【ワンルームマンション 売却】売却にかかる税金とは?計算方法や知っておきたい控除について
【目次】
マンションを売却する際は、誰もが「高く売りたい」と考えます。
もちろん、高く売れるに越したことはありませんが、売却によって利益が出れば「譲渡所得税」が課せられることを忘れてはいけません。
譲渡所得税だけでなく、マンション売却の手続きをする際は必ず、登録免許税や印紙税がかかります。
マンション売却を成功させるためには、税金もきちんと頭に入れたうえで、最終的にどのくらいのお金が手元に残るのかを計算しなければいけません。
今回は、マンション売却にかかる税金やその計算方法について解説していきます。
マンション売却にかかる税金の種類
マンションを売却する際は必ず税金がかかります。
これは、投資用マンションでも居住用マンションでも同じです。
税金の種類としては大きく、「売却すれば必ずかかる税金」と「売却して利益が出た場合にかかる税金」に分かれます。
それぞれの税金について把握しておきましょう。
マンションを売却すれば必ずかかる税金
マンションを売却したとき、利益(売却益)が出る・出ないにかかわらず必ず発生する税金が「印紙税」と「登録免許税」です。
▼印紙税
印紙税とは、印紙税法によって「課税文書」として定められた文書を作成するときに課せられる税金のこと。
マンションを売却する際は、売買契約書や領収書が課税文書になります。
売買契約書や領収書を作成するときは、そこに規定額の収入印紙を貼り付けることで印紙税を納付します。
マンションを売却した売主は、売買代金を受け取ったら領収書を作成します。
領収書の印紙税は、領収書の作成者である売主が負担します。
一方で、売買契約書は売主と買主が一緒に作成する文書なので、「どちらが印紙税を負担すべきか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
この点、民法上では「売買契約に関する費用」は、売主と買主の双方が平等に負担する旨、規定されています。
また、印紙税法でも、印紙税は文書の作成名義人が連帯して納税義務を負うとされています。
そのため、マンション売却においては売主と買主が折半して印紙税を負担するのが通常です。
印紙税の負担を巡るトラブルを避けるため、売買契約書に「印紙代は各自が平等に負担する」などと規定されているのが一般的です。
とはいえ、売主と買主の間に「売主(もしくは買主)が印紙税を全額負担する」といった合意があれば、その合意内容が優先されます。
・領収書の印紙税の金額
マンション売却において領収書に貼るべき印紙税額は、領収書の記載金額(売買代金)によって変わってきます。
具体的には以下のように規定されています。
領収書の記載金額 | 印紙税額 |
5万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
200万円以下 | 400円 |
300万円以下 | 600円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 2,000円 |
2,000万円以下 | 4,000円 |
3,000万円以下 | 6,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
1億円以下 | 20,000円 |
2億円以下 | 40,000円 |
3億円以下 | 60,000円 |
5億円以下 | 100,000円 |
10億円以下 | 150,000円 |
10億円超 | 200,000円 |
記載金額のないもの | 200円 |
※ 参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7141.htm
例)マンションを1,800万円で売却して代金を受け取った場合
領収書に4,000円の収入印紙を貼り付けます。 |
・売買契約書の印紙税の金額
マンション売却における売買契約書に貼るべき印紙税額は、売買契約書に記載された契約金額(売買代金)によって変わってきます。
具体的には以下のように規定されています。
なお、2014年(平成26年)4月1日~2022年(令和4年)3月31日の間に作成された売買契約書は、軽減措置が適用されます。
売買契約書に記載された契約金額 | 本来の印紙税額 | 軽減措置による印紙税額 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円を超え50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 | 480,000円 |
※ 参考:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
例)4,000万円でマンションを売却する場合
売買契約書に10,000円の収入印紙を貼り付けます(軽減措置適用の場合)。 |
▼登録免許税
マンションを売却する際は名義変更などの「登記」をおこないますが、登記を申請する際には登録免許税を納める必要があります。
マンションの名義人を売主から買主に変更する登記を「所有権移転登記」と言いますが、所有権移転登記の登録免許税は買主が負担するため、説明は割愛します。
