サブリースを利用する判断基準は?メリット&デメリットまとめ
【目次】
 
サブリースとは?
不動産投資家や大家であれば、一度は利用すべきかどうか検討させられるのが「サブリースシステム」です。
近年、サブリース契約を巡るトラブルが増え、NHKのクローズアップ現代でサブリースの問題点を取り上げられたことから、サブリース=悪というイメージが世間に浸透してしまいました。
 
しかし、決してサブリース=悪という訳ではありません。上手くサブリースシステムを利用することで、経営を安定させている大家も多数存在するのが事実です。
 
そこで今回は、「サブリースとはどのようなシステムなのか」「サブリースのメリット・デメリット」「最終的にサブリースは使うべきなのか」まで深掘りして解説していきます。
  
  
  
\ FGHにおまかせ /
サブリース契約の基本仕組みと運用の流れ
サブリースとは、賃貸経営方法の一つです。
まず、契約時にはオーナーとサブリース会社が賃料や契約期間、管理業務の委託内容などの条件を取り決めます。契約締結後は、サブリース会社が物件を一括借り上げし、入居者へ転貸。オーナーには契約で定めた賃料が支払われます。
この一連の流れの中で重要なのは、家賃の保証水準や更新時の賃料改定条件をどれだけ明文化しているかという点です。仮に将来的な賃料下落リスクに対する取り決めが曖昧なままだと、後にトラブルが生じる可能性が高まります。
日常の管理面については、入居者募集や家賃徴収、物件のメンテナンスをサブリース会社が担います。そのためオーナーの労力は削減されますが、定められた手数料や契約上の制限事項をしっかり確認しておくことが不可欠です。
サブリース契約のメリット・デメリット
次に、賃貸オーナーがサブリースを利用する際に得られるメリットとデメリットについてご紹介します。
  
サブリース契約を結ぶメリット
 
①安定した収益を得られる
サブリース契約では不動産管理会社が長期間に渡って一括して部屋を借り上げ、賃料を支払ってくれます。
空室の有無に関わらず、不動産会社が全室借りてくれるので、オーナー様は毎月安定した収入を得ることができます。
具体的に説明すると、10部屋のアパートを所有するオーナー様がいて、そのうち3室が空室だったとします。
この場合、オーナー様の収入は稼働している7室分のみです。
  
しかし、サブリース契約では不動産管理会社が10室借り上げるので、オーナー様からすると10室中10室が借りられている状態。
管理会社は借りた10室中3室が空室であっても、借りている以上オーナー様に10室分の賃料を支払わなくてはいけません。
そのため管理会社はオーナー様に代わり必死に入居者募集を行い、満室経営を目指すのです。
  
オーナー様からすると努力しなくてもある意味常に満室状態であることが、サブリースを利用する上で一番のメリットであると言えるでしょう。
 
②契約当事者になる必要がない
サブリースの場合、オーナー様が契約するのはあくまで管理会社で、入居者と直接契約を結んでいるわけではありません。
 
入居者の中には、一部トラブルの原因となりそうな人もいます。
入居時にある程度入居審査を行いふるいにかけますが、入居者の人となりまでは分かりません。
逆にそこまで調べていたら、入居してくれる人もいなくなってしまうでしょう。
  
そんな”モンスター入居者”は何度もクレームを入れたり、退去時の敷金精算で交渉してきたり、周囲の住民に迷惑をかけるなど、とても厄介な存在。
こうしたモンスター入居者と契約当事者になってしまえば、オーナー様が直接揉め事に巻き込まれてしまう可能性が高くなります。
 
しかし、サブリースであれば日々の管理は管理会社に任せられるので、クレーム処理や諸々の対応も管理会社が行ってくれます。
契約書にオーナー様の氏名・住所が載ることで、モンスター入居者から嫌がらせを受けるなど、トラブルに巻き込まれる可能性も0ではありません。
 
その点サブリース契約を結んでおけば、管理会社が間に立って対応してくれるので、オーナー様は安心して家を貸し出すことができます。
 
サブリース契約のデメリット
 
サブリース契約はオーナー様にとって多くのメリットがありますが、意外な「落とし穴」も存在します。
管理会社と契約を結ぶ前に、しっかりと契約内容を確認することが大切です。
 
①賃料の変更を求められ、管理会社とトラブルに発展する
トラブルに発展しやすいのは、サブリース賃料の見直し時。
サブリース契約では、定期的に賃料の見直しを求められます。
 
たとえば、毎月1部屋10万円で管理会社に貸す契約をしていたのに、翌年には8万円で貸して欲しい…なんて交渉が入る可能性も0ではありません。
家賃の見直しは、契約書に記載された時期に見直されるものですが、「家賃相場が下落しているため」「入居状況が悪化したため」など、さまざまな理由で減額を求められることも。
 
