不動産投資の失敗例 事例から学ぶ教訓についても解説
これから不動産投資にチャレンジしようとお考えの方も、すでに不動産投資を始めている方も、みなさん「成功するためのノウハウ」を求めているでしょう。
そんなとき、不動産投資の成功事例を載せたハウツー本に手を伸ばす方もいるかもしれませんが、実際のところ、成功事例を穴が空くほど読んだとしてもそれほど役には立ちません。
不動産投資を成功させたいなら「失敗例を知ること」が重要です。
成功例より失敗例から学ぶことのほうが多く、同じ過ちを繰り返さないことが成功する近道になるからです。
もちろん失敗してしまった人も、成功するために不動産投資に挑戦したはずです。
にもかかわらず、失敗してしまった原因はどこにあったのでしょうか?
今回は失敗例を通して、不動産投資における大切な教訓を学んでいきましょう。
不動産投資の失敗例を9つ紹介
不動産投資の失敗例01:ファミリーマンションの特性を理解せずに投資
Aさんは、一棟マンションを購入して不動産投資を始めようと考えていました。
物件情報を探しているなかで迷ったのが、「単身者向けのマンションにするか、ファミリー向けのマンションにするか」ということでした。
最終的に、Aさんが購入したのはファミリー向けのマンション。
単身者向けのマンションより家賃を高く設定できるので、より大きな収益が得られると考えたからです。
しかし、現実はまったく違いました。ファミリー向けのマンションは一棟あたりの戸数が少ないので、そのぶん入居する世帯数も少なくなります。
逆に、戸数を多くとれる単身者向けの一棟マンションのほうが家賃収入が多くなるケースは少なくありません。
また、ファミリー向けのマンションはそれぞれの住戸面積が広いので、退去したときの修繕費・リフォーム費もバカになりません。
結果的に、Aさんはマンション経営の採算がとれず、物件を手放すことになりました。
>> 不動産投資の失敗例01から得られる教訓はこちら
不動産投資の失敗例02:管理会社を軽視し目先のコスト削減に走る
Bさんは、単身者向けの一棟マンションを購入して不動産投資を始めました。
当初、物件の管理は管理会社に任せていたので、毎月振り込まれる家賃を確認するだけで煩わしさは一切ありませんでした。
しかし、Bさんは徐々に「毎月、管理会社に支払う手数料がもったいない・・・」「この管理手数料がなければ、もっとキャッシュフローが良くなるのに・・・」と考えるようになりました。
そして、マンション経営を始めて3年ほど経った頃、管理会社との契約を解約し、自分でマンション管理をすることにしたのです。
しかし、この決断は裏目に出ることになります。Bさんは「マンション管理なんて楽勝だろう」と高をくくっていましたが、それは大きな間違いでした。
自分でマンション管理をするようになってまず驚かされたのは、入居者からの問い合わせやクレームの多さです。特に、クレーム対応は精神的にも大きな負担になっていきました。
それに加え、空室が出たときの入居者募集、退去時の原状回復・リフォーム工事、入退去にともなう事務手続きなど、雑務に忙殺されるようになりました。
本業もあったので管理業務に時間を割けず、原状回復が遅れたり入居者募集が遅れたりして、それが空室を長引かせる原因に・・・。目先の管理手数料をケチったために、かえって高くついた失敗例だと言えるでしょう。
>> 不動産投資の失敗例02から得られる教訓はこちら
不動産投資の失敗例03:身の丈以上の投資をして後悔
Cさんは、父親の相続によってまとまった資金が手に入ったため、以前から興味のあった不動産投資に挑戦することにしました。
「どうせ不動産投資をするならインパクトのある収益を得たい」と考え、ローンも利用して都心部にある新築の一棟マンションを購入しました。
一棟マンションに投資したのは、建物だけでなく土地の所有権も手に入り、資産形成ができるのが魅力だったからです。
しかし、実際にマンション経営を始めてみると思うように入居者が集まりません。
徐々に、家賃収入からローンを返済するのが苦しくなっていきました。
不動産投資が初めてのCさんは有効な打開策を講じることもできないまま、精神的にも追い詰められていき、最終的にはマンションを手放すことに・・・。手元には数百万円の借金だけが残りました。
不動産投資の初心者が、身の丈以上の投資をしたために失敗を招いた事例だと言えるでしょう。
>> 不動産投資の失敗例03から得られる教訓はこちら
不動産投資の失敗例04:表面利回りだけで判断して購入
Dさんは、表面利回りの高さに惹かれて、中古のワンルームマンションを購入しました。
購入価格は800万円で月8万円の家賃収入を想定していたので、単純計算で表面利回りは12.0%。
不動産業者から「こんな物件はしばらく出ませんよ」と言われ、購入を決断しました。
入居者もすぐに決まり、問題なく家賃収入を得られていましたが、思ったほどキャッシュフローが残りません。
理由は明確で、想定以上に経費がかかっていたからでした。購入5年後には空室が出てマンション経営は赤字に・・・。「持っていても損になるだけ」と泣く泣く安価で売却したのでした。
>> 不動産投資の失敗例04から得られる教訓はこちら
不動産投資の失敗例05:現地調査に行かずに購入
Eさんの不動産投資歴は10年以上にお及び、ベテランとも言える領域です。
地元の地方都市に区分マンションを数件保有していましたが、「都心にも物件を持ちたい」と考え、初めて都心のワンルームマンションを購入しました。
それまでの経験とノウハウをもとに「この物件は駅近のわりに価格も安く、収益性も高そうだ」と考え、購入を決断しました。
自信を持って購入した物件でしたが、1年後に入居者が退去すると、空室がなかなか埋まりません。
積極的に広告を出しましたが丸1年入居者は付かず、2年目の利回りは0%。
やむを得ず家賃を下げたところ、新しい入居者が決まりましたが、その入居者も半年で退去して再び空室に。
Eさんは「物件に何か問題があるのだろうか・・・」と現地に行くことにしました。
現地を見たEさんは、購入前に現地調査に来なかったことを後悔しました。
物件そのものには問題はありませんでしたが、立地に大きな問題があったのです。
Eさんの購入した物件はたしかに駅近でしたが、商店街などで栄えているエリアとは駅を挟んで反対側にありました。
しかも、駅を利用するためには踏切を渡る必要があり、この踏切が朝と夕方になかなか開きません。
購入前に現地調査をする手間・時間を惜しんだことで、物件の弱点を見落としてしまった失敗例だと言えるでしょう。
>> 不動産投資の失敗例05から得られる教訓はこちら
不動産投資の失敗例06:節税効果に期待しすぎた・・・
大手企業で20年以上勤続しているFさんの悩みは、年収が上がるにつれて負担が増える税金のこと。
「頑張って仕事をして昇給しても、こんなに税金で持っていかれたらバカバカしい」と考えるようになった頃、不動産投資で節税できるという話を耳にして、ある不動産業者がおこなう「不動産投資による節税セミナー」に参加しました。
セミナーで聞いた話はとても納得のいく内容だったため、後日、その不動産業者から提案された新築のワンルームマンションに投資することにしたのです。
不動産投資をスタートして迎えた最初の確定申告では想定していた以上の税金が還付されたので、Fさんは「不動産投資をしたのは正解だった」と感じていました。
