石破新首相就任の不動産投資への影響は?今後の不動産市場の展望
【目次】
2024年10月1日に石破茂氏が首相に選出され、新内閣が発足しました。安全保障政策について情報発信が豊富な石破新首相ですが、経済対策についてはやや印象が薄く未知数な部分も多いです。
特に、不動産投資家からすると新首相がマーケットに対してどのような影響を与えるのか気になる方も多いでしょう。
本コラムでは、現時点で把握できる情報を元に石破新首相就任による不動産投資への影響と今後の不動産市場を展望します。
今後の投資活動の参考にしてください。
石破新首相の政策と株式市場の反応
まずは、石破新首相の経歴と政策の概要について説明します。また、石破新首相の市場からの評価を考えるにあたり、株式の動きが大きなヒントとなるでしょう。決選投票に勝利した際の株式市場の反応についても解説します。
石破新首相の経歴と政策概要
2024年9月27日に行われた自民党総裁選において石破氏が高市氏を決選投票で破り、新総裁に選出、10月1日に首相に選出され石破茂新内閣が正式に発足しました。
石破新首相は、1957年鳥取県生まれ、早稲田大学政治経済学部卒で長年にわたり自民党内で重要な役割を果たしてきた政治家です。
農林水産大臣や地方創生担当大臣などの要職を歴任し、政策立案においても豊富な経験を持っています。特に防衛大臣としてのイメージを強く持つ方も多く、安全保障政策に強い関心を持つ政治家としても有名でしょう。
石破新首相の政策の柱は、地方創生です。地方経済の活性化を目指し、地方への企業進出や事業承継、スタートアップを推進し、地方の雇用創出を図ることを目指しています。
また、首相になる前の発言を総じて見ると、財政規律を重視する政治家と考えられています。今後避けられない防衛費の増額について、財源を確保するために増税の可能性がある点には注意が必要で、「納税者に納得してもらうことが政府の一番大事な仕事だ」と語っています。
株式市場の反応に見る石破新首相のイメージ
新首相に対する市場の評価を探るには、株式の反応を見ると大きなヒントが隠されています。石破新首相が自民党の総裁選で勝利した次の取引日である9月30日の日経平均株価は1911円(4.8%)の大幅な下落となりました。
決選投票で争った高市氏の政策が金融緩和を示唆するものであったため、事前に株高円安方向に振れていたことも要因であるとは言え、石破新首相就任に対して株式市場はネガティブな反応を示したといえます。
株式市場の短期的な動きに一喜一憂する必要はありませんが、なぜネガティブな反応をしたのか理由を知ることは重要でしょう。日経平均の大幅な下落の理由として挙げられるのは、石破新首相がもつ次のイメージと考えられます。
☑日銀の独立性を重視
☑法人税増税や富裕層課税強化につながる発言
☑金融所得一体課税に前向な姿勢
これら株価が下落した理由は、不動産市場の今後を展望する上でも重要な要素になるでしょう。ここからは、それぞれがどのように不動産市場に影響を与えるか、解説します。
利上げと不動産市場の動向
不動産投資家にとっては、国内金利の上昇に強い注意が必要です。石破新首相は、金利を上昇させようとしているわけではありませんが、日本を取り巻く環境は金利の上昇を予想させる状況です。なぜ金利の上昇が予想されるのか理由を説明します。
日本銀行による利上げの背景
日銀の独立性を重視する石破新首相の方針は、金利正常化を目指す日本銀行の政策に大きな影響を与えます。
日本では長らく続いたデフレからの脱却を目指して、2013年頃にはじまったアベノミクスによる金融緩和が長く続き、10年以上もゼロ金利といわれる低金利状態が続いてきました。
しかし2020年以降、新型コロナウイルスの世界的流行やウクライナ危機を原因として、世界的なインフレの傾向が強まります。日本においても、インフレの影響を受けて物価の上昇が見られるようになりました。
2024年、日本銀行はそれまでのゼロ金利政策の解除を決定し、日本の金利は正常化の方向に舵が切られています。日本の物価上昇を抑えるために、金利を上げる必要があるからです。
物価の上昇傾向が続くと、日本の金利も上昇が続くと予想されます。政治から金融緩和の圧力がなければ、日本銀行は自由に利上げの実施が可能だからです。
なお、石破新首相は就任後に「金融緩和の基本的な基調というものは維持されるべく、私どもとして期待をしながら見守っている」と発言しており、急激な金利上昇は望んでいないと考えられます。
住宅ローン金利の現状
住宅ローン金利は、金利政策の影響を強く受けます。これまで日銀の金融緩和政策により、住宅ローン金利は歴史的な低水準にありました。この状況は、長期に渡りマンションを中心とした住宅購入を促進し、不動産市場の活性化に寄与しました。
しかし、日本銀行はインフレ抑制のため政策金利の引き上げをはじめています。石破新首相が利上げに対して理解を示せば、そのまま住宅ローン金利も追随して上昇する可能性があるでしょう。
すでに2024年9月30日、大手銀行5社は変動型住宅ローンの基準金利を0.15%引き上げることを決定しています。
(参考:大手5行、住宅ローン変動型基準金利0.15%上げ|日経新聞)
金利上昇が不動産市場に与える影響
金利上昇は、住宅購入者にとっての負担を増加させるため、住宅市場に冷却効果をもたらします。また、投資による利回りが低下する要因となり、投資家から見た不動産の魅力は低下するでしょう。
