不動産投資とカーボンニュートラル~切っても切れない環境問題と不動産業界~
【目次】
カーボンニュートラルとは?
某自動車メーカーのCMで「カーボンニュートラル実現」というフレーズが出てきますが、そもそもカーボンニュートラルとは何を意味しているのでしょうか?
これは地球温暖化・温室効果ガスという聞きなれた言葉が関わっており、みなさんがご存じのように、地球温暖化は人為的に排出される温室効果ガスによって引き起こされます。
なかでも影響が大きいとされているのが二酸化炭素です。二酸化炭素は様々な人類の生活の中で発生する身近な物質であり、排出量を減らすことが強く求められています。
この実現に向けた取り組みの一つとして、温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくしていくこと。これがカーボンニュートラルです。
世の中のカーボンニュートラルへの意識変化
ここ数年、環境保護意識の高まりとともに “これからの自動車はEV”という流れが来ているのを感じます。
自動車生産国であるドイツ・アメリカ・日本は長い歴史の中で、内燃機エンジンの技術を確立していますが、後発の国が巻き返して覇権を取ろうと思えばEV自動車しかありません。
EV自動車は構造が単純ですし、燃料となる電池の生産技術を確立すれば有利です。
そのような流れの中、トヨタが水しか出さない水素エンジンを開発しています。
マツダやカワサキ、ヤマハ、その他の国内メーカーも共同開発に前向きのようなので、個人的には水素エンジンが主流になる時代もそう遠くはないのかもしれません。
カーボンニュートラル2050による不動産業界への影響
自動車業界ではEVや水素エンジンなどの開発が活発になる一方で、不動産業界は2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指すことを宣言する「カーボンニュートラル2050」を旗印としてさまざまな政策が展開されています。
注目されるZEH(ゼッチ)やZEB(ゼブ)
施策の一環として、省エネ建築物には税制優遇が適用されるため、ZEH(ゼッチ)やZEB(ゼブ)が注目されそうです。
集合住宅においてもZEH化が進められており、具体的な施策としては建築物の断熱性を高めたり屋上の太陽光発電設備で電力をまかなったりすることで省エネを図ります。
また、企業価値を高めたいテナント事業者が、省エネ認証制度のBELSやeマーク、環境認証制度のWELLやCASBEE-ウェルネスオフィスのビルに入居したいというニーズもあるようなので、これらを満たした物件の場合は賃料を相場より高めに設定できる傾向にあります。
オーナーからすると、省エネ建築物を建築するのに国から補助はありますが、認証にかかる費用等も含め投資に見合うCFが得られるか等の判断が必要になってくるでしょう。
また、国は環境負荷を考え、ストック型社会の実現として既存住宅市場の活性化、空き家等の有効活用を推進しています。
しかし、活用する側のオーナーまたは不動産管理会社には、環境に対する意識の向上やニーズに沿ったリノベーションや設備更新の必要性に対する意識が求められていると思います。
住宅支援事業について
住宅支援事業の一環として、以前から相続時精算課税制度や住宅資金支援贈与の非課税など、さまざまな取り組みがおこなわれていますが、今年は2050年カーボンニュートラルの実現を意識した事業内容が組み込まれています。
なかでも特に注目すべき制度は、「住宅ローン減税」や新たに創設された「こどもみらい住宅支援事業」の2つ。
住宅ローン減税では、省エネなど環境に配慮した住宅に対しては借り入れ限度額が上乗せされ、こどもみらい住宅支援事業では、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象に高い省エネ性能を持った住宅の建築・購入・リフォームにたいして60万円から100万円の助成金が出されます。
こどもみらい住宅支援事業の申請は、建築事業者や販売事業者などの業者側でおこない、消費者である建築主や購入者は、住宅購入の代金から助成金分を差し引いてもらうかたちで享受することになります。
未来への願い
SDGsという言葉が世の中に広く浸透していることからもわかるように、一昔前に比べて地球環境に目が向けられるようになったと感じられます。
一方で、自国の都合を通すためミサイルなどの武力行使をおこなうのはとても悲しいことです。
環境保全は団体スポーツと同じで協力しなければ目的を達成できません。国を超えて手を取り合う未来を願います。
住宅×環境の世界はまだまだ始まったばかり。さまざまな角度からアプローチを続けていけば、未来のこども達に繋がっていきます。
住宅支援をうまく活用し、環境保全に貢献していきませんか?
このコラムを書いている人
北岡 貴夫
1975年 高知県生まれ 2012年株式会社FGH入社。不動産業界20年以上、売買賃貸数千件の業務を取り扱ってきた。常に公正かつ客観的な立場から誠実な取引を心掛けている。 保有資格:不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士