しかし、2回目の確定申告では思っていたほどの税金が戻ってきません。
「今年は経費が少なかったのだろう」と深く考えずにいましたが、3回目以降の確定申告でも節税効果を感じられないどころか、逆に納税額は増えていきました。現在は「このままではまったく節税対策にならない・・・」と、物件を手放すことも考え始めています。
>> 不動産投資の失敗例06から得られる教訓はこちら
不動産投資の失敗例07:新築プレミアムに期待したけど・・・
不動産投資を検討していたGさんは、ネットで見つけた不動産業者に相談にいきました。
そのときに担当者から提案された物件が、新築のワンルームマンションでした。
「入居者のほとんどは新築物件を好みます」「新築物件は家賃が高くても入居者が付きます」「新築物件は空室リスクが少ないです」「新築物件は資産価値が高いので売却するときも有利です」など、担当者の話はどれも納得のいくものであり、Gさん自身も「できるだけ高い家賃で貸し出したい」と考えていたので、都心の新築ワンルームマンションを購入することに。家賃18万円ですぐに入居者が決まり、賃貸経営の出だしは順調でした。
しかし、2年後の更新のタイミングで入居者が退去すると状況は大きく変わることになります。
次の入居者の募集をするものの3ヶ月経っても決まらないので、管理会社に電話をすると「家賃を3万円くらい下げないと入居者は付きませんよ」と言われました。
Gさんは「まだ新築なんだから家賃は下げたくない」とそのままの家賃で募集を続けましたが、さらに3ヶ月、4ヶ月と時だけが過ぎていきます。
「家賃収入ゼロ」の状態を放置できなくなり、泣く泣く家賃を3万円引き下げたところ、入居者が決まりました。
家賃を下げればキャッシュフローが悪化するのは当然のことです。
Gさんは「このまま持っていても損失が膨らむだけだ」と、物件を売却することに。
売却に際してもGさんは「まだ新築だから」と強気な価格で売りに出しましたが、買い手は一向に現れません。
結局、価格を下げて売却することはできましたが、売却価格でローンの残債を返済することができず、約400万円は手出しで捻出することに。
もちろんトータルの収支は大きなマイナスになり、「何のための不動産投資だったんだろう・・・」と後悔することになりました。
>> 不動産投資の失敗例07から得られる教訓はこちら
不動産投資の失敗例08:サブリースって家賃保証じゃないの・・・?
1年前に自宅近くの土地を相続したHさん。更地のままで保有していましたが、このまま固定資産税だけを払っていくのももったいないと考え、アパート経営を検討し始めました。
Hさんがアパート経営を考えるにあたって心配していたのが、「この立地で果たして入居者が入るのだろうか・・・?」ということです。
空室リスクを心配していることを不動産業者に相談したところ、提案されたのがサブリース契約でした。
このとき、「サブリース」という言葉を初めて聞いたHさんでしたが、空室になった場合に家賃を保証してくれるシステムであることを知り、「それなら安心だ」とサブリース契約を結んでアパート経営を始めました。
最初は空室ゼロの状態が続きましたが、アパート経営を始めて5年後に6部屋中の3部屋が空室に。
そのとき、サブリース会社に家賃の引き下げを求められました。
Hさんは家賃を下げたくないと思っていましたが、応じない場合はサブリース契約を解除すると言われ、仕方なく家賃を下げることに。
間もなく空室は埋まりましたが、家賃の引き下げによってキャッシュフローはたちまち悪化してしまい、当初の収支シミュレーションを大幅に見直さざるを得なくなりました。
>> 不動産投資の失敗例08から得られる教訓はこちら
不動産投資の失敗例09:管理会社のレベルが低すぎた・・・
マンション投資を始めたIさんは、少しでもキャッシュフローを良くしたいと管理手数料の削減を考えました。
ネットで管理手数料の安い管理会社を探し、元のオーナーが任せていた管理会社から変更することにしました。
最初の数年は大きな問題もなく賃貸経営は順調に進んでいましたが、Iさんは徐々に管理会社の対応に疑問を持ち始めます。
入居者が家賃を滞納したときも、「もう少し待ってあげましょう」と言うだけで何もしてくれません。
その後、空室になって数ヶ月、入居者が決まらない状態が続いたときに理由を聞いても、「競合物件が家賃を下げているから」と言うだけでした。
さらに、共用スペースにゴミが落ちていることを指摘したときも、「きれいに使いましょう」という張り紙をするだけでした。
このまま空室が埋まらないと困ると考えたIさんは不動産投資をしている友人に相談したところ、「その管理会社はやめたほうがいい」と言われました。
そこで別の管理会社を変更したところ、程なくして空室は埋まりました。
結果的に空室が続いたのは約1年で、その間に得られなかった家賃収入は約100万円。
Iさんは、最初に管理手数料をケチって激安の管理会社を選んだことを悔やみました。
>>不動産投資の失敗例09から得られる教訓はこちら
不動産投資の失敗事例から学ぶ教訓
●不動産投資の失敗例01から得られる教訓
Aさんの失敗は、ファミリータイプの一棟マンションを選んだことに起因しています。
同じ失敗を繰り返さないようにするには、ファミリータイプの一棟マンション投資と、単身者向けの一棟マンション投資の特徴を押さえておく必要があります。
ファミリー向け一棟マンション | 単身者向け一棟マンション | |
---|---|---|
間取り | 2LDK、3LDK など | ワンルーム、1K など | 一棟の戸数 | 少ない | 多い | 敷金・礼金 | 高い | 安い | 入退去(出入り) | 少ない | 多い |
まず間取りですが、ファミリータイプは2LDK、3LDKなど部屋数が多いのが特徴です。
それぞれの部屋も比較的広いので、そのぶん一棟全体で見ると戸数は少なくなります。
一方、単身者向けマンションの間取りはワンルームや1Kが主流で、比較的狭い物件が多いです。そのため、一棟全体で見ると戸数は多くなります。
ファミリー向けマンションの1戸あたりの床面積は、単身者向けマンションに換算すると2~3戸分に相当します。
総床面積が同じマンションを前提にすると、ファミリータイプなら全10戸だとしても、単身者向けなら全20~30戸と、単身者向けのほうが多くの戸数を設けられるわけです。
家賃収入においても、単身者向けのマンションなら20~30世帯から家賃収入を得られますが、ファミリータイプの場合、10世帯分の家賃収入しか得られません。
「でも、ファミリータイプのほうが家賃は高いでしょ?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
たしかに、単身者向けのマンションよりファミリー向けのマンションのほうが家賃は高くなりますが、それでも2~3倍になるわけではありません。
同じ規模のマンションで考えた場合、ファミリー向けと単身者向けでは、たとえば以下のような差が生まれます。
ファミリー向け一棟マンション | 単身者向け一棟マンション | |
---|---|---|
一棟の戸数 | 10戸 | 20戸 | 1戸の家賃 | 12万円 | 7万円 | 月の家賃収入 | 120万円 | 140万円 |
▼ファミリー向けマンション投資は慎重に!
