不動産投資とリスクヘッジ、あるいは逃亡者の危険な兆候

公開日2022/11/01
更新日2023/02/07

RISK

不動産投資は、投資と名のつく以上、リスクとは無縁ではありえませんが、リスクはリスクとして正しく捉えたうえで、それなりの対策を講じて運用するならば不動産投資は安全な投資になりえます、と、私はかつての当社のセミナーで熱弁しつづけてきました。
 
この不動産投資にあたって織り込んでおくべきリスクとは、
 
①空室リスク
②家賃の下落リスク
③物件価格の下落リスク
④修繕積立金の上昇リスク

 
の4つであり、天災とか家賃滞納とかはリスクというよりはアクシデントと認識して、保険で対応するべきものですよ、とも言っていましたね。
 
それでは、ついこの間のコラムで触れられていた、原状回復費用の負担を免れるために逃亡されたようなケースは、リスクなのでしょうか、それともアクシデントなのでしょうか。
 
こんなことを持ちだしたのは、先のコラムで触れられていた、明け渡し立会日の当日から音信不通になって逃亡した賃借人という事例につい最近遭遇したばかりだからです。
 
以前から何度も触れているとおり、私は自宅併用のアパートの管理を親から任されており、主に金銭面での管理だったものが、父の他界にともなって物件管理にまで手を広げることになったのが4年ほど前のこと。
 
ここで驚いたのが、つきあっている不動産会社はいわゆる客付け業者のみで、賃貸管理会社との管理委託契約というものは一切交わしていないという事実でした。
 
それからというもの、賃借人の入れ替わりがあるたびに、関連会社のアーバンフォースと(ディスカウントなしに)管理委託契約を結んできて今に至るのですが、そのうちの1件が前述の逃亡賃借人との契約だったわけです。
 
投資運用している不動産が遠方にある場合では把握することは難しいでしょうが、同一敷地内に住んでいれば、怪しい行動を取りそうな賃借人の危険な兆候らしきものを感知することはできなくはありません。
 
この兆候をひとことで言うなら、何につけてもルールが守れないということにつきます。

不動産トラブル原因

 
たいがいの単身者用の賃貸物件では楽器の演奏は禁止されていると思いますが、この逃亡者は何度注意しても非常識な時間帯にエレクトリックギターを弾くことをやめませんでした。
 
あんまりひどいので、違約解除のようなアプローチで出て行ってもらったわけですが、退去前の2、3週間というものは、どこにこんなに溜め込んでいたんだ?というくらいの大量の可燃ごみが山と積まれているありさまです。
 
さぞかしゴミ屋敷だったことだろう、原状回復にどれだけかかるものかしら、という漠然とした不吉な予感は残念ながら見事に的中しました。
 
もう次の入居者が2週間後に引っ越してくるというのに、この逃亡者は退去立会日に大量の残置物をあとに残して姿をくらましたのです。
 
身びいきをするわけじゃありませんが、ここからのアーバンフォースの対応は素早かったですね。
 
2日後には残置物の撤去が終わり、悲しくなるくらい汚損された部屋内の修補を、とにもかくにも1週間で終わらせ、新入居者に迷惑をかけることなく、またオーナーサイドの金銭的損害も保証会社のフル活用によって最小限で収めてくれました。

ビフォーアフター

 
賃貸管理会社にお願いしていなかったら、とても自力では解決できなかったことでしょう。
 
あのままずるずると居座られていたら、建物に致命的な損壊をもたらしていたかもしれません。
 
先のコラムでは、逃亡する賃借人は一定数存在する、と述べていますので、賃借人の逃亡リスクは保証保険でカバーすべきアクシデントに分類されるのでしょうが、腕のいい賃貸管理会社との管理委託契約の締結は不動産投資におけるリスクヘッジとして必須なものである、と身をもって痛感したことでした。
 
オーナー様の満足度を最大化

このコラムを書いている人

中村 彰男

中村 彰男

1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、37年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー

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