不動産投資を法人化すると儲かる?メリット&デメリット
【目次】
不動産投資を行う場合は法人化も視野に入れるべき?
不動産投資を行う際に、最初から法人化まで見据えているという人は少ないでしょう。
しかし、初めての不動産投資であっても、最初から法人化を検討した方が、個人でスタートするよりメリットが大きくなる可能性もあるのです。
今回は、不動産投資を法人化する際のメリット・デメリットをまとめてご紹介します。
不動産投資を法人化するメリット
法人であれば年齢に関係なく、融資が可能
不動産を購入する場合、多くの方が自己資金だけでは足りず、金融機関から融資を受けることでしょう。
しかし、一般的に還暦を過ぎてから融資を受けるのは非常に困難と言われています。
しかし3棟、4棟と増やしていく計画を立てて、最初から法人化し実績を作っておけば、買い増しする際も年齢に関係なく融資を受けることが可能です。
法人実効税率は29.97%
法人税が減税され、現在の法人実効税率は住民税や事業税などを含め29.97%にまで下がりました。
法人の場合課税所得が増えても、基本税率は変わりません。
また法人の場合、課税所得が800万円以下の場合、5%の軽減税率が適用されます。
しかし個人の場合は、所得が増えれば増えるほど税率も高くなる超過累進税率。
課税所得が900万円を超えると約33%の所得税がかかり、4,000万円を超えると約45%です。
2015年度の税制改正で最高税率が、「1,800万円超で40%」から「4,000万円を超えると約45%」に増税されたのです。
アパート1棟以上の所得があるのであれば、法人化した方が圧倒的に税金は安くなります。
個人のままでは所得が上がってもその分税率が上がり、税金に約半分持っていかれてしまうので、手取り額がほとんど増えません。
資本金が1億円を超えるような大企業に関しては、外形標準課税が強化され増税しましたが、個人投資家の設立する資産管理法人の資本金が1億円を超えることは、ほぼありません。
そのため、外形標準課税について心配する必要は基本的にないと言えます。
法人は生命保険料の控除に制限がない
個人の場合生命保険料控除は、一般生命保険料・個人年金保険料・介護医療保険料各4万円以内で、年間最大12万円までしか認められていません。
しかし、法人には制限がなく、生命保険料の一部〜全額まで経費に計上できる法人専用の生命保険もあります。
欠損金の繰越が可能
個人で投資用不動産を購入し、それを譲渡した際に損が出たとします。
この際に他に所有する不動産の譲渡益から、控除し切れず損が残ったとしても、翌年以降に繰り越すことはできません。
しかし、法人の場合不動産譲渡損は、9年間に渡って欠損金として利益から繰越控除を申請することが可能です。
家族を法人の役員にして、所得分散効果を狙う
法人化し家族をその会社の役員にして、賃料収入から報酬を家族に支払えば、一人当たりの課税所得が小さくなり、個人所得税の税率が下がります。
つまり、オーナーである自分一人が全ての賃料所得を受け取り税金を支払うより、家族に報酬を払い、それぞれが税金を払う方がトータルで見た場合に税額が安くなるのです。
これを所得分散効果と言います。
また、名ばかりの役員で構わないので、家族に迷惑をかけることもありません。
家族なので報酬分配後に、個人的にお金を返してもらうこともできるでしょう。
ただしこの場合に注意すべきなのは、役員や従業員が増えるほど社会保険料の負担が重くなることです。
所得分散効果を狙い、どんどんと従業員を増やすと、それに伴い社会保険料の負担も増え結果的に節税にならないケースもあります。
場合によっては所得分散をせず、法人に内部留保するほうが良いケースもあります。
役員に退職金として内部留保していたお金を払えば、退職金は税務上で優遇されているので、税負担が軽くなります。
しかし同じ人を何回も雇い、何回も退職させることはできないので、退職金という節税の仕方には限界があることを理解しておきましょう。
5年以内のキャピタルゲインを狙うのであれば、断然法人化!