このように、家賃収入で比較するとファミリー向けマンションはトータルで低くなり、単身者向けマンションに比べると利回りが悪くなります。
すべてのファミリー向けマンションに当てはまるわけではありませんが、ファミリータイプは一般的に大きな利回りは期待できないということは認識しておきましょう。
ファミリー向け投資マンションのメリットを挙げるとすれば、出入りが少ないことです。
ファミリー層は単身者に比べると引っ越しをするケースが少なく、一度入居したら長く住んでくれます。
そのため、空室リスクが低く、長期的に安定した収益が見込めます。
▼単身者向けマンションは利回りが良い!
単身者向けのマンションは1戸あたりの床面積が比較的狭いので、一棟あたりの戸数が多くなります。
そのぶん入居者の数も多くなり、多くの家賃収入が期待できます。
ファミリー向けマンションに比べると、格段に利回りが良いのがメリットです。
一方で、単身者は短期間で引っ越すことが多く、出入りが激しくなりがちです。
そのため、クリーニングや入居者募集を休みなくおこなわなければいけません。
また、条件の良い物件ならすぐに入居者が見つかりますが、条件の悪い物件では空室が長引いてしまうリスクがあります。
単身者向けのマンションは若い世代がターゲットになるので、「駅近」や「都心へのアクセス」など立地条件が重要になってきます。
単身者向けマンション投資は立地条件が成否を分ける、ということはぜひ認識しておきましょう。
●不動産投資の失敗例02から得られる教訓
Bさんの失敗は、管理会社の役割を軽視したことに起因しています。
多くのオーナーは不動産投資を始めてから月日が経つほど、管理会社に支払う手数料がもったいないと感じるようになります。
「管理会社って何やってるの?」「毎月、家賃から手数料を抜くだけで大した仕事はしていないでしょ?」と感じているオーナーもいるでしょう。
ネットで調べれば、オーナーが自ら投資物件を管理する「自主管理」に関する情報が転がっています。
そのため、Bさんのように管理会社を切って、自主管理にシフトするオーナーも少なくありません。
自主管理に切り替えれば、たしかに管理コストを削減できますが、その裏側には多くのデメリットがあるのも事実です。
▼自主管理のデメリット
自主管理に切り替えるということは、それまで管理会社に委託していた業務を全部自分で引き受けるということです。
具体的には、入居者募集、家賃の授受、滞納時の催促、退去時のクリーニング、設備の修繕などの業務が挙げられます。
自主管理の最大のデメリットは、やはり手間と時間をとられることでしょう。
たとえば、突発的な設備故障が発生したときなどは、急ぎで修理の手配をしなければいけません。
サラリーマンオーナーの場合は、そもそも対応できない場合もあるでしょう。
また、家賃の滞納があったらオーナー自ら催促する必要があり、最悪の場合、法的手段によって回収を図るケースも考えられます。
加えて、Bさんが苦労したようにクレーム対応も大変な仕事です。
些細なことでケチをつけてくる入居者もおり、クレーム対応に慣れていないオーナーは精神的に疲れて果ててしまうことも多いようです。
▼不動産投資の成功のためには管理会社の力が欠かせない!
物件の管理くらい自分でできると思うかもしれませんが、これが意外と大変な仕事。多くのオーナーは音を上げることになるでしょう。
管理会社に不信感を抱いていたり管理費の削減を考えていたりするのなら、自主管理に切り替えるのではなく新たな管理業者を探すほうが賢明です。
不動産管理コストを惜しむと、結局、オーナー自身が苦労することになってしまいます。
入居者募集にしても、契約手続きにしても、クレーム対応にしても、知識や経験が欠かせません。
不動産投資を継続していくうえでは、「いかに優良な管理会社と付き合うか」が重要なポイントになってきます。
●不動産投資の失敗例03から得られる教訓
Cさんの失敗は、身の丈に合わない不動産投資をしたことに起因しています。
不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資だと言われますが、そのなかでも一棟マンション投資は趣が異なり、「ハイリスク・ハイリターン」の部類に入ってきます。
特に、不動産投資が初めての方がいきなり新築の一棟マンションを購入するのはリスクが高いと言わざるを得ません。
たとえ一棟マンションを購入できる経済的な余裕があったとしても、最初の不動産投資はワンルームなど、小規模な物件から始めるのが鉄則です。
投資経験を重ね、知識を蓄え、不動産投資の要点がつかめてきてから、一棟マンションなどの大きな投資にチャレンジすべきでしょう。
▼初心者におすすめの物件とは?
