これって失敗?購入動機からみるワンルームマンション投資

公開日2021/05/20
更新日2024/02/08

失敗してしまった方が購入したきっかけとは?

 
今までに約800件ほどの売買仲介をさせて頂いたのですが、ご成約頂いた方には後学の為に不動産投資を始めたきっかけや動機についてお伺いしています。
 
不動産投資に失敗した方が物件購入に至った動機を知ると、なぜキャッシュフロー赤字物件をつかんでしまったのかが見えてきます。
 

老後2000万円問題の解決策として

人生100年時代を迎え、金融庁が発表したレポートでは定年後年金だけで生活していくには毎月5万円足りない、という計算が発表されたことに端を発した「老後2000万円問題」によって、貯蓄を増やさなければという焦燥感に駆られている方が多くいらっしゃいます。
 
そのため、働けるうちに時間を有効活用し資産形成をしましょうと言うものですが、ここに落とし穴があるのです。
 
確かに安定して賃貸経営が出来るような立地や建物であれば安定した年金代わりとなるかもしれません。
 
ただ、中には毎月赤字のキャッシュフローをだして、30-40年経ち、ようやくローンを完済したときには周りの建物と比べ設備も古くなってしまったボロボロの建物だけが残ってしまった、というのも珍しくないのです。
 
年金をもらう年になってもローン返済を続け、なおかつ毎月赤字なんていうことになってしまったら悲惨な老後生活が待っています。
 
言われるがままにある日、営業文句を鵜吞みにしてしまうと大変なことになってしまいます。
現状赤字のキャッシュフローの物件、将来赤字になりうる物件を持ち続けるのは高リスクとなります。
 

生命保険の代替商品として

不動産投資の場合、購入の際には、金融機関から融資を受けてローンを組むことになり、ローン契約時には、「団体信用生命保険(団信)」というものに加入をすることになります。
 
この団体信用生命保険というのは、ローンの借主が死亡した際に返済義務がなくなるという保険です。融資側の金融機関としても、借主が死亡した際のリスクヘッジをしておきたいので、不動産投資ローンが組まれる時は団体信用生命保険への加入を求められることが多いのです。
 
不動産投資が生命保険の代わりになるというのは、融資の際にこの団体信用生命保険に加入する必要があるためです。
 
中にはガン保険付きのもあり、ガンと診断されたらローンの残債がゼロになるものもあります。
 
ガン団信については以前書いたコラムで纏めていますので参考まで。
 
これだけを見ると保険と比較して買うのも悪くないな‥と思われるかもしれません。
 
しかし中には、保険と比較させるだけで最初から月々の収支は赤字になり、売却しようにも高く買わされていたため立ち行かず、当初の想定と大きく変わってしまったということも少なくありません。
 
あくまで保険的効果は副次的なもので、なにかあったときのためです。
 
本当にいい商品であれば保険効果をアピールしなくても売れるものです。
 
保険商品との比較だけをして購入を勧めてくるセールスにはお気を付けください。
 

節税対策の一環として

物件を購入するときに初年度の高い節税効果がずっと続くと勘違いして不動産投資を始めるパターンは危険です。
 
不動産投資の節税の仕組みは例えば、サラリーマンがワンルームマンション投資を始めたとすると、勤務先から得られる「給与所得」購入したワンルームから得られる「不動産所得」を得ることになります。
 
合算する際に不動産所得が赤字だった場合、確定申告で給与所得から不動産所得の赤字分を差し引くことができます。
 
ワンルームマンション投資の初年度の節税効果は購入諸経費や不動産取得税も算入されるため「数十万」に及びます。
 
その節税効果が生涯にわたって続くと勘違いしてしまうのです。
 
ほとんどのセールスがそのようにお客様をそそのかし、購入を勧めています。
 
収支が初年度から変わらないシミュレーションを見たときには注意が必要かもしれません。
 
2年目からは黒字になり、逆に収める税金が増えているケースや、中には節税効果以上に赤字がでてしまっているケースもあり、これではなんのために始めたのかわからないといったことになります。

 

これらはひとまとめにコンプレックスソリューション型の営業を受けての動機と言えます。
 
心配事を解決するという行為は自己承認に直結するため、その行為自体が目的に置き換わってしまうという王道のセールスアプローチで熟練のセールスのほとんどはこのスキルを持っています。
 
