不動産売却にかかる税金の種類とは?計算方法、計算事例も紹介
【目次】
不動産を売却するときには必ず印紙税と登録免許税がかかりますし、売却によって利益が出れば譲渡所得税が課せられます。
このような税金を考慮しないまま売却すると、「意外と手残りが少ない・・・」と後悔することになってしまうかもしれません。
今回は、不動産売却にかかる税金やその計算方法について解説していきます。
不動産売却にかかる税金の種類
不動産を売却するときに考慮すべき税金は、大きく「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税(所得税・住民税)」の3つがあります。
このうち、印紙税と登録免許税は不動産売却時に必要になります。
譲渡所得税は不動産売却によって利益が出た場合に課せられる税金で、所得税は確定申告の際に納税し、住民税は売却した翌年の6月以降に課税されます。それぞれ詳しく解説していきましょう。
不動産売却の税金01:印紙税
不動産を売却する際に必ず発生する税金が印紙税です。
印紙税法では、印紙税を納めるべき20種類の課税文書を定めており、課税文書を作成する際は規定された金額の収入印紙を貼ることで納税します。
不動産売却の際は、不動産売買契約書や領収書(売買代金の受取書)が課税文書に該当するため、印紙税が課せられます。
▼不動産売買契約書の印紙税額
不動産を売却する際の売買契約書は、売主と買主がそれぞれ1通ずつ保管するために2通作成するのが一般的です。
この際、それぞれの売買契約書に収入印紙が必要になるので、通常は売主・買主が折半して印紙税を納付します。
不動産売買契約書の印紙税は、契約金額によって以下のように定められています。
平成26年(2014年)4月1日から令和4年(2022年)3月31日までの間に作成される不動産売買契約書については、軽減措置が適用されます。
売買契約書に記載された契約金額 | 本来の印紙税額 | 軽減措置による印紙税額 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円を超え50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 | 480,000円 |
※ 不動産の譲渡に関する契約書のうち、その契約書に記載された契約金額が10万円以下のものは、軽減措置の対象となりません(税額200円)。
また、契約書に記載された契約金額が1万円未満のものは非課税となります。
※ 参考:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
たとえば、6,000万円で不動産を売却する場合は、売買契約書1通に30,000円の印紙税がかかります。
▼領収書(売買代金の受取書)の印紙税額
不動産売却における領収書の印紙税額は以下のとおりです。領収書は不動産の売主が発行するため、印紙税も売主が負担します。
領収書の記載金額 | 印紙税額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
200万円以下 | 400円 |
300万円以下 | 600円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 2,000円 |
2,000万円以下 | 4,000円 |
3,000万円以下 | 6,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
1億円以下 | 20,000円 |
2億円以下 | 40,000円 |
3億円以下 | 60,000円 |
5億円以下 | 100,000円 |
10億円以下 | 150,000円 |
10億円超 | 200,000円 |
記載金額のないもの | 200円 |
※ 参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁
たとえば、不動産代金として2,500万円を受け取った場合は、領収書に6,000円の収入印紙を貼り付ける必要があります。
不動産売却時の税金02:登録免許税
不動産を売却する際は、売主が登録免許税を負担することがあります。
登録免許税とは、不動産登記をおこなう際に納める税金のことです。
不動産を売却したら、売主から買主に名義変更をする「所有権移転登記」をおこないますが、この登記の登録免許税は買主が負担するため売主の負担はありません。
しかし、ローンが残っている不動産を売却する場合は、所有権移転登記をする前にローンを完済して抵当権を外す「抵当権抹消登記」をする必要があり、この登記に要する登録免許税は売主が負担します。
また、引っ越しなどによって売主の現住所が登記簿上の住所と異なっている場合は「所有権登記名義人表示変更」という登記が必要になり、この登記に要する登録免許税も売主が負担します。
抵当権抹消登記も所有権登記名義人表示変更登記も登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。
土地と建物は別々の不動産としてカウントされます。
たとえば、2筆の土地のうえに1つの建物があるケースで、この土地・建物を売却する場合、抵当権抹消登記や所有権登記名義人表示変更登記の登録免許税は3,000円ということになります。
不動産売却時の税金03:譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産売却によって生じた利益(譲渡所得)に対して課せられる税金の総称です。
具体的には、所得税と住民税が譲渡所得税に該当します。
譲渡所得税は不動産売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合にのみにかかる税金なので、売却損が生じた場合は譲渡所得税は発生しません。
譲渡所得税の計算方法などは次項で詳しく解説します。
