契約解除の難易度が変わる!特定賃貸借契約と管理受託契約の違いは? 

公開日2024/06/07
更新日2024/06/13

特定賃貸借契約と管理受託契約オーナー様から寄せられるさまざまな疑問を題材に、賃貸管理業の従事者として現場での体験談を交えながらコラムを執筆しておりますが、今回は、「特定賃貸借契約」と「管理受託契約」の違いについてお話してみようと思います。
 
「特定賃貸借契約」と「管理受託契約」を題材にしたきっかけは、あるオーナー様からのご相談から始まります。
先日、東京23区内の投資用の区分マンション3戸をご所有されているオーナー様から賃貸管理のことでお問い合わせをいただきました。
現在の管理会社様は物件を購入した時から3年ほどのお付き合いとのことで、最初は担当の方も色々と相談に乗ってくれていたのですが、年月が経つにつれて対応は煩雑になり管理会社を変えたいと考えるようになったそうです。
 
弊社の管理業務内容、各種費用、更新時、解約時の内容などのご説明を差し上げ、現在の管理会社から弊社に管理を変更したいとご要望を承ったまでは良かったのですが、そこで問題だったのは現在の管理会社との契約でした。
オーナー様のお話では、空室期間中は当然に入居者が決まるまで家賃収入はなく、設備修繕費、設備交換費、入居者退去時の原状回復費用の貸主負担分もお支払いされているとのこと。
内容を聞く限りでは管理受託契約だったのですが、確認のために契約書を拝見させていただくと、契約書は「特定賃貸借契約兼管理受託契約書」という題名で、契約の内容は特定賃貸借契約となっていたのです。
 
何が問題なのかと言いますと、「特定賃貸借契約」は文字通り賃貸借契約になるので借地借家法が適応され、「管理受託契約」は民法の委任契約が適応されるので、オーナー様からの契約解除の難易度がまったく変わるのです。
 

特定賃貸借契約とは?

 特定賃貸契約とは、マスターリース契約(賃貸借契約)を意味します。
入居者との賃貸借契約の大きな違いは、又貸行為(借りたものを貸し手の許可を得ず更に他人に貸すこと)が禁止されている点。発覚しますと特段の事情がない限りは契約違反となり、契約解除の対象となるほど重たい違反です。
マスターリース契約は、転貸(他人に貸す行為)を可能とした条件でオーナー様から直接賃借する契約方法です。
マスターリース契約をしている者から賃借した契約は転貸借契約と言います。
 
オーナー様
↓ ※賃貸借契約
マスターリース会社
↓ ※転貸借契約
入居者
 
類似する言葉でサブリース契約(転貸借契約)というものがありますが、こちらはマスターリース契約をしている者から転貸可を条件に更に賃借した契約を意味します。
 
オーナー様
↓ ※賃貸借契約
マスターリース会社
↓ ※転貸借契約
サブリース会社
↓ ※転々貸借契約
入居者
 
一般的に転貸可の賃貸借契約をまとめて「サブリース」と称されることが多いのですが、厳密には違う場合もあります。
話を元に戻しますが、特定賃貸借契約は借地借家法が適用されますので、オーナー様からの解約には借地借家法第28条(更新拒絶等の要件)が適用されるため、甲が更新を拒絶する場合には、幾つかの要件を満たす必要があります。
オーナー様=賃貸人 賃借人=マスターリース会社 転借人=サブリース会社、及び入居者
 
① 賃貸人及び賃借人(転借人(入居者)を含みます。)が建物の使用を必要とする事情
② 建物の賃貸借に関する従前の経過
③ 建物の利用状況及び建物の現況並びに賃貸人が建物の明渡しの条件として賃借人は建物の明渡しと引換えに賃借人(転借人(入居者)を含みます。)に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができません。
上記のようにオーナー様からは解約したいからできるというものではありません。
 

管理受託契約とは?

 管理受託契約とは、オーナー様と賃貸住宅管理業者との間で賃貸住宅の管理業務を委託する委任契約です。集金代行契約と総称されることもあります。
委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約を意味します(民法第643条)。
委任契約は、いつでも理由なく解除することができますが、突然契約を解除された当事者は損害を被ってしまう場合があることを考慮して、委任契約をいつでも解除できるとしつつ、一定の場合には相手方に損害を賠償しなければならないとしています。
管理受託契約に解約予告期間などの解約するための規定を設けている理由は、未然に損害の発生を防ぐためでもあります。
とはいえ、特定賃貸借契約と比べると、解約の難易度が低いことは明らかです。
 

まとめ

今回のオーナー様のように、管理受託契約を締結したつもりが、実際には特定賃貸借契約だった場合には、どちらの契約が優先されることになるのでしょうか?
恐らく特定賃貸借契約書にオーナー様が署名・捺印をされてしまっている以上は、残念ながら特定賃貸借契約として取り扱いがされ借地借家法が適応されるものと思われます。
 
オーナー様の当時のメモが残っており拝見させていただくと、特定賃貸借契約と管理受託契約の二種類の説明を受けており、かなり詳細が残っていました。
オーナー様がどちらの契約の方が良いか悩んだ形跡です。
更に言えば、現在の管理会社様では当時から現在に至るまで、管理受託契約はそもそも取り扱いをされておらず、特定賃貸借契約しか受けられていないということも判明しました。
つもり現在の管理会社様は管理受託契約の内容を案内しながら、意図的に特定賃貸借契約を締結したということになります。
オーナー様は「似たような被害を受けるオーナー様を減らしていける可能性があるのなら、法的手段も検討したい」というお話でしたので、少しでもあくどい業者が淘汰されていくことを私も期待し、動向を追いたいと思います。
 

こちらも人気です
URBAN FORCE(アーバンフォース)は、入居率95.06%(2021年9月)を誇る賃貸管理会社です。 管理手数料は月額300円~2,000円。費用対効果に優れた管理会社をお探しなら、アーバンフォースにお任せください。
>>
賃貸管理ならURBAN FORCE(アーバンフォース)



オーナー様の満足度を最大化

このコラムを書いている人

徳永 裕幸

徳永 裕幸

1982年 神奈川県出身 2014年アーバンフォース入社 保有資格:宅地建物取引士/不動産賃貸経営管理士/管理業務主任者