マンションの部位ごとに大規模修繕の時期を見極めよう!
みなさんはマンションの大規模修繕について理解できていますか。言葉は聞いたことがあるけど、いつ行われるのか?どの部分を修繕するのか?など、あまり詳しく理解していない方もいるのではないでしょうか。今回は、大規模修繕について解説していこうと思います。
大規模修繕の目的
マンションは年数が経過するに従って、日照・風雨・寒暖の変化でマンション自体に劣化が生じてきます。コンクリート建築物は、一度建てたら半永久的に住み続けられると思われがちですが、実はそうではありません。コンクリートは元々水を通す性質を持っており、コンクリートは塗装・タイル貼り・アスファルトで保護することで防水性能を保っています。
年数の経過でコンクリートの防水性能が弱くなってくると、コンクリートの中の鉄筋などが、入ってきた水で錆びたり膨張したりします。その結果、破裂事故やひび割れを発生させてしまう可能性が高くなってしまうのです。
給排水管も現在では金属製がほとんどで、錆びにくいものを使用しているとはいえ、長年の使用で詰まりや腐食が進んでしまいます。放っておいてしまうと管が劣化して漏水などが発生するため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
上記のように設備の劣化が進むと快適に生活できなくなってしまうので、これらの事態を防ぐために、適切な時期に大規模修繕をしてマンションを維持します。
大規模修繕の計画成功を左右する管理組合総会
管理組合には「理事会」という存在があります。
まず理事会で工事業者の募集を掛け、事前調査のうえの見積書の収集及び比較検討する必要があります。
また、自己資本となる修繕積立金で支払うべきか何割かは借入金で賄うべきか費用を抑えるべく今回は見送ることができる修繕はないかなど、頭を悩ませる問題が多くあります。
この理事会でまとめた内容を基に管理組合総会に議案として挙げ、承認の可否を問います。
管理組合総会は、マンションの方針を決める最終決定機関です。そのため反対が一定数あれば、
先に進めることができません。特に大規模修繕工事は特別決議と言って2/3の賛成が必要となります。
大規模修繕工事は実施までにいくつもの準備段階があり、大変な労力を要します。
前回の工事内容を参考に必要な㎡数、必要な材料数、材料単価、人件費。現状の劣化状況、それに係る有効な工事方法の選択、工事業者の選定。
金銭的な面では修繕積立金残高、借入の必要性、借入限度額、返済金利といった色々な面を考えなければなりません。
そのうえで管理組合の総会という場で提案し、承認を受けて初めて工事に着手できるのです。
大規模修繕のタイミング
実際に大規模修繕をいつ実施するかについてですが、明確なルールや決まりはありません。マンションの規模・戸数や劣化の状況、故障の発生具合によって修繕時期が変わってきます。修繕時期としては、だいたい10~15年の間で設定されていますが、12年で設定しているマンションが多いです。
国交省の長期修繕計画作成ガイドラインには12年で修繕を計画している事例が多く、ほとんどのマンションはそれを参考に修繕計画をたてています。
また、12年という日数は塗料や防水材などが劣化するタイミングでもあり、多くの修繕計画が実行される理由の一つです。
マンションを長く快適に使っていくために、コンクリート内部の浸水を予防することはとても重要です。12年を超えてくるとコンクリート内部の浸水リスクが高まってくるので、浸水を防ぐためにもなるべく12年で修繕計画をたてておきたいところです。
以下が修繕箇所及び修繕年数目安の資料になります。
| 工事項目 | 主な工事内容 | 計画修繕周期 |
| 仮設工事 | 修繕工事を行うために必要な足場:養生:事務所:資材置き場: 仮設トイレ等の費用:安全対策:広報 |
12年毎 |
| 外壁塗装仕上塗材工事 | 外壁:手摺内外壁:揚裏:床等 吹付:塗装部分の補修工事及び再度吹付する工事 |
補修 12年毎 吹付 12年毎 |
| 塗装工事 | おもに鉄部分の塗装工事(俗にいうペンキ工事) 各戸玄関枠:共用鉄扉:メーターボックス扉 消火栓BOX:消火器BOX |
4年毎 |
| 隔板塗装・駐車場白線引き | 12年毎 | |
| 自走式駐車場(デッキ) | 12年毎 | |
| サイクルラック・駐輪場屋根・メッシュフェンス柱 | 8年毎 | |
| タイル工事 | 外壁:壁タイル:床タイル張替 ひび割れ:浮き部分等の補修及び一部張替 薬品洗浄(汚れ落し) |
