「記憶のシステム化」が宅建合格の鍵

公開日2021/09/30
更新日2021/09/30

本コラムは、一般のお客様がメインユーザーになるのでしょうが、そこそこ同業者の方も閲覧いただいているような気がしますので、旬な話題として、余すところ3週間弱で、年に1度の試験日を迎える、宅地建物取引士資格(以下宅建と略します)試験について触れておきたいと思います。

不動産業界人にとって、避けては通れない関門が、この宅建の取得なのですが、業界歴35年を通して、豊富な宅建取得者に恵まれている会社など、ごく少数にすぎなかったという事実を、まずはお伝えしておくべきでしょう。

そんなに甘いの?とお叱りを受けそうですが、従業員5名あたり、宅建取得者1名の設置義務がありますので、各社とも、有資格者の確保に必死にならざるをえないわけで、伝統的に社員教育というものに熱心ではない不動産業界にあって、例外的に、宅建の取得についてだけは、支援制度を設けている会社も多いようですが、これがなかなか受からないものなんですね。

結局のところ、最後は受験者のモチベーションがすべてになりますから、どんなに立派な講座や講師を用意しようと、気持ちが折れたらすべてが水の泡です。

受験者の気持ちが折れるときとは、自分の記憶力に愛想がつきたときと昔から相場が決まっており、試験まで残り1ヶ月を切ったくらいのタイミングで、焦りともあいまって、自暴自棄になるのが一般だと思います。

 

一日で失われる記憶はなんと7割

ところが、記憶力というものには、それほどの個人差はない、という実験結果があるのをご存知でしょうか。

記憶力がいいと思われている人は、記憶することに長けているというよりは、忘れないためのテクニックに長けているだけなのです。

このテクニックのうち、最初に紹介したいキーワードは、忘却曲線です。

何年もかけて、さまざまなパターンで、失われていく記憶量を調べ上げた学者が、100年以上前のドイツにいたんですね。

どうですか?

一度覚えたことでも、1日たつと7割近くの記憶が失われてしまうんですよ。

ただ、人間のすばらしいところは、24時間以内に復習すると、記憶量が100%に戻ることです。

さらにすばらしいのは、いったん100%に戻ったら、次からの復習は、倍々ゲームで間隔をあけていっても、100%の記憶が維持できることでしょう。

私たちのグループでは、4年前から、宅建取得支援制度が本格的に運用されていますが、この理論に沿ったカリキュラムを組んでいるため、かなりの合格率を誇っているのです。

 

 

記憶を長く保つには?

ふたつめのキーワードは、長期増強です。

記憶にはさまざまな分類方法がありますが、もっともシンプルなのが、半日程度しかもたない短期記憶と、場合によっては一生ものになりうる長期記憶との分類です。

記憶はどこに保存されるか、については、たくさんの議論がありましたが、最近では、脳内のニューロンの結びつきによることが分かってきています。

これはたしかアメリカの実験だったと思いますが、40問の単語の記憶テストをいくつかのグループに分けて行ない、40問すべてを正解するまで解き続けるグループと、間違えた問題だけを解き続けるグループでは、その場では記憶の総量に違いはなかったものの、1週間後には倍以上前者の成績が優れている、という結果が出たそうです。

いくらテキストを読んで暗記に勤しむ(インプット)より、繰り返し問題を解く(アウトプット)方がはるかに有効だということですね。

加えて、単なる繰り返し記憶の棚卸しだけでなく、興味を持って課題をふり返ると、ある決まった脳波が現われ、ニューロン同士の結合が強まるという、長期増強という機能があるのです。

一連の記憶が、ひとつのシステムとして定着するわけです。

私どもは不動産会社でして、生きた資料にはことを欠かないので、実物や実例を見ながらの学習ができますから、一般の方よりははるかに有利な環境にあるといえます。

 

体験、時間、場所、感情が記憶を固着させる

最後のキーワードは、エピソード記憶です。

よく対比される意味記憶が、主に知識についての記憶であるのに対し、エピソード記憶は経験についての記憶であり、経験に根ざしている分だけ、思い出しやすい記憶であるといえます。

これを学習に取り入れない手はありません。

宅建の問題には、しばしば取引事例が引用されるのですが、登場人物はアルファベットで表示され、対象不動産は、甲乙丙で表示されているので、無味乾燥なことおびただしいものがあります。

よって、私どものグループの講習では、すべて実名に置きかえて解くことを奨励しており、講師による解説ではかならず実名に置きかえて、自身が経験したエピソードのようにイメージさせるのですが、ことここに至って、いまだに手間を惜しむ輩が存在するのが悩ましいところです。

 

あとがき

ここまで手の内を公開しちゃっていいの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、個人的には、不動産業の従事者は全員が宅建を持っていてほしいと思っていますので、本コラムをお読みいただいて、ご自身の学習に活用なさり、合格いただけたら、これにまさる喜びはありません。

最後にひとこと申し上げておきますが、宅建試験は、知識を問うというよりは、いかに落とすかという設問が多く、脊髄反射が大事になりますので、記憶の理論を活用いただき、宅建に関する記憶をシステム化されるよう、強くお奨めしておきます。

このコラムを書いている人

中村 彰男

中村 彰男

1961年 東京生まれ 宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、 宅建マイスター、管理業務主任者 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 学習院大学経済学部卒業後、約35年間一貫して不動産業に従事。 うち、ローンコンサルティングなど 業務畑経歴24年。自身も不動産投資にチャレンジし運用に失敗した経験を持つ。

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