売主が登録免許税を負担すべき登記としては、「所有権登記名義人表示変更登記」と「抵当権抹消登記」があります。
・所有権登記名義人表示変更登記
引越しや結婚・離婚などによって売主の住所・氏名が登記簿上の記載と異なる場合に必要になる登記です。
現在の住所・氏名と登記簿上の住所・氏名が同じであれば、この登記は必要ありません。
・抵当権抹消登記
ローンを組んでマンションを購入したときに設定された抵当権(ローンの返済が滞ったときに、金融機関がマンションを売却して融資金を回収できる権利)を抹消する登記です。
ローンが残っているマンションを売却する際は、ローンを完済したうえで抵当権抹消登記をしなければいけません。
そもそもローンを組んでいない場合や、すでにローンを完済して抵当権が抹消されている場合は、この登記は必要ありません。
・登録免許税の金額
所有権登記名義人表示変更登記も抵当権抹消登記も、登録免許税の金額は不動産1つにつき1,000円で計算します。
土地と建物は別々の不動産とみなされるので、マンションの場合は少なくとも2,000円の登録免許税が必要になります。
例)4筆の土地にまたがって建っているマンションを売却する場合
所有権登記名義人表示変更登記や抵当権抹消登記の登録免許税は、5,000円(建物1,000円+土地4,000円)となります。両方の登記をおこなう場合は、合計で10,000円です。 |
マンションを売却して利益が出た場合にかかる税金
マンションを売却して利益(売却益)が出た場合は、「譲渡所得税」がかかります。
譲渡所得税という名称の税金があるわけではなく、あくまでも譲渡所得税は、“譲渡”したことによって“所得”が発生したときに課せられる“税金”の総称です。
具体的には、所得税と住民税のことを言います。
給与収入や事業所得など個人の所得には所得税や住民税が課せられますが、マンションを売却して譲渡所得(売却益)が出たときも、同様に所得税や住民税が課せられます。
もちろん、マンションを売却することで損失(売却損)が出るケースもあります。
この場合は譲渡所得が発生していないので、譲渡所得税もかかりません。
譲渡所得税の計算方法は複雑なので、次項で詳しく解説します。
マンション売却における譲渡所得税の計算方法
マンションを売却して譲渡所得(売却益)が出たときにかかる譲渡所得税の計算方法について解説します。
前提として、マンション売却における譲渡所得税は他の所得と区分して課税される「分離課税」です。
そのため、給与所得者がマンションを売却して利益が出た場合は、他の所得と区別して確定申告をしなければいけません。
譲渡所得税は基本的に、以下の順序で計算します。
①譲渡所得(売却益)を求める
譲渡所得 = 譲渡価格- (取得費 + 譲渡費用)
②課税譲渡所得を求める 課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除
③譲渡所得税額を求める 譲渡所得税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税) |
①譲渡所得(売却益)を求める
まずは、マンション売却による譲渡所得(売却益)を求めます。
譲渡所得は以下の算式によって算出できます。
譲渡所得 = 譲渡価格 − (取得費 + 譲渡費用) |
マンションを売却したときの譲渡所得は、マンションの譲渡価格(売却代金)から、マンションの購入価格や購入時の経費を差し引く必要があります。
算式を見ても分かるように、譲渡所得を求めるには、マンションの譲渡価格(売却代金)、マンションの取得費、マンションの譲渡費用を確定させなければいけません。
▼マンションの譲渡価額(売却代金)
譲渡価格は、マンションを売却したときの売却代金です。
「いくらで売れたか?」ということです。
▼マンションの取得費
取得費は、売却したマンションを取得(購入)したときにかかった費用のことです。
マンションの購入代金はもちろん、購入時の仲介手数料や税金なども含まれます。
具体的に、取得費に含まれる費用としては以下の費用が挙げられます。
(1)土地や建物を購入(贈与、相続又は遺贈による取得を含む)したときに納めた登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税
(2)借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料 (3)土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用 (4)土地の取得に際して支払った土地の測量費 (5)所有権などを確保するために要した訴訟費用 (6)建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用 (7)土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子 (8)既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金 |
※ 参考:No.3252 取得費となるもの|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
・建物部分の取得費は減価償却が必要!
