【実録!テキサス不動産投資失敗/Tさん編】⑦
2020.11.16
代表取締役会長 渡邊 勢月矢
現地視察ツアーに参加、テキサス州のコンドミニアムを見学
私のテキサス不動産売却のトラブルを綴ったコラム「アメリカ不動産投資、売却は気をつけろ!」に対して、感想のメールを東京都在住のサラリーマンTさんからいただきました。
Tさんもまたテキサス不動産投資で失敗してしまった当事者で、「私の経験が皆さんの役に立つならば……」と詳しくお話いただきました。
当コラムでは【実録!テキサス不動産投資失敗/Tさん編】として、Tさんの失敗体験をご紹介いたします。
ご購入された物件は、下記の内容になります。
物件価格:99,800ドル
想定賃料:840ドル/月額
管理費:462ドル/月額
固定資産税:727ドル/年額
想定NOI:3,809ドル/年額
想定NOI利回り:3.81% ※空室損は考慮していません。
【第1回】 テキサス不動産の被害者Tさんからのメール
【第2回】 アメリカ不動産に興味を持ったワケ
【第3回】 初めてのテキサス不動産投資セミナー
【第4回】 テキサス州のコンドミニアム購入を決意
【第5回】 実勢価格を調査。相場より高くない、むしろ良心的な価格
【第6回】 ノンバンクで50%のローンを組んでユニット購入
以下Tさん談
2018年、テキサス州の北部にあるTコンドミニアムを購入した私は、同年の11月に販売会社であるR社が主催する現地視察ツアーに参加しました。
空港に車で迎えに来てもらい、まずはトヨタ北米本社があるプレイノの街へ(コンドミニアムからは20分ほど離れています)。
トヨタやNTTデータ、JPモルガンやエリクソンなどもあり、ホテルやショッピングセンター、ニューヨークの五番街やLAのロデオドライブの様にハイブランドが並ぶ街並みなど、とてもきらびやかです。
工事中のビルも多く、これから発展していく印象を受けました。
あわせてテキサスに本社があるR社のオフィスも見学させていただきました。
もしかして経営に陰りは見えていたのかもしれませんが、私たちツアー参加者にはそんなそぶりを一切見せませんでした。
そのほか売り出し中の物件やすでにリフォームが完了している他の物件も見せてもらいました。
「Tさんの購入した物件もリハブ(リフォームのこと)が終われば、こんな素敵な感じになるので楽しみですね!」と言われ、気分が盛り上がりました。
そして、いよいよTコンドミニアムへ向かいます。
その際に今振り返ると「あれは伏線だったのかな……」というエピソードがありました。
アテンドの方に「自分の購入したコンドミニアムを見学したい」と申し出たところ、「工事中ですから、現場に入れるかわかりません」と濁されたのです。
購入後にリフォーム工事をする……という流れは理解していますから、「それでしたら、職人さんにぜひご挨拶をさせてください」とお願いしたところ、「こちらの職人は気性が荒いからおすすめできない」という話です。
どうやら職人さんはもちろん、住民にも話しかけてほしくないとのことでした。
コラムの第4回で説明した通り、Tコンドミニアムはゲートで囲まれた広い敷地に、平屋もしくは2階建ての木造戸建てがずらりと立ち並んでいます。
20棟200戸以上あるTコンドミニアムのうち、150戸以上をR社が日本の投資家さんに販売をしていますが、それ以外の住民は日本人オーナーが増えたことに対して快く思っていないといいます。
というのもTコンドミニアムではR社の管理物件が多数を占めるため、HOA(home owner’s associationの略で、日本のマンションの管理組合にあたる組織)ではR社が決議権を持ちます。
R社としてはコストをかけて、共有部も占有部もしっかり改修工事をして商品化したいわけです。
それに対して既存入居者は「古いままでいいからお金をかけたくない」という意見が主流のため、いわゆる利害対立している状態だそうです。
だからこそ、リフォーム業者にも住民にも接触してほしくないという話でした。
そのときは、そうした説明を受けて納得したものの、今となっては当時は工事は手つかずで、とてもオーナーに見せられる状況ではなかったのではないかと推測します。
実際にTコンドミニアムに到着したときには大雨が降っており、とてもあちこちを見て回れる状況ではありませんでした。
内覧できたのは家具家電の設置してあるモデルルームのようなお部屋で、それは写真に撮りました。
ちなみにモデルルームといっても、日本で販売されている分譲マンションのモデルルームのようなものではありません。
一応、リビングはきれいにしてあって、家具が設置されています。
しかしアトリウムといって屋根付きのガラス張りのテラスのようなスペースは、床が焦げ跡みたいに真っ黒になっていました。
「リフォーム前なのですか?」と聞いたところ、ガラス張りのアトリウムはハリケーンなどの被害を受けやすいため、壁と窓にリフォームするため、工事を後回しにしていると説明を受けました。
つまり、視察ツアーで見せるモデルルームですら、このような中途半端な状況だったのです。
その時はちょっとした違和感程度だったのですが、後から振り返ると不自然な点がいくつもありました。
●トヨタ北米本社があるプレイノの街
●他物件のモデルルーム。こちらは内装リフォームも完璧に終わっていた
●Tコンドミニアムの焼け焦げたような跡のあるアトリウムの床
●建物の状態は全体的に悪く荒れていた
●Tさんが購入した部屋を見学することはできなかった
【第1回】 テキサス不動産の被害者Tさんからのメール
【第2回】 アメリカ不動産に興味を持ったワケ
【第3回】 初めてのテキサス不動産投資セミナー
【第4回】 テキサス州のコンドミニアム購入を決意
【第5回】 実勢価格を調査。相場より高くない、むしろ良心的な価格
【第6回】 ノンバンクで50%のローンを組んでユニット購入
【第7回】現地視察ツアーに参加、テキサス州のコンドミニアムを見学
【第8回】2019年夏、幹部による2億円の横領!?
【第9回】2019年いよいよR社の破綻へ……
【第10回】2020年春、いよいよR社が破綻!
【第11回】ダラス市からの是正勧告、放っておくと罰金
【第12回】知らないうちに入居者が住んでいた
【第13回】高額の会費がかかるオーナー会
【第14回】(最終話)しっかり物件を選んでも失敗はある
このコラムを書いている人
渡邊 勢月矢
株式会社FGH代表取締役会長 CPM ® (米国不動産経営管理士)徳島県生まれ、広島県育ち。 大学卒業後、中小企業の営業支援を行う会社に就職。「個人投資家の目線に立った不動産売買仲介事業をしたい」との想いを抱き2007年2月、株式会社アーバンフォースを設立。その後、賃貸・売買部門を独立させ、株式会社FGHを設立・ホールディングス化。年間1000件以上の仲介案件を手掛け、通算10000件以上の適正な流動化を実現し、不動産所有者、購入希望者双方のニーズを満たすサービスを提供し続けている。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
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