売却相場の分析については、こと東京圏に限って申し上げると黒田元日銀総裁の任期中だった2年半前に書いたこのこのコラム(昭和バブルと令和バブル)につけ加えることはさほどありません。
しいていうなら分不相応に相場が上昇したのが先に触れた臨都心にとどまらずにその周辺地域にまで拡大したということで、東京区部の相場はすでに天井で上昇の余地はほとんどなく、あとは下がるだけという局面を迎えていると考えていいでしょう。
その証拠に当社の取引実績をみると、まだ上昇余力のある京阪神や福岡エリアの取り扱い比率が月を追って増加する傾向にあり、取引件数の過半を占めることも稀ではなくなりました。
これは中古物件の買取再販売会社が東京圏で十分な利益の取れる物件を仕入れるのが難しくなったために京阪神物件にシフトし始めたからだと考えられるのですが、あくまでも東京圏にこだわるお得意様はこれまで手を出さなかった一段上の広さと価格帯のものを積極的に取り扱われているようで、そうなるといささかお値段も張りますからいくら適正な利回りで取引が成立していようと一見バブルのような見かけになってしまうのは仕方のないことだと思います。
ただ、世界的にみれば東京の不動産はまだまだ安いのだからさらなる上昇の余地はあるとする論調も根強く存在していて、その手の相場予想はインカムゲイン狙いの投資理論ではもはや説明できるものではなく、キャピタルゲイン狙いの八卦屋的予想にならざるを得ませんので個人的には敬して遠ざけることにしています。
こちらもおすすめ
金融機関が物件の収益性を無視した貸し付けさえしなければべらぼうな値付けにはなるはずがないと信じてこその話ではあるのですが、昨年末に開かれた同業者向けのセミナーでは港区赤坂の区分マンションが利回り1.8%で売り出されていたという不気味な話を聞きました。
成約情報ではなく、あくまでも売り出し価格にすぎないので、これから金利が上がろうとする局面では正気の沙汰とは思えませんからお試しで吹っかけてみただけだと信じたいですが、まだまだ上がる説信者にとっては心強い情報に映ってしまうのかもしれませんね。
昭和バブルの真っ最中に株はまだまだ上がると断片的な情報をかき集めて力説していた連中を冷ややかに見ていた身としては、まっとうな投資理論を手放す気にはどうしてもなれず、東京圏相場天井説を譲るつもりはありませんから損したくなければ利益確定の売りをお勧めしておくことにします。