事故物件っていつまで告知するの?
投稿日2021/06/29
【目次】
不動産の取引において、心理的瑕疵を伴う事故物件は避けては通れないテーマです。最近のガイドラインでは、告知義務の期間や要件が明確化され、一般の自然死や不慮の事故死なども状況次第で告知が必要とされる場合があります。
本記事では、事故物件となる要件や心理的瑕疵の考え方、告知義務がいつまで続くのかといったポイントを詳しく解説し、トラブル回避のための対策や実務上の注意点を整理します。
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事故物件とは?心理的瑕疵が生じる背景と定義
まずは事故物件という概念と、そこに心理的瑕疵が生じる理由を明らかにしながら、基本的な定義を押さえましょう。
事故物件とは、物件内で自殺や他殺などの死亡事故が起きたために、入居を検討する人が心理的抵抗を覚える居住用不動産を指します。
法律上は物理的な欠陥ではなく、心理的な要因によって価値が下がるという特徴があります。そのため、不動産関係者は物件の「心理的瑕疵(かし)」として告知の要否を慎重に判断することが重要になります。
告知義務と心理的瑕疵の基本的な考え方
心理的瑕疵が生じる原因としては、物件内での死亡事故や重大な事件、過去に起きたトラブルなどが挙げられます。
こうした出来事で感じる嫌悪感や不安が心理的瑕疵を発生させ、契約締結時に重要な情報として扱われるのが通常です。
告知義務が発生する背景には、買主や借主が心理的負担を知らずに契約を結ぶことを防ぎ、安心して居住できる環境を提供するという考えがあります。
居住用不動産における「事故物件」の定義
居住用不動産においては、人が亡くなった経緯が通常とかけ離れた場合や、周囲に大きな影響を与える事件性がある場合に“事故物件”として認識されることが一般的です。
国土交通省のガイドラインでも、他殺や自殺などは原則として告知が必要とされ、自然死や加齢による死亡の場合は原則告知不要とする方向性が示されています。
しかしながら、不慮の事故や特殊清掃が行われるほどの状況であれば、心理的抵抗が生じやすいため告知が求められることもある点に注意が必要です。
告知義務が生じるケース:他殺・自殺・事故死など
死亡事故にはさまざまな種類があり、どこからが告知対象となるのかが重要です。該当するケースを具体的に見ていきましょう。
自然死・不慮の事故死でも告知が必要となる場合
自然死であっても、長期間にわたって誰にも発見されず特殊清掃が必要となったようなケースでは、心理的負担を感じる方が多いため告知すべきとされています。
老衰による普通の看取り死であれば告知不要の場合もありますが、孤独死や遺体の状況などによっては告知したほうが後々のトラブルを防げます。
結局は物件の印象や周囲の認知度合いが影響し、契約後にクレームへ発展しないよう事前に配慮することが大切となります。
共用部分や敷地内で死亡事故が発生した場合
死亡事故が建物の共用部分や敷地内で発生した場合、告知義務の有無は事故の内容や影響の範囲など多方面から判断されます。
たとえばエレベーター内での事故死や駐車場でのトラブル死などは、多くの居住者や来訪者の目に触れやすく、心理的負担も大きくなる可能性があります。
ガイドラインでは物件内部のみならず、入居者の生活動線上にあたる場所での死亡事故については、必要に応じて告知することを推奨しています。
告知義務の期間はいつまでか:賃貸と売買の違い
告知義務がいつまで続くのかは、賃貸と売買で大きく異なります。期間や判例について押さえておきましょう。
告知義務の期間は、取引形態によって実務的に異なる扱いを受けます。
賃貸の場合は国土交通省ガイドラインで概ね3年が基準とされる一方、売買では明確な期間制限がなく、長期的に告知が求められるケースも多いと言われます。
契約当事者間の信頼を損なわないためにも、告知義務の期間について正しく理解することが必要です。
賃貸では3年を目安とするガイドラインの概要
2021年に策定された新ガイドラインでは、賃貸物件の場合、死亡事故の発生から概ね3年を経過するまで告知を続けるよう示されています。
特に他殺や自殺といった事件性の強い死亡があった場合、その期間中は入居者の心理的抵抗を踏まえて告知すべきとされています。
