税収減8兆円の衝撃・・どうなる税金?
昨年の暮れに差しかかろうとするころ、2020年度の税収が
予想から約8兆円下振れしそうだ。という衝撃的な報道に接しました。
当初予想していた税収63兆5000億円から着地は55兆円程度だそうで、とてつもない数字です。
この下げ幅はリーマンショック以来11年ぶりの大きさだとのこと。
もうじき1年にもなろうかという片肺飛行の経済活動から、ある程度は予測できたこととはいえ・・
下振れの補填は赤字国債の追加発行で賄うそうで20年度の単年新規国債発行額ははじめて100兆円を超えるのだとか・・
リアルに数字をつきつけられると、財務官僚でなくとも頭を抱えるのが常識ある国民だと思います。
ましてや、財政当局の緊迫感は相当なものでしょう。
まず封じられるのは相続税節税か?
とはいえ私が頭を抱えているのは、財政が危殆に瀕しているのもさることながら、不動産投資のうま味のひとつである節税に、財政当局が厳しい目を向けてくるのを恐れているからです。
企業の業績不振で法人税は減りますし、勤労者の賞与が減れば、所得税が減ります。
ここまで巣ごもりを強制されれば、消費税が増えるはずもありません。
ないないづくしの状況で、少しでも打てる手を模索するなら、取ったものを取り戻させないか、あるいはもっと取れるところから取るか、しか選択肢はないのです。
幸か不幸か、不動産には足がありませんから逃げていくことはありません。
意外に知られていませんが、不動産の権利の移動については税務当局はリアルタイムで把握しています。
その気になれば、もっと取れる材料を探索するのは物理的には十分に可能だということです。
最も即効性がありそうなのは、相続税の節税封じでしょう。
この1、2年のことですが国税庁長官による財産評価通達の例外として、行政当局が更正処分を行ない、訴訟になったあげく、行政当局が勝訴して判決が確定した事例がちらほら出てきました。
相続対策の王道が根幹からひっくり返されてしまったわけですから、日本中の税理士先生がたは、真っ青になられたことと拝察いたします。
行政当局の勝訴事例が判例として残ってしまっている以上、今後は類似の否認・更生事例が目立たぬようにじわじわ広がっていくような気がしてなりません。
確定申告は慎重に?
納めた税金を取り戻す、いわゆる還付申告についても、今までよりは慎重に対処するのが賢明だと思います。
現行税制下では、それなりに建物比率が高く、減価償却年数が極端に短いものでないかぎり、それほどの節税効果は見込めなくなっているはずなので、還付できている方は、不動産経営に関する付随経費も併せて計上なさっているものと推察します。
この付随経費の計上を抑制するため税務当局は、2014年分の申告から帳簿の備付ならびに領収証の保管を義務づけ、精神的な抑止策を講じていますが、一足飛びに保管書類の提出とまではいかないまでも、申告書受理後のお尋ねという形で、説明を求められる可能性くらいは考慮しておいたほうが安全です。
税収減8兆円の衝撃がこんなところにまで影響するのか、と思われた方も多いとは思いますが、仮にご自身が国税庁長官でこの税収減に直面したら部下にどういう指示を与えるかを想像してみてください。
転ばぬ先の杖、のたとえもあります。
粗っぽい(と感じるかどうかは別として)不動産節税には、くれぐれもご注意いただきたいものです。
このコラムを書いている人
中村 彰男
1961年 東京生まれ 学習院大学経済学部卒業後、37年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど業務畑経歴24年。 実家をアパートに改築し賃貸経営を行うかたわら、 自身も不動産投資にチャレンジした経験を持つ。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/宅建マイスター/管理業務主任者/賃貸住宅メンテナンス主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/不動産コンサルティングマスター/土地活用プランナー
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