「修繕準備金」は管理組合の救世主になるか?
職掌柄、毎月100件前後のワンルームマンションの売買仲介契約書類に接していますが、マンション管理の会計面では共通してみられる特徴があります。
なんだか分かりますか?
これが、びっくりするほど管理費の滞納が少ないんですね。
長いこと居住系マンションのディベロッパーにいて、管理費滞納に泣かされていた管理専門の関連会社の苦労を見聞きしていた身からすると、もはや奇跡といっていいレベルです。
まあ、ワンルームマンションが買えるほどのお客様なら属性は良好なはずですから、当たり前といえばいえるのかもしれません。
ところが、そこまで滞納が少ないにもかかわらず、大規模修繕などにあてる修繕積立金の繰りまわしが楽ではなさそうな管理組合は少なくないようです。
これは、ほとんどの管理組合(というか管理会社)が、初期の出費負担をおさえるために段階増額積立方式という修繕積立金の積み立て方を採用しているからで、繰りまわしが苦しくなるのは、いざ上げたい、しかも予定どおりに上げたい、と思っても、管理組合の総会で否決されてしまい、予定していたお金が入ってこないからですね。
そんな苦しい管理組合の救世主になるんじゃないのか?と思ったのが、つい最近知った、修繕準備金なるシステムです。
これはなにかというと、所有者の変更があった際に、買主のお客様から ㎡数×一定額を徴収するというもので、ワンルームマンションだとさして高額にはならないことからおそらくは抵抗感も低く、取引が活発であればあるほど管理組合にお金が舞いこむという打ち出の小槌のようなシステムなんです。
新築の分譲マンションには、段階積立の初期の不足分を補うための修繕積立基金というシステムがかれこれ四半世紀以上前からできあがっていますが、これを中古マンションに転用するとは、頭のいい人がいるものだと素朴に感心しました。
とはいえ、「修繕準備金」というキーワードで検索してもまったくヒットしないので、一般的に認知されているわけではないようです。
しかしながら、システムとしてはよくできているので、かつての修繕積立基金のように、じわじわと業界に浸透していきそうな予感がします。
ただ、負担感が少ないのはワンルームマンションだからこそであって、ファミリータイプマンションで類似の一定額を設定するとかなりの高額になり、そんなマンションなら買わないよ、みたいな話になりそうですから、今後の動向を注意深く見守っていきたいと思います。
このコラムを書いている人
中村 彰男
1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、37年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー
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