【完全解説】ワンルームマンション投資の減価償却費と節税メリット
【目次】

不動産投資による不動産所得は、事業所得や給与所得とも損益通算が行える点が特徴で節税を有効に行う事ができます。
特に節税を生むにあたって大きな割合を占めるものが「減価償却費」になります。
減価償却費は見えない支出とも呼ばれており、1年間の減価償却費が費用計上される事で継続的に節税効果をもたらす効果があります。
しかし、節税効果についての理解が抽象的な方や中には気づかずに異なる解釈をしていたという方もいるのではないでしょうか?
不動産会社によっては、単純な減価償却の説明しかしておらず新築と中古で減価償却の考え方が異なる事に触れずメリットを強調する事もあります。
節税効果を有効に活用していく為には、減価償却の考え方について理解を深めていく必要があります。
今回のポイントとしては
✅新築と中古の不動産の耐用年数の違い
✅売却時の譲渡所得税の内容
✅保有不動産の収支が黒字か赤字か
以上の3点に着目しながら、ワンルームマンションの減価償却費の節税効果や注意点を宅地建物取引士・FP2級の専門家が詳しく解説したいと思います。
\ FGHにおまかせ /
減価償却費とは? ワンルームマンションとの関係
減価償却費は、節税効果に有効な要素の1つです。
減価償却費は目に見えない資金の流出であり、建物の資産価値から年を重ねるごとに償却されていく特徴があります。
以下では、減価償却の基本的な仕組みと節税効果があると呼ばれる仕組みについて触れていきます。
減価償却の基本的な仕組み
不動産投資でよく耳にする「減価償却」とは、建物や設備の購入費用を、耐用年数に応じて少しずつ経費として計上していく会計上の仕組みです。
例えば、ワンルームマンションを購入した場合、建物に関しては時間の経過とともに老朽化し、価値が減っていきます。
減少した価値の部分を「減価」と呼び、減価を毎年少しずつ経費化していくのが減価償却です。
減価償却の対象は建物部分のみとなっており、土地部分は生産されたものではない為、減価とはならず減価償却の対象とはなりません。
例えば、購入価格が1,500万円の物件でも、土地が500万円、建物が1,000万円という内訳であれば、償却できるのは1,000万円部分だけです。
また、耐用年数は国税庁の定める法定耐用年数に基づき、構造によって異なります。
以下は住宅用の建物の法定耐用年数になります。
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 47年 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 47年 |
鉄骨造(骨格材の厚さ3mm以下) | 19年 |
鉄骨造(骨格材の厚さ3~4mm) | 27年 |
鉄骨造(骨格材の厚さ4mm以上) | 34年 |
木造 | 22年 |
木造と鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造では法定耐用年数が倍以上違い、償却期間も大きく変わるので購入時には構造の理解も念頭に入れておく事が重要となります。
減価償却費が節税に活躍する理由
減価償却費は、実際にお金が出ていかない「非現金経費」です。
例えば、家賃収入が100万円、その他の経費が20万円、減価償却費が30万円あれば、課税対象となる所得は「100万円-20万円-30万円=50万円」に減ります。
結果として所得税や住民税が下がるため、「節税になる」と説明されるのです。
しかし、注意が必要なのは節税効果はあくまで一時的であることです。
減価償却費は耐用年数が尽きれば計上できなくなり、後は課税所得が増えてしまいます。
また、売却時には減価償却累計額が取得費から差し引かれるため、譲渡所得(売却益)が大きくなり、譲渡所得税が増えるケースもあります。
つまり、節税といっても「税金の支払い時期を後ろ倒しにしている」に過ぎないことを理解する必要があります。
ワンルームマンションの減価償却費計算の基礎
効率よく運用する為には様々なシミュレーションが必要となってきます。
運用中の利回りや売却益を狙った出口戦略、運用中の手元資金を効率よく残す為の計画と不動産投資は計算をする場面が多々出てきます。