記憶に新しいレオパレス21の集団訴訟問題では、サブリース契約について「当初10年間家賃を不変とする」と契約書に記載されていたにも関わらず、実際には10年未満で減額されるケースが頻発したことが問題となりました。
 
管理会社にとっては一括で全室借りてしまっているので、1部屋でも部屋を埋めたい一心です。
そのため家賃を下げ、入居者が入りやすくして欲しいという気持ちがあります。
 
一方でオーナー様は、1部屋1万円でも値下げすれば、トータルで数十万円以上の売り上げ減少となってしまうので、何としてでも賃料を維持したいと考えます。
 
このように、サブリース契約時の賃料見直しはトラブルに発展しやすいので、契約書に細かく見直し方法などについて記載する必要があります。
 
②サブリース契約期間中に解約されてしまう
”15年間一部屋5万円で、30室借り上げる”契約を結んでいたのにも関わらず、7年後に管理会社からオーナー様に解約の申し入れがあったというケースもあります。
オーナー様からすると無理な要求に思えますが、契約書に規定さえあれば、サブリースを結んだ管理会社から解約を申し込むことが可能なのです。
特に多いのがサブリース賃料の値下げ交渉が決裂してしまい、サブリース契約自体が解消されてしまうパターン。
 
過去に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズは、30年間賃料を保証するサブリース契約を約800棟・1万室を展開していました。
 
しかし、スルガ銀行からの融資がストップされたため、サブリースの賃料の支払いを停止し破産。
このように途中で解約や倒産をされてしまえば、オーナー様は経営転換を余儀なくされ、資金計画にも狂いが出てしまいます。
 
管理会社とはある程度のところで折り合いをつけるか、最初の段階で家賃の値下げ幅についての話し合いを持ち、書面化することが大切です。
 
③サブリース契約後の出費問題
サブリース契約では、物件の資産価値維持のために、管理会社から設備交換や外壁修理の費用を求められることがあります。
 
サブリース契約を結ぶ際には、修繕についての項目も明記されていますが、曖昧・難解な表現で記されていることも多いのが現状。
不利益を被ることがないように、内容が難しい場合は専門家に相談するようにしましょう。
 
また、修繕費用に関しては誰が負担するのかよく話し合い、明文化する必要があります。
一般的に多いのは、簡易的な修繕は管理会社が行い、経年劣化による修繕はオーナー様が行うという契約です。
管理会社提携の修繕業者の費用が相場より高いことが後々発覚する事例もあるため注意が必要です。
 
④収益向上を図ることが難しい
サブリース契約を結んでしまうと、安定した収入を期待できる代わりに収益の向上が簡単ではないというデメリットがあります。
  
たとえば、所有する物件の近くに工場ができて賃貸需要が高まり家賃相場が上昇したとしても、管理会社と契約した借り上げ時の家賃を上げることが難しいのです。
  
管理会社が5万円で借り上げた部屋を、8万円で又貸ししたとしても3万円は管理会社の収益になってしまいます。
  
またオーナー様がリフォーム代を節約するために、知り合いの工務店を使いたいと考えていても、サブリース契約時に管理会社指定の業者でのリフォームを取り決めていると、オーナー様が選んだリフォーム会社を使うことはできないケースが多いです。
  
つまりサブリース契約を結ぶ代償として、オーナー様の努力で契約したサブリース賃料以上の収益を上げていくことが難しくなってしまいます。
  
⑤サブリース賃料は、家賃相場より安く設定される
サブリース賃料は、家賃相場より5%から10%程度安く設定されているケースがほとんどです。
 
管理会社は空室になると困ってしまうので、最初から少し安く賃料を設定し、少しばかり空室が出ても損を見ることがないように対策しています。
 
⑥いつの間にか契約解除できなくなっている
当社が仲介業務を行うなかで、半年前まで解約に応じていた管理会社でも突然解約に応じなくなるケースがここ数年でかなり増加している印象です。
オーナー様は解除できる認識であっても、いざ売却する段階になって管理会社へ確認したら解除には応じてもらえないというケースもざらにあります。
  
「解除できると管理会社から言われている!」とオーナー様が管理会社へ訴えかけたとしても『会社の方針が変わった』『会社の決まりなので』と断られてしまいます。
サブリース会社も当然利益を求めているので、例えオーナー様からの依頼だとしても、会社の方針が変わってしまえば突然対応しなくなってしまうのです。
  
   
  