不動産投資の初心者の方におすすめなのは、中古の区分マンションです。
数百万円代から購入できるので、複数の物件に投資するなど、リスクを分散しながら経験を重ねるのもいいでしょう。
また、空室保証(家賃保証)が付いた物件もおすすめです。
Cさんのように背伸びをして身の丈以上の投資をすると、最悪の場合、資産をすべて失うことになりかねません。
初心者の方がスムーズに不動産投資をスタートするには、できるだけリスクの低い物件を見極めることが重要です。
●不動産投資の失敗例04から得られる教訓
Dさんの失敗は、不動産経営にかかる経費の見積もりが甘かったことに起因しています。
「利回りが高い物件=収益性の高い物件」であることに間違いはありませんが、表面利回りはあまりあてになりません。
投資物件を選ぶときは、表面利回りではなく経費を差し引いて計算する実質利回りに注目すべきです。
不動産経営をしていくうえで必要な経費としては、管理費、修繕費、固定資産税、都市計画税、火災保険料、地震保険料などが挙げられます。
ただし、不動産経営にかかる経費は、実際に購入して運営してみないと分からない部分も多く、実質利回りはあくまでも予想の数値でしかありません。
そのため、いかに現実に近いラインで予想できるかが重要になってきます。この予想がどんぶり勘定だと、Dさんのように失敗してしまいます。
▼たとえ表面利回りが高くても・・・
たとえば、ローンを利用して7,500万円の一棟マンションを購入したとしましょう。
月50万円(年間600万円)の家賃収入を見込んでいる場合、表面利回りは8.0%です。
しかし、経費が年間で230万円かかったとします。この場合、実質利回りは4.9%になります。
仮に、家賃収入の半分をローンの返済に充てるとすると、手元に残るのは年間で70万円。
空室が出れば、たちまち不動産経営は赤字に転落してしまうでしょう。
購入後にかかる経費を考慮せずに、「販売価格が安いから」「高利回りだから」という理由だけで投資用不動産を購入すると後悔することになってしまいます。
安定した家賃収入を得るには、実質利回りをできるだけ正確に算出するとともに、ある程度の空室を見込んだうえで収支をシミュレーションしておくことが大切です。
●不動産投資の失敗例05から得られる教訓
上述したEさんの失敗は、購入前に現地調査に行かなかったことに起因しています。
Eさんは主にインターネット上の情報と、不動産業者の担当者から仕入れた情報をもとに物件購入を決めました。
現地調査に行かなかった理由は、単純に遠かったということだけではありません。
Eさんは不動産投資経験が長く、ある程度の成功を収めていたため、「わざわざ物件を見に行かなくてもネット上の情報で判断できる」という自信があったのです。
しかし、現地調査に行かなかったことが完全に仇となってしまいました。
▼現地調査に行かなければ分からないこと
駅からの距離や床面積、間取りや設備、近隣の施設などはインターネットの物件情報を見れば把握できます。
しかし、Eさんが購入した物件のように、「駅から近いけど、栄えている出口の反対側にあること」「駅を利用するには一度、踏切を渡る必要があること」「朝や夕方の時間帯は踏切がなかなか開かず、待たされることが多いこと」などは、現地に行かなければ分かりません。
それ以外にも、「駅の自転車置き場が狭いこと」「深夜まで営業している飲み屋が多く、治安が悪いこと」「道幅が狭く、ベビーカーや子ども連れだと歩きにくいこと」「近所に新しいマンションが建築されていること」などは、実際に物件周辺を歩いてみないと把握できないことです。
このように、不動産の物件情報は、インターネット上の情報だけでは分からないこともたくさんあります。
インターネット上では魅力的に見える物件でも、現地調査をしなかったがために「家賃収入が見込みを大きく下回った」「家賃を下げざるを得なかった」という失敗につながってしまう例は少なくありません。
もし、Eさんが現地調査に行っていれば、そもそも購入しないという判断ができた可能性もあるでしょう。
最近はGoogle Mapなどで周辺環境をチェックすることもできますが、不動産投資をする際は可能な限り現地調査に行くことをおすすめします。
●不動産投資の失敗例06から得られる教訓
Fさんの失敗は、節税の仕組みを正しく理解していなかったことに起因します。
まずは、所得税・住民税の節税の仕組みをおさらいしておきましょう。
節税の仕組みを知るためには、「損益通算」と「減価償却」を理解しておく必要があります。
▼損益通算とは?
所得が多い人ほど所得税・住民税の負担が増え、所得が少ない人ほど所得税・住民税の負担が減ります。
たとえば、年間の給与所得が700万円の人は700万円(課税価格)に対して一定の税率で所得税・住民税が課せられます。
しかし、副業として不動産投資をしている人は課税価格が変わってきます。
不動産投資で年間に150万円の赤字が出たとしましょう。
この場合、トータルの所得(課税価格)は550万円(700万円 - 150万円)となり、所得税・住民税の負担も減ります。
このように、不動産投資で発生した赤字分を給与所得から差し引くのが「損益通算」という制度です。
給与所得のある人が不動産投資で赤字を出すと、損益通算によってトータルの所得が減るため、所得税や住民税の節税につながるわけです。
▼減価償却とは?
所得は「収入 - 経費」で算出するため、節税をするためには「いかに経費を多く計上できるか」が一つのポイントになってきます。
不動産投資の経費のなかでも、特に重要なのが減価償却費です。
不動産投資のために購入した物件価格は経費になりますが、一度に全額を経費計上するのではなく、物件価格を法定耐用年数で按分し、毎年経費として計上していきます。
このように、経年による不動産の資産価値の減少を少しずつ経費として計上する仕組みが「減価償却」です。
なお、経年によって資産価値が経るのは建物だけであり、土地については経年による資産価値の減少はないものとされています。そのため、減価償却は建物についてのみ考えます。
たとえば、2,000万円の新築木造アパートに投資したケースで、減価償却の計算をしてみましょう。
物件価格2,000万円のうち、1,120万円が土地の価格で、880万円が建物の価格だとします。
木造の建物は法定耐用年数が22年と規定されているため、22年かけて建物の価値がゼロになると考えます。
880万円を22年で割ると、1年あたり40万円になります。
つまり、この木造アパートは毎年40万円ずつ減価していくことになるので、毎年の確定申告では40万円を減価償却費として経費計上するわけです。
仮に、この木造アパートの家賃収入が年間で100万円だったとしましょう。
この場合、減価償却費として40万を経費計上できるので所得は60万円(100万円 - 40万円)となり、節税効果が得られます。
ちなみに、この40万円は実際にその年に使った金額でなく、あくまで会計上のマイナスになります。
その意味で、減価償却費は「支出を伴わない経費」だと言うことができます。
▼不動産投資の節税効果は初年度だけ!?
