サブリース契約つきの不動産は売却できない?
【目次】

結論から言うと、売却のタイミングや方法を工夫すれば、サブリース物件でも十分に売却できる可能性があります。
本記事では、成功事例や対処法を交えて、サブリース契約つきの物件売却のポイントをわかりやすく解説します。
サブリースとは?
サブリースとは、不動産会社に不動産の管理を委託する際の契約形態の1つです。
不動産管理委託の契約形態には主に次の2つの種類があります。
✅管理委託契約
✅サブリース契約
管理委託契約とは、単に不動産の管理を不動産会社へオーナーが委託しているだけですので、オーナーは管理費を不動産会社へ支払い、賃借人とオーナーの間で賃貸借契約を締結します。
一方、サブリースはオーナーと不動産会社の間で賃貸借契約(マスターリース契約)を締結する契約です。
サブリース契約の仕組みやメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
サブリース契約の仕組み
サブリース契約とは、不動産オーナーと不動産会社が賃貸借契約(マスターリース契約)を締結し、不動産会社が実際に不動産を使用する賃借人(転貸人)と賃貸借契約(サブリース契約)を締結する契約です。
オーナー様から不動産を借りた不動産会社が借主を見つけて転貸する仕組みです。
借主は不動産会社に対して家賃を支払い、不動産会社はオーナー様に対して賃料を支払います。
オーナーが直接は入居者と契約するのではなく、不動産会社と契約するという点が特徴です。
サブリース契約のメリットデメリット
サブリース契約はメリットとデメリットが大きな契約方法です。
- ・入居者を探す手間がかからない
- ・入居状況に関わらず安定した家賃収入を得られる
- ・管理業務が不要
- ・手数料負担が大きい
- ・免責期間がある可能性がある
- ・売修繕費用等の負担が発生する
- ・免責期間は家賃収入がなくなる
- ・中途解約が難しい
サブリース解約は借主を探す手続きや、借主との契約、家賃の入金状況の確認や督促、契約更新などは全て不動産会社がおこなってくれます。
不動産オーナーが行う管理手続きはほとんどないので、管理や入居付けなどの手間から解放される点は大きなメリットです。
また、空室時の賃料保証がある契約を締結すると、入居状況に関わらず不動産会社から安定した家賃収入が入ります。
不動産経営の最も大きなリスクの1つである空室リスクをサブリース契約では排除できる点も非常に大きなメリットだといえます。
一方、サブリースを利用すると賃料の10%〜20%程度の手数料が発生します。管理委託に比べると手数料負担が倍程度になるため、コスト負担は高額になります。
また、多くのサブリース契約では免責期間が設けられており、入居者が決まるまでの期間や、退去後数か月間の期間は家賃を払わなくてよいと決められていることが少なくありません。
一般的には2~3ヶ月で設定されていることが多いようですが、それ以上の場合もあります。
さらに、修繕やリフォームが必要な場合にはオーナーが負担しなければならないので、想定以上の修繕費等を負担しなければならないことがあります。
最後に、これが一番の売却におけるデメリットですが、サブリース契約は原則として中途解約ができません。
借地借家法に基づいて締結される契約なので、借主である不動産会社が強く保護されており、原則としてオーナー側から一方的に契約解除をおこなうことは不可能です。
手間をかけずに安定した家賃収入を得られるものの、高コストで解約が難しいのがサブリース契約の特徴だといえます。
なぜ「サブリースは売却できない」と言われるのか
一般的に「サブリース契約がついている物件は売却できない」と言われることが多々あります。
なぜ、サブリース契約付きの物件の売却が難しいのか、詳しく解説していきます。
売却先の買主が嫌がる主な理由
サブリース契約は借地借家法によって保護されているので、オーナーの方から一方的に解約することはできません。
そのため、サブリース契約がついている物件は、物件にサブリース契約がついたまま売却するのが一般的です。
しかし、サブリース契約がついている物件を売却することは買主が嫌がると言われています。
その主な理由は次の2つです。
✅実賃料との差額分損する
✅サブリース契約の解約に手間がかかる
サブリース契約がついている物件は、オーナーが変わった後も、オーナーはサブリース契約を継承し、家賃の10%〜20%程度の手数料を不動産会社へ支払っていかなければなりません。
手数料の分だけ利回りが低くなるので、投資家にとって利回りの低い物件は魅力的ではありません。
利回りの低い物件をわざわざ高値で買う投資家は少ないので、サブリース契約がついた物件は売れないか、売却価格が低くなる傾向があります。
また、サブリース契約は一方的な解約ができないことから、契約を解除したいのであれば不動産会社と交渉しなければなりません。
そもそも不動産会社が解約を拒否した場合には解約できませんが、万が一解約可能な場合でも多くのサブリース契約では中途解約の際に高額な違約金が発生することが一般的です。
そのため、サブリース契約がついている物件を購入してした後に解約する場合には、違約金という想定外の費用負担が生じてしまう可能性があります。
ただでさえ、手数料負担が大きなサブリース契約で、更なる費用負担が発生する可能性があるのは、不動産投資にとってはリスク以外の何者でもありません。
これらの2つの理由から、サブリース契約がついている不動産は、買い手に嫌われる可能性が高くなります。
そもそもなぜサブリース契約は解約できない?