なお、不動産売却における譲渡所得税は他の所得と区分して課される分離課税なので、他の所得と相殺することはできません。
給与所得者が不動産の売却によって利益を得た場合は、勤務先の年末調整とは別に確定申告をする必要があります。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は、不動産売却によって生じた利益(譲渡所得)に対して課せられる税金です。譲渡所得税は通常、以下の流れで計算します。
・Step01:譲渡所得を算出する
譲渡所得 = 譲渡価格(売却代金) - (取得費 + 譲渡費用)
・Step02:課税譲渡所得を算出する
課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除
・Step03:譲渡所得税額を算出する
譲渡所得税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税)
Stepごとに解説していきましょう。
Step01:譲渡所得を算出する
譲渡所得税を算出するためには、第一に「譲渡所得がいくらなのか?」を明確にする必要があります。
譲渡所得は以下のとおり、不動産の譲渡価格(売却代金)から、不動産の取得費と売却時にかかった譲渡費用(諸経費)を差し引いて算出します。
譲渡所得 = 譲渡価格 − (取得費 + 譲渡費用)
▼譲渡価額とは?
譲渡価格とは、不動産を売却したときの売却代金のこと。不動産を譲渡した対価として受け取る金銭の額を言います。
▼取得費とは?
取得費とは、不動産の売主がその不動産を購入したときの購入価格に、仲介手数料や測量費など購入にかかった費用を足して算出します。
ただし、建物は経年劣化することを考慮して、購入時の価格から減価償却をする必要があります。減価償却についての詳細は後述します。
その他、取得費に含まれる費用としては以下の費用が挙げられます。
(1)土地や建物を購入(贈与、相続又は遺贈による取得を含む)したときに納めた登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税
(2)借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
(3)土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
(4)土地の取得に際して支払った土地の測量費
(5)所有権などを確保するために要した訴訟費用
(6)建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
(7)土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
(8)既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金
※参考:No.3252 取得費となるもの|国税庁
不動産の取得費は、購入時の売買契約書や領収書を見れば分かります。
ただし、マンションや建売住宅のように土地と建物をセットで購入している場合はトータルの金額しか分からず、土地・建物の内訳が不明なケースも少なくありません。
しかし、建物部分に関しては減価償却をする必要があるので、土地と建物の取得費は別々で明らかにする必要があります。
その場合、「消費税から計算する方法」や「固定資産税評価額から計算する方法」「標準建築価格から計算する方法」などがあります。それぞれの方法についてご説明します。
・消費税から計算する方法
売買契約書や領収書に消費税の記載があれば、それを元にして土地と建物の取得費を求めることができます。消費税は土地には課せられず建物にのみ課せられるため、以下の算式が成り立ちます。
建物部分の価格 = 消費税額 ÷ 購入時の消費税率 + 消費税額
土地部分の価格 = 土地・建物の合計金額 - 建物部分の価格
たとえば、2000年に4,000万円で購入した不動産の売買契約書に「消費税80万円」という記載があった場合、以下のように取得費の内訳を算出します。
建物部分の価格 = 消費税額 ÷ 購入時の消費税率 + 消費税額
= 80万円 ÷ 5%(2000年当時の消費税率) + 80万円
= 1,680万円
土地部分の価格 = 土地・建物の合計金額 - 建物部分の価格
= 4,000万円 - 1,680万円
= 2,320万円
計算の結果、建物の取得費が1,680万円で、土地の取得費が2,320万円であることが分かりました。
・固定資産税評価額から計算する方法
不動産を所有していると、毎年4~5月に送られてくる「固定資産税納税通知書・課税明細書」に固定資産税評価額が記載されています。
この固定資産税評価額から、建物と土地の取得費を求めることができます。
まず、土地と建物の固定資産税評価額からそれぞれの割合を求めます。
その割合で土地・建物の合計金額を分割することで、それぞれの取得費を算出できます。
たとえば、土地の固定資産税評価額が2,000万円で、建物の固定資産税評価額が1,200万円だった場合、割合は「土地:建物=5:3」となります。
土地・建物の合計金額が4,000万円だったとすると、「5:3」で分割することで「土地:建物=2,500万円:1,500万円」というように取得費の内訳が分かります。
・標準建築価格から計算する方法
売買契約書や領収書が見当たらない場合、「標準建物価格」から建物の取得費を算出する方法もあります。
建物の標準価額は、国税庁のホームページに示されていますから、これをもとにして算出します。
>> 建物の標準的な建築価額表|国税庁
たとえば、平成15年(2003年)に建築された鉄骨鉄筋コンクリートの建物は1m2あたり「187,300円」となっています。80m2の住宅の場合、次のように算出できます。
187,300円 × 80m2 = 14,984,000円
▼譲渡費用とは?
譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、立退料など不動産を売却する際に直接要した費用のことを言います。