今回は、建物の減価償却に焦点を当て、以下で解説をしていきます。
新築と中古で耐用年数の計算方法が異なってくるので、減価償却の計算には注意が必要です。
建物価格の算定方法と注意点
減価償却費を計算するには、始めに建物部分の価格を正しく算定する必要があります。
新築物件の場合は売買契約書や請求書に建物と土地の金額が明記されていることが多いですが、中古物件では必ずしも明確に分かれていない場合があります。
建物価格が不明の場合、固定資産税評価額を参考に割合を求めます。
例えば、固定資産税評価額が建物600万円、土地400万円であれば、建物割合は60%となり、購入価格全体に建物の割合を掛けて建物価格を求めます。
計算が不正確だと、減価償却費も誤って計上され、税務調査で指摘される可能性があります。
また、付帯設備(エアコンや給湯器など)は建物とは別に短い耐用年数で償却できるため、別途金額を算定することも検討されます。
ただし、過度な按分は税務リスクを伴うため、専門家に確認しながら行うことが重要です。
中古物件の耐用年数の求め方
中古のワンルームマンションを購入した場合は、法定耐用年数は新築時からの経過年数を踏まえて再計算が必要となります。
国税庁のルールでは、中古建物の耐用年数は以下の式で求めます。
中古耐用年数 = (法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数 × 20%
※小数点以下切り捨て、最低2年
- 例:RC造(法定耐用年数47年) 築20年の場合
- (47-20)+(20×0.2) = 27+4=31年
築年数が20年経過した場合の耐用年数は再計算した結果「31年」となりました。
上記に基づき、建物価格を耐用年数で割った金額が毎年の減価償却費となります。
安易に不動産会社の提示する「節税額シミュレーション」を鵜呑みにしてしまい、実際には期待ほどの節税効果が得られないという事態もありえます。
新築物件と中古物件での耐用年数の考え方が異なる点に注意して、節税効果が本当にあるのかを判断する事が大事になってきます。
減価償却費が与える投資収支へのインパクト
減価償却費は、ワンルームマンション投資で節税効果を生む代表的な経費です。
しかし、帳簿上の数字が動くことで、毎月のキャッシュフローや税額がどのように変わるのかをイメージできていない人も多いでしょう。
本項目では、「お金の流れ」と「帳簿上の利益」の違いを解説し、減価償却が収支に与える本当の影響を整理します。
キャッシュフローが変動するメカニズム
減価償却費は実際にお金が出ていかない経費のため、帳簿上の利益を圧縮しつつ、手元の現金はそのまま残るという特徴があります。
例えば、家賃収入が年間120万円、経費が30万円、減価償却費が40万円の場合、課税所得は「120万-30万-40万=50万円」
税金は課税所得の50万円にかかるため、減価償却を計上しない場合と比べて税負担が減ります。
しかし、キャッシュフローに与える影響はプラスだけではありません。
減価償却期間が終われば経費として計上できなくなり、課税所得が一気に増えるため、税負担が増加します。
以上の事から、減価償却によるキャッシュフロー改善は一時的なものであるため、長期的な視点で投資計画を立てる必要があります。
損益通算による所得税・住民税の圧縮効果
不動産投資の赤字は、給与所得や事業所得など他の所得と損益通算が可能です。
減価償却費によって不動産所得が赤字になれば、赤字の分だけ課税所得が減り、所得税や住民税の負担を抑えることができます。
例えば、年収800万円の会社員がワンルームマンション投資で年間50万円の赤字を計上した場合、課税所得は750万円となり、税率20%と仮定すると約10万円の税負担軽減につながります。
ただし、あくまで節税効果があるのは「赤字が出ている間だけ」です。
黒字化すれば損益通算は使えず、節税の恩恵もなくなります。
節税目的の投資で注意したい落とし穴
節税の恩恵を考えて運用をしていたはずが思いもよらない落とし穴があったというケースが多々あります。
節税の範囲でのコストが思ったよりもかかってしまい本末転倒になるのは避けたいはずです。
購入後や売却時に考えられるケースを予め理解をする事で有効な節税効果を得られる事に繋がります。
