【特集】アメリカ不動産投資、売却は気をつけろ!⑨

公開日2020/05/10
更新日2024/01/11

 

2020.5.10
代表取締役会長 渡邊 勢月矢

話が伝わっていないイメージ

アメリカ不動産の売却は、基本的に売主に不利!?

アメリカのテキサス不動産の売却を進めていた私のもとへ、売却の4日前に届いた精算書にはまだ不可解な点がありました。
 
昨年にユニット全体で支払っていた火災保険料が未精算ということで精算しますが、これも、精算書を見ると売主が多めに払うように記載されていました。
 
具体的にいえば、私は2019年8月1日に売却するため、8、9、10月の3カ月分を払う義務はないはずですが、売主の負担となっています。
 
「これは私が支払うものですか?」と問合せしたところ、差し引いてもらえましたが、これは指摘しなければ売主が負担するところでした。
 
その点で国内不動産は精算に関してすごく細かいです。
 
そもそも固定資産税すら日割り計算をしませんし、前回の記事にあったように私からすると不必要な修繕も行われています。
 
このような不手際がなぜ起こるのでしょうか。
 
これは管理担当と売買担当で連携がとれていないからだと推測します。
 
グループ会社なら連携をとるのは常識です。それがまったくできていません。
 
やりとりの履歴を見ると、管理担当は日本語を話せないため、会計担当のMさん(日本人)に伝えていますが、どうやらしっかり伝えていないようです。
 
日本人や日本語のわかるスタッフがいる会社で、こんなに意思疎通ができていないうえにずさんとは本当に驚きました。
 
このテキサスの不動産は日本人相手に100ユニットは売られていますから、私と同じような被害に遭った人がいるでしょう。
 
H社のTさんは今でも営業活動をしているので、くれぐれも気を付けていただきたいと思います。
 
また、アメリカ不動産と国内不動産との常識の違いとして、知っていただきたいことに「違約金」があります。
 
日本では売買契約後の解約に対して違約金の支払い義務がありますが、アメリカにはありません。
 
つまり、契約の後に購入を撤回しても違約金が発生しません。
 
契約ごとに内容は変わるかもしれませんが、私のケースはそうでした。
 
このようにH社だからなのか、アメリカ不動産の慣習なのか、わかりかねる部分はありますが、総じて売主に不利な点があるという印象が見受けられました。
 
念のため付け加えますが、Tさんは詐欺行為をしているわけでも犯罪者でもありません。
 
ただ、売るときは親切丁寧にサポートをしてくれましたが(それはアメリカ不動産では通常支払われない購入時の手数料を5%支払ったからかもしれません)、売却時においては不親切極まりなかったというだけの話です。
 
入居者が決まっていないのに、人件費360ドルと240ドルもかけてタイルの貼り換えや修繕をやって、別ユニットの301号室も塗装修繕や換気扇や蛇口の交換を行っています。
 
この間、家賃は全く入ってきていませんから、最終月はマイナス1700ドルになっています。
 
そのため私は苦労をしたり不利益をこうむりましたが、投資は自己責任であり、投資で不利益が出たことに対してTさんを責める気持ちは一切ありません。
 
ただ取り扱う国は違えど同じ不動産業界にいて、不動産売買を生業にしているものとして、もう少し顧客に寄り添ったほうが良いのではないだろうかという経営者としての想いと、私と同じ境遇にいる方への情報共有という意味でこの記事を執筆しています。

●なぜか年額の保険料が差し引かれている

損益計算書

 

【特集】アメリカ不動産投資、売却は気をつけろ!
【第1回】アメリカ不動産投資との出会い
【第2回】私が行ったSection 8(セクションエイト)とはどんな投資か?
【第3回】購入目的は4年間の減価償却
【第4回】運用実績(2016年~2018年)
【第5回】生活保護スキームの崩壊から売却を決意
【第6回】なぜ? 家賃滞納にテキサス州からの支払い停止
【第7回】アメリカ不動産では、仲介手数料は売主が全額払う
【第8回】不可解な精算書……売却直前で空室を修繕
【第9回】アメリカ不動産の売却は、基本的に売主に不利!?
【第10回】セラーファイナンスのリスク
【第11回】「米国源泉徴収制度」(FIRPTA)を知っていますか?
【第12回】令和2年度税制改正による海外不動産投資への影響と、私がアメリカ不動産投資で失敗して感じたこと

このコラムを書いている人

渡邊 勢月矢

渡邊 勢月矢

株式会社FGH代表取締役会長 CPM ® (米国不動産経営管理士)徳島県生まれ、広島県育ち。 大学卒業後、中小企業の営業支援を行う会社に就職。「個人投資家の目線に立った不動産売買仲介事業をしたい」との想いを抱き2007年2月、株式会社アーバンフォースを設立。その後、賃貸・売買部門を独立させ、株式会社FGHを設立・ホールディングス化。年間1000件以上の仲介案件を手掛け、通算8000件以上の適正な流動化を実現し、不動産所有者、購入希望者双方のニーズを満たすサービスを提供し続けている。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士

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