修繕費や固定資産税などその不動産の維持・管理のためにかかった費用や、売却代金の取り立てのための費用などは譲渡費用になりません。譲渡費用になるものは以下のとおりです。
(1)土地や建物を売るために支払った仲介手数料
(2)印紙税で売主が負担したもの
(3)貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
(4)土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
(5)既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で売るために支払った違約金
(6)借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など
※ 参照:No.3255 譲渡費用となるもの|国税庁
Step02:課税譲渡所得を算出する
譲渡所得を算出したら、次は課税譲渡所得を算出します。課税譲渡所得は、課税所得から特別控除の額を差し引いて求めます。
課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除
不動産を売却したときの譲渡所得の計算上、特例として「特別控除」を受けられるケースがあります。譲渡の種類とその特別控除額は、以下のとおりです。
(1)公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
(2)マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
(3)特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
(4)特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
(5)平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
(6)農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
(7)低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例
※ 参照:No.3223 譲渡所得の特別控除の種類|国税庁
これらに当てはまる場合は、Step01で算出した譲渡所得から控除額を差し引きます。差し引き後の金額が課税譲渡所得となります。
Step03:譲渡所得税額を算出する
課税譲渡所得を求めたら、それに税率をかけることで譲渡所得税額を求めることができます。
課税所得税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税)
このときに乗じる税率は、所得税と住民税で異なるほか、不動産の所有期間が5年以下の場合と5年を超える場合でも変わってきます。
厳密に言うと、不動産の所有期間が売却した年の1月1日の時点で5年を超えるかどうかによって、適用される税率が変わってきます。
不動産の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」に分類され、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」に分類されます。それぞれの税率は以下のとおりです。
▼長期譲渡所得(所有期間が5年を超える場合)
20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
※ 所得税には復興特別所得税を含みます。
▼短期譲渡所得(所有期間が5年以下の場合)
39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)
※ 所得税には復興特別所得税を含みます。
このように、長期譲渡所得と短期譲渡所得では税率が倍近く変わってきます。
不動産を所有している期間が5年以下の場合より、5年を超えて所有していたほうが所得税も住民税も安くなります。
たとえば、不動産の購入から4年目で売却を検討している場合などは、長期譲渡所得が適用されるまで待ってから売却したほうが節税対策としては有効です。
▼10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、居住用の不動産(マイホーム)を売却したときに所有期間が10年を超えていた場合、譲渡所得税に軽減税率を適用することができる特例です。売却による利益(譲渡所得)が6,000万円以下の部分について譲渡所得税率14.21%に軽減されます。
※ 参考:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
以上をまとめると、譲渡所得税の税率は以下のようになります。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | ||
---|---|---|---|
所有期間 | 5年以下 | 5年超 | 10年超所有軽減税率の特例 |
居住用不動産 | 39.63% 所得税30.63% 住民税9% |
20.315% 所得税15.315% 住民税5% |
・課税譲渡所得6,000万円以下の部分:14.21% 所得税10.21% 住民税4% ・課税譲渡所得6,000万円超の部分:20.315% 所得税15.315% 住民税5% |
非居住用不動産 | 39.63% 所得税30.63% 住民税9% |
20.315% 所得税15.315% 住民税5% |
※ 所得税には復興特別所得税を含みます。
減価償却費の計算方法
上述のとおり、建物は経年劣化することを考慮して、購入時の価格から減価償却をする必要があります。以下では、減価償却費の計算方法について解説していきます。
減価償却とは?