マンションの取得費を求めるときに注意したいのが、建物部分の取得費です。
マンションの取得費は、土地部分の取得費と建物部分の取得費で構成されています。
土地部分に関しては購入価格がそのまま取得費として認められますが、建物部分は購入価格がそのまま取得費になるわけではありません。
建物は経年劣化によってその価値が下落していくため、購入価格から減価償却をする必要があります。
減価償却をするには、まず建物部分の購入価格を明らかにしなければいけません。
購入時の売買契約書や領収書を見ればマンション全体の購入価格は分かりますが、土地部分・建物部分の内訳が分からないケースも少なくありません。
内訳が分からない場合は、以下のような方法で建物部分の購入価格を明確にします。
【消費税から建物部分の購入価格を求める】
売買契約書や領収書に消費税の記載があれば、消費税をもとに建物部分の購入価格を求めることができます。
そもそも消費税は建物に課せられますが、土地には課せられません。
そのため、以下の算式で建物部分の購入価格を求められます。
建物部分の購入価格 = 消費税額 ÷ 購入時の消費税率 + 消費税額
例)2010年に3,500万円で購入したマンションの売買契約書に「消費税100万円」の記載があった場合 建物部分の購入価格は、100万円 ÷ 5%(2010年当時の消費税率) + 100万円 = 2,100万円となります。 土地部分の購入価格は、全体から建物部分の購入価格を引くだけなので、3,500万円 - 2,100万円 = 1,400万円となります。 |
【固定資産税評価額から建物部分の購入価格を求める】
マンションを所有していると毎年、「固定資産税納税通知書・課税明細書」が届きます。
この書面に記載されている固定資産税評価額から、建物部分の購入価格を求めることができます。
まず、固定資産税評価額の「土地:建物」の割合を求めます。
その割合でマンションの金額を分割することで、土地と建物それぞれの購入価格を算出できます。
例)マンションの購入価格が3,500万円で、土地の固定資産税評価額が1,600万円で、建物の固定資産税評価額が1,200万円だった場合 「土地:建物」の割合は、「1,600万円:1,200万円」なので「4:3」となります。 マンションの購入価格である3,500万円を「4:3」で分割することで、土地部分の購入価格は2,000万円、建物部分の購入価格は1,500万円と導き出すことができます。 |
・減価償却費の求め方
建物部分の購入価格が分かったら、減価償却費を求めます。
減価償却の計算方法は、大きく「定額法」と「定率法」の2種類がありますが、2007年4月1日以後に取得した建物は定額法のみとされています。
本記事でも、定額法に基づいて解説していきます。
減価償却費の算出方法は、マンションが居住用か事業用(投資用)かによって変わってきます。
【居住用マンションの減価償却費】
減価償却費 = マンション(建物部分)の取得価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 |
・マンション(建物部分)の取得価格
取得価格のほか、仲介手数料や登録免許税、不動産取得税なども含まれます。
・償却率
以下の表を参照してください。
事業用 | 居住用(非事業用) | |||
耐用年数 | 定額法償却率 | 耐用年数 | 定額法償却率 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造 | 47年 | 0.022 | 70年 | 0.015 |
れんが造、石造、ブロック造 | 38年 | 0.027 | 57年 | 0.018 |
木造、合成樹脂造 | 22年 | 0.046 | 33年 | 0.031 |
木造モルタル造 | 20年 | 0.050 | 30年 | 0.034 |
※ 参考:【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(建物/建物附属設備)|国税庁
・経過年数
マンションの所有期間のことです。1年未満の端数は、6ヶ月以上なら1年とみなし、6ヶ月未満は切り捨てます。
【事業用マンションの減価償却費】
平成19年(2007年)3月までに取得した事業用マンション
減価償却費 = マンション(建物部分)の取得価格 × 0.9 × 償却率 × 事業用に使用した月数の累計 ÷ 12 |
平成19年(2007年)4月以降に取得した事業用マンション
減価償却費 = マンション(建物部分)の取得価格 × 償却率 × 事業用に使用した月数の累計 ÷ 12 |
・マンション(建物部分)の取得価格
取得価格のほか、仲介手数料や登録免許税、不動産取得税なども含まれます。
・償却率
以下の表を参照してください。
事業用 | 居住用 | |||
耐用年数 | 定額法償却率 | 耐用年数 | 定額法償却率 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造 | 47年 | 0.022 | 70年 | 0.015 |
れんが造、石造、ブロック造 | 38年 | 0.027 | 57年 | 0.018 |
木造、合成樹脂造 | 22年 | 0.046 | 33年 | 0.031 |
木造モルタル造 | 20年 | 0.050 | 30年 | 0.034 |
※ 参考:【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(建物/建物附属設備)|国税庁
・事業用に使用した月数の累計
事業用に使用した期間を月単位で合計します。
▼マンションの「譲渡費用」