損益通算と減価償却を理解したところで、Fさんの話に戻りましょう。
Fさんは新築のワンルームマンションに投資をしたわけですが、投資をした初年度は、登記費用や不動産取得税、金融機関手数料など様々なコストが発生するため、家賃収入よりも経費が多くなりがちで、賃貸経営が赤字になることも少なくありません。
このような場合、給与所得から不動産投資の赤字を差し引く損益通算によってトータルの所得が減るため、所得税や住民税の節税効果を実感できると思います。
しかし、多額の経費が発生するのは不動産投資を始めた初年度だけで、2年目以降は初年度ほどの経費は発生しないのが通常です。そのため、初年度のような節税効果は期待できません。
もちろん、2年目以降も減価償却による節税効果は得られますが、新築のワンルームマンションの場合、それほど大きな節税効果は期待できません。
というのも、マンションなど鉄筋コンクリート造(RC造)の建物の法定耐用年数は47年と長く、新築であれば47年かけて減価償却費を経費計上してくことになります。
そのため、1年で経費計上できる減価償却費はたかが知れています。
たとえば、2,000万円の新築ワンルームマンションで建物部分の価格が800万だとしましょう。
この場合、1年に経費計上できる減価償却費は約17万円(800万円 ÷ 47年)です。
このように、特に新築マンションの場合は2年目以降の節税効果はあまり期待できません。
節税効果というのは、あくまでも不動産投資の「おまけ」的なメリットであり、Fさんのように節税を主目的として不動産投資を始めるのはおすすめできません。
少し考えてみれば分かることですが、不動産投資で節税になる状態というのは賃貸経営で赤字が発生している状態です。
本来、不動産投資の目的は長期継続的に家賃収入を得ることなので、たとえ節税できたとしても賃貸経営で赤字が続くのは考えものです。
●不動産投資の失敗例07から得られる教訓
Gさんの失敗は、新築プレミアムに期待しすぎたことに起因しています。
日本人は「新築信仰」と言われるほど新築物件を好む人が多く、それゆえ、新築マンションは相場より高めの家賃を設定しても入居者が付きます。
これが、いわゆる「新築プレミアム」と呼ばれる付加価値です。
新築プレミアムはメリットばかりが強調されがちですが、その裏側にあるリスクも把握しておかなければいけません。
新築プレミアムのリスクとしてよく言われるのが、以下の3点です。
▼家賃が下がるスピードが早い
そもそも、新築プレミアムの恩恵を受けられるのは「誰も住んだことのないまっさらな新築物件」だけであり、1日でも入居者が住んだら「中古物件」という扱いになります。
そして、中古物件になった瞬間に新築プレミアムは失われるため、新築プレミアムを加味した家賃で貸し出すのは難しくなります。
一般的に、築10年までの賃貸物件は家賃の下落率が高いと言われます。
築10年のなかでも、新築から中古になったタイミングで大幅に家賃が下がることは認識しておくべきです。
▼資産価値が下がるスピードが早い
新築物件は販売価格が高額です。
これは、分譲会社の利益や新築プレミアムの価値が販売価格に乗せられているからですが、この上乗せされた価格は築1年が過ぎたとき、もしくは一度でも入居者が入ったときには消滅します。
新築物件が中古物件になることで、一般的には資産価値が約20%下がると言われます。
もちろん、周辺の再開発などがあればそこまで下がらない物件もありますが、基本的には中古物件になった瞬間に資産価値はガクンと下がると認識しておいたほうがいいでしょう。
資産価値が下がるスピードが早いということは、売却しようと思ったときにキャピタルゲイン(売却益)を得にくくなるということです。
新築物件を早期に手放す場合は、多額の売却損が発生するケースも少なくありません。
▼オーバーローンに陥りやすい
新築物件に対して、フルローンで融資をする金融機関もあります。
自己資金なしで不動産投資ができるのは新築物件のメリットだと言えますが、一方で、借り入れの割合が高いことは不動産投資においてリスクになるのも事実です。
たとえば、フルローンで3,200万円の新築物件を購入したとします。
その物件を2年後に売却しようとしたとき、2,500万円でしか買い手が付かなかったとします。
2年後のローンの残債が3,000万円だったとすると、不動産の売却代金だけではローンを完済することができず、足りない500万円は自己資金で用意しなければいけません。
このようにローンの残債(3,000万円)が物件の価値(2,500万円)を上回っている状態を「オーバーローン」と言います。
上述のとおり、新築物件は資産価値が下がるスピードが早いため、フルローンで購入した場合は特にオーバーローンに陥りがちです。
●不動産投資の失敗例08から得られる教訓
サブリース契約をする際は、手数料や契約条項について入念に確認しておかないと、Hさんのように後悔することになってしまいます。そのためにも、まずはサブリースの仕組みを正しく理解しておきましょう。
サブリースとは、サブリース会社がオーナーから物件を借り上げ、その物件を転貸(又貸し)する契約のことで、「家賃保証」という意味合いで使われることもあります。
サブリース契約をするとサブリース会社が借主になるため、実際に入居者が付く・付かないにかかわらず、オーナーは毎月家賃収入を得ることができます。
サブリース契約では、手数料として家賃収入の10~15%程度をサブリース会社に徴収されるのが一般的ですが、それでも空室リスクがゼロになることを考えれば、オーナーにとっては魅力的な仕組みであるように思えます。
実際に「家賃保証してくれるなら安心だ」と考えてサブリース契約を結ぶオーナーは少なくありません。
しかし、このようなオーナーの多くは家賃保証の意味を勘違いしています。
▼サブリース契約で言う「家賃保証」とは?
サブリース契約で言う家賃保証は、毎月「一定額」の家賃収入を保証するものではありません。
サブリース会社に保証してもらえるのは、家賃の85~90%という「割合」です。
何が言いたいのかと言うと、家賃が下がれば、それに比例してオーナーの家賃収入も下がるということです。
一般的なサブリース契約では、最初の5年間は定額の家賃収入を保証するものの、その後は家賃の見直しがおこなわれ、見直しのたびに家賃が下がっていくケースがほとんどです。
サブリース会社もビジネスとして利益を追求する以上、空室を放置するわけにはいきません。
空室が生じたら、それを解消するために家賃の値下げをおこないます。
家賃を下げれば当然、サブリース会社の収益も減りますが、オーナーに保証する金額も減るため大きな痛手にはなりません。
むしろ、オーナーのほうが大きな痛手を負うケースが大半です。
▼サブリース契約の手数料は妥当なのか?
