【特集】アメリカ不動産投資、売却は気をつけろ!⑤
2020.3.24
代表取締役会長 渡邊 勢月矢
生活保護スキームの崩壊から売却を決意
さて、初年度、翌年と順調に行っていたテキサス不動産投資ですが、いくつかの事情が重なって2019年3月に売却を決意しました。
その理由はTさんから届いた「管理体制の変更について」というメールにありました。
なお、このメールは私も含めたオーナー宛てに一斉に送られて来ています。
①周辺治安悪化
所有するユニットがある集合住宅エリアの治安が悪化した。
②生活保護の厳格化
トランプ政権になり生活保護予算が減った。
今まで家賃10万円のうち8万円を州が補助していたが、州からの支払いが4~5万円程度に下がることが決定。
③2018年ハリケーンによる修繕状況の悪化
ハリケーンで共有部がダメージを受けて、多額の修繕の必要性がある。
メールを要約するとこのような内容です。
本来ならば減価償却の4年を使い切ってから売却する予定が、投資状況が変わったという報告にくわえて、今物件をまとめて売ればお得であるというようなことが書かれており「売却パッケージ」の提案がされていました。
私が売却を検討したのには、もう一つ理由があります。
これは買った理由にも関わる部分ですが、このセクション8の物件は約100ユニットあり、半分以上をH社が仕入れて日本の投資家に売っています。
その結果、この物件では日本人オーナーが過半数を占めています。
アメリカにも日本同様にマンションの建物管理などを行う管理組合が存在しますが、半数以上の合意があれば管理規約を変えられる決まりだそうです。
この物件では過半数以上の所有者が日本人で、管理会社の関係者が管理組合の理事長でした。
それが購入の動機の一つにもなっていますが。今回のメールを受けて30ユニット以上は売却されるらしく、そうなると日本人オーナーが保有する数は過半数を割ります。
そうなれば、管理面において不安があります。
そこで私は「このタイミングで売らなければリスクがある」と判断して、4年間の減価償却が終わる前に売ることを決めたのです。
さっそくH社に売却査定をしてもらいました。
買った金額で売れるのかと思ったら、そんなに都合良くもいかず、1戸89000ドルで買ったユニットは、1戸80000ドルになり、9000ドルも下がっていました。
購入当初、H社のTさんからは「これからテキサスは人口がどんどん増えるし、伸びていく都市です! キャピタルゲイン(売却益)に期待できます」と聞いていましたが、上がるどころか3年半でそこまで下がるのは聞いていた話とは違います。
ただ、不動投資は、市況相場ありきのものなので、投資リスクとして仕方がありませんし、自己責任と理解しています。
3月26日にH社に売却依頼をしてから、担当がアメリカに住むエージェントのSさんに変わったのですが、Sさん曰く「80000ドルはすごくいい金額ですよ!」とのことで、「では、89000ドルで購入したのは、あきらかに高い金額だったのか」と疑問が残ります。
●Tさんから届いたメール
【第1回】アメリカ不動産投資との出会い
【第2回】私が行ったSection 8(セクションエイト)とはどんな投資か?
【第3回】購入目的は4年間の減価償却
【第4回】運用実績(2016年~2018年)
【第5回】生活保護スキームの崩壊から売却を決意
【第6回】なぜ? 家賃滞納にテキサス州からの支払い停止
【第7回】アメリカ不動産では、仲介手数料は売主が全額払う
【第8回】不可解な精算書……売却直前で空室を修繕
【第9回】アメリカ不動産の売却は、基本的に売主に不利!?
【第10回】セラーファイナンスのリスク
【第11回】「米国源泉徴収制度」(FIRPTA)を知っていますか?
【第12回】令和2年度税制改正による海外不動産投資への影響と、私がアメリカ不動産投資で失敗して感じたこと
このコラムを書いている人
渡邊 勢月矢
株式会社FGH代表取締役会長 CPM ® (米国不動産経営管理士)徳島県生まれ、広島県育ち。 大学卒業後、中小企業の営業支援を行う会社に就職。「個人投資家の目線に立った不動産売買仲介事業をしたい」との想いを抱き2007年2月、株式会社アーバンフォースを設立。その後、賃貸・売買部門を独立させ、株式会社FGHを設立・ホールディングス化。年間1000件以上の仲介案件を手掛け、通算10000件以上の適正な流動化を実現し、不動産所有者、購入希望者双方のニーズを満たすサービスを提供し続けている。 保有資格:宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
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