減価償却とは、経年や使用により価値が減少していく固定資産を取得した際に、購入費用をその耐用年数に応じて計上していく会計処理のことです。
そして、減価償却によって計上される費用のことを減価償却費と言います。
耐用年数とは、その固定資産の使用可能期間のことを言い、建物であれば種類や構造によって耐用年数は変わってきます。
なお、土地は経年や使用によって劣化することなく価値が持続すると考えられているので、減価償却の対象にはなりません。
不動産で減価償却をおこなう場合は、建物部分の価格に対してのみ減価償却をおこないます。
減価償却費は建物の購入時期によって算出方法が変わる
建物の減価償却費を計算する方法としては、大きく「定額法」と「定率法」の2種類があります。
・定額法
建物取得時の価格を耐用年数で割り、毎年同額を減価償却費として計上する方法
・定率法
建物取得時の価格から減価償却費として計上してきた累計額を引いた残高に、毎年一定の償却率をかけて算出する方法
以前は、定額法・定率法を任意で選んで減価償却費を計算できましたが、法改正により、平成10年(1998年)4月1日以後に取得した建物の償却方法は旧定額法、平成19年(2007年)4月1日以後取得の建物は定額法のみとされました。本記事においても、定額法に基づいて解説していきます。
▼定額法による減価償却費の求め方
減価償却費 = 建物取得時の費用 × 定額法の償却率
減価償却費を求めるときは「償却率」という数値を用います。償却率は、建物を取得した時期や建物の耐用年数によって変わってきます。償却率は、以下の「減価償却資産の償却率表」を参照してください。
>> 減価償却資産の償却率表
減価償却費は建物の用途によって算出方法が変わる
減価償却費は、その建物が居住用(非事業用)か、賃貸経営などの事業用かによっても算出方法が変わってきます。
▼居住用建物の減価償却費
居住用建物の減価償却費 = 建物の取得価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
・建物の取得価格
建物の取得価格には、建物価格のほか、不動産仲介業者に支払う仲介手数料や登録免許税、不動産取得税なども含まれます。
・償却率
償却率は、建物の取得時期や建物の耐用年数に応じて「減価償却資産の償却率表」を参照してください。居住用建物の場合、事業用建物の償却率を1.5倍します。
・経過年数
経過年数は、建物の築年数ではなく所有期間のことです。1年未満の端数は、6ヶ月以上なら1年とみなし、6ヶ月未満は切り捨てます。たとえば、所有期間が12年6ヶ月なら経過年数は13年になり、所有期間が12年5ヶ月なら経過年数は12年になります。
▼事業用建物の減価償却費
・平成19年(2007年)3月までに取得した事業用建物の場合
事業用建物の減価償却費 = 建物の取得価格 × 0.9 × 償却率 × 事業用に使用した月数の累計 ÷ 12
・平成19年(2007年)4月以降に取得した事業用建物の場合
事業用建物の減価償却費 = 建物の取得価格 × 償却率 × 事業用に使用した月数の累計 ÷ 12
・建物の取得価格
居住用建物と同じように建物の取得価格には、建物価格のほか仲介手数料や登録免許税、不動産取得税なども含まれます。
・償却率