サブリース契約の手数料は上述のとおり、家賃収入の10~15%程度が一般的です。
この数値を見て「そのくらいなら仕方ない」と考える人もいると思いますが、賃貸経営の空室率が10~15%だとしたら、どう感じるでしょうか。
たとえば、サブリース契約の手数料が家賃収入の15%だとします。
これは、賃貸経営の空室率が15%というのと同じことです。
1年間で考えると、2ヶ月弱は空室が生じることになります。
2年間賃貸経営をした場合は約3ヶ月半、5年間では約9ヶ月、10年間では約1年半もの間、空室が生じる計算になります。
サブリース契約を続ける限り、この空室率が改善されることはないわけで、客観的に見るとこれだけ空室が生じる賃貸経営は成功とは言えません。
サブリース契約を検討するときは手数料や契約条項などからリスクを正確に把握して、そのリスクが許容範囲なのかどうかをしっかり判断することが重要です。
サブリース契約では、様々なトラブル・事件が起きています。以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
●不動産投資の失敗例09から得られる教訓
不動産投資で安定した家賃収入を得たり、物件の資産価値を維持したりするには、管理会社の力が欠かせません。
Iさんのように「管理会社はどこでも一緒」「管理手数料が安い会社にしておけばいい」と考えていると、後悔することになってしまいます。
どんな管理会社を選ぶかによって、不動産投資の成否は大きく左右されます。管理会社の業務内容を理解するとともに、優良な管理会社を選ぶポイントを押さえておきましょう。
▼管理会社の業務内容
管理会社によって業務内容は変わってきますが、一般的な業務内容としては「入居者管理」と「建物管理」が大きな柱になります。
・入居者管理
入居者管理は具体的に、入居者募集や契約手続き、入居者トラブルの対応、家賃の集金や滞納者への催促、退去・解約の手続きなどのことです。
空室が生じた場合、管理会社は入居者募集のために広告出稿などをおこない、入居希望者が見つかったら賃貸借契約の手続きを進めます。
入居後は、設備の故障や水回りの不具合、騒音や鍵の紛失などのトラブルに迅速に対応します。
入居者から家賃を集金したり、家賃を滞納している入居者がいれば催促して家賃を回収したりするのも管理会社の業務です。
また、入居者が退去することになったら退去の立会いや現地確認をしたうえで、修繕工事の手配や敷金の精算をおこないます。
・建物管理
建物管理は、建物の清掃や設備の点検・修繕など、建物を維持・管理する業務のことです。
賃貸物件の価値を維持するためにはメンテナンスが欠かせません。
管理会社は、外壁や屋上、廊下やエントランス、駐車場などの点検をおこない、必要に応じて修繕をおこないます。
スプリンクラーや火災報知器、消火器具などの消防用設備、貯水槽や高架水槽、浄化槽、エレベーターなどは法定点検が義務付けられているので、このような点検にも対応します。
清掃業務は、掃き掃除などをおこなう日常清掃と、共用部分の高圧洗浄などをおこなう定期清掃があります。
入居者が退去した際に修繕・クリーニングをしたり、老朽化した設備・内装をリフォームしたりするのも管理会社の重要な業務です。
▼優良な管理会社を選ぶポイント
優良な管理会社を選ぶ際のポイントとしては、主に以下の5つが挙げられます。
・物件を見て管理のクオリティを確認する
管理会社の建物管理のクオリティを把握するには、その管理会社が管理している物件を見に行くのが手っ取り早い方法です。
建物管理が行き届いていない物件は入居者の退去率が高くなる = 空室リスクが高くなります。
そのため、細かいところまでチェックして管理状況を把握しましょう。
具体的なチェックポイントとしては、以下のような点が挙げられます。
・共用部分(エントランスや廊下、階段など)にゴミが落ちていないか?
・共用部分に入居者の私物が置かれていないか?
・共用部分の電球が切れていないか?
・ゴミの分別ルールが守られているか?(回収されていないゴミが散乱していないか?)
・自転車置き場の自転車が整理されているか?(明らかに使っていない自転車が放置されていないか?)
・集合郵便受けからチラシがあふれていたり、周囲にチラシが散乱したりしていないか?
・植栽はきちんと手入れされているか?
・外壁にヒビが入っていたり、タイルが剥がれたりしていないか?
一つも該当しない物件であれば、クオリティの高い建物管理ができている管理会社だと考えていいでしょう。
逆に、該当する項目が多ければ管理のクオリティを疑うべきです。
該当する項目が多い物件は、入居希望者が内覧に来ても良い印象を持ちませんし、既存の入居者の満足度も下がり「早く引っ越したい」と思うようになります。
つまり、空室リスクが高い物件だということです。
また、外壁のヒビやタイルの剥がれが放置されている物件も要注意です。
外壁や屋根にヒビ割れがあると、そこから雨が染みこんで雨漏りを起こすだけでなく、躯体が腐食することで劣化が早まり、物件の資産価値が低下していきます。
定期的に点検をおこない、問題があれば早期に補修・修繕をしている管理会社を選ぶべきです。
・入居者募集の方法や取り組みを確認する
不動産投資における最大のリスクは、言うまでもなく空室が発生することです。
空室期間が長くなればキャッシュフローが悪化し、賃貸経営は暗礁に乗り上げることになります。
賃貸物件である以上、入居者が退去するのは避けられないことですが、空室をいかに早く解消できるかは管理会社の手腕によるところが大きいです。
入居付けのノウハウに乏しい管理会社に任せていると、いつまで経っても空室が埋まらないリスクがあります。
管理会社を選ぶときは、「空室になったとき、入居者をどのように募集するのか?」「早く入居付けをするために取り組んでいることはあるか?」といった質問をしてみましょう。
たとえば、「退去予告は1ヶ月前まで」というルールが一般的ですが、「2ヶ月前」に設定している管理会社もあります。
早めに退去することが分かればそれだけ早めに入居者を募集できるので、空室リスクも少なくなります。
また、入居者を募集する際はポータルサイトに物件情報を掲載しますが、なかには物件の写真を掲載しない(もしくは掲載枚数が少ない)管理会社もあります。
写真が充実していない物件は問い合わせも少ないため、このような管理会社も避けたほうがいいでしょう。
なお、不動産の賃貸管理だけでなく売買も手がけている会社のほうが入居者募集のノウハウが豊富で、業界内に幅広いネットワークを持っているため、入居付けに強いと言われます。
・入居者対応の体制を確認する
たとえば、入居者が鍵を紛失したとき、すぐに管理会社と連絡がとれないとクレームになることがあります。
設備にトラブルがあったとき、すぐに対応できない管理会社では入居者満足度が下がります。
管理会社を選ぶときは、入居者が安心して暮らせる体制を整えているかどうかを確認することが大切です。
トラブルはいつ発生するか分からないので、年末年始やお盆休み、ゴールデンウィークなども含めて24時間・365日対応をしている管理会社がおすすめです。
また、入居者専用ダイヤルやコールセンターを設けている管理会社なら安心できます。
・担当者と連絡が取りやすいか確認する
管理会社の担当者は、賃貸経営のビジネスパートナーとも言える存在です。
オーナーと担当者の情報共有がこまめにおこなわれていないと、賃貸経営の判断を誤ってしまう可能性もあります。
そのため、気になることや確認したいことがあったときに、担当者とスムーズにコミュニケーションが取れることが重要です。
一人の担当者が管理している物件が多い管理会社は、必然的に担当者と連絡が取りづらくなります。
専任の担当者が付いてくれるのはもちろん、担当者のレスポンスが早い管理会社を選ぶようにしましょう。
・管理手数料が適正価格であるか確認する
オーナーは管理会社支払う管理手数料は、「家賃収入の○%」という形で決められているのが一般的です。
