【不動産投資 一棟編⑱】自己資金配当率(CCR:Cash on Cash Return)について

公開日2022/04/04
更新日2022/12/24

投資

前回は、「総収益率(FCR:Free and Clear Return)」についてお伝えしました。
 
前回のコラムはこちらになります。
 
今回は、「自己資金配当率(CCR:Cash on Cash Return)」についてお話したいと思います。

 

・自己資金配当率(CCR:Cash on Cash Return)キャッシュ オン キャッシュ リターンとは?

 

これですね、個人的に物件を購入する際にかなり使う指標です。
 
「自己資金を何年で回収できるか?」が分かります。
 
もっと言うと「自分が投資したお金が何%で回っているか?」が分かります。
 
全期間利回り(IRR)のコラムでもお話しした「時は金なり」のせっかち法則に基づいた考え方ですね(笑)
 
やっぱり、投資家ってせっかちな方多いんじゃないでしょうか。

 

  • ●計算式:BTCF(税引き前のキャッシュフロー)÷自己資金×100

 

例えば、BTCFが100万円で自己資金を500万円投入した場合は、100万÷500万×100=20%のCCRという事になります。
 
自己資金を5年で回収できる投資だという事が分かります。

 

CCRはわかりやすく伝えると、「投資家の利回り」ということになりますね。

 

私がCPMを取得する際にお世話になった講師の方は、CCR30%以上の物件にしか投資しないと仰っていました。
 
ただ、最近の相場を見ているととてもじゃないですが、CCR30%以上で購入できる物件はないと思います。
 
あったとしても老朽化した築古物件や賃貸需要の懸念されるエリアの物件等になってきます。

 

しかし、物件価格が高騰していてもCCRを上げるやり方はあります。
 
それは融資条件を良くすることです。
 
自己資金が少なすぎるフルローンはリスクがありますが、自己資金を健全に抑えることができ、融資期間、金利も良い条件であれば、CCRも向上します。
 
ただし、金利上昇リスクは想定しなければいけません。

 

以下の2つの融資条件を比較して、CCRを見て行きましょう。
 
物件の表面利回りは8%とします。空室率は5%、運営費は家賃の20%と仮定します。

 

A:物件価格5000万、融資額4000万、自己資金1000

金利 3%、期間 20

 

家賃収入 :400万円

-空室率 : 20万円

-運営費 : 80万円

=NOI :300万円

-借入返済:266万円

=手取収入: 34万円

 

⇒手取収入(BTCF34万円÷自己資金1000万円=CCR3.4%

 

B:物件価格5000万、融資額 4500万、自己資金 500

金利 2%、期間 25

 

家賃収入 :400万円

-空室率 : 20万円

-運営費 : 80万円

=NOI :300万円

-借入返済:229万円

=手取収入: 71万円

 

⇒手取収入(BTCF)71万円÷自己資金500万円=CCR:14.2%

 

A、Bは同じ物件でも融資条件により、これだけ投資効率が変わります。
 
Aは、自己資金の回収に1000万円÷34万円=約29年かかるのに対して、Bは、500万円÷71万円=約7年となります。
 
今の相場で、ある程度の立地の物件でBの数字が出れば即買いと思います。
 
最初に入れたお金は出来れば10年以内(CCR10%以上)が理想ですが、近い数字であれば多少低くても減価償却や立地、売却益等、その他の要素に期待出来れば買いのケース多々あります。
 
ただし、新築ワンルームのようにキャッシュフローがマイナスでほぼ回収不可能な投資は賛成できないですね。

 

CCRは、投資で良く使う用語の「レバレッジ」と密接な関係にあります。
 
「レバレッジ」とは、いわゆる「てこの原理」で平たく言うと、「融資を使うことで現金購入するよりも投資効率を上げること」を指します。

 

例えば、先ほどの物件のAとBで解説します。
 
先に注意点ですが、この比較をする時の物件の利回りは必ずNOI÷物件価格で出す必要があります。
 
※表面利回りで出すと正しい比較が出来ないのでご注意ください。

 

物件の利回り(NOI利回り)

300万円÷5000万円=6.00%・・・AB共通

 

投資家の利回り(CCR)

34万円÷1000万円=3.4%・・・A

71万円÷500万円=14.2%・・・B

 

Aの投資は融資を利用することにより、現金で購入するよりも投資効率が下がり、反対にBの投資は、融資を利用することによって現金で購入するよりも投資効率が上がっています。
 
Bの投資が「正のレバレッジ(=レバレッジが効いている)」状態です。

 

★正のレバレッジ

CCR>NOI利回り

A:3.4%<6.0% →負のレバレッジ

B:14.2%>6.0% →正のレバレッジ

 

全ての不動産投資に当てはめる必要はありませんが、今はなかなか融資も厳しい時代ではありますが中長期で保有を検討する物件であれば正のレバレッジで購入したいですね。

 

昨年より様々な投資指標をご紹介してきましたが、すべての指標を電卓ではじきながら計算するのは大変です。
 
そこで私が活用しているのは、リーファというシステムです。
 
様々な収益不動産を扱う会社がOEMとして導入しています。
 
そんなに高くないので、ご自身で分析をしてみたい!という方は活用してみても良いかもしれません。 http://www.reifa.jp/

 

今回は以上となります。
 
次回は、売却運用率をお伝えしようと思います。

このコラムを書いている人

渡邊 勢月矢

渡邊 勢月矢

株式会社FGH代表取締役会長 CPM ® (米国不動産経営管理士)徳島県生まれ、広島県育ち。 大学卒業後、中小企業の営業支援を行う会社に就職。「個人投資家の目線に立った不動産売買仲介事業をしたい」との想いを抱き2007年2月、株式会社アーバンフォースを設立。その後、賃貸・売買部門を独立させ、株式会社FGHを設立・ホールディングス化。年間1000件以上の仲介案件を手掛け、通算8000件以上の適正な流動化を実現し、不動産所有者、購入希望者双方のニーズを満たすサービスを提供し続けている。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士

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