでいた5年間だけです。
また自己都合による転職や再就職、親の介護などで居住場所が変わる場合は、再適用の理由として認められません。
原則住宅ローン減税が再適用されるのは、出向や会社命令による転居のみ。
住宅ローン減税は空き家にしても減税の対象にはならないため、長期間住めないのであれば、少しでも収入に繋がる賃貸としての貸し出しをオススメします。
固定資産税や管理費の支払いが必要
リロケーション期間中に発生する固定資産税・都市計画税は、所有者である貸主が支払う必要があります。
また自宅を貸し出す上では、建物の管理も必要です。
建物に修繕が必要になったり、設備が故障した場合は、貸主が修繕・修理代を支払わなければなりません。
管理をリロケーションの管理会社に委託する場合は、委託料の支払いも必要です。
ただし、賃貸として貸し出しておけば毎月の家賃収入で、こうしたランニングコストを補填できるでしょう。
家がボロボロになる可能性もある
入居者の家の使い方は、住んでみないとわかりません。
使い方が悪く、意図的ではないものの壁紙を剥がれてしまったり、床に傷がついてしまうこともあります。
退去した後はハウスクリーニングやリフォームが必要な箇所もあります。
目に見える傷など家の消耗については、退去時に修繕費用を請求することが可能ですが、自宅に想い入れがある人は、退去後の家の状態を見てショックを受けることもあるでしょう。
リロケーション:借主側のメリット
2年毎に支払う更新料が不要
通常賃貸で物件を借りると、2年を境に更新の手続きを取らなくてはいけません。
その際には、更新料の支払いも必要になります。
しかし、リロケーションの物件であれば、最初に何年間の賃貸であると決められているので、原則更新は不可能なので、更新料の支払いは不要です。
例えば5年契約の場合、5年間後には必ず退去しなければいけませんが、2年毎の更新料が不要になります。
家賃が相場より安いケースが多い
リロケーションの物件は、何年間しか住めないという縛りがあるため、通常の賃貸の家賃相場よりも、2~4割ほど安い賃料で貸しに出されています。
どれほど安くなるかは、物件の築年数や大きさといった諸条件によって変わってきます。
しかし、通常の賃貸物件よりお得に借りることができるケースが大半です。
構造や設備が優れていて、物件の質が高い
リロケーションの物件は、本来マイホームとして建てられた物件ですが、賃貸物件は、あらかじめ貸し出す前提で建てられています。
貸し出すことを目的に建てられた物件では、建築費を抑えるために、設備や構造にかかるお金が極力抑えられている場合がほとんどです。
一方マイホームはこだわって建てる人が多く、設備をできるだけ安くしようという人はあまりいません。
そのため、家にサウナの設備が備わっていたり、お洒落で使いやすいキッチンになっていたりと自宅設備の質が高いのが特徴です。
建物の構造も、鉄筋コンクリートなど丈夫な素材で建てられていることが多いです。
リロケーション物件と賃貸物件を比べると、リロケーション物件の方が物件としての質が高く、借主としても住みやすいと言えるでしょう。
マンションだけではなく、戸建て物件も多い
リロケーション物件は、マンションだけではなく戸建て物件も多いです。
戸建て物件は庭や駐車場がついていることが多く、マンションに比べると家も広々としています。
リロケーション:借主側のデメリット
期間の更新ができないので、損をすることもある
リロケーション物件は契約の更新ができないので、契約期間が終了すれば退去という選択肢しかありません。
引越し費や次の新居への初期費を考えて、トータルで支出を計算すると、リロケーション物件に住むお得感が無くなることがあります。
逆に賃貸物件を更新して住む方が支出を抑えられ、リロケーション物件に住む方が損をすることもあります。
更新や中途解約ができない
リロケーション物件では、原則契約期間中の中途解約ができません。
契約期間中にライフスタイルが変わり、別の場所に移り住むことになっても契約を解約できず、家賃を支払い続けることになってしまうことも多いです。
リロケーション物件を借りる際は、契約期間中ずっと住み続けることができるのかよく確認してから契約しましょう。
入居の条件や審査が厳しい
貸主は、自宅に再び戻ることを前提で家を貸しています。
そのため、自宅を清潔感のない人や設備の取り扱いが雑な人には貸したくないと思っています。
ペットを飼っている人も壁紙が剥がされるなど、家が荒さてしまいそうで嫌だと拒否されてしまいます。
貸主の私情が大きく影響するので、通常の賃貸物件への入居より入居条件や審査が厳しいというデメリットがあります。
リロケーションのまとめ
長期間家を空けることになった場合、リロケーションを上手く活用すれば、副収入を得ることができます。
家に戻る時には自宅を返してもらうことができるので、家に戻れないというリスクもありません。
一方で借主からすると、デメリットも多いのがリロケーション物件です。
そのため、貸主は借主の立場に立ち、どうすればデメリットを解消できるのか、物件が魅了的になるのか考えることも大切です。
このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
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