譲渡費用は、マンションを売却したときの諸経費のことです。
取得費がマンションを購入したときにかかった費用であるのに対し、譲渡費用は売却したときにかかった費用です。
具体的に譲渡費用になるものは以下のとおりです。
(1)土地や建物を売るために支払った仲介手数料
(2)印紙税で売主が負担したもの (3)貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料 (4)土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額 (5)既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で売るために支払った違約金 (6)借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など |
※ 参考:No.3255 譲渡費用となるもの|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
譲渡費用はマンションを売却するときに直接かかった費用なので、修繕費や管理費など、維持管理のために要した費用は含まれません。
ただし、売却に際して買主からの要望でおこなったリフォーム費は譲渡費用として認められる場合があります。
②課税譲渡所得を求める
マンション売却による譲渡所得を求めたら、次は課税譲渡所得を算出します。
課税譲渡所得は以下の算式によって求められます。
課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除 |
マンションを売却したときの譲渡所得の計算上、特例として「特別控除」を受けられるケースがあります。
譲渡の種類とその特別控除額は、以下のとおりです。
(1)公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
(2)マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例 (3)特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例 (4)特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例 (5)平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例 (6)農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例 (7)低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例 |
※ 参考:No.3223 譲渡所得の特別控除の種類|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3223.htm
これらの特例が適用になる場合は、①で算出した譲渡所得から一定額を控除することができ、差し引き後の金額が課税譲渡所得となります。
③譲渡所得税額を求める
最後に、以下の算式によって譲渡所得税額を求めます。
譲渡所得税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税) |
譲渡所得税額は、課税譲渡所得に税率を乗じることで算出できます。
このときに乗じる税率は、所得税と住民税で異なるほか、マンションの所有期間が5年以下の場合と5年を超える場合でも変わってきます。
以下のとおり、マンションの所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」に分類されます。
・長期譲渡所得の税率
20.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)
・短期譲渡所得の税率
39.63%(所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9%)
売却したマンションを所有していた期間が短い場合は税率が高く、所有していた期間が長い場合は税率が低くなります。
短期間で売却した場合に税率が高くなるのは、キャピタルゲイン(値上がり益)を狙った投機的な不動産売買を抑制するためです。
マンション売却における譲渡所得税の計算事例
実際に数字を当てはめて、マンション売却時の譲渡所得税を計算してみましょう。設定は以下のとおりとします。
2010年1月に投資用のワンルームマンション(鉄骨鉄筋コンクリート造)を新築で購入
・購入価格:4,000万円(土地部分1,500万円、建物部分2,500万円) 2019年1月に売却 ・売却価格:3,800万円 ・譲渡費用:150万円 |
はじめに、マンションの建物部分の減価償却費を求めます。
平成19年(2007年)4月以降に取得した事業用マンションの減価償却費は、以下の算式によって求めます。
減価償却費 = マンション(建物部分)の取得価格 × 償却率 × 事業用に使用した月数の累計 ÷ 12 |
減価償却費 = 2,500万円 × 0.022(鉄骨鉄筋コンクリート造の償却率) × 108ヶ月(9年) ÷ 12
= 495万円
次に、取得費を求めます。
取得費 = 1,500万円(土地部分) + 2,500万円(建物部分) - 495万円(建物の減価償却費)
= 3,505万円
①②③の順に、譲渡所得税を算出していきます。
①譲渡所得を求める
譲渡所得 = 譲渡価格 − (取得費 + 譲渡費用) |
= 3,800万円 - (3,505万円+ 150万円)
= 145万円
