マスターリースのリスク
先月、「賃料滞納のリスク」という題名でコラムを書いたあと、ある日の全国賃貸住宅新聞でサブリース賃料未納問題が1面に掲載されていました。
この問題は数年前に起きた「かぼちゃの馬車事件」と通ずる部分があり、個人的に収益不動産のリスクを改めて考えるきっかけとなりました。
マスターリースと賃貸住宅の管理業務等の適正化
マスターリースは、大まかにいえば所有者が直接不動産業者と家賃保証契約を結ぶことを指します。
家賃保証契約とは不動産会社が所有者に保証賃料(借賃)を払い、その部屋を他の業者や一般入居者に転貸するための仕組みです。
かぼちゃの馬車事件で多くの所有者が被害を被ったことから、知識の乏しい所有者と仕組みを熟知している不動産業者とのハンデをなくすため、令和2年に【賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律】が施行され、より不動産業者・賃貸管理業者に健全な運営を求められるようになりました。
サブリース賃料未納問題とかぼちゃの馬車事件の共通点
今回「サブリース賃料未納問題」として取り上げられていた事件は、投資用ワンルームマンションを販売しているR社から購入した所有者が21年9月までR社のグループ会社だったサブリース会社B社とマスターリース契約を結んだことから始まります。
通常マスターリース契約は転貸を前提とした契約であるため、保証賃料は相場の80%~90%の間で設定されることが多く、転貸で出した募集賃料との利ザヤで不動産会社は利益を生み出しているのです。
しかし、このB社は保証賃料を下回る募集賃料で転貸していたため、毎月赤字を抱えることになってしまいました。
これでは会社が成り立たないことは、不動産に詳しくない方でもわかるはずです。
ではなぜ、このような状況が成り立っていたのか。
問題の背景には、投資用ワンルームマンションを販売しているR社の販売利益で、B社の赤字を補填していたのではないかという疑いがあります。
この点がシェアハウスを建築販売した業者とマスターリース業者(ついでに銀行)が結託して販売価格を吊り上げて利益を生み、保証賃料をそこから補填していた「かぼちゃの馬車事件」とよく似ています。
建築販売業者からのルートでグループ会社のサブリース会社が所有者とマスターリース契約を結ぶことは珍しくないですが、健全な業務運営をするためには独立採算制をとることが大事です。
まとめ
弊社は2015年頃に仲介営業から賃貸管理にシフトして8年目を迎えました。
なかには採算のあわないマスターリース契約やサブリース契約もあります。
その時には誠実に所有者様などに根拠をもって賃料の相談をし、協議がまとまらないときには契約を解除するという苦しい決断をすることもあります。
管理会社にとって扱い戸数が減ることは売上減に直結します。
それでも、会社や所有者様への誠実さを大切にするべくここまでやってきました。
この先も新たな所有者様との出会いを大切に邁進していきます。
このコラムを書いている人
相馬將志
千葉県出身 お風呂での鼻歌がいつの間にか熱唱にギアチェンします。 保有資格:宅地建物取引士/管理業務主任者/賃貸不動産経営管理士/マンション管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/簿記2級
関連する記事