3年という数字はあくまで目安ですが、オーナーとしては賃借人とのトラブルを防ぐため、必要な情報開示を怠らない姿勢が求められます。
売買物件は時効なし?「告知義務が残る」判例とは
売買物件の場合、賃貸とは異なり短期間で簡単に契約が終了するわけではなく、購入者は長期間その不動産を保有する可能性があります。
過去の判例では、購入後相当期間が経過してから心理的瑕疵が判明し、買主から売主に損害賠償を求めるケースも見受けられます。
これにより、売買契約においては告知義務が事実上“時効なし”ともいわれるほど重視される点を覚えておきましょう。
告知を怠った場合に起こりうるリスク
告知をしなかったことでどのような法的リスクやトラブルが発生するのか、事前に理解しておく必要があります。
あらかじめ心理的瑕疵を知らされていない借主や買主は、大きな不安を感じてトラブルを起こす可能性があります。
実際には契約後に物件の過去を知り、法的手段に訴える例も報告されています。万一リスクが顕在化すれば、金銭面のみならず信頼関係にも大きく影響するため、告知を怠ることは得策ではありません。
契約不適合責任による契約解除や損害賠償請求
契約不適合責任とは、物件や契約内容が買主・借主の期待する水準を満たさない場合に生じる責任を指します。
心理的瑕疵を隠蔽したまま契約を結んだ場合、告知義務違反として契約解除や損害賠償請求に発展する可能性があります。特に売買契約では金額も大きいため、告知を怠った失敗の代償は深刻なものとなります。
心理的抵抗による入居者・買主のクレーム
心理的瑕疵を抱える物件では、当初は気にならなかったとしても、後から入居者や買主が嫌悪感を持つことがあります。
経験談やネット情報によって過去の出来事を知り、退去や売却に繋がるケースも考えられます。
こうしたクレームを防ぐためにも、初めから誠実に情報を開示して、入居者や買主の心理的抵抗を最小化することが望ましいでしょう。
実務で注意すべき告知の方法とポイント
告知義務がある場合、どのように正しく伝えるべきかが重要です。具体的な方法や記載すべき情報を見てみましょう。
書面による告知のすすめ:口頭のみに頼らない
不動産契約における告知事項は、重要事項説明書やその他文書で明示的に伝えるのが基本となります。
口頭のみだと聞き落としや誤解が生じやすく、後で言った言わないの争いに発展しやすいからです。書面で告知することにより、双方の認識を補完し、万が一の紛争時にもエビデンスとして活用できます。
告知内容の具体例:発生時期・死因・特殊清掃の有無
告知には、死亡事故が発生した時期や死因、事件性の有無などを客観的に伝えることが望まれます。
特に遺体の状況によって特殊清掃が発生した場合や、隣室・共用部に影響を及ぼしたようなケースはしっかりと明記が必要です。
余計な不安を煽らないよう注意しつつ、買主や借主が生活するうえで重要な情報を十分に伝えることが、適切な告知のポイントです。
隣接住戸や共用スペースは告知義務があるのか
隣のお部屋や共用部分など、直接の対象物件外で起きた事故は告知の対象か判断に迷うケースも多いです。
隣接住戸や共用部で死亡事故があった場合、実際にどこまで告知が必要なのかはガイドラインの範囲をよく確認する必要があります。
ガイドライン上「生活に密接な部分」の捉え方
ガイドラインでは、入居者が日常的に利用する空間で起きた死亡事故は、心理的瑕疵に該当する可能性が高いとされています。
例えば隣室やエントランスホールなどは、直接の室内ではなくても日常的な接触があるため、告知の対象となりやすいです。
逆に建物から離れた場所であれば、居住空間への心理的影響は限定的と判断されることが多いでしょう。
事件性の有無と周知性によって変わる判断基準
事故か事件かで世間の関心度は大きく変わり、事件性が強いほど心理的抵抗感が増す傾向にあります。
さらに、地域やメディアで広く認知されているケースでは、買主や借主が後々事実を知って不信を抱くおそれが高まるでしょう。
そのため、事件性と周知性を踏まえたうえで慎重に判断し、場合によっては事故物件と同様の告知を検討することが重要です。
一度入居者が変わると告知不要?よくある誤解と実情