上記の動機で投資に踏み切った方のマインドセットは「今は収支が悪くても(マイナスでも)仕方がないし、それでもいい」でしょうか。
 
しかし不動産投資において今マイナスのものが将来プラスに反転するということが極稀であることを理解しなければなりません。
 
ローリスクな現物投資では一発逆転の機会は少ないのです。
 
不動産投資における目的とは、その名の通り投資であり、投入したキャッシュ(またはクレジット)を回収できる見通しや資金計画ありきで始めるべきです。
 
例に挙げた動機では投資を始めないという一貫性をもって不動産投資に向き合っていれば、失敗の可能性はグッと低くなるのではないでしょうか。
 

売却運用セミナー

これって失敗?割高物件を購入してしまったら…

『購入した物件の運用状況が思っていたよりもよくない・・』

 

『現状の賃貸状況は悪くない、でも収支がトントン。・・いや、少し持ち出しがあるかも」

 

先ほども申し上げたとおり、このような状況の場合は先々大きく改善していくことは簡単に見込めない可能性があります。

 

結論から申し上げると、もし損失が出続けるような物件を購入してしまった場合は、プラスに転じる見込みがない限り、早期に見切りをつけてしまうことが大切です。

 

傷口は浅いうちに、広がってしまう前に対処することが致命傷を避ける最大のリスクヘッジとなります。
 

先ずは現状の把握から

一番大切なことは、自分の運用状況を知ることが大切です。

 

黄色信号の状況は、「想定していたよりもお金が入ってこない。」

 

「いや、むしろ給料から返済に充てている」という場合は注意が必要です。
 

不安を感じたらプロへ相談

「あれ、ちょっとおかしいかも・・」と、感じたらプロへ相談することをお勧めいたします。

 

相談先として投資用物件に精通した専門業者であれば、状況を的確に判断し教えてくれることでしょう。

 

ただ、ここで注意しなければならないのが、販売してくれた売主業者の担当者や、そのグループ会社の賃貸管理の担当者に相談されることはお勧め致しません。

 

「どうして?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、物件を販売した販売会社や担当した営業マンの立場からすれば、「どうすれば失敗と悟られないか」という視点から考えた回答をする可能性が高いからです。
 

客観的にみればあからさまにパフォーマンスが悪い状況だと誰しもがわかる内容でも、購入してもらったお客様へ「その不動産投資は失敗ですよ」なんて、もし私が販売会社の営業マンなら口が裂けても言えません。
 

売却する?

失敗している事例で一番多いのが、物件のもつポテンシャル以上の価格で購入して、且つ融資を受けている場合です。

 

売却してスッキリさせるには、それ相応の出費が伴います。

 

例えば、

 

購入当初の借入が2,300万円

5年程運用してローン残高が2,080万円

売却予想価格が1,900万円

 

だとすると、諸経費(抹消費用、仲介手数料など)含め200万円以上の“持ち出し”となります。

 

売却するにはこの“持ち出し”を自己資金で用意する必要があります。

 

預貯金やすぐに現金に換えられる資産、借入等で工面することが出来なければ、物理的に売却することは難しいかもしれません。
 

賃貸し続ける?

「売却自体が難しい」、「損切りなんて考えられない!」という場合は必然的に保有し続ける選択になるでしょう。

 

ここからできることとすれば、2パターン考えられます。

 

  • 物件の収益性アップ(リノベーション、賃貸条件の変更等)
  • 支出を抑える(管理料の見直し、利下げ交渉、借り換え等)

 

個人的には、管理会社変更によるランニングコスト(業務委託費)の見直しが、副業の合間で直ちに取り組めることではないかと考えます。

 

管理委託料は、同じ業務委託内容だとしても、管理会社によって2,000円~4,000円も違うなんてことはザラにあります。

失敗しないためには?

不動産投資は、スタート時点(入口)でその後の是非が決まると言われています。

 

物件取得後の収支計画・シミュレーション、購入後の管理を任せる管理会社の選定(サービスや費用の比較)など、ここの手間を惜しまず良い業者を見つけることが出来れば、失敗の回避率が大幅にアップすることは間違いないでしょう。
 

売却運用セミナー

このコラムを書いている人

高松 大樹

高松 大樹

営業三部部長・執行役員 1986年生まれ 埼玉県育ち 2010年2月よりフォースグループで投資用不動産仲介の第一線でキャリアを積む。中古ワンルームを中心に800件に迫る成約実績。 イレギュラー案件の交通整理も得意。実体験からモアベターな選択を提案致します。 保有資格:宅地建物取引士

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