今後発生する地震にどう備えるべきか
- 令和6年能登半島地震による被害と住宅の耐震化について解説します。
- 地震被害拡大の要因や耐震基準の歴史、現行の2000年基準に至るまでを紹介。被災地の住宅耐震率の課題や国土交通省の2030年目標にも触れながら、耐震改修の重要性を解説します。
- 新耐震基準を満たすと受けられる減税制度や補助金についても紹介します。
令和6年1月1日16時10分に発生した最大震度7の令和6年能登半島地震によって、甚大な被害が生じています。被災されたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。一刻も早い復旧を心から願うばかりです。
今回の地震での被害拡大の要因として指摘されているのが、住宅の耐震化の遅れです。住宅の耐震化率は2018年に全国で87%まで上昇しましたが、地域差が大きく、特に被害が大きい石川県珠洲市や輪島市などでは、住宅の半数が国の耐震基準を満たしていなかったと報道されています。住宅の倒壊は人的被害につながる恐れが高く、この問題は見過ごせません。
耐震基準は1980年以前(旧耐震)・1981年以降(新耐震)・2000年以降(現行耐震基準)と大きく3つに分けられています。
新耐震基準・旧耐震基準はいつ、どう変わったのか
1950年に建築基準法が制定され、全国の全ての建物について、初めて耐震設計が義務付けられました。その後に発生した1964年の新潟地震、1968年の十勝沖地震を経て1971年に建築基準法の改正があり、さらに1978年の宮城県沖地震を経て、1981年6月に耐震基準の大きな改正がありました。このように、建築基準法は大地震や事件を経るたびに改正を繰り返しているため、「生きた法律」とも呼ばれています。
1981年6月以降の耐震基準は「新耐震基準」として、1981年5月以前の耐震基準は「旧耐震基準」として区別されているのはご存知の方も多いでしょう。
旧耐震基準は、震度5程度までの地震で修復可能・倒壊しないという基準に基づいて制定されました。
新耐震基準と呼ばれる1985年6月の建築基準法改正で強化された基準では、それ以降に建築確認を取得した住宅に適応されます。1978年に発生した宮城県沖地震(震度5)で7400戸もの家屋が倒壊したことから、震度基準が厳格化され、震度6強程度では倒壊・崩落しない耐震性が求められています。(震度6強~7程度の地震は数百年に一度程度の発生と言われています)
その後の1995年に発生した阪神淡路大震災(最大深度7)では、被災した木造住宅の98%は旧耐震基準だったデータもあります。
それに加えてみなさまに知っておいて頂きたいのは、耐震基準は家ではなく命を守るための基準となりますので、地震後もその住宅に住み続けられる強度を保証するという基準ではないということです。
2000年基準(現行耐震基準)について
1995年の阪神淡路大震災を経て、おもに木造住宅の耐震性向上を目的に、さらに基準を強化して法的拘束力を持たせたのが現行の耐震基準(2000年基準)です。
改正された内容としては、地盤を考慮した基礎設計のために事前の地盤調査が必要になったこと、建物の基礎部分と柱の接合部に取り付ける金具の種類が明記されたこと、耐力壁と呼ばれる壁の配置のバランス計算が必要になったことなどです。これまではいずれも設計者の裁量に任されてきたことです。
さらに、2006年に姉歯事件と呼ばれる耐震強度構造計算書偽装事件が起こり、2007年には建築確認申請が厳格化されたのは記憶に新しいところではないでしょうか。
最後に
あまり知られていないかもしれませんが、国土交通省では2030年までにほぼ全ての住宅の耐震基準を満たす目標を掲げています。
引用元:国土交通省公式サイト
新耐震基準を満たした住宅は減税の対象になり、住宅ローン減税・登録免許税の減税が受けられます。
また、家を建てたあとであっても、住宅の一部を補強耐震改修により耐震性を高めることは可能です。耐震工事でも減税の対象となり、不動産取得税減税・固定資産税も初年度のみにはなりますが軽税されます。整備を促すために国や自治体では耐震改修費を補助しているので、気になる方はぜひお住まいの地域の補助について調べてみましょう。
今回の地震で今まで以上に防災意識が高まっていると思いますが、この機会に住宅の耐震化の重要性を再認識することが大事ではないでしょうか。
このコラムを書いている人
sakamoto
1985年 愛媛県今治市生まれ 保有資格:不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者/マンション管理士/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/簿記2級