管理手数料が高いほど、賃貸経営のキャッシュフローは悪くなります。
そのため、「できるだけ管理手数料が安い管理会社にしよう」と考えるオーナーもいますが、あまりにも安価な管理会社を選ぶと、Iさんのように空室が長引いて取り返しのつかない損失を生んでしまいます。
管理会社は管理手数料の安さで選ぶのではなく、サービスの質が高く、サービス内容に対して適正な価格であるかどうかで選ぶようにしましょう。
不動産投資のよくある失敗・NG事項
不動産投資で「これをすると失敗のリスクが高い」という、主なNG事項をご紹介します。
不動産投資のNG:需要のない物件を選ぶ
不動産投資をするにあたっては、投資物件の需要を見極めることが重要です。
これは至って当たり前のことですが、決して簡単なことではなく、ベテランの投資家でも見誤ってしまうことがあります。需要を見極めるうえでは、以下の点を意識するようにしましょう。
▼立地の需要を図ろう
空室が発生して家賃収入が減少すれば、やがて不動産投資は破綻してしまいます。
物件選びでは、やはりそのエリアの賃貸需要を把握することが不可欠です。
一般論になりますが、需要が高いのは人口・世帯数が増加しているエリアです。
そうなると当然、都市部のほうが高い需要が見込めます。
市区町村の人口や駅の利用者数などをチェックして、長期的に人口が増加しているエリアを選ぶようにしましょう。
逆に、過疎化が進んでいるエリアは空室リスクも高くなります。
長期的に人口が減少しているエリアの物件は避けたほうがいいでしょう。
だからと言って、「地方の不動産投資はNG」というわけではありません。
地方の物件は、都心部の物件に比べ大幅に安く購入できます。
当然、家賃相場も安くなりますが、物件価格の差ほど家賃相場が下がるわけではありません。
どういうことかと言うと、たとえば都心で2,000万円の物件でも、地方であれば同等の物件を1,000万円で購入できたりします。
そして、都心では2,000万円の物件を家賃10万円で賃貸しますが、地方では1,000万円の物件を家賃5万円ではなく、7万円くらいで賃貸するといったイメージです。
このように、地方には高い利回りが期待できる物件も数多くあります。
▼需要の変化を察知しよう
不動産投資を成功させるには、需要の変化を敏感に感じとることも大切です。
たとえば昨今は、働き方改革の推進や新型コロナウイルスの流行によって、テレワーク、リモートワークが急速に拡大しています。
従来は、会社の近くに住む「職住近接」を求める人が大半でしたが、テレワーク、リモートワークによって会社に行く必要がなくなれば、会社へのアクセスよりも、「広いこと」「安いこと」「自然が豊かなこと」「子育てしやすいこと」などを重視する人も増えてくるはずです。
このような需要の移り変わりを敏感に捉え、今後需要が高まりそうな立地を予測することも重要です。
▼物件としての需要を図ろう
上述のとおり、都心部はたしかに賃貸需要が見込めますが、供給量も多いため競争が激しくなりがちです。
供給過剰になっているエリアもあるので、特定の物件に目星をつけたら、必ず周辺にある競合物件や建設予定物件の調査をおこないましょう。
人気のエリアでは、「道を挟んで向かい側に新築マンションが建てられる」というケースも珍しくなく、そうなると入居者を奪われる可能性も高くなります。
競合物件が多いエリアで物件を探す場合は、物件そのものの競争力を見極めなければいけません。
競争力を見極めるときは、シンプルに「自分がその物件にどれだけ魅力を感じるか?」をモノサシにするのがいいでしょう。
「設備が新しい」「収納が広い」「水回りがきれい」「間取りが使いやすい」「日当たりが良い」など、自分の基準で採点してみましょう。
高得点の物件なら魅力が多く、借り手が見つかる可能性も高いと言えます。
設備に関しては年々進化を遂げており、最新の設備が導入されている物件はやはり競争力が高くなります。
その物件を見極めるためには、「今、どんな設備が人気があるのか?」を知っておかなければいけません。
たとえば、「モニター付きインターホン」「浴室乾燥」「宅配ボックス」などは、少し前までは付いている物件のほうが少なかったのに、最近は付いていて当たり前の設備になっています。
最近の傾向としては、「スマートロック」「スマートリモコン」「ネットワークカメラ」などのIoT設備が注目されています。
▼環境・状況が変わるリスクを想定しよう
不動産投資は、長きにわたって安定した家賃収入を得ることを目指す投資です。
そのため、長期的な視野を持つことが重要になってきます。
今は需要が安定している立地でも、3年後、5年後、10年後に今と変わらない環境があるとは限りません。
分かりやすい例では、商業施設の閉鎖や大学・企業の移転などが挙げられます。
近くにショッピングモールや大学・企業がある物件はそれだけで大きなアドバンテージになりますが、それらが移転・閉鎖してしまうと、物件の競争力はたちまち失われてしまいます。
「入居者が退去して空室が埋まらない」という最悪の状況に陥る可能性もあるでしょう。
不動産を取り巻く環境は日々変化しています。
投資物件を探すときは、「将来的にどんな変化が予想できるか?」「発展の可能性はあるか?」「現在の好条件が失われる可能性はないか?」といったことも考えるようにしましょう。
不動産投資のNG:違法建築の物件を選ぶ
不動産投資では、法令の基準に違反している、いわゆる「違法建築」の物件は避けるべきです。
違法建築とは、たとえば建ぺい率や容積率をオーバーしていたり、防災設備が備え付けられていなかったりして、建築基準法や都市計画法、消防法に違反している物件ことを言います。
「そんな物件があるの?」と思われるかもしれませんが、意外と多く流通しているのが現状です。
違法建築の物件は安全面で不安があるだけでなく、金融機関の融資を受けにくく、融資を受けられたとしても金利が高くなります。
また、売却しようと思っても買い手が見つかりにくいです。不動産投資の対象とするには、いろいろな意味でリスクが高いと言えるでしょう。
不自然に高利回りで低価格の投資不動産があったら、違法建築を疑ったほうがいいでしょう。
分かりやすい判断基準は、「確認済証」があるかどうか。確認済証がない物件には手を出さないのが賢明です。
不動産投資のNG:事故物件を選ぶ
事故物件とは、過去に事故や事件・トラブルなどが発生した物件のこと。
具体的には、自殺や殺人、孤独死や事故死などがあった物件です。物件そのものの性能・機能に問題はありませんが、次に住む人が心理的な抵抗や嫌悪感を覚えることから、「心理的瑕疵物件」とも言われます。
事故物件の所有者は、入居者や買主に事故物件であることを告知する義務があります。
そのため、入居付けする際も売却する際もかなりハードルが高くなります。
投資物件として向かないのは言うまでもありません。
告知義務が守られないケースもあるようなので、気になる場合は事故物件情報サイトなどで調べておくといいでしょう。
不動産投資のNG:配偶者の同意を得ずに不動産投資を始める
不動産投資で意外と多いのが、配偶者に内緒で不動産投資を始めて、後になってトラブルになるパターンです。
配偶者に隠しておきたい理由は人によって様々ですが、特に多いのは「不動産投資をしたいと言ってもどうせ反対されるから」といった理由です。
不動産投資では高額のローンを組むケースが多いので、配偶者の立場からしたら心配になるのも無理はありません。
反対されるのが目に見えているので、配偶者に伝えないまま不動産投資を始めるわけです。
配偶者に内緒で不動産投資を始めるのは難しいことではありません。
ですが、不動産投資をしていることを5年、10年と隠し続けるのは簡単なことではなく、郵便物や電話・メールのやり取り、銀行口座などからバレてしまうケースもあります。
後になってバレてしまうと夫婦の信頼関係に大きなヒビが入り、不動産投資どころではなくなりますし、最悪の場合、離婚にまで発展してしまう可能性もあります。
▼後でバレるより最初から理解を得る!