入居者が変われば告知が不要と聞くこともありますが、実際にはそう単純な問題ではありません。
新たな入居者が一度住んだことで心理的抵抗が薄れると考えられる場合もあります。
しかし、それをもって完全に告知義務が消えるわけではなく、物件が抱える過去の事実や地域のうわさなどが引き続きリスクとなることは否めません。
誤解を生じさせないためにも、入居者や買主が安心して契約できる環境づくりを心掛けることが重要です。
告知不要とするケースでも賃貸借トラブルのリスクは残る
一度新しい入居者が契約して問題なく過ごしていたとしても、その後退去した際に再び告知が必要になる可能性があります。
短期間の入居であれば、実質的には心理的嫌悪感を払拭できていないと借主側が感じるかもしれません。将来的に大きなトラブルを避けるためには、リスク管理を最優先に考える姿勢が求められます。
長期的視点での情報開示と信頼関係の構築
オーナーや不動産管理会社にとって、物件価値と入居者との良好な関係は最重要事項です。
過去の事実も含めて真摯に情報開示を行い、心理的瑕疵の不安を軽減する努力をすることで、入居者や買主との間に信頼関係が生まれます。
長期的にみれば、リスク回避と資産保全を両立するうえで、誠実な告知と適切な対応が不可欠と言えます。
増え続ける「孤立高齢者」

自然死自体に告知義務はないものとされましたが、発見が遅れてしまうと告知しなくてはならなくなる可能性もあります。
一人暮らしをしている高齢者の数は年々増加の一途をたどっています。
人口構造・居住形態・経済状況の変化を背景に2035年には841万人の高齢者が一人暮らしになると予測されています。
一人暮らしの高齢者が増える中、避けて通れないのが「孤独死」です。
孤独死とは、一人暮らしの人が誰にも看取られること無く死亡することを言います。
告知をするかどうかの問題の他にも、賃借人の死亡後に契約関係がどうなるか、残置物をどう処理するかなどの問題もあります。
オーナーの立場になって考えると、一人暮らしの高齢者へ貸すことに躊躇せざるを得ません。
そこで国交省では単身高齢者の居住の安定確保を図るために契約や残置物に関しては「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定していますし、こうした社会情勢に合わせた家賃保証や特殊洗浄費用負担など、孤独死保険の類も登場していますので心配な方はチェックしてみるのもいいかもしれません。
まとめ:事故物件の告知義務を正しく理解し、トラブル回避を
事故物件における告知義務は、期間や内容、対象範囲など複雑な要素が絡み合います。正しい知識と対策を身につけることが、スムーズな不動産取引に繋がります。
事故物件に該当するかどうかの判断や、告知のタイミング・方法は、ガイドラインを熟読して正確に把握することが基本です。特に賃貸での3年ルールや売買での時効なしとされる実態など、実務上の重要なポイントは契約当事者に十分説明し、多角的にリスク回避策を検討する必要があります。きちんと告知と対策を行うことで、物件のイメージダウンや法的トラブルを未然に防ぎ、長期的に価値を維持できる環境を築き上げることが可能になるでしょう。
\ FGHにおまかせ /
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士 / 住宅ローンアドバイザー
株式会社FGH 代表取締役社長
株式会社アーバンフォース 代表取締役社長
2007年2月フォースグループ創業以来、投資用不動産仲介の第一線でキャリアを積む。
中古ワンルームマンションはもちろん、不動産全般に関する多岐にわたる経験と知識でお客様からの信頼も厚い。
これまで400名以上のお客様の資産形成のお手伝いをしている。
このコラムを書いている人

渡邉 幸也
1990年 秋田県鹿角市生まれ 東京都日野市育ち 2013年 株式会社FGH入社。不動産業界歴10年のノウハウを生かし収益不動産のプロフェッショナルとして、数多くの不動産を仲介する。 現在は、投資用不動産の売却・販売など幅広く担当している。 保有資格:宅地建物取引士
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