②課税譲渡所得を求める
課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除 |
今回、特別控除はないものとするため、課税譲渡所得は145万円となります。
③譲渡所得税額を求める
譲渡所得税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税) |
マンションの所有期間は9年間なので長期譲渡所得が適用されます。所得税および住民税の税額は以下にようになります。
譲渡所得税額(所得税) = 145万円 × 15.315%
= 222,067円
譲渡所得税額(住民税) = 145万円 × 5%
= 72,500円
合計:294,567円
このマンション売却の事例では、294,567円の譲渡所得税が課せられます。
マンション売却時の譲渡所得税を軽減できる特例・控除制度
マンションを売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課せられることはここまで解説したとおりですが、譲渡所得税の負担を軽減できる特例・控除制度がいくつかあります。
特例を知らないと損をしてしまう可能性もあるため、ぜひ把握しておきましょう。
マンション売却時の譲渡所得税を軽減できる代表的な特例・控除制度は以下のとおりです。
3,000万円の特別控除
マイホーム(居住用財産)を売却したときに得られた譲渡所得(売却益)から最高で3,000万円を控除できる制度が「3,000万円の特別控除(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例)」です。
譲渡所得が3,000万円以下であれば、譲渡所得税は課税されなくなります。
たとえば、マンションを売却して1,000万円の譲渡所得が出た場合、3,000万円の特別控除が適用になれば、「1,000万円 - 3,000万円」で課税価格がマイナスになるため、譲渡所得税は非課税になります。
なお、3,000万円の特別控除はマイホーム(居住用財産)の売却を前提としているため、投資用のマンションを売却したときには適用になりません。
3,000万円の特別控除に関する詳しい要件・手続きなどは国税庁のページでご確認ください。
>> No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、10年を超えて所有しているマイホーム(居住用財産)を売却して譲渡所得(売却益)が出たときにかかる譲渡所得税の税率が軽減される特例です。
主な要件は、マイホーム(居住用財産)の売却であることと、所有期間が10年を超えていることです。
そのため、投資用のマンションの売却時は適用になりませんし、所有期間が10年以下のときも適用になりません。
上述した3,000万円の特別控除と併用できるため、3,000万円特別控除の特例を適用しても譲渡所得が発生する場合(譲渡所得が3,000万円を超えている場合)は、10年超所有軽減税率の特例を検討します。
この特例が適用になると、譲渡所得が6,000万円以下の部分について税率が14.21%に軽減されます。
10年超所有軽減税率の特例を踏まえて短期譲渡所得・長期譲渡所得の税率をまとめると、以下のようになります。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | ||
所有期間 | 5年以下 | 5年超 | 10年超所有軽減税率の特例 |
居住用不動産 | 39.63% 所得税30.63%住民税9% |
20.315% 所得税15.315%住民税5% |
・課税譲渡所得6,000万円以下の部分:14.21%
所得税10.21% 住民税4% ・課税譲渡所得6,000万円超の部分:20.315% 所得税15.315% 住民税5% |
非居住用不動産 | 39.63% 所得税30.63%住民税9% |
20.315% 所得税15.315%住民税5% |
※ 所得税には復興特別所得税を含みます。
10年超所有軽減税率の特例に関する詳しい要件・手続きなどは国税庁のページでご確認ください。
>> No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
特定居住用財産の買換え特例
特定居住用財産の買換え特例とは、マイホーム(居住用財産)を買い換える場合、新しく購入したマイホームが売却した元のマイホームよりも高い場合に、元のマイホームの譲渡所得(売却益)にかかる譲渡所得税の課税が先送りされる特例です。
たとえば、今のマイホームを2,000万円で売却して、3,000万円のマイホームに買い換えた場合は、譲渡所得税の課税が先送りされます。
この特例は、譲渡所得税が軽減されたり非課税になったりするわけではなく、課税が先送りされるのがポイントです。
買い換えのタイミングでは譲渡所得税は課税されませんが、新しいマイホームを将来売却するときが来たら、そのタイミングで課税されます。
主な要件は、マイホーム(居住用財産)の買い換えであることと、所有期間が10年を超えていることです。
そのため、投資用のマンションの買い換え時は適用になりませんし、所有期間が10年以下のときも適用になりません。
特定居住用財産の買換え特例に関する詳しい要件・手続きなどは国税庁のページでご確認ください。
>> No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm
取得費加算の特例
取得費加算の特例とは、相続した不動産を売却して譲渡所得(売却益)が出た場合に、その不動産の相続税の一部を取得費として加算できる特例です。