住宅ローン金利の上昇は、特に変動金利型のローンを利用している借り手にとって大きな影響を与えます。金利が上昇すると、毎月の返済額が増加し負担が増します。これにより、住宅購入を控える動きが広がるでしょう。
結果として、不動産価格の上昇が抑制もしく下落する恐れがあります。不動産市場は金融緩和下で長らく上昇が続いているため、投資環境の前提が崩れると、金利の上昇幅によっては大きな下落の可能性も考慮したほうがよいでしょう。
増税が不動産投資に与える影響
石破新首相の財政健全化志向と過去の発言は、今後の増税を示唆するものとして受け止められているようです。ここでは、前向きな発言があった次の3つの税制と増税した際の不動産市場への影響について解説します。
☑法人税増税
☑富裕層課税強化
☑金融一体課税
法人税増税
法人税は、企業の所得に対して課される税金です。石破新首相は財政再建のため、法人税増税の可能性を示唆しています。
法人税が増税されると、企業の収益は圧迫され、設備投資や雇用を抑制する可能性があります。これにより、経済全体の成長が鈍化し、消費者の購買意欲も低下する恐れがあるでしょう。
法人税の増税は、不動産市場にも影響を与える可能性があります。企業が負担する税金が増えると、オフィスや商業施設の需要が減少すると予想されます。企業がコスト削減を図るために、オフィススペースの縮小や賃料の引き下げを求めるケースが増えるからです。
また、企業の不動産投資に対する意欲を低下させる要因となります。これにより、不動産価格の下落や取引量の減少が予想されます。特に、都市部の商業不動産市場においては、影響が顕著に現れる可能性があるでしょう。
富裕層向け課税強化
富裕層向け課税強化とは、高所得者や資産家に対する税負担を増やす政策を指します。具体的には、所得税の累進課税率の引き上げや、資産に対する課税の強化が考えられます。課税を強化する目的は、所得格差の是正や財政健全化を図ることです。
石破新首相は、財政健全化を重視しており、余裕のあるところから税金を取るとの考えから富裕層への課税強化を行う可能性があります。
富裕層向け課税強化により、富裕層の消費や投資活動が減少する可能性があります。高額所得者は国内消費の大きな部分を占めるため、課税強化により消費が抑制されると、経済全体の成長が鈍化するリスクがあるでしょう。
また、高額所得者が不動産投資を控える可能性があり、住宅市場や商業不動産市場における需要の減少が考えられます。これにより、不動産価格の下落が予想されます。
金融一体課税
金融一体課税とは、金融所得を一括して課税する制度です。具体的には、株式や債券の売却益、配当金、利子などの金融所得を合算し、一定の税率で課税します。
金融一体課税は累進課税ではないため、所得が1億円を超える富裕層に有利な税制との批判があり、導入の際には高額所得者に対する金融所得への増税がセットとなる可能性があると考えられています。
金融一体課税による増税が実現すれば、富裕層の投資家の行動に影響を与えるでしょう。高額所得者に対する税負担が増加するため、消費や投資の抑制が懸念されます。特に、株式市場では投資家の売買意欲が低下し、株価の下落を招く可能性があるでしょう。
金融一体課税で増税が行われれば、不動産市場にも影響を及ぼします。まず、金融所得に対する課税が強化されることで、高額所得者の投資余力が減少し、不動産投資への資金流入が減少する可能性があるでしょう。これにより、戸建てやマンションの需要が低下し、価格の下落を招く恐れがあります。
不動産マーケットの今後の展望
石破新首相の就任により、不動産マーケットには大きな変化が予想されます。
石破新首相は、地方創生を重視する政策を掲げています。地方経済の活性化を図り、地域間の格差の是正を目指していることから、地方の不動産市場に新たな投資機会が生まれる可能性はあるでしょう。
しかし、金利上昇や増税の影響が懸念される点には注意が必要です。金利上昇は住宅ローンの返済負担を増加させ、不動産購入のハードルを高めます。これにより、需要が減少し、不動産価格が下落する可能性があります。
また、増税も不動産投資に対する影響が大きいです。法人税の増税や富裕層向けの課税強化は、投資家の利益を圧迫し、不動産市場の活性化を妨げる可能性があるでしょう。特に、都市部の物件に対する需要が減少し、価格の下落が進むことが懸念されます。
不動産市場の調整局面では、価格下落のリスクを回避するために、早めの売却を検討することが重要です。早めの売却によって、価格下落による損失を最小限に抑え、より有利な条件で売却できる可能性があります。
ただし、不動産の売却には物件の査定から始まり、不動産会社の選定や売却活動など3~6か月程度の期間が必要となります。売却を検討する方は、早めに不動産会社へ相談するのが良いでしょう。
まとめ
2024年10月1日に石破茂氏が首相に選出され、新内閣が発足しました。地方創生を政策の柱とする石破新首相ですが、次のようなイメージが市場で浸透しています。
☑日銀の独立性を重視
☑法人税増税や富裕層課税強化につながる発言
☑金融所得一体課税に前向な姿勢
石破新首相の就任により、不動産マーケットには大きな変化が予想されます。
今後の市場の動きに敏速に対応するために、まずはご自身の保有物件の現在の価値を把握することから始めてみましょう。
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このコラムを書いている人
マンション経営ラボ 編集者
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