誤解だらけの2020年オリンピック問題 

更新日2026/02/03
投稿日2017/09/26

マンション群
2020年の東京オリンピックを境に日本の不動産市場は暴落するのではないか、といった記事を眼にすることが、最近めっきり多くなりました。
そのような記事が出回ること自体が、すでに不動産市況の過熱感を象徴しているわけですが、共通して言えることは、さしたる根拠もなく不安感をあおっている内容ばかりだということです。

いわく、「オリンピックまでは不動産価格は上昇を続ける」だの、「不動産市場はバブルに突入しており、そのバブルはオリンピック前後で弾ける」だの、一見もっともらしい体裁は整えてはいるものの、じっくり読み込んでみれば、実に薄弱な根拠でしかものを言っていないことに気づくでしょう。
オリンピックに向けたインフラ整備によって需要が増加しているので、オリンピックが終われば一気に暴落する、という説がありました。

まるで、オリンピックが終わったらインフラ整備がなくなるとでも言いたげですが、コンパクトシティ推進の流れからみれば、そんなことはありえません。
オリンピック招致が決まった2013年秋から翌年にかけて臨海部の物件を爆買いした中国の富裕層が、長期譲渡に切り替わる2019年に一斉に売り抜けに転ずるという説もありましたが、彼らが買ったのは主に新築物件であり、2019年に売却したからといって、税制上の恩恵にあずかれるものではないのです。

北京オリンピックの際は、開催1年前にバブルが弾けたという先例を引いて警鐘を鳴らす記事もありました。
たしかにバブルは弾けていますが、これは株式市場の話であって、不動産が暴落したわけではありません。

では、本当のところはどうなのでしょうか。
この2年あまり、バブル警戒水域に突入している中国の不動産市場を例にとって考えてみましょう。
経済成長の鈍化が明らかになりはじめた2014年くらいから、中国の住宅市場は深刻な販売不振に陥り、不動産の価格は下落に転じました。

これに対し、不動産価格の下落が景気後退につながることを警戒した中国人民銀行(中国の日本銀行にあたる)は、相次ぐ利下げや100%ローンの容認などの金融緩和によって景気の下支えに動きます。

その結果がどうなったかといえば、売れ残っていた地方都市の物件はすっかり置き去りにされ、人口の流入が続いている一部の大都市の不動産に資金が流れ込むことになりました。

金融緩和の弊害として、不動産融資を悪用し、不正なオーバーローンで浮かせた資金を株式投資に転用するケースもかなりあったといわれ、外部信用取引資金とともに、2015年に暴落した上海株のバブルを演出した陰の資金だったという指摘もあるくらいです。
証券当局は、あまりにも過熱した株式相場を沈静化させるため、外部信用取引の規制を行ないましたが、真水部分にあたる資金は思ったより少なく、株式相場の大暴落を招いてしまったというわけです。

株が暴落すれば、不動産もつられて下落するのが本来なのですが、大都市の局所バブルは収まる気配がみられません。
これは、米国の利上げによって相対的にもたらされる人民元安をにらみ、資金をドルに変えようとする資本流出を厳しく制限した結果、だぶついた資金が国内の不動産に集中しているからなのです。

ここから分かることは、不動産価格の決定要因は、つまるところ金融政策と人口動態の関数にすぎないということです。
これまでみてきたように、不動産の価格は、オリンピックまでは、とか、オリンピックを境に、などといった分かりやすい基準で決まるものではありません。

いわんや、「2020年までは上昇すると噂されている」、だの、「大筋の見立てではオリンピック前後にプチバブルが弾ける」、だののような、何の根拠も示さない論述に至っては、あまりにも不勉強にすぎますし、いたずらに投資家心理を混乱させているだけのように見えます。

もう一度繰り返しますが、不動産価格の決定要因は金融政策と人口動態の関数です。
金融が緩和され、不動産市場に資金が流入すれば、不動産価格が上昇するのは、統計上明らかであり、バブルとも見える2017年現在の東京の不動産市場は、インフレ誘導を狙った大規模な金融緩和政策が作り出したものとみていいでしょう。

この金融緩和は、リーマンショック後の金融危機から立ち直るために導入された、近年の世界的潮流でもあったわけですが、今年に入って潮目が大きく変わりつつあり、すでに、米連邦準備理事会(FRB)が2回目の利上げに動いたことは、記憶に新しいところです。

米金利が上がれば、ドル高円安に誘導され、日本企業の業績は向上しますから、日銀が金融引き締めに転ずる環境は整ってきたといえるのですが、今のところ、日銀サイドは緩和継続の方針を転換する気配をみせていません。
消費者物価2%上昇という公約実現のために、もはや意地になっているとしか思えない金融緩和政策の出口はどこにあるのでしょうか。

責任者の交代、がその答えです。
2018年4月、現在の日銀総裁である黒田東彦氏が任期満了を迎えます。
黒田氏が退任すれば、意地を張り続ける必要がなくなりますから、世界的潮流や外圧によって、金融政策は緩和から引き締めに転ずることになるでしょう。

不動産価格の下落はここから始まります。

2020年オリンピック問題という亡霊などは相手にせず、2018年問題というリアルな経済問題と向き合うのが、賢明な投資家というものでしょう。
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このコラムを書いている人

中村 彰男

中村 彰男

1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、39年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー

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