下記では、考えられる落とし穴や注意点について触れていきたいと思います。
デッドクロスと減価償却期間終了後の影響
不動産投資では「デッドクロス」と呼ばれる現象があります。
デッドクロスとは、ローンの元本返済額が減価償却費を上回る状態のことで、デッドクロスを機にキャッシュフローは悪化しやすくなります。
さらに、減価償却期間が終了すると経費計上額が減り、課税所得が増えるため、手取りはさらに減少し、場合によっては赤字になる事もありえます。
経費に対する誤解
「不動産投資は経費で節税できる」と聞くと、大きな節税効果を期待しがちですが、実際にはローン返済の元本部分は経費になりません。
経費として計上できるのは利息部分や管理費、修繕費、固定資産税などに限られます。
減価償却も建物価格と耐用年数に基づくため、想定より額が小さいことも珍しくありません。
運営コストが節税効果以上にかかってしまう
管理費・修繕積立金・火災保険・固定資産税など、ワンルームマンションの維持には毎年一定のコストがかかります。
築年数が経つにつれて修繕費が増加する傾向もあり、支出コストが節税で得られる金額を上回ってしまえば本末転倒です。
売却時の譲渡所得税が想定以上にかかってしまう
減価償却で計上した累計額は、売却時に取得費から差し引かれます。
結果として譲渡益が大きくなり、譲渡所得税が増えることがあります。
購入から数年で売却する場合でも、減価償却累計額の影響で利益が目減りするケースは少なくありません。
「節税できた」と思っていた分が、売却時にまとめて税金として戻ってくることもあるのです。
減価償却費をうまく活かすためのポイント
ワンルームマンション投資において、減価償却費は短期的な節税効果を生む重要な要素です。
しかし、やみくもに「減価償却が多い物件=お得」と考えるのは危険です。
減価償却は必ず期限があり、償却期間終了後には税負担が増える可能性があります。
また、売却時には譲渡所得税の増加という形で跳ね返る場合もあります。
だからこそ、減価償却費を「長期的な収支計画の一部」として捉え、自分の投資目的、年収や保有期間に応じて最適化することが大切です。
以下では、具体的な着眼点として2つのポイントを紹介します。
法定耐用年数を意識した最適な物件選定
減価償却費の額は、建物価格と耐用年数によって決まります。
中古のRC造ワンルームマンションは、築年数によって残りの耐用年数が短くなり、年間の償却額が大きくなる傾向があります。
短期間で節税効果を得たいなら、残存耐用年数が少ない物件が有利ですが、逆に期間終了後の税負担増にも備える必要があります。
購入前に「築年数」と「法定耐用年数」の関係を理解し、自分の投資計画に合った償却期間を選ぶことが重要です。
年収帯と節税効果のバランスを理解する
減価償却による節税効果は、適用される所得税率や住民税率に比例します。
高所得者ほど累進課税による税率が高く、同じ償却額でも節税額は大きくなります。
一方、年収が中程度の場合は思ったほど節税額が伸びない事で収める税金がイメージしていたものよりも変わらないというケースもあります。
結果的に運営コストや将来の税負担の方が重くなることもあるので注意が必要です。
物件を選ぶ際は、自分の年収帯での節税効果がいくら期待できるのかをシミュレーションし、「節税額>運営コスト」の関係が成り立つかを必ず確認しましょう。
\ FGHにおまかせ /

宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士 / 住宅ローンアドバイザー
株式会社FGH 代表取締役社長
株式会社アーバンフォース 代表取締役社長
2007年2月フォースグループ創業以来、投資用不動産仲介の第一線でキャリアを積む。
中古ワンルームマンションはもちろん、不動産全般に関する多岐にわたる経験と知識でお客様からの信頼も厚い。
これまで400名以上のお客様の資産形成のお手伝いをしている。
このコラムを書いている人

Sayuri Takahashi
マーケティング部 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャルプランニング技能士/インテリアコーディネーター
関連する記事