平成19年(2007年)3月までに取得した建物の場合は旧定額法の償却率を適用し、平成19年(2007年)4月以降に取得した建物の場合は新定額法の償却率を適用します。
・事業用に使用した月数の累計
事業用に使用した期間を月単位で合計します。
耐用年数について
耐用年数とは、固定資産が何年間使用に耐えうるかを示す年数のこと。
「この固定資産は普通に使っていたらこのくらいは使えるはず」という年数が定められており、これを法定耐用年数と言います。
法定耐用年数は、あくまで減価償却費を求めるために設けられている数値なので、法定耐用年数を超えたからといって、その固定資産が使えなくなるわけではありません。
建物の場合、以下のような要素によって法定耐用年数が変わってきます。
・構造の違い
建物の寿命は耐震性や耐火性などによって変わってきます。それゆえ、構造によって法定耐用年数も変わってきて、たとえば木造より鉄骨鉄筋コンクリート造の建物のほうが耐用年数は長くなります。
・用途の違い
建物はその用途によって劣化のスピードが変わってきます。そのため、法定耐用年数もホテル用や飲食店用、工場用や倉庫用など、建物の用途によって分類されています。
・居住用(非事業用)/事業用の違い
建物は、居住用(非事業用)として使っているのか、賃貸経営などの事業用として使っているのかによって耐用年数が変わってきます。居住用(非事業用)建物の耐用年数は、事業用建物の耐用年数の1.5倍になります(小数点以下は切り捨て)。
▼主な建物の耐用年数・償却率
事業用 | 居住用(非事業用) | |||
---|---|---|---|---|
耐用年数 | 定額法償却率 | 耐用年数 | 定額法償却率 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造 | 47年 | 0.022 | 70年 | 0.015 | れんが造、石造、ブロック造 | 38年 | 0.027 | 57年 | 0.018 | 木造、合成樹脂造 | 22年 | 0.046 | 33年 | 0.031 | 木造モルタル造 | 20年 | 0.050 | 30年 | 0.034 |
※ 参考:【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(建物/建物附属設備)|国税庁
▼中古不動産を取得した場合の耐用年数
新築不動産を購入した場合、上述した耐用年数や償却率をそのまま使うことができます。
一方で、中古不動産を購入した場合は、法定耐用年数と売却時点での築年数のどちらが長いかによって、耐用年数を修正する必要があります。
なお、不動産が居住用(非事業用)の場合は、築年数に配慮する必要はありません。
・築年数が法定耐用年数を超えている場合の耐用年数
耐用年数 = 法定耐用年数 × 0.2
※小数点以下は切り捨て
・築年数が法定耐用年数に至っていない場合の耐用年数
耐用年数 = 法定耐用年数 - 経過年数 + 経過年数 × 0.2
※小数点以下は切り捨て
譲渡所得税の計算事例
ここまででご説明した内容を踏まえて、実際に譲渡所得税を計算してみましょう。
譲渡所得税の計算事例01:居住用不動産
設定は以下のとおりとします。
・購入価格は5,000万円(土地部分3,000万円、建物部分2,000万円)
・9年後に4,700万円で売却(譲渡費用は100万円)
このケースにおける譲渡所得税はいくら?
