24時間戦えますか 

公開日2022/05/24
更新日2022/05/23

             
「昨日二時間しか寝てないわー」
日本の経済損失15兆円。米シンクタンクの調査でわかった推定額で、日本人が「寝ない」ことによってかかえてしまっている負債のこと。
OECD(経済協力開発機構)の統計では、日本人の1日の睡眠時間は平均7時間22分で調査対象国の平均8時間25分を大幅に下回り、ワースト1位。労働人口が想定以上に減少する中、ひとりひとりの生産性や能力を向上しなければ、長時間労働で支えてきた社会を維持できなくなるといわれています。こうした慢性的な寝不足を睡眠改善プログラムで解消することで「時間管理」「集中力」「仕事の成果」が改善し、その経済効果は一人あたり年間12万円の生産性向上につながると、独立行政法人経済産業研究所で公表されています。

■  スリープテック

              
「Sleep」+「Technology」。新型コロナウィルス禍の巣ごもり需要が更に後押しとなり、技術の進歩が期待されている市場です。快適な寝具の保温・クッション性の研究にとどまらず、ウェアラブルを利用して快眠のための温度や照明の研究をすすめ、睡眠補助装置で環境をつくり、入眠時の指南や技術を提供する新たなビジネス市場へ、スタートアップ企業や家電老舗メーカーなどが相次ぎ参入しています。
生産性の高いハイパフォーマーは睡眠に対する意識が高いとされています。入眠まで3~10分、休日も起床時間が大幅にかわることなく、寝だめが無意味であることを知っている。睡眠をマネジメントするのは、良い眠りが思考の整理や記憶の定着を助け、想定外の事態に対応できる一流のリーダーの条件だからです。例えばAmazon創設者のジェフベゾス氏は8時間睡眠を、マイクロソフトのビルゲイツ氏は7時間以上の睡眠を推奨しています。あのイチロー選手も8時間睡眠をもっとも気をつけていることと書籍に記しています。

■  眠活

   
よりよい眠りを求めて、眠活市場は新たな価値観を生み出しています。
昨年公開されたドキュメンタリー映画「SLEEPマックスリヒターからの招待状」。ドキュメントの大元は、8時間に及ぶ「眠り」をテーマにしたライブ「SLEEP」で、その会場の全ての席がベッドになっていて、鑑賞中に寝るのも出入りも自由、世界各地で開催され注目されました。
すみだ水族館・京都水族館では、「魚たちが泳ぐ水槽の前で寝てみたい」という要望から企画したイベント「ねむリウム」で、オオサンショウウオやチンアナゴが夜のライブ配信で寝落ちを誘います。
私が不動産取引で担当した医師のお客様は「睡眠」こそ一番に投資すべきだと言われていました。理由は、認知症の原因といわれるアミロイドβです。睡眠中に洗い流されるはずが時間が短いと十分に流しきれず、蓄積量が増えると判断力に影響する可能性があるとのことで、6時間未満の睡眠は徹夜明けと同程度の仕事しかこなせないという研究データもあるそうです。
最近では、眠りについてからの約3時間が睡眠の新たなゴールデンタイム説もあるようで、この時間帯に深く眠ることができれば睡眠の回復力を最大限活用できると、入眠方法にこだわりを持つ人もいます。
VR睡眠は時代を反映しているといえます。複数のユーザーが仮想空間へ眠りを求めてログイン、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)をつけたまま横になり、お泊り会気分で就寝する。コロナ禍のソーシャルディスタンスの背景もあり、リスクなく他者と安全に繋がりを感じられる方法としてNHK番組で紹介され、静かなブームになっているそうです。

■  現状は

「寝ない美徳」から「眠る価値」へ。
睡眠時間が少ないことをアピールして、多忙なことを生産性が高いと語る風潮をかえようと「働き方改革」が推し進められました。が、現実的には時間にゆとりをもつはずの残業規制が持ち帰り仕事にかわっただけで、寝不足解消にはならず、空振りに終わっています。最近の画期的な睡眠支援事業として、夜中から朝にかけて資料作成を請け負う、日本との時差を利用した海外の代行サービスが伸びているといいます。こうしたアイデアや工夫で、黄色信号がついたこの国の寝不足と推定負債を完済していくしかありません。黄色と黒は勇気の印、必要なのは「寝る勇気」「睡眠投資」です。

■  まとめ

どの業界も技術進化のスピードが加速しています。常に情報を更新して自身のスキルを上げ続けなければ取り残される時代、遅れているといわれる我々不動産業界でさえDX化を進めています。
今のスリープテックがさらにテクノロジーを駆使したその先には、眠らなくても脳を休めることができる「寝なくてもよい」リアルなジャパニーズビジネスマンの時代があるかもしれません。
“柔軟性があり、方向転換できる人間であるべきです。この激動する世の中で変化に適応できる人間になりましょう。頑固な人間になってはなりません”

このコラムを書いている人

石倉 直樹

石倉 直樹

1973年大阪生まれ、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級FP技能士、好きなキャラクターはねり丸、エルちゃんカルちゃん、昨年94年の歴史に幕を閉じたとしまえん、たくさんの思い出をありがとう。

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