【実録!テキサス不動産投資失敗/Tさん編】⑭ 最終話
2021.2.8
代表取締役会長 渡邊 勢月矢
(最終話)しっかり物件を選んでも失敗はある
私のテキサス不動産売却のトラブルを綴ったコラム「アメリカ不動産投資、売却は気をつけろ!」に対して、感想のメールを東京都在住のサラリーマンTさんからいただきました。
Tさんもまたテキサス不動産投資で失敗してしまった当事者です。
テキサス州ダラスで購入したコンドミニアムの改修工事の途中で販売運営会社が破綻。
新しい管理会社は見つかったものの、未だ課題は山積みで先行きが見えないなか、これからオーナー会を通じて状況を打破していかなくてはありません。
ご購入された物件は、下記の内容になります。
物件価格:99,800ドル
想定賃料:840ドル/月額
管理費:462ドル/月額
固定資産税:727ドル/年額
想定NOI:3,809ドル/年額
想定NOI利回り:3.81% ※空室損は考慮していません。
これまで、Tさんのお話をコラムにまとめてきましたが、最終話は不動産会社の経営者であり、過去に同じテキサス不動産投資を行った経験者として、私の見解を述べたいと思います。
結局、このTコンドミニアムの件は、2018年に破綻した新築シェアハウス「かぼちゃの馬車」とよく似ているように感じます。
被害者の数も正確には把握していませんが、「かぼちゃの馬車」の被害者とそんなに変わらないのではないでしょうか。
この事件では、スルガ銀行という銀行が、「かぼちゃの馬車」という日本の不動産に対して、その価値以上にお金を貸し出しました。
くわえて不正な手口でお金を借りる仕組みもできていたため、被害者が量産される結果となりました。
「かぼちゃの馬車」は自転車操業状態で、いずれにしても破綻する運命でしたが、被害者に対して救済措置が取られています。
しかし、これがアメリカの不動産となると、契約書上、訴訟になってもアメリカの法律が適用されるため、日本での問題として扱われません。
たとえ日本の消費者庁に訴えたところで、おそらく消費者庁も動きづらいでしょう。
さらにワンルーム業界歴が長い私から言わせてもらえば、アメリカ不動産投資を行う層が、日本国内のワンルーム投資と行う層と比べても年収の高い方々が多いということです。
つまり多少の損をしても、すぐ破綻するような属性ではなく、ある程度の赤字は耐えきれる方々です。
私自身もテキサス不動産投資を行った理由に節税対策がありましたが、同じように節税目的でされている方も多いでしょう。
そうなると、ますます被害が表に出にくくなります。
ここで再度、Tさんにご意見をお伺いします。
「たしかにオーナーは、損が出ても耐えきれるような収入もあり、社会的な立場もあるから表に出るのを嫌がる人、話を大きくすれば困る人が多いように思います。
また、今回の海外不動産投資をはじめる際や、トラブルが起こってから多くの人に相談をして感じたことがあります。
アメリカだけではなくアジアでも同様でしょうけれど、現地に住んでいる日本人が日本人を騙すという話をたくさん聞きました。
それは、あまりにも騙しやすいから……という背景があると感じます。
今回のことも仕方ないと自分に言いわけをしていますけれど、もしかするとオーナー会も全部ひっくるめてグルかもしれないと疑心暗鬼にかられたこともありました」
日本人が日本人を騙す……それは、すごく残念なことです。
そもそも、この投資自体は成功だったと思います。
Tさんが購入された物件は、予定通りにリノベーションをして、きちんと客付けをしていれば、しっかりと運用ができて、先々ではキャピタルゲインが得られる可能性も高い投資です。
それがR社の経営状態が引き金となり、失敗投資になってしまったのです。
同じ不動産会社の経営者の観点から言うならば、営業力もあり商材もいいのに財務が弱かった。
財務の監査役が存在しなかったのでしょうか。利益を出しても経費のかけ方のバランスが悪すぎて、結局お客さまである投資家さんにしわ寄せがきてしまっています。
「よく地震が原因でも、実際のところは人災になることがあるじゃないですか。
そんな感じで、投資というより会社の財務的なトラブルに巻き込まれた感が拭えません。
ただ、私が過信した部分もあると反省します。
せっかく現地まで行ったのだから、工事が進んでいる現場も見せてほしいともっと強く頼めばよかったと後悔しています」
とTさん。
海外投資ではカントリーリスクが付き物ですが、今回の場合は、カンパニーリスクを受けた結果となりました。
今後についてはまだ不透明な部分も多いのですが、できれば家賃収入を得ながら長期的に所有したいそうです。
「もともとインカムゲインではなく、キャピタルゲインが目的でした。不動産投資は中長期の投資です。
今は大失敗したように見えても、長い目でみれば最終的にトントンになることもあります。
とり急ぎ入居者もついているので現状をはっきりさせて、過去の家賃収入も入るよう進めていきたいです。
そうすれば、融資の返済もできますから」
人によっては「損切りでもいいから早く終わらせたい」という考えもありますが、投資の目的はもちろん終着も様々です。
トラブルが片付いて、早く順調に運営できるよう応援したいと思います。
全14話というなかなかの長編コラムとなりました。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございます。
今後も配信済のコラム続編やテーマごとに、ブログなどを配信していこうと思っています。
引き続き、よろしくお願いいたします。
【第1回】 テキサス不動産の被害者Tさんからのメール
【第2回】 アメリカ不動産に興味を持ったワケ
【第3回】 初めてのテキサス不動産投資セミナー
【第4回】 テキサス州のコンドミニアム購入を決意
【第5回】 実勢価格を調査。相場より高くない、むしろ良心的な価格
【第6回】 ノンバンクで50%のローンを組んでユニット購入
【第7回】現地視察ツアーに参加、テキサス州のコンドミニアムを見学
【第8回】2019年夏、幹部による2億円の横領!?
【第9回】2019年いよいよR社の破綻へ……
【第10回】2020年春、いよいよR社が破綻!
【第11回】ダラス市からの是正勧告、放っておくと罰金
【第12回】知らないうちに入居者が住んでいた
【第13回】高額の会費がかかるオーナー会
【第14回】(最終話)しっかり物件を選んでも失敗はある
このコラムを書いている人
渡邊 勢月矢
株式会社FGH代表取締役会長 CPM ® (米国不動産経営管理士)徳島県生まれ、広島県育ち。 大学卒業後、中小企業の営業支援を行う会社に就職。「個人投資家の目線に立った不動産売買仲介事業をしたい」との想いを抱き2007年2月、株式会社アーバンフォースを設立。その後、賃貸・売買部門を独立させ、株式会社FGHを設立・ホールディングス化。年間1000件以上の仲介案件を手掛け、通算10000件以上の適正な流動化を実現し、不動産所有者、購入希望者双方のニーズを満たすサービスを提供し続けている。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
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