張替 36年毎 補修 12年毎 洗浄 12年毎 |
| 内装工事 | 外廊下床:外階段床塩ビシート張替 各戸玄関扉外面塩ビシート張り 内装リフレッシュ(キッズルーム・ライブラリー等) 内装リフレッシュ(ゲストルーム・ショップ、ラウンジ等) ELV内部シート張替・バルコニー床塩ビシート張替 |
16年毎 16年毎 12年毎 16年毎 12年毎 |
| シーリング工事 | 各所シーリング工事 ガラス周り |
12年毎 24年毎 |
| 防水工事 | 屋上防水工事 ルーフバルコニー屋上防水 バルコニー排水口・巾木防水 外廊下・外階段排水口・巾木防水 自走式駐車場屋上防水 エレベーターピット防水 |
12年毎 12年毎 16年毎 16年毎 12年毎 16年毎 |
| 諸工事 | 各所クリーニング:各所補修 物干金物交換 集合郵便受交換:宅配ボックス交換 サイクルラック交換 手摺交換 駐輪場屋根交換 ELV交換:機械式駐車場交換:鋼製建具交換 その他諸項目交換:補修 アスファルト舗装等再施工 外構フェンス補修 |
12年毎 24年毎 20年毎 25年毎 36年毎 25年毎 30年毎 10年~30年毎 30年毎 6年毎 |
| 電気設備工事 | 照明器具交換 TV共視聴設備・インターフォン設備 各所設備盤交換 電波障害対策施設 |
15年毎 20年毎 20年~25年毎 対象業者指定値 |
| 給排水換気設備工事 | 受水槽交換 給水ポンプ交換 排水ポンプ交換 各所換気設備機器 共用日給水管更新工事(調査による) 消火管更新工事 共用部給排水管更新工事 |
25年毎 15年毎 10年毎 15年毎 20年~30年目 30年目 35年目 |
| その他 | 工事内容により判断 |
大規模修繕の費用について
大規模修繕工事費用は規模にもよりますが億単位のお金が動きます。私の住むマンションも4億円弱の工事費用を試算していました。
この工事費用をどのように捻出するのかという話になります。
全額自己資金で賄うのかそれとも一部分の金額を融資で受けるのか。
そして、融資を受けるとなると、融資を受けた際の返済計画に無理はないのか、返済金利が固定金利か変動金利か、複数の金融機関の返済金利を比較したか、無茶な返済予定表を作成していないかなど様々なことを検討しなければなりません。
それ調べたうえで、委託している管理会社やマンション管理士に客観的視線で計画表を見てもらい、無理のない試算を考える必要があります。
そして、大規模修繕工事後の修繕積立金残高、次の大規模修繕工事までにいくら積み立てる計画であるのか。注意しなければならないのは、●●%引き下げるという言葉です。
これはもともとの金利から●●%引き下げるという意味ですので、もともとの金利が周囲より高ければ引き下げたところで他社とは変わらない可能性があります。
しっかりそこまで掘り下げて比較検討することが必要です。
忘れてはいけないのが、大規模修繕工事後の修繕積立金残高です。次の大規模修繕工事までにいくら積み立てる計画であるのかも重要です。
場合によっては、修繕積立金の値上げも視野に入れなくてはいけないでしょう。
まとめ
大規模修繕工事はマンションの劣化を防ぎ、快適な生活を送るために必要な工事です。
大規模修繕について、今まであまり把握していなかった方は、所有しているマンションもしくは今後購入予定のマンションの大規模修繕時期をしっかり把握しておきましょう。
大規模修繕はマンションの資産価値にも影響してくる内容ですので、しっかり確認しておくことが大事です。
宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士 / 住宅ローンアドバイザー
株式会社FGH 代表取締役社長
株式会社アーバンフォース 代表取締役社長
2007年2月フォースグループ創業以来、投資用不動産仲介の第一線でキャリアを積む。
中古ワンルームマンションはもちろん、不動産全般に関する多岐にわたる経験と知識でお客様からの信頼も厚い。
これまで400名以上のお客様の資産形成のお手伝いをしている。
このコラムを書いている人

柏井 優輝
東京都出身 2015年新卒入社 FGHフットサル部キャプテン 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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