【不動産投資 一棟編⑭】損益分岐入居率(BER:Break Even Ratio)について
2021.11.8
代表取締役会長 渡邊 勢月矢
前回は、「借入返済余裕率(DCR:Dept Coverage Ratio)」についてお伝えしました。
前回のコラムはこちらになります。
今回は、様々な投資指標の10つ目として、「損益分岐入居率(BER:Break Even Ratio)」についてお話したいと思います。
・損益分岐入居率(BER:Break Even Ratio)とは?
損益分岐入居率とは、企業の損益分岐点と同じ考え方です。
賃貸経営も事業ですので、売上の指標である入居率が〇%までであれば利益が出る状態かということです。
言い換えると実収入がどれ位下がっても大丈夫かというものです。
以下の計算式で算出します。
損益分岐入居率=(必ず出て行く費用÷潜在家賃収入)
=(運営費+年間返済額)÷総潜在収入
✔以下の例題で損益分岐入居率を計算してみましょう。
年収1000万円のサラリーマンの方が以下の一棟アパートの購入を検討しております。
<融資条件>自己資金10%、金利1.9%、期間30年
・価 格:5800万円
・家 賃:450万円/年
・運営費:90万円/年
・返 済:228.3万円/年
・手 取:131.7万円/年
※運営費は、修繕費、管理料、固定資産税・都市計画税を指します。
家賃の20%を運営費として見込んでいます。
損益分岐入居率=(必ず出て行く費用÷総潜在収入)
=(運営費+返済)÷総潜在収入
=(90万円+228.3万円)÷450万円
=70.7%
つまりこの不動産投資は、実収入が70.7%まで下がっても大丈夫ということが言えます。
70%以下が理想的ですが75%以下であれば良いとされております。
注意点として損益分岐入居率は戸数が少なければ1戸の空室でも数値が悪化します。
この数字もDCRと同じ資金繰り指標で、融資条件が関わってきます。
自己資金が少なければ損益分岐入居率は高くなり(資金繰りが悪い)、自己資金が多ければ損益分岐入居率は低くなります(資金繰りが良い)。
損益分岐入居率は、物件購入時においても重要な指標ですが、所有後、年数が経過してからもチェックされることをオススメいたします。
前回ご紹介したDCRも今回の損益分岐入居率も借入と家賃収入のバランスで決まります。
借入は基本的に当初から同じですので、数値が悪化しているということは家賃が下がっている、運営費が増加しているケースが想定されます。
不動産投資は時間の経過とともに何もしなければ収益は下がりますので、要所要所で投資指標を見て行きながら、必要な対策を講じてより良い資産形成・管理を実現して行きたいですね。
今回は、以上です。
次回は、負債比率(LTV:Loan To Value)についてお話ししようと思っています。
このコラムを書いている人
渡邊 勢月矢
株式会社FGH代表取締役会長 CPM ® (米国不動産経営管理士)徳島県生まれ、広島県育ち。 大学卒業後、中小企業の営業支援を行う会社に就職。「個人投資家の目線に立った不動産売買仲介事業をしたい」との想いを抱き2007年2月、株式会社アーバンフォースを設立。その後、賃貸・売買部門を独立させ、株式会社FGHを設立・ホールディングス化。年間1000件以上の仲介案件を手掛け、通算10000件以上の適正な流動化を実現し、不動産所有者、購入希望者双方のニーズを満たすサービスを提供し続けている。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
関連する記事