サブリース契約は一方的に解約できない契約だと言われています。
それは、サブリース契約の根拠となっている借地借家法の第28条と第30条が大きな理由です。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
借地借家法第28条では、賃貸人側からの解約申入れは正当な事由があると認められる場合でなければ認められない旨が記載されています。
(強行規定)
第三十条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
そして、借地借家法第30条では、賃借人に不利な者は無効となるので、結論的にいえば、賃貸人からの解約申入れは、正当な理由がない限り無効となります。
サブリース契約の場合、不動産オーナーが賃貸人、不動産会社(サブリース会社)が賃借人です。
借地借家法第28条と30条によって、賃借人である不動産会社(サブリース会社)が守られているので、不動産オーナーから一方的にサブリース契約を解約することが非常に難しくなっています。
なお、借地借家法第28条に明記されている、解約が認められる「正当な事由」とは、家賃滞納や契約違反、無断転貸、用途違反、借主の過失による物件の損壊などが該当します。
これらの理由がない限りは、賃借人の同意がない限りはサブリース契約をオーナー側から一方的に解約することは非常に困難です。
サブリース契約付き物件を売却する2つの方法
サブリース契約つきの物件を売却するには、契約を解除したうえで売却するか、契約がついたまま売却するかしかありません。
それぞれの方法にはリスクもあるので、サブリース契約付きの物件を売却する2つの方法について詳しく理解しておきましょう。
サブリース契約を解除して売却する
サブリース付きの物件を売却するための最も基本的な方法は、サブリース契約を解除してから売却する方法です。
不動産会社が解約に同意をすれば、契約の解除は可能です。しかし、不動産会社としてもサブリース契約は貴重な収益源ですので、交渉したからといって必ずしも解約に応じてくれるとは限りません。そのため中途解約する場合には違約金を支払わなければならないのが一般的です。
まずは不動産会社と締結した契約書をよく確認し、中途解約はできるのか、違約金はいくらなのか、契約期間終了はいつなのかということを確認しましょう。
なお、契約満了が近いのであれば、契約満了になるまで解約を待ち、満了後に売却するのも1つの方法です。
サブリース契約付きのまま売却する
2つ目の方法がサブリース契約付きのまま売却する方法です。
この方法であれば、違約金を支払わずに売却できますが、サブリース契約付きの物件は買い手にとっては利回りが低い物件なので、売却するのは非常に厳しいのが実情です。
利回りが周辺相場に合うように、売却価格を安くするなどの対策を取らないと売却するのは難しいでしょう。
需要が活発な時期を見極めて売却活用をおこなえば、サブリース契約がついていても
ある程度の高値で売却できる可能性はあります。
サブリース契約を解除して売却する場合の流れ
サブリース契約を解除したうえでマンションを売却する流れは次のとおりです。
1. サブリース契約書の内容を確認し、解約条件等を把握する
2. 契約解除通知書を準備する
3. サブリース会社に契約解除を申し出る
4. 違約金等の支払いをおこない契約を解除する
5. 不動産会社と媒介契約を締結して売却活動をスタートする
6. 不動産を売却して引き渡す
まずは、サブリース契約の内容を確認し、違約金や契約期間などを把握しましょう。
契約を解除すると決めたら、不動産会社へ連絡し、契約を解除したい旨を伝え、契約解除通知書を作成します。契約解除通知書の雛形はインターネットなどでも簡単に手に入れることが可能です。
作成した契約解除通知書を不動産会社へ内容証明郵便で送付します。後日、不動産会社から契約を解除する旨や、違約金の支払いについての通知が届くので、通知に沿った手続きや支払いをおこない、サブリース契約の解約手続きは完了です。
あとは通常の売却活動と同じように、売却活動を依頼する不動産会社を見つけて、媒介契約を締結し売却活動を進めていきます。
サブリース契約付きのまま売却する場合の流れ
サブリース契約付きの売却活動をおこなう流れは以下の通りです。
1. 不動産会社と媒介契約を締結する
2. 買い手が見つかる
3. 不動産会社(サブリース会社)に承諾を得る
4. 買主へ説明し売買契約書の締結と同時に賃貸人地位承継の合意書を締結する
