高校で「金融教育」が始まったって本当?

公開日2022/05/06
更新日2022/12/24

時計、鉛筆、リンゴ、虫眼鏡
「2022年4月から高校の学習内容が大きく変わる」
新年度が始まり、こんなニュースを耳にした方も多いのではないでしょうか。
 
2022年度から、高等学校の学習指導要領の改訂が実施されました。学習指導要領とは、全国のどの地域で教育を受けても一定の水準の教育を受けられるようにするため、国が学校教育法に基づき定めているものです。
 
各学校はこの学習指導要領を基準にカリキュラム編成しており、これまでおおむね 10年に一度改訂されてきました。
 
今回の改訂で注目されている点のひとつに、『金融教育の拡充』が挙げられます。
 
新学習指導要領によって、高校生がお金についてどのような内容を学ぶことになるのかまとめてみました。

金融教育が始まった背景

今回の改訂の背景には、民法改正により成年年齢が2022年4月から18歳に引き下げられたことがあります。
 
すでに選挙権年齢については2015年に18歳へ引き下げられましたが、成年年齢も同じく18歳に引き下げられたことで「大人になるまでにどのような能力や資質を習得することが必要か」という観点から、大幅な改訂が行われました。
 
今まで高校3年生といえば基本的に未成年として扱われてきましたが、今後は高校3年生のクラスに成年と未成年が混在することになります。
 
成年年齢に達した18歳の高校生は、親の承諾なしにクレジットカードを作るなど、ひとりでさまざまな契約を締結できるようになります。
 
一方で、たとえ高校生であっても18歳以上であれば「大人」として扱われるため、 未成年者取消権を行使できなくなってしまいました。
 
新学習指導要領では家庭科の内容に「持続可能な消費生活・環境」が盛り込まれ、以下の項目が掲げられています。
 
1. 生活における経済の計画
2. 消費行動と意思決定
3. 持続可能なライフスタイルと環境
 
さらに「生活における経済の計画」では「生涯を見通した生活における経済の管理や計画の重要性について、ライフステージや社会保障制度などと関連付けて考察する」ことが目的のひとつとされています。
 
したがって、例えば給与明細を教材にして源泉徴収や可処分所得について学んだり、将来の生活設計を具体的にシミュレーションしたりといった授業が行われる可能性があります。
 
それだけでなく、株式や債券、投資信託などの金融商品についても、資産形成の観点から学習する機会が増えるかもしれません。

金融教育の内容は?

金融庁が発表した「金融経済教育指導教材」は全部で7章に分けられています。今回は、その中でも新学習指導要領で新しく盛り込まれた資産形成の内容を見ていきましょう。
金融経済教育指導教材
https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20220317/20220317.html
 
金融経済教育指導教材において「貯める・増やす」と名付けられた章では、主な金融商品の特徴を理解したうえでそれらを活用し、自分に合った資産形成を行うことの重要性が説明されています。
金融経済教育指導教材
https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20220317/20220317.html
 
超低金利の銀行にお金を預けていても、お金を「増やす」ことはほとんどできません。
 
そのため資産形成の手段として、目的に応じて金融商品を選ぶことについて、リスクとリターンの関係も含めてまとめられていました。
 
それだけでなく、例えば20年投資した場合の資産の増加を金融商品ごとに比較するというように、実際にシミュレーターを使って資産形成を体験する内容も含まれています。

まとめ

まだ社会に出ていない高校生からすると、「投資」と聞くとリスクがある怖いものと捉えられるかもしれません。
 
金融庁が発表した教材では、投資についてただお金を増やすためだけのものではなく、投資したお金が経済活動に使われることで経済がより豊かになる側面もあると説明されており、前向きな印象を伝えようとしているように感じました。
 
欧米と比べて遅れているともいわれる日本の金融教育ですが、今回の学習指導要領改訂により少しずつ若者がお金について学ぶ機会が増えるのではないでしょうか。
 
リクルートが提供する進路情報メディア「スタディサプリ進路」が2022年2月に行った調査では「子どもから『投資って何?』と聞かれた時、どの程度説明できるか」という質問に対し、保護者の3人に1人が「説明できない」と回答しました。
 
金融教育が当たり前になっていく中で、子どもからお金について質問をされたときに自信をもって答えられるよう、私たち大人もお金についてアンテナ高く学び続けることが求められています。
 

【参考文献】
・文部科学省 学習指導要領「生きる力」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm
・文部科学省 高等学校学習指導要領
https://www.mext.go.jp/content/1384661_6_1_3.pdf
・金融庁 高校向け 金融経済教育指導教材
https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20220317/20220317.html
・高校生の6割超が投資の授業が「楽しみ」 一方家庭でのお金の話は「月1回程度」が1位【リクルート調査】
https://moneyzine.jp/article/detail/218759

このコラムを書いている人

Y.M

Y.M

大阪生まれ横浜育ち 保有資格:宅地建物取引士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/簿記2級/WEB解析士

関連する記事