最初に、建物部分の減価償却費を求めます。
減価償却費 = 建物の取得価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
= 2,000万円 × 0.9 × 0.031(木造の償却率) × 9年
= 5,022,000円
次に、取得費を求めます。
取得費 = 3,000万円(土地部分) + 2,000万円(建物部分) - 5,022,000円(建物の減価償却費)
= 44,978,000円
これに基づいて譲渡所得税を算出していきます。
・Step01:譲渡所得を算出する
譲渡所得 = 譲渡価格(売却代金) - (取得費 + 譲渡費用)
= 4,700万円 - (44,978,000円 + 100万円)
= 1,022,000円
・Step02:課税譲渡所得を算出する
課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除
今回、特別控除はないものとするため、課税譲渡所得は1,022,000円となります。
・Step03:譲渡所得税額を算出する
譲渡所得税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税)
今回の設定では9年間不動産を保有していたため長期譲渡所得が適用されます。所得税および住民税の税額は以下のように算出します。
所得税 = 1,022,000円 × 15.315%
= 156,519円
住民税 = 1,022,000円 × 5%
= 51,100円
合計:207,619円
このケースでは、不動産売却によって207,619円の譲渡所得税が課せられることが分かりました。
譲渡所得税の計算事例02:事業用不動産
設定は以下のとおりとします。
・購入価格は5,000万円(土地部分3,000万円、建物部分2,000万円)
・10年後の2020年1月に4,800万円で売却(譲渡費用は100万円)
このケースにおける譲渡所得税はいくら?
鉄筋コンクリート造の事業用建物の法定耐用年数は「47年」です。取得時の築年数は10年なので、法定耐用年数以内に収まっています。
まずは、耐用年数を修正します。
耐用年数 = 法定耐用年数 - 経過年数 + 経過年数 × 0.2
= 47年 - 10年 + 10年 × 0.2
= 39年
耐用年数39年の建物の定額法償却率は「0.026」です。これを元に、建物の減価償却費を求めます。
事業用建物の減価償却費 = 建物の取得価格 × 償却率 × 事業用に使用した月数の累計 ÷ 12
= 2,000万円 × 0.026 × 120ヶ月 ÷ 12
= 520万円
次に、取得費を求めます。
取得費 = 3,000万円(土地部分) + 2,000万円(建物部分) - 520万(建物の減価償却費)
= 4,480万円
これに基づいて譲渡所得税を算出していきます。
・Step01:譲渡所得を算出する
譲渡所得 = 譲渡価格(売却代金) - (取得費 + 譲渡費用)
= 4,800万円 - (4,480万円 + 100万円)
= 220万円
・Step02:課税譲渡所得を算出する
課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除
今回、特別控除はないものとするため、課税譲渡所得は220万円となります。
・Step03:譲渡所得税額を算出する
譲渡所得税額 = 課税譲渡所得 × 税率(所得税・住民税)
今回の設定では10年間不動産を保有していたため長期譲渡所得が適用されます。所得税および住民税の税額は以下のように算出します。
所得税 = 220万円 × 15.315%
= 336,930円
住民税 = 220万円 × 5%
= 110,000円
合計:446,930円
このケースでは、不動産売却によって446,930円の譲渡所得税が課せられることが分かりました。
まとめ
投資用マンションを売却する際は、投資物件の売却実績が豊富な不動産業者に頼るのが賢明です。
FGHは、収益不動産に特化した総合不動産グループ。これまで数多くの投資用マンションの売却をご支援してまいりました。
特にオーナー様に好評なのが、弊社独自の投資指標である「売却運用率®」「リスクパーセンテージ®」を用いた分析です。
売却運用率®は、「今」と「数年後」、どちらのタイミングで売却すればお得かを数値化するもので、リスクパーセンテージ®は、物件を持ち続ける「所有リスク」を数値化するもの。
この2つの指標で分析することで、お持ちの物件が「富動産」なのか「負動産」なのかが分かり、運用・売却の最適な判断が可能になります。
投資用マンションを売却すべきかどうかでお悩みのオーナー様や、売却したいけど譲渡所得税などの税負担が心配なオーナー様は、ぜひFGHにご相談ください。
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このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
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