譲渡所得税は譲渡所得が多いほど高くなります。
譲渡所得は、「譲渡価格(売却代金) - (取得費 + 譲渡費用)」で求めます。つまり、取得費加算の特例によって取得費が大きくなれば、そのぶん譲渡所得が少なくなり、譲渡所得税も軽減されるということです。
取得費加算の特例の適用を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。
相続財産の種類は限定されていなため、投資用マンションの場合も適用になります。
・相続や遺贈により財産を取得した者であること。
・その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
・その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
取得費加算の特例に関する詳しい要件・手続きなどは国税庁のページでご確認ください。
>> No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
マンションを売却したとき、必ずしも利益が出るとは限らず、損失が出るケースも少なくありません。
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)は、売却によって譲渡損失(売却損)が発生したときに適用になる可能性がある特例です。
この特例が適用になると、マンション売却で発生した譲渡損失を他の所得(給与所得や事業所得など)から差し引くことができます(損益通算)。
譲渡損失額がその年の他の所得を上回る場合は、相殺しきれなかった譲渡損失額を翌年以降に繰り越して再び差し引くことができます(繰越控除)。
マンションを売却した年の翌年から最長3年間繰り越しできるため、売却した年と合わせて最長4年間、節税することができます。
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例に関する詳しい要件・手続きなどは国税庁のページでご確認ください。
>> No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3370.htm
マンション売却に関するよくある質問
マンション売却に関するよくある質問をご紹介します。
マンションを売却する際、消費税はかかりますか?
マイホームである居住用マンションを売却する場合、消費税はかかりませんが、投資用マンションを売却する場合は消費税がかかります。ただし、消費税がかかるのはマンションの建物部分だけで、土地部分は非課税です。
例)4,000万円(土地部分1,500万円、建物部分2,500万円)のマンションを売却する場合 売却価格は、建物価格2,500万円 + 消費税(2,500万円 × 10%) + 土地価格1,500万円 = 4,250万円となります。 |
なお、売主が給与所得者の場合は、買主から受領した消費税は課税対象にはなりません。
売主が法人または個人事業主で消費税の課税事業者である場合は、確定申告で消費税申告書を作成して納税する必要があります。
売上が1,000万円以下で消費税の免税事業者であれば、消費税を納税する必要はありません。
特例や控除制度は住宅ローン控除と併用できますか?
マンションを買い換える際は、売却時の税金を節税したいし、購入するマンションでは住宅ローン控除を使いたいというケースがあると思います。
上述のとおり、マンション売却時の税負担を軽減できる特例として「3,000万円の特別控除」「10年超所有軽減税率の特例」「特定居住用財産の買換え特例」などがありますが、これらの特例を住宅ローン控除と併用することはできません。
マンション売却で譲渡所得が出た場合は、売却時の税金を節税するか、買い換えたマンションで住宅ローン控除を使うか、どちらが自分にとって有利になるかを見極めることが大切です。
マンション売却時の税金はいつ納めますか?
税金ごとの納付時期は以下のとおりです。
・印紙税(売買契約書)の納付時期 → 売買契約時
・印紙税(領収書)の納付時期 → 領収書発行時(決済時)
・登録免許税の納付時期 → 登記申請時(決済時)
・譲渡所得税(所得税・復興特別税)の納付時期 → 売却した翌年の2月16日~3月15日(確定申告時)
・譲渡所得税(住民税)の納付時期 → 売却した翌年度の6月以降
まとめ
投資用マンションを売却する際は、投資物件の売却実績が豊富な不動産業者に相談しましょう。
FGHは、収益不動産に特化した総合不動産グループで、設立以来、数多くの投資用マンションの売却を手がけてまいりました。
特にオーナー様に好評なのが、弊社独自の投資指標である「売却運用率®」「リスクパーセンテージ®」を用いた分析です。
売却運用率®は、どのタイミングで売却すれば有利なのかを数値化するもので、リスクパーセンテージ®は、物件を持ち続けることによるリスクを数値化するものです。
この2つの指標で分析することで、マンション売却・運用の最適な判断が可能になります。
投資用マンションの売却をお考えのオーナー様は、ぜひFGHにご相談ください。
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このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
最新の不動産投資情報や株式、投資信託、為替など幅広い投資コンテンツを掲載。 オーナー様自身で最適な不動産の購入・売却・運用の判断材料になる情報をタイムリーに提供いたします。
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