5. 売買代金の受け取りと引き渡し
サブリース契約がついたまま不動産を売却する場合は、基本的には通常の売却活動と同じように手続きを進めます。
しかし、サブリース契約に「オーナーチェンジを認める」という特約がない場合には、サブリース会社にオーナーチェンジすることの承諾を得る必要があります。
実際にはサブリース会社に通知または相談を行い、以下のいずれかを交わすことが一般的です
✅オーナーチェンジ承認書
✅旧所有者・新所有者・サブリース会社の三者間の変更合意書
また、令和2年(2020年)に施行された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」を受けて、サブリース事業にかかるガイドラインが改定されました。
売却に伴い賃借人が変更される場合にはサブリース業者がきちんと契約内容について説明しなければいけません。
従前のガイドラインでは、契約締結前の重要事項説明や書面交付についての明確な規定がなく、オーナーが契約内容を十分に理解しないまま契約を締結するケースがありました。
改定後は、サブリース業者に対し、契約締結前に重要事項を記載した書面を交付して説明することが義務付けられ、さらに契約締結時にも書面を交付することが求められています。

山丸慎太郎
サブリース契約を解除してから売却するか、そのまま契約を継続して売却するかは、物件の内容や契約条件によって判断が分かれます。
当社では多くの売却事例をもとに、数字や実情に即したご提案が可能ですので、オーナー様にとって最適な方法をご一緒に考えられればと思います。
売却成功のためにすべきこと
サブリース契約がついているマンションの売却を成功させるためには次の3点を抑えて売却活動を始めましょう。
✅売却で達成したい条件の整理
✅契約書の確認
✅実績が豊富な業者の選定
サブリース契約がついている物件は売却が困難だからこそ、事前に目標を明確化させることと、契約内容の確認、さらには業者の選定が重要になります。
サブリース契約がついているマンションを売却するための3つのポイントについて詳しく解説していきます。
売却で達成したい条件の整理
まずは売却で達成したい条件を整理しておきましょう。具体的には次の2点を明確化しておきます。
✅売却額
✅売却時期
売却目標額がある程度高額なのであれば、サブリース契約を解約するなどの対応をする必要があります。また、早期に売却したい場合もやはりサブリース契約を解除した方がよいでしょう。まずは「いくらで売りたいのか」「いつ売りたいのか」を明確にしましょう。
契約書の確認
次のサブリース契約の確認をおこないます。
✅中途解約はできるか
✅中途解約の違約金はいくらか
✅契約満了はいつか
✅オーナーチェンジはできるか
これらの条件を確認し、違約金や解約可能時期などを把握しておきましょう。
実績が豊富な業者の選定
サブリース契約がついている物件は、サブリースがついていない物件よりも圧倒的に売りにくいのが実情です。
そのため、不動産会社選びが非常に重要です。サブリース契約付きの物件売却の経験がない業者と媒介契約しても全く売却が進まない可能性が高いでしょう。
査定などを依頼する際に、サブリース契約付きの物件の売却経験がある業者かどうかを確認し、売却実績のある業者を選択するようにしてください。
株式会社FGHは全国のワンルームマンション売却に特化した収益不動産の仲介業者です。
過去10,000件以上の取引実績、最新の取引事例、今後の経済情勢も踏まえ、お客様の様々な状況にあったオンリーワンプラン型のコンサルティングをさせて頂きます。

宅地建物取引士 / 賃貸不動産経営管理士 / 住宅ローンアドバイザー
株式会社FGH 代表取締役社長
株式会社アーバンフォース 代表取締役社長
2007年2月フォースグループ創業以来、投資用不動産仲介の第一線でキャリアを積む。
中古ワンルームマンションはもちろん、不動産全般に関する多岐にわたる経験と知識でお客様からの信頼も厚い。
これまで400名以上のお客様の資産形成のお手伝いをしている。
このコラムを書いている人

マンション経営ラボ 編集者
最新の不動産投資情報や株式、投資信託、為替など幅広い投資コンテンツを掲載。 オーナー様自身で最適な不動産の購入・売却・運用の判断材料になる情報をタイムリーに提供いたします。
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