  
サブリース契約の成功例
サブリース契約の問題点をご紹介してきましたが、サブリース契約で失敗する人もいれば、上手く利用することで成功したという人もいます。
  
千葉県に54室、3LDKの物件を持つオーナー様は、空室が34室と増え入居率が62.9%にまで落ち込んだことやローンの借入残債に頭を悩ませ、これ以上の空室による収入ダウンを避けたいと、サブリース契約を結びました。
結果毎月安定した収入を確保でき、キャッシュフローを安定させることができたと言います。
  
このようにサブリースは上手く使うことができれば、満室経営も可能になり、盤石な収入源を確保することができるのです。
サブリース利用の判断基準
サブリース契約を利用するかどうか、オーナーが検討する際の判断ポイントを紹介します。
サブリースを導入すべきかどうかは、その物件の特性やオーナーの経営方針によって大きく変わります。立地条件や想定入居者層、メンテナンス費用など多角的に検討し、収支シミュレーションを行った上で総合判断することが大切です。
ここでは典型的な判断基準を整理し、どのような場合にサブリースが有効なのかを見ていきましょう。  
空室にやきもきせずに賃貸経営を安定させたい
 
サブリース契約を利用する最大のメリットは、家賃収入が入らなくなる「空室」のリスクから心理的に解放されることにあります。
 
一般的な賃貸経営だと入居者が集まりやすい環境づくりや内装設計や募集方法の試行錯誤など、空室対策のための戦略を練る必要があります。
 
一方、サブリース契約の場合は、サブリース会社が対入居者の宣伝や契約対応などを担当し、さらに空室リスクは管理会社が負担してくれるため、本業が忙しいなど不動産経営に手間をかけるのが難しいオーナー様でも安定した賃貸経営が可能になります。
 
マンション規模が大きいとサブリースが便利
戸数の多いマンションやアパート物件は、一般的な賃貸借契約と比較して管理負担が大きくなりがちです。
入居者の募集から家賃集金、退去時の精算業務など、物件ごとにコストと手間がかかります。
サブリースを利用することで、こうした煩雑な管理作業を一括で任せられ、オーナーが細かい業務から解放されやすいのが利点です。また、管理業務のスケールメリットを活用すれば、長期的な設備維持や修繕計画も円滑に進めることが可能になります。
一方で、区分マンションであれば、サブリース契約を結ばなくても、オーナー様の自己管理で運営することが可能なケースが多いです。
サブリース契約を結ぶことで、むしろ経営がやりにくくなってしまうケースも多いです。
信頼できる管理会社を見つける
サブリース契約を結ぼうとしている管理会社が、信頼できるかどうかも大事なポイント。
  
財務面が安定しており、倒産の可能性が低いことやオーナー様の希望を汲み取ってくれる管理会社が見つかれば、サブリース契約を前向きに検討する価値があります。
  
具体的には、複数のサブリース会社から見積もりを取り、家賃保証率や契約期間中の改定条件、免責期間などを比較検討するのがおすすめです。担当者の対応が丁寧であるか、定期的にオーナーと情報共有を行う姿勢があるかなども重要なチェックポイントになります。
サブリース会社側の意見を一方的に押し付けてくるような会社や口コミでの評判が悪い会社とは契約は避けましょう。
 
サブリース契約まとめ
問題も多く取り上げられているサブリース契約ですが、上手く使うと経営を安定させ、不動産投資を成功に導いてくれる契約です。
決してサブリースが悪いのではなく、契約時の確認不足や管理会社の破産といった管理会社の責任問題もあります。
  
逆に言えば問題点をクリアにし、対策を講じていけばサブリースで失敗するリスクは減らすことができるでしょう。
特に、契約書に家賃保証の水準や更新時の条件が明確に示されているかを確認し、必要に応じて弁護士や不動産の専門家に相談することも有効です。
管理会社の信頼性を見極め、リスク低減策を講じた上で契約条件を検討することで、安定した賃貸経営につなげることができます。

 
  宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士 / 住宅ローンアドバイザー
株式会社FGH 代表取締役社長
株式会社アーバンフォース 代表取締役社長
2007年2月フォースグループ創業以来、投資用不動産仲介の第一線でキャリアを積む。
中古ワンルームマンションはもちろん、不動産全般に関する多岐にわたる経験と知識でお客様からの信頼も厚い。
これまで400名以上のお客様の資産形成のお手伝いをしている。
このコラムを書いている人

マンション経営ラボ 編集者
最新の不動産投資情報や株式、投資信託、為替など幅広い投資コンテンツを掲載。 オーナー様自身で最適な不動産の購入・売却・運用の判断材料になる情報をタイムリーに提供いたします。
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