不動産を安く購入し、高く売った差額で利益を得ることを「キャピタルゲイン」と言います。
このキャピタルゲインを狙い、購入から5年以内に不動産を売却するのであれば、法人化した方が有利です。
不動産は売却した際に利益が出ると譲渡税がかかり、個人の場合の譲渡税は、短期譲渡と長期譲渡で税率が異なります。
短期譲渡は1月1日時点で、所有期間が5年以内の場合を指し、長期譲渡1月1日時点で所有期間が5年を超える場合を指します。
個人の譲渡税は、短期譲渡が約39%、長期譲渡が約20%。
※別途復興特別所得税がかかります。
所有が5年を超えるか、超えないかで、2倍も税金が変わってくるのです。
一方法人では所有の長短に関わらず、30%前後の税率です。
そのためキャピタルゲインを狙った不動産投資では、「5年」という年数が一つのキーワードなります。
5年以内に売却するのであれば、法人化。
5年を超えて売却するのであれば、個人のままの方が、キャピタルゲインだけを目的とした投資は得をするのです。
損益通算が可能
損益通算とは一定期間内の利益と損失を相殺すること。
法人の場合、経営による利益と損失は全てが損益通算可能です。
例えば本業で飲食店を経営し、副業で不動産投資を行っていたと仮定しましょう。
飲食店の客足が伸びず、赤字がでている一方で、不動産経営は安定的な家賃収入により黒字化しているとします。
その場合、赤字と黒字を相殺することで、全体の課税所得を減らすことが可能になります。
不動産経営業のみを事業として行っている場合も、賃料収入と不動産売却による売却損は相殺できますが、個人の場合は種類の異なる所得は別々に課税されます。
そのため、賃料収入で得た不動産所得と不動産売却による売却損は、別々に課税され損が出たからといって税金が安くなることはないのです。
相続税対策
個人で所有する不動産を相続する場合には、不動産の評価額に対し相続税がかかります。
不動産の価値によっては、相続人である兄弟や親戚の間で揉めることも多いのが現実。
しかし、法人の場合は不動産に対し、相続税がかかりません。
被相続人であるオーナーが生存している際にも、相続人に役員報酬は給与という形で資産を移転することができます。
存命のうちに資産を継承しておけば、自分が死んだ後に兄弟や親戚の間で遺産を巡り対立が発生してしまうこともないのです。
ただしオーナーの所有する非上場株式に対しては、相続税がかかるので注意しましょう。
法人化する際のデメリット
個人と法人の手取り額を試算し比較
一般的に年収が900万~1,000万円を超えると、法人化にメリットがあると言われています。
会社員の場合は、年収1,400万~1,500万円が目安です。
しかし所得課税が900万を超えたら、即法人化した方が良いとも言えません。
不動産投資では、所得水準と購入する物件により法人化が有利になるかどうかが決まるからです。
購入する物件の価格、融資の額、賃料収入により、法人にした場合と個人の場合とで、税引き後のキャッシュフローは変化します。
そのため、物件によっては、個人の方が手元に残るお金が大きくなるケースも珍しくありません。
物件の購入前には、それぞれの手取り額を試算し、比較した上で個人のまま購入すべきか、法人化した方が有利になるのかをシュミレーションしておきましょう。
兼業の禁止や家族の反対
会社員で不動産投資を法人化し行う際は、会社の就業規則を確認することも大切です。
法人化したいと考えていても、就業規則に兼業禁止事項があり、法人化できないこともあります。
公務員の場合は法律で副業が禁止されている上に、不動産も10室以内の範囲での物件購入しか認められていません。
会社が兼業を禁止している場合は、両親や配偶者を代表に会社を作り、本人は出資を行い株主になるという方法もありますが、家族の理解が得られないと難しいでしょう。
まずは会社の規則を確認すること、そして兼業が難しい場合は、家族とよく相談することが大切です。
法人の設立手続きと設立費が必要
法人化をするには手続きと、設立費が必要です。
法人設立費用は、自分で全て行えば数万円以内に抑えることができますが、司法書士にお願いする場合は、合同会社で15万円程度、株式会社で30万円程度の費用が必要です。
こうした費用と手間も念頭に入れておく費用があります。
個人から法人化は難しい?
「法人化するかどうかは投資を行う中で考えていきたい」という人も多いですが、後から法人化に切り替えると大損してしまうかもしれません。
まず個人から法人に切り替えることは可能ですが、会社法上個人と法人は別として見なされます。
そのため、個人と法人の代表者が同一人物なのにも関わらず、個人から法人へ物件を売却するという方法を取らなくてはいけません。
そしてその際、不動産取得税や登録免許税などがかかります。
1億円の物件を個人から法人に売却するには、その費用だけで数百万円が必要だと言われています。
更に金融機関から融資を受けている場合は、個人から法人に切り替える必要があり、この切り替えを金融機関が引き受けてくれるとも限りません。
その結果、法人化したくてもハードルをクリアできず、法人化の方が利益の最大化が図れるけれど個人のまま不動産投資を続ける人も多いのが現実。
最初から法人化は抵抗がある人も少なくないかもしれませんが、途中での切り替えが難しいことを理解し、本当に個人のままで良いのかよく検討してください。
不動産投資を法人化するメリット&デメリットまとめ
個人は増税され、法人は減税という流れが強くなってきた今の日本。
そのため、不動産投資においても、法人化した方が手元にお金が残りやすくなりました。
しかし、一概に誰しも法人化すれば儲かるわけではなく、個人の所得と物件の条件、物件の買い方などにも左右されます。
全体の収入とコストのバランスを多面的に評価し、法人化すべきかどうかを検討してみることが大切です。
個人の評価だけには限界もあるので、迷った時は税理士への相談も積極的に活用しましょう。
このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
最新の不動産投資情報や株式、投資信託、為替など幅広い投資コンテンツを掲載。 オーナー様自身で最適な不動産の購入・売却・運用の判断材料になる情報をタイムリーに提供いたします。
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