このようなリスクを考えると、やはり最初から配偶者の理解を得て不動産投資を始めるのが理想です。
そのためには、配偶者を説得する必要がありますが、そのときに大切なのが不動産投資の目的とメリットを明確に説明することです。
不動産投資の目的に関しては、「家族の将来の安心のため」という方向性で説明すべきです。
不動産投資のメリットに関しては、「老後の不安解消」や「万が一の際の備え」をアピールするのがおすすめです。
このご時世、「年金だけでは老後が不安」だと考えている配偶者は少なくありません。
不動産投資は長期継続的に家賃収入を得ることができ、公的年金を補う私的年金の役割を果たすので、この点に魅力を感じる配偶者は多いはずです。
また、勤務先の倒産や自身の病気などに備える意味でも、給与収入以外の収入源を持っておくことは大切です。
この点も比較的、配偶者の理解を得られやすいメリットだと言えるでしょう。
また、「団信」についてもきちんと説明するようにしましょう。
不動産投資でローンを組むと聞くと、万が一のことがあったときに「残った借金を引き継がなければいけない」と誤解している配偶者もいます。
しかし、団信に加入していれば、万が一のことがあったときも借金はすべて帳消しになります。この仕組みは、配偶者にとって安心材料になるはずです。
▼配偶者の協力を得て不動産投資を成功させよう!
不動産投資は物件を購入して終わりではなく、日々の収支管理や領収書の管理、記帳や確定申告など、様々な事務作業が発生しますが、すべての作業をオーナーが一人でおこなうのは現実的ではありません。
そんなとき、配偶者に協力してもらえたら不動産投資の成功はグッと近づくはずです。
ちなみに、不動産投資ローンを利用する際に配偶者の同意は必須ではありませんが、金融機関によっては配偶者の連帯保証を求めるところもあります。
配偶者に内緒で不動産投資をするとなると、ローンを組む金融機関の選択肢が少なくなりますが、配偶者が連帯保証人になってくれれば選択肢が増え、融資を受けやすくなります。
不動産投資のNG:営業マンに言われるがまま物件を購入する
不動産投資の営業マンは不動産を売るのが仕事です。
一般的に、営業マンにはインセンティブが設けられており、契約金額の数%がインセンティブとして支給されることが多いようです。
そのため、成績が良かった月は高額なインセンティブを得られますが、成績が悪かった月は給料がかなり落ち込むことになります。
自らの生活がかかっているだけに、営業マンも必死です。
インセンティブを獲得するために物件のメリットしか伝えない(デメリットを隠す)営業マンもいますし、高額な物件ばかりを勧めてくる営業マンもいます。
もちろん、顧客思いの信頼できる営業マンもたくさんいますが、営業マンに言われるがままに物件を購入して後悔するオーナーも少なくありません。
特に不動産投資が初めての方は、「営業マンが勧める物件は営業マンが売りたい物件であり、必ずしも顧客にとって最適な物件ではない」と考えておいたほうがいいでしょう。
▼最終ジャッジを下すのは自分!
物件を購入する際、不動産業者に相談するのは良いことですが、提案を鵜呑みにするのは良くありません。
営業マンの話を聞いたうえで、最終ジャッジを下すのは自分です。
たとえば、「このエリアは人口が増えているから狙い目です」と言われても、それを真に受けるのではなく、自分で公的機関が出しているデータを調べるなどして裏を取ることが重要です。
その程度の時間や労力を惜しんでいたら、不動産投資で成功することはできません。
自ら最終ジャッジを下すためには、不動産投資に関する最低限の知識を備えておく必要があります。
専門家が書いた書籍をいくつか読んだり、様々な不動産業者がおこなうセミナーに参加したりして偏りのない知識を身に付けていけば、営業マンの話を鵜呑みにすることなく、自分のフィルターを通して的確な判断ができるようになるでしょう。
まとめ
誤解を恐れずに言えば、不動産投資に必勝法などありません。
必勝法が存在するなら、すべてのオーナーが儲かってしまいます。
不動産投資を成功させる近道があるとすれば、それは本記事で解説したような失敗例を知っておくことでしょう。
不動産投資では、多くの人が物件探しに腐心しますが、良い物件を見極めるには経験豊富な不動産会社のアドバイスが欠かせません。
FGHは、収益不動産に特化した総合不動産グループ。
随時300~500物件の売却案件をオーナー様よりお預かりしております。
不動産投資を始めたい方も、不動産投資がうまくいっていない方も、お気軽にFGHにご相談ください。
豊富な実績・ノウハウに基づいたベストなご提案を差し上げます。
>> FGHの詳細はこちら
簡単30秒!無料査定をする!
このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
最新の不動産投資情報や株式、投資信託、為替など幅広い投資コンテンツを掲載。 オーナー様自身で最適な不動産の購入・売却・運用の判断材料になる情報をタイムリーに提供いたします。
関連する記事