高齢者向け賃貸住宅の展望
第一線で働いていた諸先輩方が引退し、それまで住み慣れた持ち家を担保に入れて融資を受けたり売却を行ったりと、新所有者との間で賃貸借契約を結んで住み続ける考え方が広がっています。
そんな中、子供が自立して出ていき3LDKや4LDKの広さが必要なくなったご夫婦がコンパクトな間取りの住居に賃貸で引っ越すケースや、連れ添った伴侶がなくなり一人暮らしにあった広さの賃貸に引っ越すケースもあります。
今回は、そんな高齢者向け賃貸住宅についてまとめてみました。
オーナーが高齢者を敬遠する理由①
一人暮らしをしている人は学生・会社員・高齢者など年齢を問わず存在するにもかかわらず、高齢者だけが敬遠されがちなのはなぜでしょうか。
一人暮らしの高齢者があまり歓迎されない理由としては、孤独死という可能性が頭をよぎるからです。
収益物件を所有されているオーナー様は誰しも事故による賃料下落と客付きの悪さを嫌うため、高齢者の入居希望者とオーナー側の高齢者受け入れ可能物件の需要と供給のバランスが整わないのです。
オーナーが高齢者を敬遠する理由②
理由①に通じる話なのですが、孤独死となった場合、事件性を確認するため警察の介入、それが終わると親族の方と賃料・残置物の整理・原状回復費用についての話し合いなどが待っています。
孤独死は夜逃げや家賃滞納とは異なり話し合いにも神経を使うため、相当長い期間を掛けて精算していく必要があるのです。
これらのことを意識すると、どうしても高齢者の一人暮らしを敬遠してしまうのはある程度仕方がないことだと思います。
起きてからではなく、起きる前に
高齢者の一人暮らしリスクを少しでも軽くするため、現在さまざまな会社が安否確認を把握できる手段を模索しています。
例えば、月に何度か電話で状況を伺うサービスや、部屋の扉の開閉状況が情報として管理会社に届くシステムなど、極力入居者の生活に大きな影響を与えない方法が増えてきたように感じます。
また以前はこれらの費用は月額¥3,000ほどかかったのに対し、現在は¥1,000ほどまで下がり、リスクヘッジとしてオーナーが負担したり賃料の付帯費用として入居者から徴収したりといった形で活用しやすくなりました。
また、万が一事故が発生した場合でも再び募集できるまで賃料保証してくれる保険もあります。
まとめ
高齢者入居には不安もありますが、安否確認システムや保険を上手に活用することで敷居を下げられるうえに、若者と違い2年~3年で退去してしまうリスクは低いというメリットがあります。
これから賃貸管理をしていくうえで、入居率を確保する注目案件と言えるのではないでしょうか。
隣同士の繋がりが薄まった状態が日常である現代の住宅事情において、一人暮らしは周りとの煩わしさがない一方、情報が遮断されるなど孤独を感じやすい環境にあります。
この状況が続くと心の視野が狭くなり、虚ろになりがちです。
だからこそ、コミュニティの形成や集まりやすい環境づくりが必要となります。
こういった点も、賃貸管理会社がこれから先に力を入れる重要なポイントになるのでないでしょうか。
このコラムを書いている人
相馬將志
千葉県出身 お風呂での鼻歌がいつの間にか熱唱にギアチェンします。 保有資格:宅地建物取引士/管理業務主任者/賃貸不動産経営管理士/マンション管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/簿記2級