不動産投資シミュレーション
【目次】
不動産投資シミュレーションとは?
投資物件を決定するときは、不動産投資シミュレーションが有効です。
例えば、賃料の低下や空室が発生するとどうなるか不安になるでしょう。
このようなときは、不動産投資シミュレーションによって、損益分岐点やキャッシュフロー、収益性を分析することができます。
不動産投資シミュレーションは投資判断に役に立つ
投資物件を選択する初めの段階においては、物件概要で示されている表面利回りという満室を想定したときのものがよく使用されます。
候補物件を絞り込むときには表面利回りが有効ですが、判断を最終的に行うためには、十分な指標では必ずしもありません。
例えば、表面利回りが同じ7%台でも、購入する人や物件によってキャッシュフローは違います。
資金調達の金利などの条件、賃貸稼働率、物件の築年数や構造による減価償却費のレベルなどによって、手取り額が税引き後に違ってくるためです。
複雑な現在のようなマーケットでは、資産価値の将来的な予測も違います。
トータル的な投資判断は、さらに困難になっているでしょう。
そのため、投資家の個人や法人の状況に応じて、多角的にそれぞれの物件を分析しないと、その物件を本当に選択してもいいかは見極めができません。
不動産投資シミュレーションが、最近は従来よりも非常に進んでいます。
例えば、不動産投資シミュレーションとしては、キャッシュフロー、キャッシュフロー累積予想、税引き後利益、法人シミュレーション、売却シミュレーションなどがあります。
従来からあるキャッシュフローでも、柔軟に賃料の下落率や空室率を設定することができるようになりました。
賃料の下落率や空室率による赤字の境界はどこか、何年目に出口戦略を考えるのが妥当か、などの損益分岐点を計算することができます。
不動産投資シミュレーションのメリットとは?
ここでは、不動産投資シミュレーションのメリットについてご紹介します。
物件の実力がキャッシュフロー試算でわかる
ここでは、次のような一棟マンションについて、税引き前のキャッシュフローの試算例についてご紹介します。
- 築年数:22年
- 価格:1億6,500万円
- 諸費用:約800万円
- 自己資金:約2,450万円
- 借入額:1億4,850万円(30年返済、年利2.3%)
満室を想定したときの表面利回りは7.27%であるため、割合高いニーズの利回りレベルといえるでしょう。
頭金は価格の1割で、諸費用を含めて約2,450万円の自己資金を投入しています。
満室を想定したときの税引き前のキャッシュフローの試算例は、次のようになります。
- 年間収入:1,200万円
- ローン支払額:685万7,159円
- その他経費:1248万7,400円
- 税引き前キャッフロー:265万5,441円
一方、77%の稼働率を想定したときの税引き前のキャッシュフローの試算例は、次のようになります。
- 年間収入:924万円
- ローン支払額:685万7,159円
- その他経費:233万8,360円
- 税引き前キャッフロー:4万4,481円
なお、その他経費は、都市計画税・固定資産税、水道光熱費、清掃・設備点検、委託管理費などです。
満室を想定したときの税引き前キャッシュフローは、約266万円です。
税引き前キャッシュフローがマイナスにならないレベルを試算すれば、77%の稼働率になります。
逆にいうと、キャッシュフロー上は23%の空室率までであれば耐えられます。
周りの同じような物件の空室率、空室の実際の状況を調査して比べると、検討する価値があるかがわかるでしょう。
購入するときに満室でも、入居する人が入れ替わるとき空室に一時的になるときもあるため、稼働率としては95%くらいで試算する方がいいでしょう。
空室率・稼働率以外に、賃料のレベルを調整した不動産投資シミュレーションもできます。
周りの相場よりも賃料設定が高めになっているときは、入居する人が入れ替わるときに賃料が低下するリスクもあります。
周り相場と同じにしたときにどのようになるかを確認するときにも、不動産投資シミュレーションは有効です。
設定条件を変更することで、物件の損益分岐点をいろいろな観点から判断することができます。
しかし、実際に投資するときは税金がかかります。
税額はその他の所得、投資家自身の属性との関係に影響されるため、実際の手取り額が税引き後キャッシュフローを試算するとわかります。
稼働率が95%のときの実際の手取り額としては、次のようになります。
- 所得が投資物件から獲得できるもの以外になければ約180万円
- 1,000万円のその他の所得があれば約126万円
物件の体力が賃料下落を考慮した税引き後キャッシュフローでわかる
賃貸経営のときは、中長期的な推移についても確認しておく必要があります。
ここでは、不動産投資シミュレーションによってキャッフローの30年間の推移を予測したものについてご紹介します。
1年目の賃料は満室を想定したときからスタートし、賃料低減率を2年目~5年目までは1%にしています。
この後も、2年ごとに賃料が1%ずつ低減するとして、税引き後と税引き前の推移についてご紹介します。
賃料が低減するにしたがって税引き後と税引き前ともにキャッフローは少なくなり、税引き後のキャッシュフローがマイナスになります。
この資産では修繕費を考慮していないときであるため、途中で大きな修繕が何回か発生すれば、キャッフローはさらに早い段階でマイナスになるでしょう。
不動産投資シミュレーションでは、修繕費を定期的に設定することもできます。
なお、税引き後キャッフローが急に16年目に多くなるのは、オーナーが45歳で取得した後60歳で退職して、課税所得が少なくなって住民税・所得税が少なくなったためです。
試算結果は、オーナーの所得によって違ってきます。
また、税引き後キャッシュフローのトータル額もキャッシュフロー予測で計算できます。
このトータル額が初期に払った自己資金を上回るときまでが、資金を回収している期間になります。
資金が何年間で回収できるかも、投資するときの一つの判断指標になるでしょう。
不動産投資シミュレーションのポイントとは?
不動産投資をするときは、不動産投資シミュレーションが必要です。
不動産投資は、一般的に長期間の5年以上所有するものです。
長期間所有するため、購入した後に獲得できる賃料収入から、諸経費の税金、管理費、残債の返済などを差し引きした後にどの程度の利益が獲得できるか、試算をきちんと行う必要があります。
また、所有期間中に築年数が経つことよる空室率のリスク、賃料の減少などを考慮して、不動産投資シミュレーションをする必要があります。
長期間所有していると、いろいろなことが発生するため、購入する前に全てのことを予測しましょう。
ここでは、不動産投資シミュレーションのポインについてご紹介します。
一棟マンション物件の不動産投資シミュレーションのポイント
一棟マンション物件のときは、建物以外に土地も関係します。
不動産投資シミュレーションをするときは、非常に多くの情報を把握する必要があります。
具体的な情報としては、次のようなものがあります。
・購入価格
一棟マンション物件の購入価格としては、売買価格以外に、土地、建物の内訳も掴みましょう。
・購入するときの諸費用
物件を購入するときは、物件自体の価格以外に、諸経費の仲介手数料、印紙代、不動産取得税、都市計画税・固定資産税の清算金などもかかります。この金額もはっきりと掴みましょう。
・土地の特徴
一棟マンション物件のときは、建物が老朽化して評価が低下しても、必ず土地の価値はあります。
また、土地の価値はいろいろな条件によって変わるため、きちんと土地についても掴んでおきましょう。
土地の形状、隣地との境界線、接道の状況、再建築のときの制限など、可能な限り情報を細かく入手するようにしましょう。
・建物の構造と広さ
建物がコンクリートであるか、木造であるかを掴むと、規模の大きな修繕費を予測することができます。
一棟マンション物件のときは、一般的に築10年程度で規模の大きな修繕が必要になるといわれているため、きちんとこの費用も考慮しましょう。
・各部屋の間取りとレントロール、入居している期間
現在の賃料、入居している期間、部屋の間取りがわかることによって、空室率と賃料低減率が予測しやすくなります。
・周りの同じような物件の賃料相場の調査
築年数がある程度経っている物件は、賃料の動きがレントロールの履歴などでわかりますが、築浅、新築の物件は履歴が多くないため、周りの地域で同じような物件の賃料相場の調査を徹底して行いましょう。
・修繕した履歴
修繕した履歴がある物件は、そのときの修繕費用を把握すると、将来的な修繕プランが立案しやすくなります。
・固定資産税評価額の確認
減価償却費を計算するときには、固定資産税評価額が必要になるため確認しておきましょう。
一棟マンション物件は、ほとんど同じような物件が存在しないでしょう。
そのため、一棟マンション物件を購入するときの不動産投資シミュレーションも、物件についての情報をいかに入手するかがポイントになります。
築浅や新築の物件であれば問題ありませんが、古い築年数の物件は物件についての情報が少なくなるため、慎重に購入しましょう。
区分マンション投資の不動産投資シミュレーションのポイント
区分マンション投資のときも、物件についての情報を可能な限り入手しましょう。
・購入価格
区分マンションのときも、建物と土地の割合がありますが、共有持分に土地はなるので、非常に割合が小さいため、物件を売却するときの価格は建物のみになると考えておきましょう。
・購入するときにかかる諸費用
区分マンションも、物件の価格以外に、諸経費の仲介手数料、印紙代、不動産取得税、都市計画税・固定資産税の清算金などもかかります。
・賃貸、入居している期間、間取り
現在の物件の賃貸、入居している期間、間取りを確認しましょう。
特に、現在入居している人が長期間のときは、入居している期間中に部屋のクリーニングをずっと実施していないので、退去するときに大きな出費のリフォーム費が必要になるなどがあることを考えておきましょう。
また、入居している期間が長いときは、入居する人を再度募集すれば、現在の賃料相場になるので、賃料が低下するリスクがあることも十分に考えておきましょう。
・修繕積立金、管理費
区分マンションのときは、修繕はすでに管理組合がプランを立案しているため、そのプランを確認しましょう。
修繕費が不足して、修繕積立金が多くなることも、場合によってはあります。
この予定があるときは記載されているため、必ず確認しましょう。
・周りの賃料相場の確認
最寄り駅からほとんど距離が同じ、同じ間取りの区分マンションのときは、同じような物件が多くあるので、検索して比べる物件を見つけるようにしましょう。
このときは、相当古い物件も確認しましょう。
・周りの地域での売り出し物件の価格の確認
購入する物件の価格が適正かどうかを確認するため、同じような物件を見つけましょう。
一棟マンション物件と違って、区分マンションは同じような間取りなどの物件が多くあります。
区分マンション投資のときは、利便性は最寄り駅から近いほど高く、投資物件として駅から遠い物件は適していないということになります。
不動産投資シミュレーションを行うときは、周りに同じような物件や対象になる古い物件が多くないときは、基本的に、投資物件としてその物件を購入することを見直してみるようにしましょう。
不動産投資シミュレーションで注意すること
不動産投資シミュレーションをするときは、先にご紹介したような情報を正確に調査して、適正な数値を使うようにすることが大切です。
例えば、多くの記事で「家賃は5%一律に低下する」というような目安になるような数値を目にすることがあります。
しかし、空室率が多く発生したときは、赤字に収支がなるというリスクが想定されるため、不動産投資シミュレーションはざっくりした数値で行うのでなく、きちんと物件ごとに調査した数値を使う必要があります。
なお、不動産投資シミュレーションを業者から提示してもらうときが多くあるでしょう。
このときは、個々の数値についてきちんと確認して、疑問であると考えるような数値があれば、納得できるまで確認しておきましょう。
このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
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